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シカク
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ある辺境の村の青年の挑戦

小さな村で生まれた俺は今、初めてくる帝都で村とは何もかも違う景色に驚いている。俺は辺境の村の農夫の家で育ったロイド。帝都に来たのは学園の入試テストを受けるためだ。成人である15歳になると金持ちや貴族なんかの子供は学園に通うことになる。だけど俺みたいな村育ちや貧乏の家はそんな子供を学園に行かす金など当然無い。そんな子供はそのまま働くか腕っぷしに自信があれば冒険者になったりするのだが、数年前から帝国ではそんな子供達を救うべく、奨学金というものを提供して無償で通わせてくれる全寮制の学校を設立した。ただ皆が行けるわけではない。帝都で行われるテストに合格した者だけが入学できる。それ以外にも男子限定や貴族出身ではない事などの条件もある。また試験会場となる帝都までの交通費は自腹だ。辺境など遠くに住む者からすれば結局は帝都までの交通費を用意できず断念する者が多い。それでも例年、多くの受験者が帝都に集まる。そして帝国中の学園に行けない人たちが集まり、合格するのはほんの一握りだ。 俺も辺境の村の出身。帝都に来るのに馬車など乗り継いで2週間はかかる。だけど親が何かあった時のために貯めていたお金を行けるかも分からない学園のテストの為に俺に渡してくれたのだ。最初俺は何度も断った。俺のためなんかに、そんなテストのために頑張って貯めたお金を使ってほしくなかった。だけど両親は村でも腕っぷしが強い俺を信じて“ロイドなら必ず行ける”そう言ってお金を俺に託した。 村を出発して、予定より少し遅れたが2週間と少しで試験の前日に帝都にたどり着いた。到着するも観光する暇もなく、俺はすぐに宿を取って長旅の疲れを取るためにそのまま眠りについた。 翌日、人に聞きながら俺は試験会場の学園へと訪れた。やはりというか学園は庶民が通うには勿体無い立派な建物で敷地もデカい。だが聞くにはこれでも貴族が通う学園よりかはだいぶ小さいそうだ。 そんな他の学校よりかは小さいと言われている大きな門をくぐるとやっぱりというか受験生もたくさん集まっていて大きな列が何個もできている。この学校には剣士科と魔法科の2つの科がある。俺が受験するのは剣士科。間違って魔法科の列に並んでしまったら不合格間違いなしだ。どれに並べばいいのだろうか、恐る恐る圧があって筋骨隆々な黒い制服を着た人に聞いてみるとちょうど案内人だった。そしてまさかの学校の生徒らしく今日は手伝いをしているそうだ。見た目の印象とは違い、優しく案内してくれ、指示に従って俺は剣士科の列に並んだ。どうやら最初に見ていたのがテスト受付の列で合っていたようだ。朝早くから並んで昼近くなった頃、やっと自分の番がやってきた。受け付けを済ますと番号をもらい、グランドへと案内される。筆記試験はなくグランドでの実技のみで試験を行うそうだ。碌に教育を受けていない者も多い庶民だと字が書けないのはざらだ。俺も得意ではないので助かる。それに俺が受験するのは剣士科。頭の良さなんていらず腕っぷしさえあれば十分だろう。グランドでは何ヶ所にも分かれて同じようにテストが行われているのが見える。いよいよ自分の番号が呼ばれて試験が始まる。テストは数十人毎に行われた。体力テストや障害物を乗り越えるレース、簡単に木刀での素振りが見られ終了となった。結果は明日、受付をした場所で番号が貼り出される。だが、これで終わりではないらしく、あくまでも1次通過で合格者だけが最終試験に進めるそうだ。体力テストも次のレースも上位だと思うが、全体で見ると分からない。なにせ朝にあの大人数を見てしまったのだ。全力は出したが自分が学園に通える一握りになっているなんて到底思えない。親に申し訳ない気持ち沸々と湧いてくる。俺はそれから帝都を観光する気にはなれなくて、そのまま宿に帰り眠りについた。 翌日、学園に貼り出された番号を確認するとなんと番号があった。昨日はそのまま村に帰ろうかとも思っていたのでギリギリセーフだ。周りの目があったので小さくガッツポーズをして心の中で喜んだ。1次試験の通過者は午後から最終試験が行われる。朝食も喉を通らなかったがそんな事ではいけない。俺は急いで食事を取ってエネルギーを補給して午後に備えた。 そして最終試験、内容は受験生同士の木刀での模擬戦だ。5分の1発勝負。だが合格の基準が勝敗関係なしらしい。つまりは立ち回りや強さとは別のところを見られるのだろうか。他の受験生の試合を観戦しながら考えていたが、結局答えは出ず、自分の番が来てしまった。とにかく考えてもしょうがない。俺は持てる力を振り絞って全力で戦った。 全ての試合が終わるといよいよ合格者の発表だ。ここで呼ばれれば学園への扉が開かれる。順番に番号が呼ばれていく。バクバクとなる心臓の音に邪魔されながらも耳を澄まして番号を聞き逃さないように集中させる。剣士科の定員は50名。その枠も段々埋まっていく。不安で汗が流れる中、ついに自分の番号が試験官の逞しい声で呼ばれた。思わず”やった“と声を出してしまった。 発表が終わるとその場にはすでに合格者しか残っていない。そしてその後のスケジュールが発表される。なんとも急だが、入校式は3日後。そしてすぐに授業が始まると言うのだ。それまでに準備をしておくようにと言われたが、辺境の村に戻ることなど不可能だ。でも必要な物(衣類や学園で使用する物)は準備してくれるというので特に俺は焦ることはなかった。むしろこんな庶民に準備できるお金もない。3日後の入校式が逆に助かったぐらいだ。そろそろ両親からもらったお金も尽きるしよかった。だが、両親や村の皆んなとしばらく会えなくなるのはやっぱり寂しい。報告もしないとだし、手紙を送ろう。 そして入校式までの説明が終わると、合格者はあの黒い制服をもらって解散となった。 入校式当日。俺は制服に着替えて数日間お世話になった宿に別れを告げる。制服を着ているだけでなんだか気が引き締まる。村に手紙も出したし、帝都の観光も出来た。空いた時間で入校してから遅れを取らないようにトレーニングもした。学園に到着して改めて建物を見ると気持ちが高鳴る。両親のため、俺はこれからどんな事だって頑張れる。高揚した俺は入校式の会場となるグランドへ走った。 グランドに着くとまだ半分ぐらいの生徒しかいなかった。皆、ワクワクとした表情で列をなして入校式が始まるのを待っている。俺も同じ顔をしているのだろう。ここにいるのは庶民で学園には行けないと思って諦めていた人たちだ。そしてそんな中から狭き門をくぐって無償で学園への切符を手にいれることが出来たのだ。皆、制服を触ったり、キョロキョロ校舎を観察したりとソワソワしてしまう。今日ぐらい浮かれてしまうのを許してほしい。 俺が到着してから10分ぐらいだろうか。合格者全員揃ったようで入校式が始まった。 試験では見なかった黒い軍服を着た人が前へと立ち浮かび上がる。その人相は凛としていて鋭い目を俺たちに向ける。がたいがいいのもあって圧が凄い。 「相変わらず恩恵を受けていない者は…」 何か言ったような気がしてよく聞こえなかったが、拡声の魔道具を手に取り話し始めるとその逞しい声が響いた。 「入校おめでとう、庶民の諸君。君たちは選ばれた。それは庶民ながらも優秀なスキルや力、特殊な能力を持っているからだ。折角の力をこのまま無駄にするのは勿体無い。帝国や皇帝陛下のために使ってこそだ。そう思わないか?君たちは選ばれた事を誇っていい。今日という日は人生で最大の幸福だと思うだろう。光栄に思え。今からその低俗な思想や規律を変えてやる」 そう言うと地面が急に怪しく光出し、そこから無数の小さな黒い石が浮かび上がってきた。更にその光のせいか動く事が出来ない。どうにか体を動かそうとしていると浮かび上がった石は俺たち新入生の額目掛けて襲いかかってきた。動けない新入生たちは為す術なくその石で額を撃ち抜かれる。このまま死んでしまうのか。俺の元にも石が飛んできて額を簡単に突き破った。 視界は真っ暗になって死んだかと思ったが意識はある。浮遊感も相まってまるで暗い海を泳いでるかのよう。そんな俺の意識に直接声が流れ込む。 “すべては偉大なる皇帝陛下のために…帝国のためにその身を捧げろ…” 確かに国に仕えるようになればそんな意識を持たないかもしれないが、俺には帝国にそんな献身的な思いはない。 “皇帝陛下の命令は絶対…皇帝陛下に忠誠を…” いや、だから俺には、と思ったところで一気に声が流れ込む。何も考えられずパンクしそうだ。このままだと壊れてしまう。 と思ったのだが、心地がいい。気持ちが良くて全てを受け入れていく。何にも苦では無い。声の言う通りだ。 “すべては偉大なる皇帝陛下のために…帝国のためにその身を捧げろ…” 帝国の王である皇帝陛下は偉大だ。辺境とは言え、帝国の人間なんだからこの身を使ってもらうのは当然だ。 “皇帝陛下の命令は絶対…皇帝陛下に忠誠を…” 皇帝陛下のおっしゃることは絶対だ。正しいに決まっている。死ねと言われれば死ぬし、殺せと言われれば誰であろうと排除しないと。帝国の人間が皇帝陛下に忠誠を誓うのは当然のこと。 皇帝陛下に忠誠を…皇帝陛下に忠誠を…皇帝陛下に忠誠を…皇帝陛下に忠誠を…皇帝陛下に忠誠を…皇帝陛下に忠誠を…皇帝陛下に忠誠を…皇帝陛下に忠誠を…皇帝陛下に忠誠を… 「皇帝陛下に忠誠をっ‼︎」 はっきりと言葉にすると視界が明るくなって俺は目覚めた。拳を胸に当てて敬礼をしている。意識もはっきり、俺の中にはちゃんと帝国兵としての理念がちゃんと身についたようだ。その証拠に俺の胸には額に打ち抜かれたあの黒い石が埋め込まれている。皇帝陛下の奴隷になれた証。見なくても分かる。かすかだが皇帝陛下を感じられる。嬉しくて興奮して勃ってしまう。抑えないと。まだ教官の指示があるまではこのまま動いてはいけない。周りの同志が仕上がるまでは。 全員が完成すると教官の表情がかすかに緩んだ。 「おめでとう。君たちは偉大なる皇帝陛下の従順な下僕となった。これは光栄なことであり、幸運なことだ。さて、そんな君たちに皇帝陛下から更なるプレゼントだ。Sklave an」 教官が何かを唱えると胸の石が怪しく光る。石からドロドロとしたものが這いずって俺の皮膚を覆っていく。だけどそれに不快感はなく、むしろ気持ちイイ。 「あっ、あ…っ♡あっ♡」 思わず声が溢れ、表情が保てない。だらしなく緩んでしまってるだろ。だけどしょうがない。偉大なる皇帝陛下の魔力が俺を包んでいくのだから…♡ 顎先までピッタリと包まれると気持ちイイ時間は終わってしまったがこれはすごい。力が増したようだ。筋力も魔力も上がったのを感じる。そしてよく見ると教官の軍服の下からも俺達と同じ黒くピタッとした服を覗かせている。 「それは忠誠を誓った者に送られる皇帝陛下からの恩恵だ。力や能力がアップし、何も通さぬほどの防御力を備えている。死ぬまで脱ぐことは許されず常に監視はされるが道具であるお前達には関係ないことだ。むしろここまで恩寵を下さる陛下に最上の感謝をすべきだ」 教官のおっしゃる通りだ。素晴らしい。バカな俺はそれ以上の感謝の言葉が出てこない。それは同志も同じようで皆、感無量といった表情だ。 「これで入校式は終了だ。寮に戻り休憩後、授業を始める。2年間しっかりと学び、鍛え、偉大なる皇帝陛下の役に立つ駒となれるように邁進するように」 『はっ!すべては偉大なる皇帝陛下のためにっ!』 偉大なる皇帝陛下の為、帝国の為、この宣誓で改めて俺はこの学園で鍛えて、役に立つ道具に必ずなると誓った。


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