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闘浴への誘い 上

世間はゴールデンウィーク真っただ中。H県S市の温泉街の一角に構える温泉旅館『笹原の宿』も、他店舗と同じように多くの観光客で賑わっていた。 美肌効果抜群の湯として全国でも知られたこの宿には、ゴールデンウィークに限らず年中多くの女性客が訪れる。しかしその中には、美肌効果など眼中になく、ある目的のために訪れる客もいる。その女性客はみな豊満な乳を持ち、自信にあふれているという。 今年のゴールデンウィークも例年に劣らず多くの客が訪れていた。一人客、友人同士、カップル、家族。その中に紛れ込む、大きな乳を揺らした気の強い女たち。 この女もそのひとりだった。 コンパクトなスーツケースを転がしながら旅館へと入っていく、二十代後半の女。白のシャツに黒のジャケットを合わせ、紺のパンツを履いている。暗いブラウンの長髪を靡かせながら歩くその姿は、ランウェイを歩くモデルを彷彿とさせる。それほどまでにその女の顔立ちは整っていて、スタイルも現実離れしていた。なにより目を引くのが歩くたびに揺れる巨乳であり、巨乳が集まるこの旅館内でも、その存在感は圧倒的だ。 フロントへと到着した女は、受付の従業員に声をかける。 「予約していた宮下(みやした)ですけど」 諸々の手続きをした後、宮下と名乗った女は少し声を落として言った。 「それと、『夜に集まる』の方もよろしく頼むわ」 言われて、従業員の女は宮下の大きく実った胸を見る。シャツの下にある胸は、参加条件のHカップを優に超えていそうだ。 「確認するまでも無いようですが一応、宮下様は何カップでしょうか?」 「Kカップよ」 「・・・・そうでしたか、失礼しました。参加条件を満たしていますので、こちらをどうぞ」 従業員の女はカウンターの下から赤いタオルと取り出すと、それを宮下に渡した。 「これは?」 「参加者の証です。午前0時から30分までに、こちらのタオルを持って『秘密の露天風呂』の方までお越しください。入り口の前に従業員が立っていますので、このタオルをお見せいただけると中に入れます」 「そう。ありがと」 タオルと自室の鍵を受け取った宮下は、カウンターから離れてエレベーターの方へと向かおうとする。だがその背中を従業員の女が呼び止めた。 「宮下様」 「・・・・なに?まだ何かあるの?」 「いえ、手続きは終わりました。・・・・ここからはプライベートな話です」 従業員の女は、不敵な笑みを浮かべて宮下を見つめる。 「・・・・なにかしら」 「この後、私は休憩に入ります。その時に少しお話をしませんか?従業員とお客様ではなく、女と女として」 「・・・・いいわよ。それじゃあ私の部屋に来なさい。待ってるわ」 「はい」 宮下は挑発的な従業員の女の笑みを一瞥し、エレベーターへと向かった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 宮下名月(みやしたなつき)は27歳の女だ。都内在住でフリーのエンジニアで生計を立てている。 宮下のこれまでの人生はトラブル続きだった。おおよそ、一般的な平和な日常とはかけ離れている。それは宮下の整いながらも気の強さを思わせる顔立ちだったり、誰にでも屈しない勝気な性格だったり、大きすぎるぐらいの巨乳が原因だった。 初めて乳を使った喧嘩をしたのが中学3年の時。良いなと思っていた男子には既に彼女がいたが、それを気にせずに男子にちょっかいを出していたところを彼女に見つかってしまったことが原因だった。 心配をかけたくないからと、傷の残る殴り合いの喧嘩ではなく乳を使った闘乳を提案してきた彼女。奇しくも二人の乳の大きさは拮抗していた。宮下はそれを受け入れ、放課後の教室で乳をぶつけ合った。宮下は苦戦しながらも勝利した。 次に闘ったのは、その彼女の姉だった。自分の妹を潰した宮下へと復讐しに来たのだ。2人は何度も失神し記憶を飛ばしながらも闘い、これも何とか宮下が勝利した。 それから宮下は闘乳の虜になった。自分と拮抗する乳を持つ女がいれば、まず先に喧嘩をしたいと思うようになった。様々な人脈や専用のサイトを利用して闘乳相手を探し求めていたが、そんな時、ある噂が宮下へと届いた。 とある旅館にある、深夜にしか開いていない露天風呂では、乳に自信を持つ女が大勢集まって闘乳を繰り広げているらしい。 すぐさまその噂に飛びついた宮下は、ついにそれが「笹原の宿」の『秘密の露天風呂』であることに辿り着いた。 噂は本当だった。全裸の女たちが深夜の露天風呂で密会し、潰し合う。宮下にとってこれ以上の天国は無い。宮下は『秘密の露天風呂』に通うようになった。月に一回、多ければ二回のペースで、「闘浴」を利用するようになった。 これまでにも多くの実力者と出会ってきた。森山涼香、工藤絵梨、園田穂香、他にも大勢いる。大半の乳は潰してきたが、中には潰しきれない強者もいた。上記の三人が特にそうだ。しかし、宮下が来る日に確実に森山、工藤、園田がいるわけではない。時には、手応えのある相手がいない日もあった。それでも宮下は闘浴を続ける。 森山、工藤、園田。この三人に加わる、新たな強敵を探し求めるために。 そんな宮下へと近づいてくる一人の従業員。 それが、新たな強敵との出会いの始まりだった。


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