NokiMo
くろねこ@9605
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【全体公開】【無料サンプル】段階的ハイグレ洗脳〜中年オヤジヒーローからハイグレヒーローへ、そしてハイグレ人間へ〜

「おい、誰か応答しろ。おい!」


 東京都上空。侵略者の宇宙船の出入り口の一つを、ヒーロー、インパクトタイガーは制圧していた。彼は無線に呼びかけたが、返ってくるのは「ハイグレ! ハイグレ!」という声だけだった。ついさっきまで、共にハイグレ魔王打倒を誓っていた他のヒーローたちが、任務を放棄し、一心不乱にハイグレと叫び続けている。それはつまり。


「潜入に成功したのは、俺だけってことか……」


 数日前に突如として宇宙船に乗って都内に現れたのは、ハイグレ魔王と名乗る存在だった。それは空飛ぶオマルに乗ったパンスト兵を都内に進軍させ、ハイグレ光線銃を使った侵略活動を始めた。恐るべきこの侵略兵器は、民間人であろうとヒーローだろうと、一発でも当たると「ハイグレ人間」と呼ばれる存在に変えてしまう。ハイグレ人間にされた人間は、ハイレグ水着を着用し、がに股になって、股間の前で両手でVの字を作るハイグレポーズをしながら「ハイグレ! ハイグレ!」と叫ぶだけの変態になり果ててしまうのだ。


 これまで、どれだけの仲間が、ハイグレ人間にされてしまったことか……ヒーローとしての尊厳を踏みにじられ、下品なハイグレポーズを喜んで行うようにされたヒーローたちの姿を思うと、インパクトタイガーの厳つい眼に涙がにじんだ。眼下に広がる都内は、既に都市機能が麻痺している。色とりどりの点が路上に見えた。ハイグレ人間に変えられ、カラフルなハイレグ水着を着た人間たちだ。あの無数の点の中に、仲間のヒーローたちもいるのだろう。


「なら、俺だけでハイグレ魔王をぶちのめすまでだ」


 インパクトタイガーは低い声で呟くと、ハイグレ魔王の宇宙船の奥へと進み始めた。


 だが、インパクトタイガーは知るよしもなかった。ハイグレ洗脳を行う手段はハイグレ光線銃のみに留まらないことを。この宇宙船それ自体の防衛機構として「侵入した人間を段階的にハイグレ人間へと改造する」機能が備わっていたことを……。


「んっ……」


 インパクトタイガーは頭痛を覚え、軽くこめかみを押さえた。それは、彼の脳みそがハイグレ人間になり始めた兆しだった。



 インパクトタイガー、本名は虎岩雄一郎。年齢は46歳。ヒーロー本部立ち上げの頃からの古参ヒーローの一人。ヒーロースウツの色は黄色地で、黒いラインが入っている。日に焼けた浅黒い肌と、白髪交じりの無精髭を生やした、ちょいワルオヤジ風の厳ついヒーローだ。既婚者で、妻と中学生の娘が一人。最近、娘から洗濯物はパパと別にしてねと言われたことに密かにショックを受けている、ヒーローである以外はどこにでもいる父親でもあった。


 未知の宇宙船の中を、インパクトタイガーは足音を忍ばせて進んでいく。白を基調とした船内は、いかなる機構で飛んでいるのか、静かなものだった。ここに来るまでに使ったヒーロー用のジェットパックの方がよほど大きな音だった。


 船内には見張りもほとんどいない。どうしても戦闘が避けられないときだけ、インパクトタイガーはパンスト兵を倒していた。敵のハイグレ交戦銃は厄介だ。たった一発でも当たれば、インパクトタイガーも敵の下僕へと転向し、ハイグレハイグレと下品なポーズを繰り返す変態になってしまう。


(──スタン・インパクト)


 通路を曲がってきたパンスト兵の胸を、待ち受けていたインパクトタイガーが軽く押した。ただそれだけで、ぐらりとパンスト兵の体が床に崩れ落ちる。それを冷徹な眼で見下ろすインパクトタイガー。彼のヒーローとしての能力は「衝撃」の方向も威力も自在に増減する。そのため、軽く胸を押しただけであっても、脳震盪に至らせるほどに増加した衝撃が、方向を変えて頭部へと伝わり、静かにパンスト兵の意識を刈り取った。タイガー自身の足音も、床との衝撃を減らすことで消音しており、派手なヒーロースウツの外見に反して、意外と静かな足取りになっていた。それは獲物を狩る虎さながらの歩みである。


(さて……どうしたものかな)


 インパクトタイガーは思案した。ハイグレ魔王の打倒が第一目標とはいえ、他のヒーローが全滅した現状では、それも厳しい可能性がある。第二目標としては、この宇宙船それ自体の撃墜だ。もちろん、都心に落とすわけにはいかないので、東京湾に落とす必要があるのだが……。ハイグレ魔王を打倒するのと、操縦室ないし動力室を制圧するのと、どちらが容易だろうか?


(最悪、俺の最大威力の「衝撃」で、外側からこの宇宙船を叩くのもアリだが……さすがにここまでデカい代物を相手にしたことはないし、東京湾まで吹き飛ばせるかわからんな……)


 インパクトタイガーが次の行動を思案する間に、宇宙船の防衛機構は密やかに、彼の記憶の置換を実行していた。まずはハイグレ洗脳への抵抗感を少なくするため、過去の性的な興奮がハイレグ水着と結びつけられ、上書きされていく。具体的には、虎岩雄一郎の精通は中学一年生のときで、担任の女性教師の裸体を想像しながら行ったオナニーだったのだが、その記憶が「担任の女性教師がハイレグ水着を着た姿」をおかずにしたオナニーだったと置換された。そこを基点にして、虎岩が行ってきたオナニー、そして女性とのセックスに、ハイレグ水着が関連づけられていく。


 虎岩が普段おかずにするのは「ハイレグ水着を着た女性」であり、女性とのセックスの際も「ハイレグ水着を着た女性とのセックスを好んで行っていた」と、過去の性的な記憶がじわじわと置換されていく。妻とのセックスも、ハイレグ水着を着た妻を組み伏せ、ハイレグ水着の隙間から男根を膣内に挿入したと、記憶が置換された。


「くそっ、こっちも行き止まりか……」


 自身の脳内でハイグレ洗脳が進行しているとは夢にも思っていないインパクトタイガー。既に彼は「ハイレグ水着フェチの異性愛者」になっていたが、本人はそれに気付いていなかった。窓付きの大きな扉を見つけ、そっと中を伺うインパクトタイガー。中には数人のパンスト兵がおり、幾枚も壁に設置してあるモニターを熱心に眺めていた。どうやら地上波のテレビを受信しているらしい。洗脳されたリポーターがハイグレの素晴らしさを讃えている番組や、路上でひたすらハイグレポーズを取る人々を映している番組があった。


(んおっ……エロいじゃねえか……)


 真っ赤なハイレグ水着を着た若い女性の姿が、モニターに映った。それを見た精悍なヒーローの鼻の下が伸びる。彼の視線はハイレグ水着を着た若い女の姿を次々に追っていた。時折、むさ苦しい男がハイレグ水着を着ている姿も視界に入ったが、虎岩は同性には性的関心がない。そういった男のハイレグ姿には眉をしかめつつ、女のハイレグ姿に鼻息を荒くした。


(あぁ……たまんねぇなぁ)


 「ハイレグ水着フェチの異性愛者」になった虎岩雄一郎にとって、この映像は極上のおかずだった。小鼻が広がり、厳つい顔が締まりなく緩んでいく。肩で息をしながら、股間をぐにぐにと揉もうとして、ヒーロースウツの金的が邪魔になり、我に返った。


(いかんいかん。何をやってるんだ、俺は)


 ハイグレ洗脳された女性をおかずに、ハイグレ魔王の宇宙船でオナニーに及ぼうとしていた、というヒーローにあるまじき姿に、インパクトタイガーの眉間に皺が寄る。何かがおかしい。違和感が脳内のどこかで燻っている。しかし……。


(いや、昔っから俺は、ハイレグ水着が大好きだったもんなぁ。さすがにハイグレ洗脳っつうのはどうかと思うが……まあ、エロいもんはエロいよなぁ)


 ぐひっ、と荒い鼻息を漏らすインパクトタイガー。彼もヒーローである以前に男であり、自分のハイレグフェチが存分に満たされるこの状況を、密かに喜び始めていた。しかし、ヒーローとしてハイグレ魔王の地球侵略を肯定することは、到底出来ない。虎をイメージした黄色と黒のヒーロースウツの内側では、性欲と理性と筋肉が張りつめていた。彼は名残惜しさを感じながらモニターから視線を外し、静かにその場を後にした。



「ハイグレ! 報告致します。船内に侵入者一名。ヒーロー名、インパクトタイガーの可能性大。ハイグレ!」


「報告ごくろうさま。オート・ハイグレフィールドの動作状況は?」


「ハイグレ! 正常に動作しております」


「いいわ。今回はオート・ハイグレフィールドの貴重な実地試験としましょう。侵入者との戦闘は禁止。隔壁を作動させて、なるべく遠回りさせながら玉座まで誘導してちょうだい。動力室に入り込まれると厄介だから、そちらには近づけないようにね」


「ハイグレ! 了解致しました!」


「うふふ。インパクトタイガー……楽しみだわぁ。お堅い果実ほど、熟れたときに甘くなって、舌の上でとろけて、たまらないのよねぇ……」



「くそっ。完全に迷ったな……」


 自身が誘導されているとも知らず、インパクトタイガーは宇宙船の内部をさまよっていた。隔壁が降りて行き止まりになっている箇所があり、何度か来た道を戻った。先ほどのように窓がある扉もあれば、ない扉もあった。だが、全ての扉には取っ手がなく、押しても引いても開くことはなかった。どこかで内部構造の情報を得たいのだが……。そんなさなか、インパクトタイガーは曲がり角の先に、パンスト兵の背中を見つけた。


(おっと)


 身を隠し、息を潜めるインパクトタイガー。パンスト兵は扉の前に立つと「ハイグレ!」とハイグレポーズを行った。すると扉が音もなく開き、パンスト兵は中に消えていった。


(なるほど。例のハイグレポーズをすると扉が開く……のか?)


 インパクトタイガーはすぐさま察したが、いざ自分がそれをやるとなると、猛烈に恥ずかしかった。しかも、そうやってハイグレポーズをして開けた先の部屋に敵がいたら、無防備な姿を晒すことになる。


(どこか、試せそうな部屋は……おっ、ここはどうだ?)


 二つ先の扉には窓があり、室内は暗かった。ここならば、無人なのではないか。インパクトタイガーは、厳つい顔を恥じらいで染め、がに股になると、白い手袋を着けた両手を股ぐらに添え、Vの字を作った。そして、勢いよく両手を斜めに往復させた。


「は、ハイグレっ!」


 きゅん、とチンポの芯が熱くなる。既に無意識下でハイグレ洗脳が進行しつつあるインパクトタイガーにとって、ハイグレポーズそのものの意味合いが変化していた。これはとても……エロい仕草だと。


(おほぉっ! 俺は、なんつう破廉恥なポーズをしてるんだぁっ!)


 ヒーロースウツの金的の内側で、半勃ちになった太いチンポがビクビクと痙攣した。実際にハイグレポーズをしたことで、さらにインパクトタイガーの洗脳がじわりと進んだ。ハイレグフェチがさらに濃くなり、ハイレグ水着を着た男にも、性的に興奮するようになっていく。彼の記憶もさらに置換が進んでいく。以前たまたまネットで見かけた、ハイレグ水着を着た太鼓腹の中年男の写真。虎岩はそれを気色悪いと眉をしかめ、すぐさま他のページへと飛んだのだが、置換されたあとの記憶では、虎岩はハイレグ水着を着た中年男に欲情し、ハアハアと息を荒げながらズボンと下着をずり降ろし、うおっうおっと雄叫びを上げながらオナニーに耽ったと、記憶が変化していた。


 そのとき、曲がり角の向こうから、足音が響いてきた。ハイグレポーズをしたにも関わらず、扉が開く気配はない。


(な、なんだ? 手の角度が悪いのか?)


「ハイグレッ! ハイグレっ!」


 滑稽なハイグレポーズを繰り返すインパクトタイガー。そのたびに、彼の脳みそはハイグレ人間へと近づいていく。


「ハイグレ、ハイグレッ! んおっ!」


 足音が迫ってくる。慌てて何度もハイグレポーズを繰り返すインパクトタイガー。すると、ぱちんと頭の中で泡がはじけるように、唐突に思考がクリアになった。自分の体を見下ろすインパクトタイガー。


「なんだよ……そういうことか。つまり、この格好がマズいんだな?」


 にやりと不敵な笑みを浮かべるインパクトタイガー。彼は理解した。この扉を開けるには、ハイグレポーズだけでは足りない。もう一つ、必要なものは……。


「ハイグレッ!」


 インパクトタイガーが自分の意志でヒーロースウツをハイレグ水着の形に変化させるのと、曲がり角をパンスト兵が曲がってくるのはほぼ同時だった。


 パンスト兵の視界に入ったのは、虎柄の派手なハイレグ水着を着た、逞しい中年男の姿だった。白いブーツを履いた、丸太のような両足は毛むくじゃらで、処理していない陰毛が股間からはみ出している。チンポは完全に勃起を遂げ、(金的も変身解除したため)雁首の形までわかるほどに浮かび上がっている。白い手袋が股間で卑猥にVラインを作っている。角張った尻が、発達した後背筋が、後ろ姿だけでもこの男が変態だと示している。胸板は分厚く、胸毛が密生しており、胸元からはみ出していた。ツーブロックの男臭い髪型と、彫りの深い男性的な顔立ちと無精髭が、ちょい悪オヤジ風であったが、その男の色香のある顔は、ハイグレポーズの興奮にデレっと緩んでいた。


「……」


 背後をパンスト兵が無言で通り過ぎていく。それも当然だ。ヒーローがこんなにも変態的なハイグレポーズをするわけがない。とはいえ実際には、ハイグレ魔王からの指令でヒーローとの戦闘を禁じられていたからだったのだが。インパクトタイガーは何気ない様子を装い、部屋の中に入った。自動で電気が点く。中には書類棚がいくつか並んでいた。棚の影に入り、扉が閉まると、大きく息を吐いた。


「あ、危なかったぜ……しっかし、最初からこうすりゃよかったな」


 インパクトタイガーは、ハイレグ水着を着用した自身の男臭い姿を見下ろした。ハイグレ洗脳は先ほどのハイグレポーズでさらに進行し、彼自身の価値観にまで及んでいた。


「この股間のもっこり……」


 毛深い指で勃起したハイレグ水着の股間を撫で回すインパクトタイガー。おほっ!と気持ちよさそうな声を漏らし、切なげに眼を細める。


「エロくて……最ッ高に格好いいじゃねえかぁっ!」


 ぐひっ、と下品な笑みが顔に浮かんだ。ハイグレは素晴らしい。ハイグレはエロチックだ。ハイレグ水着を盛り上げる男根の膨らみの、なんと雄々しく、逞しいことか。ハイレグ水着に食い込む女陰の、なんと女々しく、美しいことか。インパクトタイガーの価値観は、ハイレグフェチを超えて、偏愛的な領域に至ろうとしていた。


「おっし! この格好の方が、潜入活動にはもってこいだな。あとはこう……もうちっと、ハイグレポーズを練習しとかねえと、怪しまれちまう。これも潜入活動に必要なことだから……しょうがねえよなぁ?」


 鼻息を荒げて、しょうがないと繰り返しながら、インパクトタイガーはがに股になった。当初の目的であった船内の構造を調べることも忘れ、変態化しつつあるヒーローは、無人の部屋で叫んだ。


「ハイグレ! ハイグレッ! んおーっ! 効く効くっ! ハイグレ! ハイグレッ!」



「あら? ずいぶん遅かったわね。ようやくヒーローのお出ましかしら?」


「ああ。覚悟するんだな」


 玉座に座る、仮面を被った男……ハイグレ魔王が、のしのしと歩いてきた筋骨隆々のヒーローを見やった。仮面の下で、ほくそ笑みながらハイグレ魔王が問う。


「お名前を聞かせて頂けるかしら?」


「おう。俺はハイグレヒーロー、ハイグレタイガー! 地球のハイグレは俺が守る! ハイグレッ! ハイグレぇッ!」


 虎柄のハイレグ水着を着た、毛深く逞しいヒーローが、野太い声で吠えながらがに股になり、ハイグレポーズを取った。既に何度も射精しているのか、股ぐらにはべっとりと精液染みの跡がある。


 無人の部屋でハイグレポーズの練習を始めたインパクトタイガーが、ハイグレポーズの虜となるのにそう時間は掛からなかった。ハイグレポーズのもたらす快感から抜け出すことが出来なくなり、およそ一時間にもわたって続けたハイグレポーズによって、記憶の置換はさらに進んでしまった。「元々ヒーロースウツの形状はハイレグ水着型だった」ということに記憶が改変されてしまったのだ。


 さらにヒーローとしてのアイデンティティも変質していた。己は「ハイグレの素晴らしさを市民に伝える、ハイグレヒーロー」であり、それに伴ってヒーロー名も、インパクトタイガーではなく「ハイグレタイガー」であったと、本人は思い込んでいた。


「ハイグレッ! ハイグレッ! んほぉっ! ハイグレたまらんぞぉっ! 食い込み最高っ! どうだ! ハイグレ魔王! これが地球のヒーローのハイグレだぁっ! ハイグレッ!」


 背筋を走る快感に喘ぎながらハイグレポーズをするハイグレタイガー。もはや、ほとんどその信念はハイグレ人間と大差ない。唯一違うのは、ハイグレ魔王への忠誠心の有無である。ハイグレタイガーはひとしきりハイグレポーズを取り終えると、今度は角張った尻をぷりっぷりっといやらしく振りながら、ハイグレ魔王へと近づいた。「ハイグレヒーローたる者、ハイグレの魅力をいついかなる時も伝えねばならない」……ヒーローとしての信念が変態化したことで、ハイグレタイガーは本気でそう信じていた。


(おほぉっ! な、なんて格好よすぎるんだぁっ! 地球のハイグレを賭けて、ハイグレ魔王と対峙する俺の晴れ姿……保奈美にも見せたかったぜ)


 そして、こんなにも格好いい父親の姿を娘の保奈美にも見て貰えれば、思春期になって自分を避け始めた娘も、父親を見直すに違いない……と想像し、ハイグレタイガーは鼻息を荒くした。実際に娘が今のハイグレタイガーを見たとしたら、虎柄のハイレグ水着を喜色満面に着こなし、ハイグレポーズで射精する己の父親の姿に、絶縁を決意することは確実なのだが、既にハイグレ一色で塗りつぶされたハイグレタイガーの脳みそでは、そんな可能性など想像することが出来なくなっていた。


(こんなにも素晴らしいハイグレを、地球侵略に使うハイグレ魔王……断じて許せん!)


「なるほど……こういう仕上がりになるのね。大変興味深いわ」


「ハイグレッ! ハイグレッ! どうした、ハイグレ魔王! 掛かってこないなら、こっちから行くぞ!」


「あら、早漏な男は嫌われるわよ。じっくりと楽しみましょう?」


 ハイグレ魔王は玉座から立ち上がり、ハイグレタイガーの元へと近づいていった。緊張感に顔をこわばらせるハイグレタイガー。しかし、その間もハイグレタイガーがハイグレポーズを中断することはなかった。


「もう、こんなにも熟れきっちゃって……」


「んおっ!」


 ハイグレ魔王は、ハイグレポーズを続けるハイグレタイガーの金玉を、右手でぐりぐりと揉み始めた。その感触にハイグレタイガーは眼を細める。その間も、ハイグレタイガーの両腕は、忙しなくハイグレポーズを続けていた。


「おっ、おいやめろ! ハイグレッ! ハイグレッ! んひぃっ!」


「ねえ、本当にあなたは疑問に思っていないのかしら。なぜ地球のヒーローであるあなたが、ハイレグ水着を着て、ハイグレポーズをしているの? それじゃあまるで、アタシの配下のハイグレ人間と、まるっきり同じではないかしら?」


 洗脳の強度を確かめるため、ハイグレ魔王が挑発的に問いかける。するとハイグレタイガーは、ムッと不快感を覚えながら口を開いた。


「ハイグレッ! 俺は元々、ハイグレの魅力を広めるためのハイグレヒーローだ。おまえらが来るずっと前から、俺はハイグレポーズでヒーロー活動をしてきたんだぞ。ハイグレッ! おまえらの方が、俺のまねしてるんだろうが。ハイグレッ!」


「なるほど……ハイグレがそうとう強固に脳に根付いているみたいね。上出来だわ」


 ハイグレ魔王は感心したように呟くと、ハイグレタイガーの股間から手を離した。そして、ハイグレタイガーに宣戦布告をした。


「ハイグレタイガー、これからアタシと勝負をしましょう。互いのハイグレポーズの美しさを競い合う、ハイグレ一騎打ちよ」


「なんだと? ハイグレッ! 詳しく聞かせてもらおうか。ハイグレッ!」 


「簡単なことよ。互いに渾身のハイグレポーズを行えば、自ずとハイグレの『格』は明らかになるわ。アタシたち二人は選手であると同時に審査員でもある。互いにハイグレポーズを行って、相手に負けたと思えば、相手の言うことに従う。負けたと思わなければ、それはそれでいいわ。引き分けと言うこともあり得るわけね」


(なるほどな……この勝負、受けてみる価値はあるかもしれん)


 ハイグレタイガーは思案した。この上なくハイグレを愛する脳みそになった彼にとって、ハイグレポーズで勝負を決めるというのは魅力的な提案だった。しかも、大量にいるパンスト兵を相手にすることもなく、ハイグレ魔王との一騎打ちで勝負が決するのだ。しかも、ルールは至極単純。「負けた」と思わない限り、この勝負に負けはない。勝てればよし、引き分けになったとしても、そのときは当初の通り肉弾戦に持ち込むまでだ。ハイグレ魔王が言葉を続けた。


「地球のハイグレ代表であるあなたが勝った場合には、アタシは地球侵略をあきらめるわ。ただし、アタシが勝った場合には……あなたはハイグレ人間へと転向し、地球侵略の尖兵となって頂くわ。どうかしら? それとも、地球のハイグレヒーローは、アタシのハイグレの前にしっぽを巻いて逃げるのかしら」


「なんだとぉっ! 地球代表のハイグレヒーローとして、この勝負、望むところだ! ハイグレッ!」



「先手はあなたに譲ってあげるわ。さあ、地球のハイグレをアタシに見せてちょうだい」


「おう!」


 身体強化を行うヒーローエナジーを、意識的に配分していく。がに股で踏ん張るために両足へ。素早く両腕を動かす為に腕と、そして背中の筋肉へ。無論、金玉へヒーローエナジーを送り込み、射精能力を強化することも忘れない。大量のヒーローエナジーの供給により、ハイグレタイガーの肉体から蒸気が立ち上り始める。中年男の汗と加齢臭をムンムンと薫らせ、汗だくで虎柄のハイレグ水着を着た、毛深い中年男。どう見ても変態としか思えない姿なのだが、彼は地球の命運を背負ったハイグレヒーローなのだ。少なくとも、彼の脳内では。


「うっぉぉぉおお! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレぇッ!」


 ハイグレタイガー渾身のハイグレポーズ。それは現役のヒーローが、持てる能力の全てを尽くして行ったハイグレポーズであり、その馬鹿馬鹿しい見た目とは裏腹に、大気をびりびりと振動させた。毛むくじゃらの太股がぴくぴくと痙攣し、あまりの快感に倒れそうになる肉体を懸命に支えていた。太ましいチンポは断続的にびゅくびゅくと射精し、ヒーローエナジーで強化された睾丸が、大量の精液を供給し続けている。苦み走った男前な顔立ちは、一見すると凛々しい表情を作っている。しかし瞳の中は強い快感の色で潤んでおり、小鼻はムフリムフリと広がったり窄んだりし、唇の端から涎が垂れていたが……あくまでも、ハイグレタイガーは大まじめに、ハイグレの快感に耐えきりながら、一世一代のハイグレポーズを成し遂げた。そのあまりにも英雄的な所行は、ハイグレヒーローとなったハイグレタイガーの精神の許容値を振り切り、感動と快感で失神寸前であったが……ハイグレタイガーは、かろうじて意識を保っていた。


「おっ、おおっ……おひぃ……」


 ハイグレポーズを終えたまま、しばらく固まっていたハイグレタイガーがようやく動き出すと、その場に尻もちを付いた。汗と精液の匂いがむわりと周囲に広がる。その様子を見つめていたハイグレ魔王が、仮面の下でほくそ笑んだ。己のハイグレポーズだけで、ここまで磨耗したヒーローの精神が、果たしてハイグレ魔王のハイグレポーズに、どこまで耐えきれるのか。答えは既に出ていた。


「それじゃ、次はアタシの番ね」


 ハイグレ魔王が静かに前に出る。ハイグレ魔王のハイグレポーズは、あくまでも自然に、静かに、在るがままに始まったため、ハイグレタイガーの認識は数秒遅れた。


「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」


 大瀑布のように豪快なハイグレタイガーのハイグレポーズとは違う、ただ純粋に高みから低みへと水が流れ落ちるかのようなハイグレポーズ。もはやそれは物理法則の域に達しているといっても過言ではない。全てのハイグレポーズの起源にして頂点。それを目の当たりにしてしまったハイグレタイガーの反応は──


「あっ、ああっ。あっ、なんて、美しい……」


 地球のハイグレ代表だと息巻いていた己の言動を思い出し、ハイグレタイガーは顔が真っ赤になった。なるほど派手さではハイグレタイガーの方が上回るが、あくまでもこの勝負は「ハイグレポーズの美しさ」が勝敗の分かれ目である。そしてただ乱暴に、ヒーローとしての力を振り回し、己が快感を貪るだけのハイグレポーズよりも、よほどハイグレ魔王のハイグレポーズは美しかった。まるで湖面から静かに飛び立つ白鳥の如く。ハイグレタイガーは音もなく男泣きしながら、頭を垂れた。ハイグレこそ至高という価値観になったヒーローは、拳を交えることなく、ハイグレポーズの出来だけで敗北を認めてしまったのだ。


「さて、互いにハイグレポーズを終えたわけだけれど……どうだったかしら?」


「お、俺の……負け、です。ああっ、あっ! こんな、んあっ、は、恥ずかしいっ! 俺のハイグレポーズなんて、ああっ! ま、まるでガキの一人遊びみたいでッ……!」


 息を整えて立ち上がったハイグレタイガーは、両手で赤らんだ顔を覆い、毛むくじゃらの両足をもじもじと内股でくねらせていた。ハイグレに染まった脳みそだからこそ理解できてしまう。あんなにも誇らしかった先ほどまでのハイグレポーズは、オナニーのやり方も知らない子どもがチンポを弄っただけの手遊びと同等だと。我流のハイグレポーズと、完成された頂点のハイグレポーズの格の違いを見せつけられたヒーローは、すっかり戦意を摘み取られていた。ハイグレが人格の核となってしまったハイグレヒーローだからこそ、そこが折られたことで、まるで陵辱を受けた後のように、ズタズタにプライドが犯されていた。そんな彼に、ハイグレ魔王が優しく声を掛けた。


「そう恥じらわなくていいわ。アタシはあなたのハイグレポーズが好きよ。力強くて、男らしくて……」


「あっあっ」


 あれほど美しいハイグレポーズをするハイグレ魔王からハイグレポーズを褒められたことが、嬉しい。それはハイグレがヒーローとしてのアイデンティティになってしまったハイグレタイガーにとって、何よりも誇らしい言葉だった。


「それじゃあ勝負はアタシの勝ちね。あなたには、ハイグレ人間へと転向して貰うことになるけれど……異存はないわね?」


「あ、ありません! いえ、むしろ、ぜひ、お願いします! 俺を、ハイグレ人間に……転向させてくださいっ!」


 泣きはらした目を赤らめ、鼻水を垂れ流しながら、そう懇願するヒーロー。ハイグレ魔王は慈悲深く頷くと、ハイグレ光線銃を取り出した。


「さあ、構えなさい。ハイグレタイガー。あなたはたった今、ヒーローを辞め、ハイグレ人間へと転向するのよ」


「は、ハイグレ! ありがとうございます! ハイグレッ!」


 恥ずかしがりながらも、我流のハイグレポーズで応じるハイグレタイガー。ハイグレポーズをとり続けるハイグレタイガーの股間に、ハイグレ魔王が光線銃の銃口をぐりっと押し当てる。これからハイグレ人間へと改造され、理想のハイグレポーズを脳にインプットされてしまうことを想像すると、ハイグレタイガーは恍惚とした息を吐いてしまう。


「ハイグレ! んひっ! んひぃぃぃぃいン!」


 ハイグレ魔王がハイグレ光線銃の引き金を引くと、ピンク色の光がハイグレタイガーの体を包み込んだ。球体になった光が明滅する。ハイグレタイガーの体が中に浮く。ヒーロースウツを変形させた、仮初めのハイレグ水着が、ハイグレ人間のハイレグ水着へと置換される。特殊素材で出来たハイレグ水着型ヒーロースウツが、ありふれたナイロン素材に。そしてそれを着ているヒーロー、ハイグレタイガーの肉体もまた、ハイグレ人間に……睡眠も食事も必要とせず、ただハイグレポーズから発生するハイグレエナジーだけで活動を可能とする、高次の生命体へと改造された。それは同時に、ヒーローとしての特殊能力、身体能力の消失を意味していた。だが、それを悲しむような価値観は、もはやその男の脳内には存在していなかった。


「あっ、あぁっ……」


 光線の明滅が止み、再び地面に降り立った、元ヒーロー。虎柄だったハイレグ水着型ヒーロースウツは、単なるナイロン素材の、しかも蛍光色のピンク色のハイレグ水着へと変化している。それはヒーローとしての本来のアイデンティティの剥奪でもあった。肉体からもヒーローとしての能力が根こそぎ消失し、単なる汗臭い変態男と化した、元ヒーロー。しかし彼は、誇らしげに叫んだ。


「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレタイガー改め、ハイグレ人間虎岩雄一郎、たった今、ハイグレ人間への転向を完了致しましたッ!」


「よろしい。これからよろしく頼むわね? 元ヒーローさん」


「ハイッ! 何なりとご命令を! ハイグレ! これよりハイグレ魔王様の地球侵略の礎となるべく、誠意誠心、ハイグレポーズを捧げさせて頂きますッ! ハイグレ!」


 ハイグレ魔王様は素晴らしい。もはやハイグレヒーローですらなくなった、ハイグレ人間虎岩雄一郎は、ハイグレ魔王に最大限の敬意を抱いていた。我流で力任せのハイグレポーズで粋がっていた自分にも、こんなにも美しく、理想的なハイグレポーズを脳みそに直接刷り込んでくださった。ハイグレ魔王様の地球侵略を止めるなどと、なんと愚かしいことであったことか。地球は、このお方にこそ支配されるべきなのだ。ヒーローも一般人も、犯罪者もなんの区別もなく……ただハイグレを捧げるだけの存在として、人類はハイグレ人間へと転向し、ハイグレ魔王様に隷属すべきなのだ。


「ハイグレ!」


 所作にいっさいの無駄のない、理想的なハイグレポーズ。手首の角度も速度も完璧であり、自分がこんなにも美しいハイグレポーズを行っているという事実そのものが、ハイグレ人間虎岩に感動の涙を流させていた。全人類で、この感動を分かち合いたい……それが、ハイグレ人間虎岩の胸に宿った、新たな望みだった。


「ハイグレ人間・虎岩雄一郎。あなたに任務を授けます」


「ハイグレ! なんなりとご命令を! ハイグレ!」



「おお! インパクトタイガー! 無事に戻ったか!」


「ああ。だが……任務は失敗だ。スマン」


 ハイグレ人間虎岩雄一郎は、インパクトタイガーの格好でヒーロー本部へと帰還した。既にヒーローとしての能力は失われ、ただ汗臭いだけの変態に過ぎないのだが、そうとは知らないわずかに残った本部職員と他のヒーロー達は、任務が失敗したとはいえ、彼の帰還を喜んでくれた。



「……」


 虚偽の報告を終え、自室で眠りにつくハイグレ人間虎岩。偽装したヒーロースウツの格好のまま、ハイグレポーズをしたくてたまらなかったが、それは明日の朝まで我慢だ。彼の枕元では、小型化したオート・ハイグレフィールドの中継装置が、静かにヒーロー本部を蝕んでいった。


 翌朝のヒーロー本部は、下品な挨拶で満ちていた。


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【全体公開】【無料サンプル】段階的ハイグレ洗脳〜中年オヤジヒーローからハイグレヒーローへ、そしてハイグレ人間へ〜

Comments

あのハイグレ小説ですね。あれは結末をどうしようか迷っていて、まだ出来上がっていないんです。僕の中で迷いが消えたら、いずれ……

くろねこ@9605

未完のハイグレ小説を完成させてほしいです


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