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シカク
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ある組織の復活劇 -3-

「結局またろくに戦えず逃げられちまった」 「そうだな。捕まらないように徹底しているな」 「前までは結構抵抗してめんどくさかったけど、勝てないと理解したらすぐ逃げるのはそれはそれでつまんないな」 「おい、それは不謹慎だろ」 「わりぃ、そういうつもりじゃねぇよ」 俺たちは菊地選手を警察に引き渡してヒーロー達が所属するCP機関の基地へと戻ってきた。機関への報告はイーグルマンにまかせて、俺とオーカマンは休憩タイムだ。このまま何もなければ俺とオーカマンは帰れるだろう。だが、俺にはまだやることがある。メテオスの一員としてやるべき使命が。今も脳内では総帥への賛美の言葉がループしてる。 “総帥は神“ “総帥こそが世界の支配者” “総帥に支配されるのは光栄なこと” “総帥に服従しろ” “総帥に忠誠を” 俺はひたすら心の中で肯定する。だってその通りだからな。肯定すると幸せな気分になって、股間がキュンキュンする。まるで麻薬だ。それと他の男たちがとても美味そうに見えるようになった。特に組織の仲間たちとめちゃくちゃヤリてぇ。菊地選手もヤバかったもんな。それに戦闘員たちが着てたあのスーツ、すげぇカッコよかったし気持ち良さそうだったんだよなぁ。あの制服は総帥への服従の証みたいなものだ。俺も早く任務を終わらして身にまといたいものだ。だが、この基地内ではカメラがいくつもある。基地内で不穏な行動は出来ない。まあ先にスパイ作りから始めるとするかと思ったところで部屋の扉が開いた。 「今日は2人とももう帰宅して大丈夫です。お疲れ様でした」 「しゃぁーお疲れ、先に帰るぜ」 職員がそう言うとオーカマンはヒーロースーツを解除して、変身バングルを職員に渡すとそのまま部屋を出ていった。その背中を見て俺は考える。 オーカマンは俺と同期のヒーローだ。男らしい魅力に溢れた男で、曲がったことが嫌いな性格をしている。だけど口が悪い事や力任せで不器用な面があるせいで何故か世間からは不良っぽい印象が付いて、そこまでヒーローの中での人気はない。性格が顔に出てるのか素顔も整ってはいるが中々のヤンキー顔だ。だが、男性支持は高く仲間思いのため俺も好意的な印象がある。なので今回のターゲットはオーカマンに決めている。コイツをこちらに引き込めば実直に総帥のために働くだろうし、何よりパワーや近接戦闘だけをみればヒーローの中でもトップクラスだ。イーグルマンのような古参のヒーローよりも若く、そして長く組織の為に働ける将来あるヒーローの方が総帥も喜ぶはずだ。イーグルマンも俺たち2人ならきっと倒せる。 でもオーカマンの前にこっちも先にやっとかないと。 俺は伝達に来てくれた職員に声をかける。初めて見る顔だが、最近採用された職員だろうか? 「伝達ありがとうございます。ところで俺とは初めてですよね?最近来た人ですか?」 「敬語は結構ですよ。レオパードマンと私はそんなに歳変わらないと思いますから。あと最近の犯罪組織の動向が過激になってきて地方支部から人手が足りないって最近本部に来たんですよ」 「そうか!よろしく!」 「はい、こちらこそ。レオパードマンといっしょに働けて光栄です」 光栄と言いながらキリッとしたスマートな顔立ちは崩れない。そして性格さえもクール印象だ。よし、コイツにしよう。本部に来れる人間は職員でも優秀な人ばかりだ。人手が足りないからといってそう簡単に来れる所ではない。恐らくこの職員は優秀なのだろう。悩み出したらキリないし、初対面だがこのクールな対応が新鮮で逆に気に入った。 「帰る前に少し付き合ってくれないか?」 「何をですか?」 「ちょっと外の空気に当たりながらコーヒーを飲みたい気分なんだ」 「そういう事ですか。自分もちょうど2人に伝達したら休憩だったので大丈夫ですよ」 了解を得た俺はニヤリと心で笑顔を浮かべながら自販機で2人分のコーヒーを買う。そのまま非常口から踊り場へと出る。基地内にはやはりと言うべきかヒーロー基地の本部なだけあって監視カメラはたくさん付いている。だが、この非常階段の踊り場は緊急時しか使われないためか、カメラは付いているが一部しか普段からは運用されていない。エマージェンシーにならない限り、非常階段にあるカメラ全ての電源は付くことはない。俺はそれを知っている。そして今どこのカメラが付いていないのかも。この踊り場のカメラももちろん映っていない。外に出て手すりにもたれると俺はコーヒーを職員に渡す。 「ありがとうございます。ここよく来るんですか?」 「あぁ、たまにね。風が気持ちよくて落ち着くんだよ」 「たしかに、気持ちいいですね」 「そういえば名前、なんて言うの?」 「失礼しました。藤田航です。これから色々とヒーロー達のお手伝いが出来ればと思います」 「敬語はいいって言ってくれただろ?俺にもそんなにかしこまらなくてもいいよ。これからよろしく」 俺は笑顔を見せてコーヒーを1口飲む。藤田はまたお礼を言う。今度はクールな表情ではなく、少し口元が緩んでいた。 「ありがとうございます。でも敬語は癖みたいなものなので」 「そうか」 会話が終わってしまったのでもうこのまま藤田の額に打ち込もうかと考えていると、俯く藤田の口が開く。 「少し、俺の話聞いてもらっていいですか?」 「遠慮なく話してくれ」 「俺の家、厳しくて良い学校に入って良い所に就職しろってずっと言われてきたんですよ。世間体も凄く気にする親で。それで俺も言われるがままに勉強して、良い高校、良い大学、そして倍率は高くてしんどかったですけど、何とか地方のCP機関の職員になったんです。両親はそれは喜んでくれました。CP機関は悪の組織やテロリスト達と戦う組織。優秀な人が選抜されるし世間体もいいのも当然だし。だけどここで働く職員はヒーローでなくても、みんな気持ちはヒーローと同じで沢山の人を守りたいって、助けたいって思いながら仕事をしてます。支部にいた時も感じてましたけど、本部に来てからは余計に。自分の働きぶりが評価されて本部に移動出来たのは嬉しいですけど、俺はそんな他の人達みたいに高尚な心を持っていないんです。俺はただ、親の言われるがままに…。CP機関でみんなの為に働きたい人はいっぱいいます。なのにこんな気持ちのまま働いていいのかなって…。すいません、初対面でこんな話してしまって」 俺がヒーローだからか、それともたまたま溜まっていた不満がこの環境で漏れてしまったのか。言葉通り初対面の俺によく打ち明けたものだ。だけどこういった理由は優秀なやつによくある話だ。以前の俺なら“大丈夫!藤田が働いてくれるおかげで結果みんなが助かってるから気にするな”みたいな事を言っただろう。だが、今はそんな気休めの言葉より救済してやれる方法がある。洗脳という救いがな。俺はすぐに救ってやろうとコーヒーを置いて銃に手をかける。 「藤田、話してくれてありがとう。その悩み、俺が解決してやるよ」 「解決?どうやって?」 「こうやってだよ」 俺は銃を取り出して藤田の額に狙いを定める。 「なにをっ…!?」 俺は口角を上げて恐らくヒーローらしからぬ表情をしながら、その引き金を引いた。 超音波は藤田の額に見事にヒットした。藤田は仰け反り、そして項垂れる。まるでゾンビのようだ。だが、すぐに頭を上げてその表情を見せる。そしてその表情はクールなままだが、口元を歪ませて清々しいものになっていた。 「総帥の忠誠心を俺の頭に刻んで頂きありがとうございます、レオパードマン」 そう言って藤田は敬礼する。もちろんCP機関の敬礼ではなくメテオスのだ。出力は少し弱めの調整をしたが、まさに秒で救済は完了した。元々ヒーロー用の銃だったので人格破綻の心配はあったが、この様子からして大丈夫だろう。それにしても同士を増やすってこんなに気持ちイイんだな。正義の職員を悪に堕とした瞬間って最高じゃないか。こいつも今じゃ悪の組織のスパイ。そしてちゃんと悪の組織らしく悪い表情を浮かべてる。それを見ると全身が震えて股間が膨らんでしまう。 「たかだかいち職員を洗脳しただけで濡れちゃったんですか?」 そう言って藤田は近付いてくる。そして自分の膨らんだ股間を俺のものへと擦り付けて来る。 「気持ちイイんだから仕方ないだろ?お前も分かってるだろ?最高だな♡」 「はい♡これもレオパードマンのおかげですよ♡」 俺たちは股間を擦り付け、舌を絡ませお互い喜びを分かち合うと誰かに見られる前に普段の適切な距離をとる。 「藤田には悪いが、これからはスパイとしてこのまま本部にいてもらう」 「了解です。その任務、もちろん受けますよ。皆さんと一緒に働けないのは残念ですけど、これで総帥のお役に立てるなら俺は喜んでスパイになりますよ」 そう言ってまた藤田は笑った。


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