翌日。
二乃は昇降口で件の男を発見した。
引き寄せられるようにフラフラと足が男の方へと向き、何と話し掛けるべきか少しの間悩んだ結果、無難な動作、無難な言葉を選択した。
「おはよ」
「あ、あぁ。おはよ……二乃」
下駄箱から上履きを取り出しつつ話し掛け、無難な返答に満足する。
朝からメイクと着替えに時間をかけてしまい姉妹よりも少し遅れての登校だったが、寧ろ運が良かったなどと考えつつ、昨晩から伝える決心をしていた意志を何とか絞り出す。
「放課後、時間ある?」
「……別に用事はないよ」
「そ。な、なら……今日……その……アンタの家に行くわ」
「は?」
「何よ、嫌なの?」
「そういうわけじゃないけど……」
たったこれだけのやり取りで、男は野ねずみのように小さく怯える。
純粋な恐怖ではなく、好奇心と羞恥心がぐにゃりと混じり合った感情を呼吸とともに呑み込んでから、ようやく下駄箱の戸を閉めた。
「なら決定ね」
強引に約束を取り付け、二乃はつま先から柔らかく上履きを履き込み、トントンと音を立ててから軽快に教室へと向かう。
(やった……っ!)
髪のリボンをひらひらと靡かせながら、廊下を早足に進んでいく二乃の姿は、遠目から見ても上機嫌だとわかるような姿だった。
「二乃……?」
そんな姿が視界を横切ったことに気づき、姉妹――五月の心には、不安の影が雨雲のようにゆっくりと広がっていた。
◇
放課後、男の自宅が見えた頃には、周囲に同じ学校の生徒の姿はなかった。
それどころか、周囲の利用できる施設は、来る途中に見かけたコンビニエンスストアくらいだろうか。
学校から徒歩で来ることができる範囲ではあるが、小高い丘の上にあるその場所には、小さくも綺麗な、新築のアパートが建っていた。
備え付けられた駐車場には車が停まっておらず、駐輪場にも自転車は一台も見当たらない。
アパートの部屋数は一階と二階を併せて全部で三部屋。
しかも、一階に二部屋、二階に一部屋という異様な配置の建物だった。
二階の階段に差し掛かる前に確認したところ、一階の扉に取り付けられている郵便受けには、その全てに青い養生テープが貼られている。
「誰も住んでないの?」
「俺が住んでるよ」
「そんなこと分かるわよっ! アンタ以外に、誰も住んでないの?」
生ぬるい空気を貫く言い方に、男の表情が綻ぶ。
「あぁ、俺以外に住んでないよ」
「家族は?」
「一人暮らしなんだ、家から遠くてさ」
二乃にとって、男が一人暮らしということは予想外に嬉しい状況だ。
だが男の返答があまりにも簡素で、人気のない異様な景色と相まって二乃は不気味な息苦しさを感じてしまう。
「へー、なんだか意外だわ」
招かれた部屋の中には、これと言って気になる物は置いていなかった。
遠慮なしに全ての部屋をひと通り見て回った感想としては、『普通』。
男性の家に入ること自体が初めての二乃にとっては、頭の中で思い描いていたイメージよりは綺麗に片付けられているという印象だった。
これからどう仕掛けるのか。
考えてきた作戦をどうやって決行するかとチャンスを伺う。
今日の二乃は本気だ。
この男に、自分を認めさせる。
家に上がり込むことができた時点で、今日で決着をつけることを心に決めている。
そのために、朝から念入りに身支度を整えてきた。
(あとは、一歩踏み出すだけよ……っ)
「ほら」
ベッドと作業机、床にローテーブルが置かれたシンプルな部屋で、意を決してマットレスに腰掛けていた二乃の目の前に、涼し気な音を立てているグラスが置かれた。
二乃がこれから何をしようとしているのか知らない男は、通常の来客と同じようにもてなしている。
無論、”何かしようとしている”ことは気付いているのだが。
「ありがと」
二つ分のグラスの中に注ぎ込まれた麦茶を置いて部屋から男が出ていく。
その隙を見逃さず、二乃は手早くカバンの中から袋入の粉末を取り出した。
慎重に、そして手際よく向かい側のグラスの中に中身を注ぎ込み、数秒で全てが麦色の中に溶けて消える。
ほっと落ち着いた様子で自分のお茶に手を伸ばし、一口飲み込んだところで男が部屋に戻ってくる。
「アンタって実家どこなの、一人暮らしさせてくれるなんてご両親も理解がある方なのね」
「どうだろうな。理解があるかどうかはわからないけど、一人ってのは気が楽だよ」
他愛のない会話を紡ぎ、二乃はその時をじっくりと待っていた。
◇
「ほんっと……単純すぎよっ」
いつの間にか眠りについた男の衣服を剥ぎ取ってから、二乃は身体を火照らせていた。
「まずは……準備しとかないとね」
意識のない男の左側に身体を擦り寄せ、指先でくりくりと乳首を撫で回すと、だらんと倒れていた肉棒がガチガチに反り返る。
「もう固くなってる……」
膝の裏で男性器を挟み込み、ふくらはぎと太腿をぎゅっと締め付けながら、ぷっくりと膨れた乳頭の感触で勃起を確認し、肉棒を扱く足の動きに強弱をつけていく。
「ん……っ」
亀頭が我慢汁でつやつやと輝いてきた頃、朦朧とした男の意識がぼんやりと戻り始めていた。
「あっ……ぅ……ぁッ」
「今頃気づいたってもう遅いわっ」
ニヤリと口角の上がった二乃が、固くなった乳首を静かに激しく愛撫した。
◇
意識を取り戻した男は、ぐったりとしたまま息を荒くしていた。
「はぁ、はぁ……二乃……」
「ほんっと……毎日毎日よく射精できるわねっ。すっごく濃くて……ドロドロじゃない、乳首責められながらちん◯犯されちゃって……そんなに気持ちいいの?」
「あぁ……気持ちいい……」
予想外の返答に、二乃は数瞬沈黙した。
「……変態っ」
少しの間を置かれてからやっと吐き出した罵声の言葉は弱く、動揺を隠すために必死に喉を開いた。
「彼女がいるのに、他の女にレ○プされて感じるなんて……本当にどうしようもないわ!」
言って、二乃はゆっくりと男に跨った。
【Side:S 次女-ゴブンノイチ- つづく】
=======================================
次回:https://www.fanbox.cc/@safumarokichi/posts/2554968
前回:https://www.fanbox.cc/@safumarokichi/posts/2498747
一覧:https://safumarokichi.fanbox.cc/tags/S%26Mゴブンノイチ
=======================================
どじょう
2021-07-25 17:00:22 +0000 UTC