「ですから! どう見てもあなたの現場の車が原因でしょう!」
「アァ? 知らねえなぁ……ウチの車とは限らねえだろうが!」
コンビニに行った帰り道に、二人の男性の言い争いを見かけた。30代くらいの細身の男性と、50代くらいの角刈りで作業着姿の男性だ。二人の横の家に停めてある車に、盛大に泥が掛かっている。住宅街の奥の空き地で工事をしており、いまも業者の車が通っていった。僕は二人に声を掛けてみた。
「あの、ちょっとお話よろしいですか?」
「あァ? 関係ねえ奴はすっこんでろ!」
角刈りのおじさんが怒鳴り声を上げた。僕はおじさんを宥めつつ──二人に「提案」した。
「ここはひとつ、『お互いの身になる』のはどうですか?」
「あ?」
「はぁ?」
二人の表情が、ぽかんとしたものに変わる。数秒後、ハッと我に返った二人は、お互いの姿を見て驚いた声を上げた。
「お、お、俺がいる!」
「なんなんですか! これは!」
二人の口調が逆転していた。細身の男の方が柄の悪い口調になっているし、角刈りの作業着のおじさんの方が、濁声だけど丁寧な口調になっていた。
「二人の体を入れ替えたんです」
「今すぐ元に戻せ!」
「そ、そうですよ! うわっ! 加齢臭きっつ……」
「アァ? なんだとォ!」
「痛い! 痛いですってば!」
細身の男の方が凄み、作業着のおじさんの襟元を掴んでいる。僕はさらに「提案」してあげた。
「では『新しい体と人生を全て受け入れる』のはどうですか?」
※
「この度は申し訳ありませんでした。他の者にも指導しておきます」
「いいっていいって。俺があんただった頃のことだしよ。そんじゃ俺は、在宅ワークって奴をいっちょやってくるわ」
丁寧な口調になった作業着のおじさんと、ガラの悪い口調になった細身の男が親しげに話していた。よしよし、これで一件落着だ。
(終)
潜水艦「ますらお」は、恋に堕ちていた。
「……んっ……くちゅっ……」
「ぬぷっ……ずちゅっ、ずちゅっ……」
男同士で唾液を交換しあう音が、男根と粘膜が擦れ合う音が──艦内のあちこちから聞こえている。皆が通常業務を放棄していた。さっき海中から聞こえてきたあの音──クジラの歌声のような、もっと違うナニカのような──あの美しい音が、艦を包み込むように響いてからだった。それを聞いた途端、僕たちの心は一色に塗りつぶされた。
恋。皆が、互いのことを好きで好きで好きで──たまらなくなっていた。最初は、皆が穏やかな笑みを浮かべて、きれいな音だなと感嘆し合う程度だったのだが、次第に互いの肩や腰に手を回し──やがて、男同士の接吻やまぐわいに発展するのに、そう時間は掛からなかった。僕も、近くにいた荒川海曹長に衝動的に抱きつき、その口髭を蓄えた唇に舌をねじり込んでいた。
「おいっ……高橋1等海士っ! やめろっ……!」
荒川海曹長が、肩で息をしながら僕を引き剥がした。僕よりも「声」の影響が少ないようだが、彼も明らかに勃起していた。
「これは……明らかな異常事態だ。すぐに浮上し、連絡を取らなければ」
「そんなの……もうどうでもいいじゃないですか」
僕が近寄ると、一瞬、荒川海曹長の目尻が嬉しそうに下がった。彼も、僕に好意を抱いている。その事実に荒川海曹長は狼狽しながら後ずさりした。
「く、来るな! な、なんなんだ!? 俺も……おかしい! なんで、こんな……!?」
「荒川海曹長のこと……大好きですよ。さあ……」
僕はズボンを脱ぎ、屹立した陰茎を荒川海曹長の鼻先に突きつけた。「愛おしい恋人の性器を前にしたような」興奮と歓びが、荒川海曹長の強面を塗りつぶすのがわかった。やがて荒川海曹長が僕のチンポを頬張り、上目遣いに僕を見上げながら、愛情たっぷりのフェラチオを始めた。
(終)
──三日後、あなたのチンポを頂きに参上します チンポ怪盗より
体育教師である五十嵐航平は、三日前に届いたメールのことを忘れていた。なので実際にチンポを盗まれたときも、何が起きたのか理解できなかった。
「っへへへ……隙ありっ!」
「うおっ!?」
水泳の授業を終えて教員用更衣室へと向かっていた五十嵐は、背後から何者かに股間を揉まれて声を上げた。振り返ると、野球部の野島がニヤついて立っていた。
「なんだ、野島か。おどかすなよ」
「だめじゃないっすかー、先生。予告状も出したんだから、もっと警戒しなきゃ」
「ん? なんの話だ?」
「チンポっすよ、チンポ!」
「チン……? はぁっ!?? な、なんだこりゃ!!」
五十嵐の競パンが、ぶかぶかになっていた。自分のチンポと金玉が見当たらない。五十嵐は股間を抑え、続けて競パンの中に手を突っ込んだ。競パンの中には、ただジャングルのような陰毛があるだけだった。
「先生のチンポ、ここっすよ」
いつの間にか野島が、五十嵐のチンポと金玉を右手に持っていた。
「か、返せっ!」
「いいっすよー。ほら!」
「うおおっ!?」
野島が何気ない調子で、五十嵐のチンポを空中に放り投げた。慌ててキャッチする五十嵐。その隙に、野島は五十嵐の競パンの中に何かを素早く滑り込ませた。
「はぅん!」
五十嵐の喉から情けない声が漏れた。五十嵐の股間には、チンポと金玉の感触が蘇っていた──以前よりも、ずいぶん小さい気がするが。
「チンポを交換すると、体も変わるんすよ」
野島が五十嵐のチンポを股間に付けた。芋臭い野島の顔や体が、五十嵐そっくりになっていく。では、自分は? 五十嵐は自身の体が若返り始めるのを感じていた。
「ああ……」
五十嵐の新しい包茎チンポが勃起していた。男子高校生の性欲に耐えかね、五十嵐はそれを弄り始めていた。
(終)
「土屋。入学式が終わったら、その髪は黒に染めてもらうからな」
「は? うっぜ。誰が染めるかよ」
入学式当日。土屋毅志は、金髪に染めたウルフモヒカンの髪を担任に注意されて悪態をついた。担任である益戸は、40代の中年体育教師だが、赤銅色に日焼けした屈強な体躯をしていた。
(つーか、マジでクソだなこの学校)
私立雄堂館高校。全寮制の男子校で、スポーツに非常に力を入れている。手のつけようのない不良も、この学校に入れば「人が変わったように」スポーツに打ち込んで更生するという評判である。そのためこの学校を志望するのは、最初から運動部目当ての生徒か、更生が目的の不良のどちらかであった。
「いや、お前も校長先生の話を聞けば、自分から染めたくなるはずだ」
益戸は意味ありげにそう言った。
※
(はひっ……ひぁっ……な、なんっ、これ、おかしいって……!)
「──であるからして、学生の本分は『スポーツとセックス』であるわけですね」
入学式で校長が喋るたびに、理解不能な感動の波が土屋を襲っていた。頭ではおかしいとわかるのに、感情がぐちゃぐちゃにかき乱され、感動の涙が自然と頬を伝っている。それは他の一年生も同様で、足がふらついたりしゃがみこんでいる生徒もいる。一方、逞しい体格の在校生たちは直立不動のまま、股間を固くしていた。
(俺が、俺じゃなくなっ……んあぁぁ!)
スポーツに打ち込みたい。男同士でセックスをしたい。理解不能な衝動が、土屋の心に植え付けられ、芽生え、根を張っていく。土屋は金髪に染めたウルフモヒカンを、今すぐバリカンで坊主にして、野球部に入部したいと真剣に考えている自分に恐怖し、同時に猛烈に興奮していた。
「それでは皆さん、気持ちの良い学校生活にしましょうね」
校長の話が終わると同時に、全校生徒はオルガスムスに達し、土屋も新しい価値観を受け入れた。
(終)
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お題を元に800字で小説を書いていくチャレンジ。今回は、
「職人とクレーマー」+ 「入れ替わり」
「潜水艦」+「職場恋愛」
「チンポ怪盗」+「変身」
「男子校入学式」+「強制ホモ化」
の4本でした。
800字小説のお題のリクエストは「2つの単語」までOKです。例えば「入れ替わり」+「体育教師と野球部員」なら体育教師と野球部員の入れ替わりになります。
簡易的なリクエストとして、思いついたものがあればコメントしてみてください。リクエストしたいお題は、今まで通り800字小説のコメント欄にどうぞ。
それと、どんなリクエストしたのか他の人に知られたくないときは、どうしたらいいか?という問い合わせも頂きました。その場合は、TwitterのDMやpixivのメッセージでリクエストを下さい。それ以外の通常のリクエストは、今まで通り800字小説のコメント欄にコメントを下さい。
※リクエストする際のお題を「2つの単語」に絞っているのは、複雑な内容を文章でリクエストされても、800字という文字数では対応できないためです。ご了承下さい。
くろねこ@9605
2022-05-06 13:37:01 +0000 UTC思兼
2022-05-06 13:30:18 +0000 UTCくろねこ@9605
2022-05-06 13:13:05 +0000 UTC黒竜Leo
2022-05-05 16:38:14 +0000 UTC