「ンッ! マッスル! ビクトリィィィ!」
ヒーロー、マッスルビクトリーは、戦闘員たちを薙ぎ払うと、勝利の雄叫びを上げた。彼はプロレスラーのような格好のヒーローだ。顔は金色で縁取られた赤色の派手な覆面で包み、上半身は裸で真紅のマントを羽織っている。腰には金色のチャンピオンベルトが輝き、下半身は黒のビキニパンツで黒いリングシューズを履いている。年齢は41歳であるが、褐色に日焼けした肌は筋骨隆々で、見るからに雄臭く逞しい。彼は現金輸送車を強奪した戦闘員たちを追って、人気のない郊外の造成地で仕留めたのだった。
「しかし、妙な手応えだったな」
マッスルビクトリーは首を捻った。戦闘員は一般人を改造して作られるため、体格はバラけているものだが、今回の戦闘員たちは全く同じ体格をしていた。それは打撃の手応えからも伺えた。試しに戦闘員が被っている覆面を数人分剥がしてみると……。
「な、なんだ?! 同じ顔の男が、こんなに……!?」
戦闘員たちの覆面の下は、全く同じ顔の男だった。年齢は二十代くらい。異性愛者のマッスルビクトリーから見ても、やけに顔がハンサムな男に見受けられた。
「それは、平均化したからダ。人間の顔は平均化すると、美しく見エル」
「ムッ! 何者だ!!」
すぐ背後から聞こえた声に、マッスルビクトリー振り返った。背後にいたのは、奇妙な造形の怪人だった。戦闘員と同じくタイツ姿なのだが、頭部に包丁が刺さっており、それを境目にして体の左右でタイツの色が違っていた。マッスルビクトリーから見て右側の全身タイツが赤色で、左側の全身タイツが青色だった。
「シツレイ。ワタシは平均怪人、ネガ・ディバイド。そしてヒーロー、マッスルビクトリー。貴様は既に、ワタシの術中にアル」
「なんだと!? うおっ! なんだこれは!」
マッスルビクトリーの脇腹に、青い色の手形がべっとりと付いていた。一方、怪人の足元で倒れている戦闘員の背中には、赤い手形が付いていた。
「マッスルビクトリー。貴様はこれから、我が組織の尖兵となるノダ。『ディバイド!』」
「うおおっ!?」
怪人が、赤い手のひらと青い手のひらを、胸の前で重ね合わせる。すると、マッスルビクトリーの体と、戦闘員の体がふわりと浮かび上がり、勢いよく激突した。
※
「いでで……」
戦闘員と激突した次の瞬間、マッスルビクトリーは地面に投げ出されていた。全身に急に痛みが走った。それほどまでに、激しい衝突だったのだろうか? 起き上がったマッスルビクトリーは、傍らに奇妙な格好の男がいるのに気がついた。
「な、何だお前は!」
「お前こそ、何だ!」
目の前にいる男は、マッスルビクトリーとよく似た格好をしていた。だが、金色と赤色のレスラー風の覆面は、ちょうど顔の左半分が戦闘員の黒い覆面になっている。真紅のマントは半分ほど短くなっており、チャンピオンベルトは半分ほど黒く濁った色合いに変わっていた。ビキニパンツは穿いているが、下に黒い全身タイツを着ている。しかし、タイツが覆っているのは、体の左半分だけだった。
「ワタシの能力は『平均化』。マッスルビクトリーと戦闘員を足して、それを平均化したノダ」
「「なにぃぃっ!?」」
二人のマッスルビクトリーの声が重なった。マッスルビクトリーは己の姿を見た。目の前のもうひとりのマッスルビクトリーと同様、体の半分だけが戦闘員のタイツで覆われている。それに、体も変化していた。褐色に日焼けしていた肌の色が薄くなっているし、ゴリマッチョだった体格が、身長も体の厚みも、筋肉質ではあるがやや小ぶりになっていた。
「立て。そして気をつけッ!」
「「いッ!?」」
二人のマッスルビクトリーは、怪人の命令に従い、立ち上がった。そのまま無防備に怪人の前で立ち尽くしてしまう。怪人は二人のマッスルビクトリーのマスクに手を掛け、剥ぎ取った。
「貴様らの半分は戦闘員だからナ……ワタシの命令にも従ってしまうノダ。見ろ、顔も変わっているだロウ!」
「くっ……」
二人のマッスルビクトリーの顔も、本来の顔から変化していた。41歳だったはずののマッスルビクトリーだが、今の顔立ちは先ほどの戦闘員と平均化されており、30歳前後にしか見えない。先ほどの戦闘員の、平均化された成人男性の整った顔立ち……に、マッスルビクトリーの暑苦しい目鼻立ちの面影が加わっている。マッスルビクトリーの弟と言えば通りそうなぐらいの容姿だった。
「これから貴様らに、戦闘員を足して平均化シテいく。人格を希釈して、身も心も我が組織の一員となってもらオウ」
「そんなこと……ッ!」
「……させるかあっ!」
「なにッ!?」
二人のマッスルビクトリーが、怪人の命令に背いて動いた。普段よりも動きにキレがない。圧倒的な強さを誇るヒーローに、力の劣る戦闘員を足して平均化したのだから、それは当然だった。ただ、それは肉体面の話。
「何も考えず、命令に従うだけの戦闘員と……」
「ヒーローの精神力が……」
「「同じ強さなわけ、ねえだろうが!」」
「いくぞッ!」
「応ッ!」
肉体のスペックでは弱体化していても、ヒーローの強靭な精神と、ただ命令に従うだけの戦闘員の精神とでは、ヒーローの精神が圧倒的に強かった。マッスルビクトリーは「怪人の命令に従わねばならない」という義務感を覚えつつも、それをヒーローの強靭な精神で捻じ伏せ、怪人ネガ・ディバイドとの戦闘を開始した。一人が正面から怪人に攻撃を仕掛けつつ、もう一人が怪人の死角へと回り込む。元は同じヒーローであり、その連携は息が合ったものだった。肉体面で弱体化しているとはいえ、これには怪人も焦りの色を隠せなかった。
「くっ……マテ! 止めろ! オゴッ!」
回し蹴りが怪人の体幹を崩す。ズドンと強烈な一撃が怪人の腹に入る。二人のマッスルビクトリーの攻撃が止まらない。怪人ネガ・ディバイドは息も絶え絶えに、地に倒れた。
「か、勝てナイ…………!」
「どうだ。観念したら、俺たちを元に戻すんだな」
「おい! アイツ、何かする気だ!」
いつの間にか、青い手形がマッスルビクトリーの片方の腹に付いていた。近くに倒れている戦闘員には、赤い手形が付いていた。怪人が再び手を合わせた。手形を付けられたマッスルビクトリーと戦闘員の体が浮かび上がり、激突する。
「うおおっ!?」
※
「おっ、おい……大丈夫か!?」
無事だった方のマッスルビクトリーは、手形を付けられたマッスルビクトリーに呼びかけた。むくりと、手形を付けられたマッスルビクトリーが立ち上がった。再び戦闘員と融合し、分離したことで……二人に増えた姿で。
「おっおっ、おぉう……」
さらにもう一度、戦闘員と融合して分離したことで、格好もより戦闘員に近づいていた。真紅のマントはだいぶ短くなっている。体のほとんどは戦闘員用の黒い全身タイツに覆われているが、右胸だけがはだけて素肌が見えていた。チャンピオンベルトは残っているが、大半が黒く濁った色合いに変わり、金色に輝いている部分はわずかだった。ビキニパンツも全身タイツの上から穿いているが、かなり際どい細さになっている。一回目の平均化で作られた覆面は外した状態で、二回目の平均化をされたため、今は右目の辺りだけが欠けている戦闘員用の覆面を被った状態だった。怪人ネガ・ディバイドが、勝ち誇りながら立ち上がった。
「ククク……これで形勢逆転ダナ。いかにヒーローの精神が強靭とはいえ、さらに戦闘員を足して薄めてしまえばイイ。さあ、ヒーロー戦闘員マッスルビクトリーよ。残った一人を捕らえるノダ!」
「おほうっ! め、命令ッ……! 畜生ッ!」
「たまらん! たまらんぞおッ! イーッ!」
怪人からの命令。それに抗っていたヒーローの精神は、さらに戦闘員を継ぎ足されて分割されたことで、もはや抵抗する力を失っていた。二人のヒーロー戦闘員が、残り一人のマッスルビクトリーに襲いかかる。
「おい! しっかりしろ! 俺たちはヒーローだろうが! やめろ! やめろッ!」
先ほどと形勢が逆転する。呼吸のあった連携で、マッスルビクトリーを追い詰めていく、二人のヒーロー戦闘員。防戦一方の残ったマッスルビクトリーの尻が、ぞわりと撫でられた。
「……ッ!」
「これで、貴様もワタシの手駒ダ」
マッスルビクトリーの尻には、青い手形が付いていた。勝ち誇った怪人が、再び両手を重ね合わせた。
※
ヒーローに敗北はない。マッスルビクトリーは勝利した。恒例の勝利ポーズ。両腕に力瘤を作り、勝鬨を上げる。
「マッスルゥゥゥ……ビクトリィィィィィ!!!」
勃起したチンポが、ヒクヒクと痙攣する。戦闘員の覆面の下で、でれっとマッスルビクトリーの顔が緩んだ。やや濃い目の顔だが、ほとんどマッスルビクトリーの面影はない。かろうじて、目つきにその名残があるだろうか。
「おっ、おほうっ! キタキタキタァ!!」
金玉がせりあがる。多幸感が脳を染め上げる。ヒーローに敗北はない。単にマッスルビクトリーは陣営を変え、悪の組織側に寝返っただけなのだから。これは敗北ではなく、勝利だ──平均化を重ねられ、20人以上の戦闘員にされてしまい、一人あたり人格の5%程度しか残っていないマッスルビクトリーは、そう認識していた。5%程度であっても、ヒーローの人格は戦闘員の脳にしつこくこびりついていた。しかし、脳みその大半が戦闘員と化し、倫理観が大幅に低下したヒーローの精神は、改造の過程で性欲を増強された戦闘員の肉体で淫蕩に耽っていた。
もはや外見は完全に戦闘員そのものだった。戦闘員の黒い全身タイツに、白い紋様が入っている。しかし、数日前まではヒーローだったという自覚は残っており、それがヒーロー戦闘員、マッスルビクトリーたちを興奮させていた。悪の組織の基地内では、鏡の前でポージング射精する者や、二人で抱き合ってチンポを擦り付け合う者、さらにはアナルセックスをする者たちがいた。およそヒーローとは思えない、下品な男たちの淫行が日々繰り広げられていた。
「おうっ! みんな元気にしているか? 俺だ。マッスルビクトリーだ。怪人さまの能力で戦闘員にされちまったせいで、顔も声も変わっているが、マッスルビクトリーだ。ほら、目元の辺りに少し名残があろうだろう?」
組織の方針で、世界中に動画をライブ配信している個体がいた。おもむろに戦闘員の覆面を外し、わずかにマッスルビクトリーの面影が残る顔で腕組みをすると、笑顔を浮かべた。
「ヒーローから一介の戦闘員へと転職したが、なかなかにやりがいがあって楽しいぞ。ヒーローの諸君! くだらんヒーローなんぞ辞めて、おまえたちも来い。俺と身も心もひとつになって、共に世界征服のために働こう! 市民の皆さまも、無駄な抵抗はやめて、我が組織の世界征服を受け入れよう! ンッ……は、話してたら、興奮してチンポが……おっ、おほっ! チンポ! チンポチンポッ! こないだまで、ヒーローだったのにッ! 破廉恥すぎるぞッ! おうっ!」
戦闘員の人格のせいで、インタビュー中であってもオナニーが我慢できなくなったマッスルビクトリーは、全身タイツの上からチンポを弄り始めた。しかし、「組織に逆らったヒーローの末路を世界に晒せ」という命令を遵守する戦闘員の人格と、ヒーローの責任感が組み合わさり、オナニーしながらも戦闘員になった素晴らしさを訴え続ける。
「うおっ! うおっ! 戦闘員最高ッ! ヒーロー戦闘員マッスルビクトリー、これより射精しますッ! ぬおおッ!! イッイッ! イィィィーッッ!!!」
興奮したマッスルビクトリーが、片手を上げて戦闘員の敬礼ポーズを取る。戦闘員の全身タイツの股間の膨らみを、カメラに見せつけるようにピシリと屹立した。ビクビクビクッと体が痙攣し、全身タイツの股間から粘り気のある液体が垂れていく。その顔はデレッと情けなく緩み、もはやヒーローとしての誇りもない。ただ単に以前はヒーローだったという自覚のみを残した戦闘員は、世界中に痴態を垂れ流した。
(終)
──────────
というわけで、今回はヒーローと戦闘員の平均化でした。以前作業通話中に、フォロワーのえむとささんから頂いたネタです。えむとささん、ありがとうございます。
他のヒーローや、一般人も混ざったらどうなる? とかの別バージョンも色々思いついたので、いずれ書いてみたいですね。
くろねこ@9605
2022-02-12 17:32:48 +0000 UTCフジトモ
2022-02-11 03:02:57 +0000 UTCくろねこ@9605
2022-02-04 06:40:11 +0000 UTCmtosak
2022-02-03 18:46:58 +0000 UTCくろねこ@9605
2022-02-02 18:18:28 +0000 UTC黒竜Leo
2022-02-02 17:05:15 +0000 UTCくろねこ@9605
2022-02-02 16:10:50 +0000 UTCブウ
2022-02-02 15:38:28 +0000 UTC