完全な脱衣はしない。
仰向けになったままのマスターの上に跨り、ジャンヌは腰回りの布を僅かに捲くり上げた。
「お、おい」
「だ、黙っていなさい……!」
そのままショーツを横へずらし、陰部を曝け出した。
露わとなったジャンヌのそこから愛液が滴り落ち、マスターの腹部をとろっと滑る。
(もう……我慢できないわ……)
聖処女と呼ばれた彼女にとって、無論このようなことは一度たりともしたことがない。無論、自分から求めることなど過去に一度たりともなかった。
しかし、今はこの肉棒を求めている。
誰でもいいというわけではない。
彼だから、マスターだからこそ、彼女はこのような行動に出た。
「はぁ……はぁ……」
暑い吐息が周囲の空気をむっと上昇させ、呼応するようにマスターの陰茎へと再び血流が流れ込む。
その姿を見ているだけで、ジャンヌ自身も興奮を隠せなくなっていく。
「挿れる……わよ……」
「ジャン……ヌっ」
今まで固く閉ざされていた膣内は、愛液に満たされている。
肉壁が亀頭を、竿を、まるで押しつぶすような力で締め付ける。
愛液によって濡れた狭い穴が肉棒を飲み込むべく、少しずつ下降し、やがて、そこに行き当たった。
ブニっと亀頭の先端が何かに接触する。
「ん……っ」
小さな悲鳴を悟られまいと、ジャンヌは必死に声を喉の奥へと押し込める。
涙を浮かべながら痛みを堪えたジャンヌは、それを殺すべく腰を強引に打ち付けた。
「ぁ……あぁっ!」
声を我慢することなど出来はしない。
身体を突き抜ける異物感が、それを抑え込ませないのだ。
何度も何度も、腰を上下に振り続ける。
繰り返すうちに、痛みは快感へと少しずつ変換され、余裕にも似た気持ちが現れる頃には、いつもの強気なジャンヌが戻ってきていた。
腰をぶつけるジャンヌのピストン。自分の肉棒が出入りする様子を見て、マスターの精神は崩れ落ちようとしている。
しかし、愛液に混じった紅いものを見逃すほど、まだ正気を失ってはいない。
中出し。
愛する男性からされるその行為は、この上ない究極の愛情表現。
たとえそれが初めてであろうと、女性から持ちかけたことであろうと、それを感じるのは彼女自身。
彼女はそれを、最上級の幸福だと感じていた。
(これが……男女の営みなのね……)
中から溢れ出す精液はとどまることを知らず、少しずつ、それでいて確実に膣内から外へと出てきている。
(……うれしい…………の? 私……喜んで……)
素直に、この気持を伝えてしまいたい。
彼に、最愛の人に。
だが彼女は竜の魔女。強くあるために己を捨てた、聖女の果て。
それができれば、どれほど楽になれるのだろうか。
気持ちを、言葉をこらえて、そして、やっとの思いで言葉を紡いだ。
◆
夢を見ていた。
熱く、心地良い夢を。
自室のベッドから起き上がり、はだけた服装をさっと整えてから、ジャンヌは廊下へと足を進めた。
コツ、コツ、とブーツの音が床を叩き、一歩一歩その場所へと近づいていく。
愛する人に抱きしめられ、愛の証をこの上なく受け取ったあの日から、彼女は夢を見ることが多くなった。
それは、決して不快なものではない。他でもない、彼の夢を見ているのだから。
ドアを叩き、返事を待たずに部屋へと足を踏み入れる。
「入るわよ」
「ぁ……あぁ……おはよ……ジャンヌ……」
「まったく……本当にアンタは朝が弱いわね。シャキッとしなさいよ」
「ん……悪い……」
眠たげに目を擦るマスターの身体は、未だ覚醒には程遠い。
ピッタリとくっついた瞼が持ち上がるまで、あと何分かかるだろうか。
「ほんっと……仕方ないマスターだわ」
言って、ジャンヌは枕元に腰掛けてマスタ―の頭をそっと撫でた。
目元と額が見えるよう、長い前髪を横にずらして顔を見つめる。
「マスター」
「……すぅ……」
「……くすっ」
どこまでも幸せそうなその寝顔を見ているだけで、自然と笑みが溢れる。
悟られてはいけない。
このような顔を見られるわけにはいかない。
ゆっくり、釣られるようにジャンヌも瞼が重くなっていく。
起きたばかりの彼女にとって、彼の寝顔は十分すぎるほど睡眠欲を掻き立てる効果があった。
またあの夢に入れるのだと思うと、
――眠るのが少しだけ楽しみになる。
――目が覚めてしまうと、少しだけ寂しくなる。
だが、どちらも彼女にとっては幸福だ。
――寝ても覚めても、彼を感じることができるのだから。
竜の魔女 02 -了-
【おまけ】
以下台詞なし差分です。
お好みでご利用くださいっ。(何に)
寝待月
2019-09-08 14:25:24 +0000 UTC