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彩

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主のお遊び「蝋の道」

「…なにここ?どこかの部屋?」


 黄色い服に明るい茶髪、見た目からも明るい印象のある女の子が目を覚ますとそこは見慣れない部屋だった

四方の壁に窓などはなくただ一箇所にだけ重厚な扉が設置されているだけのシンプルな部屋だ


「なんで私こんな所に?そうだ、街中で不思議な格好した金髪の女の子に出会って話しかけられてから…」


 ここに来るまでの事を思い出すと金髪の子に出会ったところで終わっていた、その子が着ている黒いワンピースの素材が異様にテカテカとしていたのでなんとなく印象に残っていた、それから少し話をした後からの記憶がない


ザッザザッ


「な、なに?」


「聞こえてるかしら?」


 記憶を遡っていると突如雑音と共に声がかけられた、天井にでもスピーカーが設置されているのだろうか、だがそんな事よりも…


「あっ!この声あの時の子でしょ!?私をこんなところに連れ込んでどうするつもりなの?」

「別に出たいのならそこの扉からどうぞ?私はあなたを出口のない部屋に閉じ込めてるわけではないわよ」

「え?そう…なの?それなら帰るからね、バイバイ」


 声の主に対して強気に出たもののあっけない返事をもらって気が抜けた彼女は言われるがままに扉に向かう、今の状況になった理由もされた理由もわからないまま重厚なドアに付いているノブに手をかけ回した


 バシャァアッ!!


「きゃあ!!」


ドアが開くと同時に彼女の上から大量の水が降り掛かった、頭からもろに被ってしまった彼女は一瞬で全身びしょ濡れになってしまった


「なにこれ!イタズラでもしたかったの!?」

「あっはは、そこから帰ってもいいけど「何もしない」とは言ってないわ。

現に部屋の出口はその扉よ、でも外に出るためには通路を無事に通り抜けられたらの話ってだけよ」

「通路?…あ」


 びしょ濡れのまま開いた扉を見ると一本の通路が見えた、どうやらそこを通り抜ければいいだけの話のようだ、でも"無事に"通り抜けられたら?

それに見えている通路はやたらと白く嗅ぎなれない匂いが開け放たれた扉から漂ってきた


「ん、なにこの匂い…でもどこかで……」

「その通路は蝋で満たされてるわ」

「なんでただの通路がそんな事になってるの?!」

「ただの通路じゃないからよ、あぁそれとさっきあなたが浴びたのも蝋よ?」

「え?」


 驚いて濡れた体を見ると薄っすらと白くなっていた、彼女の体はすでに全身蝋浸けにされていた


「通路も普通でなければあなたに浴びせた蝋も特別よ、その蝋は温度変化では固まらず石膏みたいに乾くように固まっていくわ、それと固まった蝋は石の様に硬くなるから動けなくならないようにね」


 確かに普通の蝋だったら浴びた瞬間に体や服に触れた時点で温度が下がって固まっているはずだが、彼女の体では水を浴びたかのように今もポタポタと滴っている


「う、動けなく…?でもだったら乾く前にさっさと通り抜ければいいんでしょ?」

「簡単に言うとそういう事よ、でも気をつけなさ…」

「話してる暇はないの!」


 声の主が最後に何か言おうとしていたが彼女はそれを遮るようにして白い通路に向かう





「乾く前にでしょ?簡単に乾くはずないしさっさと通れば…うわっ」


 威勢よく通路に踏み入れた彼女だったが床には足首が埋まるほどの水位で液体の蝋が流れていた、蝋独特の肌に張り付くような感覚とヌルヌルとする感触に変な声が出てしまった


「床に蝋が流れてるなんてどういうことなの、変に生ぬるいし……いいや、早く通り抜けて…きゃ!」


 足首まで蝋に浸しながらも駆け足で抜けようとしたが蝋に覆われたサンダルと流れる蝋によって床は異様な程にヌルヌル状態、まるでローションが撒かれた床に立っているみたいだ

 最初の威勢が消えた彼女は滑って転ばないようにしっかりと足を着いて通路を進み始める


「こんなんで走って転んだら最悪蝋の川に倒れ込んじゃうことに…んん、でもまぁ走らなくてもこれくらいの距離なら歩いてても…」


ザバッ…ザバッ…ザバッ


 白い通路に蝋の川を歩く彼女の水音が響く


「はぁ…はぁ…もう、滑って歩きにくい…」



バシャッ…バシャッ……バシャ……


「ん?なんか体が重い?」


浅い川を歩くようにザバザバと足で蝋を掻き分けて歩いていたが扉から数十メートルほど進んだ辺りで体が重く感じた、歩きなれない蝋の川の影響かと思ったが何かがおかしい

 更には彼女の全身からパキパキと蝋が固まっていく音が響き始めていた


ザザッ

「最後まで聞かないからよ?」


 思いがけない蝋の変化に戸惑っていると再び声が聞こえる


「ねぇ、これどういう事なの!?」


「あなたに掛けた蝋は温度では固まらないけど床の蝋は時間が立つと冷え固まるわよ、それと通路内を照らすライトは蝋の乾燥を促すわ」


「なっ!?」


 彼女が遮った言葉はものすごく重要な内容だった、浴びた蝋と床を流れる蝋は同じものだと思っていた、だから乾く前にゆっくりと確実に歩いて進んでいたのにそれは悪手だったのだ



「だったらこんなゆっくり歩いてたら固まっちゃうじゃん!」


 時間に余裕がないとわかった彼女は急いで進もうとするが立ち止まっていた1,2分の間にも床を流れる蝋はどんどんと冷えていく

 最初は水のように流れていた蝋が今となっては糊のようにトロリとしており抵抗も増していた


「早くしなきゃ…あ、あれ?」

 とにかく進もうと左足を上げようとするも上手く持ち上がらない、まるでサンダルが床に張り付いているような


「そっかサンダルは体より冷たいから…!!」


 原因は温度差だった、サンダルには体ほど熱がないせいで周りの蝋が早く固まってしまう、その状態で足を止めていたとなればサンダルが床と固着してしまってもおかしくない



「んっ…んんっ…体が、動きにくい…んー、えいっ!!」


 なんとかサンダルを引き剥がそうとするも微かに動いてるだけでなかなか外れない、力を溜めようと体を捻ると腰回りや腕、脚といった全身からパキパキと軋む音が鳴り響く


ビキッ、ミシミシ…バキッ…グポッ


「あっ」

 軋む体でなんとか渾身の力を込めると左足が持ち上がった、だが足裏とサンダルの間で固まりかけていた蝋が剥がれただけでサンダルは床に張り付いたまま残されてしまった



「うわっ、あっ!」


 動かなかった状態からすっぽ抜けるようにサンダルから足が外れてしまいバランスを崩しそうになりながらも裸足になった左足で床に着地する…が


 ばしゃんっ!ずりゅ…ずるずるっ


「ひゃぁ!!…あ、危な……転ぶところだった」




 蝋に包まれた足の裏はサンダル以上に摩擦がなく床に勢いよく着いた瞬間ズルズルと前に滑ってしまったが、全身からミシミシと軋む音を発しながらもなんとか態勢を立て直して転ばずに済んだ

だが今度は右足を上げないと前には進めない、左足のサンダルがあれだけガッチリと固まっていたのを踏まえて最初から体を捻って力を込める


 ミシミシ…パキッ、ビキ…体を捻ると先程よりも硬い音が鳴り響く、頭上で輝く白いライトが全身の蝋を容赦なく固めていく


「ふっ…あ、うぅう……」

全身が突っ張るような異様な感覚を感じながらも体を動かす


できる限り体を反らすと勢いよく前へ進もうと右足を上げる


「んん…ふぅ、ぇえいい!」


バキバキッと音を立てて体を動かす、だが左足の時と同様に床に張り付いたサンダルが動くことはなくサンダルと足を繋いでいた蝋が剥がれただけだった

 サンダルは時が止まったかのように蝋によって固まったまま床に残っていた


「んっ…!!ぁあ…蝋が…どんどん固まって……」


 結局はさっきと同じ結果になってしまったが今度はバランスを崩すことなく冷静に右足を床に着けることができた、だがその時には床の蝋もかなり硬化が進んでいてまるで硬い寒天にでも足を突っ込んだかのようなグチョッとした感触が伝わってきた


「はぁはぁ…どうしよう、とにかくこのままでも出口まで行かないと…」


 すでに床の蝋はほぼほぼ固体に変わり切ろうとしていた、そして全身を覆う蝋もかなり固くなってきており、彼女の体は最初の時と比べると非常にゆっくりとした動きになっていた


ミシミシミシ…パキッビキッ、パキキ…


 彼女が動くたびに全身の固まりかけた蝋が軋む音を鳴らす


「ぁあ…はっ…く、ちが…うごか……」


硬くなっていく蝋の膜は体の動きだけでなく彼女の言葉さえも奪おうとしていた、だがそれでも必死に体を反らして前へ進むための力を溜める


ほとんどが白く染まった体をミシミシと音を鳴らしながらゆっくりと捻る、蝋に埋まった両足から感じる硬い蝋の感触はわかっている、それでも固まり切っていなければ抜け出せるかもしれない…そう願って思いっきり体を前へ倒す


「……!!!」


ミシッ…バキキッ…!


 固まりゆく体を精一杯動かしたが結果は最悪だった、両足を埋めている蝋は完全に硬く固まっていて抜け出すどころかピクリとも動かなかった

 それでもなんとか抵抗しようと体を動かすがミシミシと虚しく硬い音が鳴るだけで状況は何も変わらない…いや、彼女を覆う蝋は容赦なく固まっていく一方だ



蝋の硬化を促す白いライトに照らされ続けている彼女の体は固まっていく蝋によって残酷なほど白く覆われていく



「ぁあ…ぁ、や……から、だ…が……」


完全に動けなくなった今、彼女は自分の体に起こっている変化を敏感に感じてしまう、ビキビキと音を立てる腕や指の一本一本が固まっていく感覚…




ビキ…ピキピキ、パキッ

ゆっくりと目の前に引き寄せていた白く染まった腕だったが、パキッと乾いた音を立てて動かなくなった


「ぁ…ぁあ、い……や、う……」


ピキキッ…パキンッ



微かに動いていた指も先端までガチガチに蝋でコーティングされて肌の色が見えないほどに真っ白に固まった


「………っ」


そして

最後まで残っていた瞳も蝋によって完全に固まってしまった





不気味なほど白一色に覆われた彼女は服の模様すらも消えてしまい、まるで着色前の蝋人形の様になってしまった




「あそこで私の話を最後まで聞いてたらもう少し先まで行けたかもしないわね、ふふ」


主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」 主のお遊び「蝋の道」

Comments

ありがとうございます、静止画だけだと固まる描写を伝えるのが難しいし動画だけだと今度は固まるまでの感情が表現しきれない、なのでストーリーを書いて動画の補完という感じで両方を補えるようにしてみました

少女の固まっていく過程や状況が細かく描かれて静止画もついてとてもゾクゾクする一品ですね! 素晴らしいです!!

ヴリトラ


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