NokiMo
広域はんい
広域はんい

fanbox


②縮小奴隷日記 12話 中編~Party Time~


「さて、皆々様。 以前から知らせを出しておったが、『ペロ』の他にも『ポチ』にも買い手がついた。 こちらの柏木嬢に」

「そんなぁ……」「柏木様、あんまりだわ……」「真ちゃん……」


 方々から残念がる淑女達の声が上がる。

 声を上げているのは一度はポチ(真一)を使い、堪能していた女達。

 その声の中には、『葉山 加恋』『葉山 美奈子』の声も混じっている。


「あ、あはは……」


 予想外の真一の人気っぷりに、明日香は居心地悪そうだ。


「じゃが安心してほしい。 嬢の好意で週に三日だけここに置いて良いと了承を得た。 完全予約制になってしまうが、これまでと変わらず使用する事が出来るからそう気をおとさんでほしい」

「まあ、それなら……」「高額ですので、そう毎回使えないですものね」


 またポチを使って悦しむ事が出来ると知って、残念がっていた淑女達はホッと胸をなでおろす。 しかし加恋だけは未だ納得いかない顔をしているが。


「それともう一つ。 皆々様の為に、ペロやポチの変わりとなる三匹の若い学生の青年を仕入れておいた。 ほれ、目の前にある玩具の街の中に、実は三匹が混じっておるんじゃぞ」

「え、うそっ!」「ねえ、これじゃないかしら?」「本当だわ! ここにいるわ!」


 いち早く速人達を見つけた淑女の言葉を受け、徐々に黄色い歓声が上がる。


「ねえ桜ちゃん。 これって岩田君……だよね? 大友君と藤田君もいる……」

「……う、うわぁマジで皆小さくされてたんだ」


 玩具の街の中で、ビクビク震えている速人達の姿を見つけた桜は、ちょっぴりと罪悪感を抱く。

 何故なら幼い頃からの昔馴染みの速人が、自分が明日香との告白の場をセッティングしたせいで、虫みたく小さな姿になってしまったから。


(ごめん……。 まさかこんな事になるなんて知らなかった。 速人も皆も……マジでごめん!)


 心の中での謝罪。 だがそれだけである。

 桜は速人達を助けようとはしない。

 そんな事をしてしまうと、周りの人達の反感を買うのが目に見えているからだ。


「これは、柏木、天上院、白鳥嬢の手伝いもあっての事じゃ。 感謝するぞ、お主達」


 パチパチパチと明日香達に向けて拍手が巻き起こった。

 「ありがとう」と周りから感謝を述べられ、三人は少し照れくさそうにしている。


「とりあえず長話はこれぐらいにして、皆々様は我がパーティーを楽しんでおくれ。 この汚れた物らは綺麗に消毒洗浄をして、後に使えるようにしておくからの」

「皆様、申し訳ございませんが若い小人は大変人気が出ると予想できますので、私共が抽選でご使用できるお客様を選ばせていただきます。 ――ペロとポチを含めた若い五匹の子羊達を。 選ばれなかったお客様は、普段エロステでお使いになられる自慰用性具をたくさんご用意しておりますので、今宵はお好きにお使いなさってください」


 ペコリと一礼する涼子に続いて、梨沙やその他のスタッフ達が一斉に頭を下げる。


「よし! さあ、パーティーの開演をするかの! 食事もたんまり用意しておるから思う存分堪能してほしい」


 白銀いちびの掛け声と共に、スピーカーからジャズの曲が流れ出す。


 そして、街を取り囲んでいた淑女らはパーティーを楽しもうと、それぞれフロアを散開し始めたのだった。




「皆、私達も食事をしにいきませんか? お昼を少量で済ましていましたのでお腹がペコペコで……」

「あーごめん! 先に行って皆で食べててくんない? ちょっと気になる事があって」

「……? そうですか、分かりました。 じゃあ並木さん浅見さん、私達は先に行っていましょうか」

「あ、うん」「ほーい」


 りんと桜を引き連れて食事をしに向かう詩織。

 だが、茉由だけは明日香の隣に居たままだった。


「茉由も私に気にせず行ってて良いんだよ? ニナもお腹が空いてるっしょ?」

「ううん、明日香の傍にいるよ。 心配だから」

「ニナは茉由お嬢様のメイドですからお傍に」

“黙っている” から私達の事は気にしないで」

「……そっか。 ごめんね二人共」


 そう言って明日香はこちらをずっと睨んでいる少女に視線を向ける。

 視線を向けた事に気付いて、少女の後ろで申し訳なさそうな顔をしながらペコリとお辞儀をする大人の女性もいた。 おそらくは少女の親なのだろう。

 なので明日香も礼儀として一応ペコリと頭を下げてから、睨んでいる少女の元へ向かった。

 何故、睨まれているのかを理由を知りに。


「えっと……さっきから私を睨んでいるよね? 会った事もないと思うけど、何か私あなたにした?」

「……った……」

「え?」

「――取った! 私のポチなのに! 返してよッ!」


 取ったとは何の事だろうか? 何を言われているのか一瞬分からなかった明日香だったが、「私のポチ」という言葉を聞いて、もしかしてと予想を立てる。


「あーっと、加恋ちゃん……で合ってる?」

「……はい、葉山加恋といいます」


 やはりそうだった。

 いつかは会おうと思っていた。

  “真一のため” に目の前にいる母娘に


 しかしまさか、こんなに早く出会う日が来るであろうとは、まったくもって予想外な出来事であった。


「それでお姉ちゃんに何か用かな?」

「ポチを返してください! せっかく兄と妹の関係じゃなくなって、これから……その……」

「これから、ん? 何?」

「――いっぱいポチとエッチな事が出来ると思ってたのにぃッ!」


 涙目になって感情をのせて叫ぶ加恋。

 そんな姿を見て、もしかしてこの娘は真一の事が好きなのでは? と感じた。

 兄としてではなく、男として。



 普通では、決して交わるのは出来ない兄妹の関係。

 だけど加恋は、真一が物となったのを良い機会として、自分の持つ行き場のない愛情を精一杯ぶつけようとして使ってきた。


 男性として好きでもなければ、ここまで兄である真一に執着し、エッチな行為に使おうとは思わないはずだから。



「そっか、好きなんだ。 加恋ちゃん “も” 真一の事が。 でも返せないな、真一はもう私の物だから」

「なら将来働いて、ポチを買った値段よりも高く買います! 始めから加恋が大人になったら、ポチを買おうとしていたんだから」

「あーごめん、無理。 言ったじゃん、 “私も” だって。 それに、真一が望んで私の物になったの。 これ以上不特定多数の慰み物になりたくない、私にだけ使われていたいって言ってさ」

(まあ、当分しばらくはエロステで働かなくてはならないんだけど。 真一を購入する条件に、前々からいちびさんと約束してたし……)

「嘘っ! 絶対嘘! うぅ……」

「いや、本当なんだって」


 中々明日香の言葉を信じようとはしない加恋。

 傍で話を聞いていた大人の女性のふくよかな胸に顔を埋めて、シクシク泣きだしてしまった。


「うぅぅ……ポチが取られたよぉ……」

「よしよし……。 泣かないで加恋ちゃん」

「あ、ごめん! 泣かすつもりは……」


 泣いてしまった事に罪悪感を抱く。

 だけど明日香は、真一を誰かの物にはしたくなかった。

 それが、真一の家族であっても。


「……明日香ちゃん、で良かったかしら? 始めまして、私は真一の母親の美奈子といいます」

「はい……始めまして、お母様」

「この娘は昔からお兄ちゃんっ子で、本当に真ちゃんの事が好きなの。 話を聞くに明日香ちゃんも真ちゃんを好いてくれていると感じたのだけど……あってる?」


 好いているかと聞かれてふと考える。


 確かに真一の事は好き。 でも、どういう好きなのかは明日香自身良く分かっていない。


 思えば告白されてから気になりだした関係。

 実際自分の事が好きだという同級生の男子を使ってみて、とても気持ちよかったから傍に置いておきたいなと、確かにあの時そう感じていたのを明日香は思い出す。


 ――なら道具として好きなのか?

 それもあるが、多分そうじゃない。


 何故なら真一と話すだけでも幸せな気分にさせられるからだ。

 ドキドキとした――幼馴染の優斗と同じ気持ちに。


(……あ、そっか……。 好きなんだ私。 気持ちいいから好きじゃなく、真一を男の子として気付かず見てたんだ。 アハハ、なんだ、そうだったんだ)


 胸の奥深くにあった気持ちにやっと気付いた明日香。

 キリッとした決意込めた目つきに変わり、明日香は自信ありげに美奈子の問いに答える。


「はい、好きです! この気持ちは誰にも負けません。 例え、ご家族の方にも」


 とても真剣な目に驚く美奈子。

 この娘が言った言葉に嘘はないのだと、心で理解した。


「ふふ、真ちゃんってばここまで思ってくれる人の物になれて幸せね。 うん、分かった。 ならもう私がどうこう言う資格はないわね。 真ちゃんを手放した私が……」

「あ、あの……お母様。 目から……」

「え? あら? 何かしら……これ」


 頬を伝う雫。

 美奈子は自分でも知らず涙を流していた。


「あらあら、ふふふ……何だか急に寂しくなっちゃった。 ごめんなさいね、私まで泣いてしまって。 ハァ、何だか真ちゃんがお婿さんに行った気分。 安心と嬉しさと悔しさが……色々な感情が急に胸にきちゃったわ」

「ママぁ……私は嫌だよぉ!」

「もうこればかりはしょうがないの、加恋ちゃん……」


 美奈子はハンカチを取り出して、加恋の濡れた目元を優しく拭う。

 一通り拭い終わったら、次に自分の濡れた目を拭う。


「明日香ちゃん、どうか真ちゃんの事を宜しくお願いします。 息子をお金に替えた親ですが、それでも幸せを願っているとお伝えください」


 そう言って深々とお辞儀をする。

 しかし明日香は、何故美奈子が真一と根性の別れみたいに泣き、お辞儀をしているのか分からなかった。


「え、と……真一にはこれからも会ってあげないんですか?」

「……ええ、真ちゃんが予約制になると、レンタル料が高額になって、手が出せなくなってしまいそうだから。 ほら、ペロちゃん? あれも予約制になってから値段が跳ね上がったでしょう? 毎回真ちゃんを使うのにあの値段じゃ、一般人の私じゃ手が出し辛いのよ。 だからもう、中々会えなくなると思うわ」

「あ、んーと、寧ろ今までよりも会いやすくなると思うんですけど」

「――えっ?」


 美奈子はその言葉の意味が分からず、明日香を見据えたまま固まった。


「たまにですけど、真一を帰省させてあげればなって考えていたんだけど……。(トラウマの克服のために)」

「ほえっ?」


 口をぽかんと大きく開けたまま、加恋までも固まっている。

 明日香が言わんとしている事に、脳が理解出来ていないようだ。


「え⁉ 帰省って……真ちゃんをお家に帰してくれるって事?」

「はい、後日お宅へお伺いしてその話ができればなって考えていたんですが、まさかこのパーティーで会えるなんて思ってもみなかったですよ」

「あぁ……あぁ…………」


 両手を口元にあてて歓喜に打ち震える美奈子。


「あ、あのー……で、どうします? 家族だから真一のためにもそれがいいかなって思うんですが」


 美奈子は感激で打ち震えながらも、慌てて返事をする。


「も、もちろん大歓迎! 寧ろ毎日でも構わないわ!」

「あはは……毎日はちょっと」


 ちょっぴり困り顔の明日香。

 

「あ、あの……明日香さん。 いえ、お姉様!」

「え? ちょ、ちょっと、お姉様っていきなり……。 せめて普通にお姉ちゃんと呼んでくれない? 結構恥ずかしい」

「はい、お姉ちゃん!」


 突然のお姉様呼びに、顔を真っ赤に染めて自分の呼び名を止めさせる。

 

「それで……あの……ごめんなさいッ! てっきりポチを加恋達から奪ったって勘違いして睨んでしまって。 まさか、そんな風に考えてくれていたなんて知らなかったです。 あはは♪ 嬉しい。 これからも加恋はポチを使えるんだ」


 ――加恋の “使える” という言葉。


 帰省させると、必ず二人は真一を使うのだと明日香は確信している。

 だからこそ伝えなければならない事があった。

 もう、真一を壊されないために。


「加恋ちゃん、真一を帰省させる代わりに、約束してほしい事があるんだけどいい?」

「約束ですか? はい! 何でも言ってください」

「真一を家族として接してあげてくれない? 使うのはまあ……そういう物になったから仕方ないとして、せめて兄として。 真一が前に言ってたけど、他の人同様、妹の加恋ちゃんからもポチ呼ばわりされて辛いって話してたから」

「……はい、分かりました。 加恋はお兄ちゃんから妹として見られないようにしようって、ポチと呼んでましたけど……。 そっか……うん、嫌がるなら人間の頃のようにお兄ちゃんって呼びます」

「あとお母様もお願いします。 真一が人間だった頃と同じように、優しく子供として接してあげてください」

「ええ、大丈夫。 私も絶対ポチって呼ばないように気を付けるわ」


(せっかく治ってきたのに、またショックを受けて幼稚退行するようになるかもしれないし。 まあ、あれはあれで可愛いんだけど)


 明日香は二人のせいで真一が幼児退行をするようになったのだと、伝える気はなかった。

 これから交流を深めていく真一の家族に、わざわざそんな事を伝えて、二人を変に悲しませる必要はないと考えているからだ。


「じゃあ、今度また真一を交えて話をして、帰省する日取りを決めましょうか。 あ、LIMEって使ってます? 良ければ連絡手段として使いたいんですけど」

「あ、加恋もお姉ちゃんとLIMEしたいです!」

「もちろんいいよ!」


 ………………

 …………

 ……


 仲良さげにしている三人を、いつの間にか少し離れた場所に移動して、微笑ましそうに眺めている茉由とニナ。


「心配しなくても大丈夫でしたね。 明日香お姉ちゃん、とても仲が良さそうに楽しそうにしておられます」

「うん、安心したよ。 すごく睨まれてたから何事かと思っちゃった」


 茉由とニナは「本当に良かったね」とホッと胸を撫で下ろして、明日香の楽しそうな姿をいつまでも眺めているのだった。

 明日香がこちらへ戻ってくるまで、ニコニコと純粋な笑みを浮かべて。


 ◇


 一方、時を同じくして。


「さ、桜ちゃん……。 もしかしてこれを食べる訳じゃないよね……?」

「さ、さすがにちょっとそれはないんじゃ……。 いや、でも……ソースを垂らされて程よく焼かれているから、まさか……」


 りんと桜は立ったまま、白い空っぽのお皿を手に持って、テーブルの上に並べられた料理? の前で固まっていた。


 ――お皿に載せられた、生きて蠢く人間だった小さな男達を……引きつった表情を浮かべながら。


______________________________________

読んでくださり本当にありがとうございます!


前回の後書きに、「次回は、お客様が愉しむ姿を書いていきます」と書いておりましたが、私の想定外に思いの他お話が長くなり到達できなくなってしまい、申し訳ございません。

次回こそはしっかりと! _(._.)_

②縮小奴隷日記 12話 中編~Party Time~

Related Creators