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広域はんい
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②縮小奴隷日記 12話 後編~Party Time~


《ゥぅ……アァ……》


 ハッと我に返る。 自分らの持つお皿の上から小さな呻き声がしたため。


「桜ちゃん、これ……生きてるね。 ど、どうしようか……」

「いや、どうしようかと言われても、さすがに一度自分のお皿に置いた物は戻せないし……」

「うん……そうだよね。 だ、だったら、店員さんに食べれませんと言って返しにいく? さすがにりんは小人さんを食べたくないよ」

「あ、うーん……」


 りんの言う通りにしようかと、困った顔で自分の皿の上にいる小さな生き物を見る。

 元々人間であった年上らしき小人は、火で炙られていたために思うように動けず、ビクビクと震えながら桜を見上げている。

 ……涙し、媚びを売るような嘆願した顔で。


 そんな年上であった男の姿を見て……


「――ッッ」


 ブルリと、身体がわずかに身震いした。

 そんな自分の体の無意識なる反応に桜は内心戸惑う。

 しかし、だけどもその口元は弧を描いている。 口角が上がり……にんまりと。


 嫌悪とか、嫌な感情の類の身震いではなかったからだ。

 むしろこの男を哀れに思って喜んでいる自分がいたからだ。


 ――涎……涎……。 だくだく。


 口内に溢れ満ちていく唾液。

 あまりにあんまりな男の姿。


《やめてくれ……食べないでぇ…………》


 自分に助けを求められると、なお一層奪ってみたくなる。


 ――この男そのものを、全て、丸ごと。


 ごくりっ

 そして、口内に溜まった生唾を飲み込み、隣にいるりんに目を向けた桜は、


「あたし、これ食べてみるよ」


 と、決意込めた表情をして言うのであった。


「――えっ⁉ 本気で言ってるの? 桜ちゃん」

「うん、マジ。 だって、あんな小さな子まで美味しいって食べてたし……」

「だからって、聞いたでしょ? これって人間のおじさんなんだよ? それも生きて動いてもいるのに可哀想だよ」

「それはそうだけど、でも……気にならない? これの “味” 。 これから先、これを食べる機会なんてそうそうないと思うからさ、せっかくだから試しに一つ食べてみようかなって」

「……桜ちゃんも、小人さんを食べるんだ……」


 自分が持つ皿の上の男を見つめながら呟く。


「いや、りんは別に食べたくなかったらそれはそれでいいんだけど。 あたしが食べてみたいだけだし」

「……あ、う……ぅぅ」


 りんはどうしようかと悩む。

 正直食べたくはないが、でも桜までもが食べてしまうと、この場で自分一人だけが小人を食べていない事になる。


 ――りんにとってそれだけは嫌だった。


 自分だけ仲間外れみたいになる事が、どうしても……。 だから、


「分かった。 りんも食べる」

「え? いや、あたしに付き合う必要はないって。 店員に返却すればそれでいいと思うし」

「ううん、食べる! 桜ちゃんが食べるならりんもッ!」

「お……おおぅ……。 そ、そう?」


 勢いよく喋るりんの表情は真剣そのもの。

 別に無理する事もないと思うが、しかし、友達のりんも一緒に食べてくれるのなら、それはそれでありがたいと思う桜であった。


 食べると決意したとて、生きた人間を一人で食べるのは、若干の勇気が必要だったからだ。

 

「それじゃあ一緒に食べてみようか」

「う、うんっ!」


 二人はさっそく男にお箸を向けだす。


《……うああぁぁ》


 木で出来た二本の大きな柱が、身体を問答無用に挟み込んだ。

 押し広げようとしても、男の力ではビクともしない。 これっぽっちも、まったく。 


《ぅあッ……ぅぐぁ…………》


 そして、急激に上昇してゆく視界。

 気付けば、目前にはプルンッとした女子高校生の大きな唇があった。

 薄く紅が塗られた淡色の唇が。


《ぁ……ぁぁ……》


 キスが出来そうな距離にある唇。

 “人間同士” として見たならば、男は嬉しさを募らせる光景だ。


 ……だけども違う。

 今からされる行為は、キスという甘いものではない。


 ペチャァ…… ミチャァ…………

 ほら、桜の唇の上下の隙間から、大蛇のような舌が突然と顔を出したかと思うと、ぺろりと舐めて唇を彩りはじめだしたのだ。


 ――お前は食べ物だぞと、たっぷりと唾液で濡らして見せつけるように。


《ぅぁぁ……ぁぁ…………》


 りんの口元まで持ち上げられた男も、似たような光景を見ていた。


 ブォォォッ! ゴォォォッ!

 真上から吹きすさぶ、鼻息がかかる距離で……。


《……めて……やめて…………》


 やっとの思いで搾り出した言葉。

 恐怖に戦慄きながらも、どうにか。

 しかし目の前の巨大な唇は形を変えて動きだし、無情とも言える短い単語を男に浴びせたのであった。


 いただきます――と。


 グパァッ!

《ヒィィィアァァァッ‼》


 透明な糸を引いて開くは――口の門。


 ハァァ…………

 りんと桜、それぞれ違う口臭の匂いが、箸に摘ままれた男らに吹きかかる。


《ぅあぁ……ぁぁぁ……》


 男の目前にあるりんの口内には、唾液が頬裏から溢れだして溜まりつつあった。

 代わって桜の口内は、既にたっぷりと唾液が溜まっている。


 一種の、 “食べ者” に向けての愛情表現のようだ。

 自分の身体をこの唾液に絡ませて、口内で愛でてあげるという強烈なメッセージ……。


 そんな口内が急速に近づく。

 身体を摘まんでいる箸を、二人は口の中へ運ぼうと動かしだしたから。


「はぁむ」

 むくちゅぅ……


 身体を口の中へ入れられ、閉じられた唇。

 自分を挟んでいたお箸は、緩やかに唇の外へと出ていく。

 ……男を取り残して。


《ぁぁ……待って……待ってく……れ》


 完全に口を閉じられたせいで辺りは暗い。

 されど、歯の一本一本や、舌にある乳頭のツブツブがはっきりと男には見えていた。

 ……奥にぶら下がっている、喉ちんこまでもが。


 ブワァァァッ…………


 奥からの生暖かな風が男の身体に吹きつける。

 娘の吐く口臭が容赦なく。

 

《うぶッ……っぅぅ》


 外へと吹き抜けていく吐息。

 ただの娘が吐く息だというのに、男にとって呼吸すら出来なくなるほどの突風。


《あひぃッ! あひぃぃッッ!》


 狂う。 狂い叫ぶ。


 唾液まみれた柔らかな舌の絨毯が突如としてうねり、命を断しようと “岩” の上に頭を乗せられたからだ。


《ヒィッ! ……ヒヒッッ》


 真上には、肉の根本から産まれた幾本もの白い岩がそこにある。

 自分の全てを終わらせようとする、綺麗に生え揃った歯が……そこに。


 男はおかしな笑いを上げるしかなかった。

 その場から逃げようにも、頬裏と大きな舌が邪魔をして身動きがとれずにいたから。


 ……そして、


 ゴグォォォォッ!

《アヒィッ! ヒィィィィッ‼》


 男を目掛けて落ちてきた。

 岩が……娘の白い歯が。


 ゴリッ……ゴリリッ……

《あがッ……がぁあ……》


 頭を徐々に潰されていく間際、男は過去の事を思い出すのであった。

 それはごく一般家庭に育ち、これまで過ごしてきた日々の事を。


 小さな頃の記憶から、順々に走馬灯のように。


『好きです! どうか俺と付き合ってください』


〈ああ、これは学生の頃、初恋をした相手に勇気を出して告白をした記憶だ〉


 快い返事をもらい、無事付き合えたあの頃の喜びを思い出す。


『おめでとう!』

『まさかお前に先を超されるとはな。 幸せになれよ』

『ありがとう!』


〈これは結婚式の時の記憶だ〉


 最愛の人とこれから共に歩む未来の……幸福に包まれた幸せの記憶。


《ぅぁ……ぁぁぁ……》


 それからも人生の軌跡をなぞるように流れ出す。

 映画のようにスクリーンとして、脳内の中で……。


 だけども、そんな映画は途中でプツリと途切れてしまうのであった。

 

 ――ブチャッッ‼

 と――最後に液体が弾け飛ぶ音と共に……。


 グチュ……ブチュ……ムチュ…………

「んーッ! うんまっ♪ 何これ、マジでうまい!」


 んちゅ……くちゅ……ぷくちゅ……

「ふわぁ~口の中がひあわふぇ~❤」


 一方、桜とりんは口の中で噛み砕いた者を、何度も上下の歯で潰して咀嚼していた。

 細かく分離した男の身体を、舌で逆側の歯まで送り咀嚼して。


 プチュ……グチュゥ…………

「いやぁ信じられない、こんなに美味いなんて。 やばっ! 咀嚼が止まんない」

「うんっ! りんも。 可哀想だと思うけど、美味しすぎて」


 ゴォォンッ! ドゴォォンッ‼

 二人の口内では、何度も何度も白い歯が打ち下ろされている。

 そうされた事により、今やもう、男の身体は細かな肉片となり変わり果てた姿になっていた。


 ぬくちゃぁ……

 男は液体となりつつあった。 口内の唾液と混ざり合わされて、肉片がよりいっそう細かく液状と化していっているから。


 クッチュ……グッチュ……チュクッ……


 それからも、繰り返し咀嚼を続けられていたのだが、それは唐突に終わりを迎える。


 ゴキュッ‼


 味がなくなったゆえ、飲み込まれてしまったからだ。

 何十年もの生きてきた男を――たったひと呑み、女子高校生によって唾液ごと、喉奥の穴へと。



「ぷはぁ~美味しかったぁ♪」

「いや~試しに食べてみて良かった。 マジで美味しくてビックリ」

「うん、見た目はあれだから初めは食べにくかったけどね」

「まあ、でも味を知ったら全然余裕でいける。 ……ところでさ、りん。 この際だしもっと色んな物を食べてみない?」

「うんっ! うんっ♪ なら、さっきの中学生の子達が食べていた頭だけの物を食べてみたい」

「あ~いいねっ♪ あたしも気になってた」


 あれほど食べる事に抵抗を示していたのに、今や二人にはそれがなくなった。


 ――皿の上に並べられている男達。

 これらは、同じ人間ではなく食べ物として認識されてしまったからだ。


 ………………

 …………

 ……


「あ、いたいた! 桜、りんりん、ごめんお待たせ。 話が長引いちゃってさ」

「ほったらかしにしてごめんね。 これから一緒に食事を……て、もう食べてたんだね……」

「もちゅ……もちゅ……あ、お帰り明日香ちゃんと天上院さん、それにニナちゃんも」

「あれ? 明日香、先に食べててって言ってたじゃん」

「あはは、うん……。 確かに言ってたけど、見た目があれだから食べ辛いかもなって……。 でも、どうやら見た感じ、何も心配いらなかったか~」


 自分で食べててと言っておきながら明日香は、きっと二人は何も食べていないだろうなと予想していた。

 しかし、思いの他楽しんでいる様子でホッと安心をする。 


「それはそうともう一人の方、白鳥様はどちらに行ったのでしょう? 確か三人一緒に食事に向かわれたと記憶しておりましたけど」

「あ、ほんとだね、白鳥さんがいない」

「ああ、しおりんならほら、向こうのテーブルに」


 桜が指さす方へ視線を向けると、詩織は一人黙々と小人を食べていた。

 微笑み浮かべ、心底幸せそうに頬を膨らませてモグモグと。


「プフッ! しおりんってばがっつきすぎ」

「もう、あんなにいっぱいお皿に “食べ物” を載せて。 太るから食べすぎたらだめだよって前に注意したのに……」

「まあまあ、せっかくのパーティーだから今日ぐらいはいいじゃん。 それよりも、しおりんと合流して皆で食べて回ろうか。 ニナもまだそこまで多くの種類の食用小人を食べたことないって言ってたし」

「あ、はい。 色んな味の食用小人がパーティーに出されると茉由お姉ちゃんから聞いてて、ずっと楽しみにしてたんです」

「そっかそっか♪ じゃあ、私がどれが美味しいか教えて進ぜよう~。 その為にはまず、先にしおりんを迎えにいこっか。 おーいっ! しおりーんっ!」


 詩織と合流した女子高校生達は、各テーブルを物色して回る。

 各々自分のお皿を持って、料理とされた男達を食しに。



 この時間、他の客もそれぞれ楽しんでいた。

 食事をとりながら会話をする者の他に、サウナで汗を流す者など。


 それもこれも、食して体内の内部から細胞を活性化させるため。

 汗という形で体外に毒素を出し、つややかな肌を手に入れるため。


 ――ここは【エステサロン・エロスティック】

 普通のエステよりも、さらに美を追求した場である。


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読んでくださり本当にありがとうございます!

まだ書いている途中ですが、続きは来週の22日辺りに予定しております。


②縮小奴隷日記 12話 後編~Party Time~

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