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ツイてない、とある日のこと

2発目です、三日坊主にならなくてよかった。またダークなやつです。ていうか多分ダークなやつばっかこっちに上げると思うんで、ダークじゃないときだけダークじゃないですって書くことにしますね。

ツイてない、とある日のこと

萌香が聞いたのは、ベランダのガラス窓がガタガタと揺れる音だった。

今日は苛立つことばかりだった。数週間前に別れたばかりの彼氏の穴埋めを探すために大学の友達に誘われた合コンには行ったはいいが、期待外れの冴えない男しかいなくて。帰り際散々男共に引き留められたせいで終バスを逃して。さっさと夜のルーティンを済ませて寝ようと思った矢先にシャンプーが切れてることに気づいて。

シャンプーの詰め替えを取りに浴室を出てすぐ、その物音に気付いた。


「な、なに……?」


耳を澄ませると、物音は未だ微かに聞こえてくる。泥棒か何かだろうか。

流石に裸のままでは出られないので濡れた身体をさっとタオルで拭い、下着とスウェットを手早く身に着ける。

念のため「110」と入力したままのスマホを片手にベランダに近づくと、干しっぱなしの洗濯物を黒い人影が物色している姿が見えた。


「え、なんで!? まだ風呂に入ってるはずじゃ……」


すると、萌香の視線に気づいたのかベランダにいた男が声を発した。

その手には出かける前に干した下着類が握られていて、逃げようとして慌ててベランダの柵を乗り越え、下に降りようとしている。


「ちょっとふざけ……きゃっ!?」

「うわっ!?」


逃がすまいと男の手を掴んだが、それがまずかった。既に柵に乗り上げていた男の全身がバランスを崩し、そのまま柵の外に落下を始める。それと同時に、グン、と身体全体が腕ごと強い力に引っ張られたかと思うと、2人はそのまま宙へと投げ出された。




***




「痛たた………」


2人が落ちた先、ゴミ収集所の上で1人の人物が目を覚ました。

部屋が2階にあったのが幸いして2人に大きな怪我は無いようだったが、それでも落ちた時の衝撃からか体中のあちこちがズキズキと痛んでいる。

ゆっくりと上半身を起こしながら辺りを見渡す。溜まっていたゴミ袋がクッションになったおかげもあって無事だったようだ。先程の男の姿を探していると、男は既に逃げた後なのかどこにも姿が見えなかったが、萌香と男とは別に、意識を失った様子の女性がゴミ袋の上で横たわっているのが目に入った。


(あれ?この人どこかで見たことあるような……。 まあいいや)


とりあえず警察に通報しようと思い立ち、手に持っていたはずのスマホを探すが、落ちた時に手離してしまったのかどこにも見当たらない。

ゴミの隙間にでも挟まっていないかと暗がりを必死に探していると、ふと、寝ていた女性の手元からブーッとスマホのバイブ音が鳴る。


(ああ、そんなところに……。 あ、あれ?)


そこにあったのは萌香のスマホだった。付けているスマホケースは以前彼女が友人に作ってもらったもので、当然彼女以外に持っている人物はいないはず。しかし、そのスマホは見知らぬ女性の手に握られていた。

いや、よく見るとそれは"見知らぬ女性"などではなかった。

部屋着までこだわる意味はないからと、同じものを何着も買って愛用していたベージュのスウェット。前カレを思い出すのが癪でバッサリ切った、最近では気に入り始めていた明るいショートボブの髪型。そしてなにより、見間違うはずもない。毎朝鏡で見ているのとまったく同じ顔をした、同じ姿をした人物が目の前に横たわっていた。


「なんであたしが……。 ちょ、ちょっと起きて!!」

「うーん……?」


肩を掴み揺さぶると、女性は眠たそうに瞼を持ち上げる。すると、目を覚ました女性は驚いたように目を見開いた。


「ぼ、僕っ!? な、なんで僕が目の前に……!?」

「僕……?」


こちらを指さしながらつぶやく言葉につられ、なんとなしに自分の身体に目をやる。そこにあったのは、慣れ親しんだ自分の身体ではなかった。

男の視線を釘付けにする自慢の大きな胸は影も形も無く、代わりに薄汚れたパーカーとジーパンに身を包んだ自身の身体が目に入る。確かめるように目の前へ突き出した手にはネイルなどは無く、ゴツゴツとして血管の浮き出た男のような手がそこに映し出されている。


「う、嘘っ!? な、なにこれ、やだ、あ、あたし……!?」


慌てて確かめるように全身を触ってみるが、慣れ親しんだような感触は手に返ってこない。にもかかわらず、今起きている事象が現実であるということを裏付けるかのように、全身からは触られているという感覚が鋭敏に返ってくるのだ。

そこでようやく、"彼"は今自分に起きている異変に気付いた。自分がもう一人いるのではない、自分の身体が男と入れ替わっているのだと。




***




「も、もうやめにしましょうよぉ……」


身体のあちこちに擦り傷を作った萌香が、ぽつりと泣き言をこぼす。


「やめられるわけないでしょ!? こっちは早く元の身体に戻りたいってのに……」


目を覚ました2人はいったん萌香の部屋に入り、そこで改めて自分たちが入れ替わっているということを確認した。

男は石川洋介という名前らしく、隣の部屋に住んでいたようで萌香もたまに顔を見かけたことがある相手だった。ヒョロヒョロとして情けない、いかにもオタクと言った感じの風貌の男。普段の萌香にとっては関わり合いたくもない人種で、そんな相手に自分がなってしまっているということは彼女にとって到底我慢できるはずもないことだった。

半ば強引に萌香を脅すようにして、入れ替わった時のことを再現してベランダから何度か落ちてみたが、状況は好転せずただただ2人の身体に生傷が刻まれるだけでいた。


「で、でもこれ以上は痛くて限界ですよ……。そ、それにもう夜遅いですし、とりあえず明日になってからまたやってみませんか?」

「う……」


彼女が言うように、時刻は既に0時を過ぎていた。それに、自分の身体ではないからと思って無視をしていたが何度目かとなった時に左足をくじいてしまい、ズキズキとした痛みが先程から気になっている。


「……わかった、今日はもう寝よっか。 でも起きたらすぐ再開するからね」

「は、はい」


洋介は変なことをしないように、と釘を刺したうえで萌香を床の上に寝かせ、自身はベッドへと潜り込んだ。その際も萌香はビクビクとこちらの言いなりになっていて、同じ身体なのに中身が違うとこうも変わって見えるのかと、どこか複雑な気分になる。

とにかく、さっさと寝てしまおう。一度入れ替わったんだから、同じことを何度か試していれば元に戻れるはず。それで――

元に戻るための協力させる手前通報はしないと言っていたが、もちろんそんな気はなかった。早く元に戻って、隣に住んでたこの変態をとっとと追い出そう。

そんなことを考えながら、慣れない身体に苛立ちを覚えつつも少しずつ眠りに落ちていった。




***




「ぐがー…んん……んがっ?」


ぐっすりと寝ていた洋介だったが、ふとうるさいいびきが耳に入って目を覚ます。床で寝ているはずの萌香の方からは寝息一つ聞こえなかったため、どうやら自分自身のいびきで目を覚ましてしまったようだ。


(うぅ、最悪……なんでこんな男なんかに……)


ぼーっとした頭で、再び眠りにつこうともぞもぞと布団の奥深くまで潜り込む。すると、布団の中で何かが手に当たった。


(あれ?なんだろこれ……ああ)


それは、数日前に失くしたと思っていたショーツだった。疲れた日なんかは脱いだものを適当に脱ぎ散らかしてしまうことが多く、ストッキングや下着なんかはたまに失くしては、こうしてベッドの中や洗濯機の裏から見つけるということがそれなりにあった。


(こんなとこにあったんだ、あとで洗わないとね)


ショーツを手に取り、何の気なしにその匂いを嗅いでみる。数日前に履いていたものということもあって、どこかツンとする不快な、それでいて濃厚で魅惑的な香りが洋介の鼻孔を刺激する。


(え?あ、あたし、何やってるの……? き、汚いし…で、でも……なんか、いい匂い……?)


自分の行動に自分で驚きつつ、それをさらに上回る好奇心が湧いてくる。そのまま本能の命ずるままに、彼は手に持ったそれを大きく広げ、顔に押し付け深呼吸を繰り返した。

最初は戸惑いと不快感が勝っていたが徐々にそれも薄れていき、代わりに得も言われぬ幸福感が押し寄せてくる。


(あ、これやばっ……! なんかどんどんクセになって……。 い、いいよね?あたしの物なんだし……!)


匂いを嗅いでいるだけでは我慢できず、手触りのいい生地を思い切り鼻に押し付ける。それに合わせて脳に突き抜けるような快感が訪れ、それが癖となって何度も繰り返してしまう。

そんな中、彼の右手は知らず知らずのうちに自身の股間へと伸びていき、ズボンの中で大きく膨れ上がったモノを思い切り握りしめていた。


(あっ、すごっ、な、なにこれっ!? と、止まんない!? あっ、き、気持ちいいっ……!)


今洋介の身体を動かしているのは萌香の、女性の精神であるというのに、彼女が知らないはずの"いつもの行為"を彼は半ば無意識に行っていた。

盗んだ下着を手に取り、その持ち主に思いを馳せて自慰に耽るという行為。

それに加えて今目の前にある下着は洗濯され洗剤の香りしかしないものとは違い、持ち主が脱いだ放置されていたもので。そんな極上のオカズを前に、"彼"の身体が我慢できるはずもなかった。


「うっ、くっ……あぁぁっ!」


今まで感じたことのないような強烈な快感と共に、握られたペニスからどぷっと白濁液が溢れ出していく。萌香の魂にとって初めてである"男"としての悦びが、確かにその中に刻まれていった。


「はぁ…はぁ……。 あ、あたし、なにやってんの……!?」


快感の余韻でしばらく動くことができないでいたが、それも数秒のこと。サーっと頭が冴え冷静になった洋介は、自分がとんでもないことをしてしまったことに気が付き、顔面蒼白となった。

手もズボンの中もべったりと精液で汚れてしまっていたため、とりあえずこれを何とかしようと右手をズボンの中へ入れたまま浴室へ向かう。


「あれぇ?なにしてるんですか?」


すると、眠っているはずの萌香が洋介に声を掛けた。まるで何かを見透かすかのように、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら。

寝る前とはどこか様子の違う、自信に満ちたようなその姿に戸惑いながらも、洋介はなんとか誤魔化そうと口を開いた。


「べ、別に……汗かいちゃったからシャワーを……」

「ああ、誤魔化さなくていいですよ?僕、全部見てましたから」

「み、見てたって……きゃっ!?」


彼女は洋介に近づくとグイッと彼の右手をズボンの中から引っ張り上げた。その拍子にぬちゃっと嫌な音が響き、白い液体がべっとりと付いた手が姿を現す。


「うわ、くっさ♡ ほら、さっきまでオナニーしてたんですよね?僕の身体で」

「ち、ちが……これは……」

「だからぁ、見てたって言ったじゃないですか。 面白かったですよ?こちらに気づきもしないで、自分のパンツの匂いを嗅ぎながら必死に腕を動かしてるあなたの姿は。 いやぁ、男ってオナニーしてる時あんなにキモく見えるものなんですね」


クスッと笑いながら、萌香は蔑むように言葉を紡ぐ。口調こそ違えど、まるで本来の彼女が男を小馬鹿にする時のように。


「う、うるさいってば!いいから黙って寝ててよ!」


図星をつかれて思わず声を荒げる洋介。しかし、先程ビクビクしていたのが嘘だったかのように、萌香は余裕の表情を浮かべて目の前の"男"を見下していた。


「そんなことより、面白いことを発見したんですよ。 ねえ、自分の名前、言えますか?」

「はぁ?」


突然何を言っているのかと眉間にしわを寄せるが、彼女の有無を言わせない雰囲気に押され、渋々答える。


「名前って……石川洋介だけど」

「あはっ! あー、やっぱりそうなんですね」

「な、なにがおかしいの…?」

「あなた、元はこの身体……女性だったんですよね? じゃあどうして"洋介"とかいう男みたいな名前をしてるんですか?」

「あっ…………」


そう言われて初めて気づいた。自分の名前は"山下萌香"で、"洋介"は自分と入れ替わった男の名前。頭ではそう理解できているはずなのに、何故か彼女に質問されて無意識に答えた名前はその"男"の名前だった。


「変ですよね?実は僕もなんですよ。 実はさっきまでずっとオナニーしてたんですけど、気持ちよくなる度に自分の中から何かが湧き上がってくる感じと言いますか、少しずつあなたの、"萌香"の記憶が頭に浮かぶようになってきたんです♡」

「オ、オナニーって……ふ、ふざけないでよこの変態!あたしの身体で勝手なこと……きゃっ!」


言い返そうとした言葉は言い切ることなく遮られる。萌香が洋介の身体をベッドにつき飛ばしたからだ。彼女はそのままベッドに乗り上げると、彼の股間をぐりぐりと足で踏みつける。


「変態って、あなただって僕の身体で気持ちよさそうにオナニーしてたじゃないですか。おあいこだと思いますけどね」

「や、やめてっ……」

「それにほら、踏まれただけでこんなにチンコおっきくしちゃって♡変態なのは一体どっちですかぁ?」

「あっ…。 う、うぅぅ……」


萌香は身を屈め、ただ呻くことしかできないでいる男のズボンとトランクスを一息に剥ぎ取る。彼女の言葉通り、男の股間は先程精を放出したばかりだというのに、先程以上に大きくその姿を膨らませていた。


「あははっ! ねぇ、萌香さんってSだったんですか?僕はどっちかっていうとM寄りだったのに、さっきからあなたの無様な姿を見てると興奮しちゃって……♡ ほら、あなたのおまんこがもうトロトロになってるんですよ、わかります?」


萌香は部屋着を、そしてその下にあるショーツまでも慣れた手つきで脱いでいくと、その下から現れた割れ目を見せつけるように指先でなぞり上げた。そこは既に愛液が滴るほどになっており、まるで別の生き物のようにヒクついている姿を見せ、それを見た洋介の股間がググッとその大きさを増していった。


「あれ?また大きくなってません? 元自分のおまんこ見せつけられて興奮して、そっちもだいぶ"僕"に染まってきてるみたいですね♡」

「も、もういいでしょ……。 た、楽しいのは分かったから、だから、も、もうやめて……。 これ以上されたらおかしく……」

「こんなに楽しいこと、やめるわけないじゃないですか♡ それに、ちょっとオナニーしただけでこんなに変わって、あなたになることができたんですから……もっと気持ちよくなったら僕たち、どうなっちゃうんでしょうね♡」


クスクスと笑いながら、萌香は男の身体を跨ぎながら膝立ちになると、ゆっくりと腰を落としていく。


「も、もうやめて……お願い、やめて……」


萌香が想像していた以上に洋介の、男の肉体に押し込められている萌香本来の精神は摩耗していた。先程の、男としての性欲に流されたせいとはいえ自らの意思でしてしまった自慰を皮切りに、彼の肉体が元々持っている歪んだ思考や記憶、性欲とその性癖は彼女の魂を少しずつ蝕み、先程から行われている元の自分による責めすらも快感として変換し、享受してしまえるほどになっていた。

それでも、目の前で文字通り自分の身体を好き勝手された上に自分の記憶、アイデンティティとも言えるものすら奪われてしまう行為。それだけは絶対に嫌だと、身体から沸き起こる強い性欲を押し切ってなんとか拒絶の言葉を絞り出すが――


「へえ?その割には随分と乗り気じゃないですか、そんなに腰をヘコヘコさせちゃって♡ まあ当然ですよね、童貞の"僕"が女子大生との生ハメセックスを我慢できるわけないんですから♡」

「ち、ちがっ! あ、あぁぁっ!!」

「ん…はぁんっ♡♡ な、なにこれぇっ♡♡♡」


否定しようとした言葉は途中で遮られ、次の瞬間、萌香はその大きな胸を揺らしながら一気にその腰を落とした。ヌプッという音と共に彼女の割れ目が押し広げられ、その奥にある膣口が亀頭を包み込むように呑み込んでいく。

その刺激に思わず声を上げてしまった萌香だったが、それも一瞬のこと。彼女が感じたのは痛みではなく、全身に広がる痺れるような強烈な快感だった。


「ひぁっ♡♡♡ や、やばっ、気持ちぃ……♡ んあっ♡こ、こんなの初めて……ち、違う……あっ♡ "あたし"、これ、知ってるっ……♡♡♡♡」


初めてであるはずの快楽と共に、萌香の脳裏には似たような光景が映し出されていった。見知らぬ場所で、会ったこともないはずの男に同じように跨り、搾り取るように快楽を貪る情欲の記憶。それらは紛れもない"萌香"本人が経験した出来事の記憶そのもので、それを皮切りに異なる魂を宿した萌香の肉体は、新たな主に自らの全てを明け渡していく。


「あー……♡ あはっ♡♡ これっ♡ぜ、全部あたしの記憶じゃん♡♡♡ あっ♡♡あははっ♡♡ やっぱ思った通り……♡」

「うぁぁっ! ち、違う……ぼ、僕、僕はぁ……! あぁっ!」


男としてのセックスという初めての経験を味あわせられている間、洋介の中でも同じことが起きていた。自分が女として、"山下萌香"として生きてきたこれまでの大切な思い出や経験。それら全てが塗りつぶされていくように、快感と共に濁流の様に流れてくる"石川洋介"としての記憶が、本能が、勢いよく彼女の魂を呑み込んでいく。


「気持ちいい?気持ちいいよね♡? よかったね、元自分のマンコで童貞卒業できてさぁっ♡♡♡ あははははっ♡♡♡♡」

「ち、ちがぁっ……! き、きもちよくなんて……あ、あぁぁっ!!」

「あっははっ♡ ねえ、さっきから自分から腰振ってるの気づいてる?そんな気持ちよさそうに涎垂らしちゃって、全然説得力ないんだけど♡♡ ほら、もっとあたしのことも気持ちよくさせてよね、童貞くん♡♡♡」


萌香は洋介の右手を掴み上げると、腰の動きと共に揺れる自身の乳房へと導く。精液まみれの手のひらを押し付けられた胸はぐにゃりと大きくその形を変え、その柔らかさと弾力を存分に男へと伝えていく。半ば熱に浮かされるように、朦朧とした意識で手の中にある柔らかい何かの感触を味わい、彼は気づけば両手を使い元々自分のモノであったはずの乳房を揉む感触を堪能していた。


「んっ……♡ そうそう…あんっ♡初めてにしては上手じゃん? でも、もっと優しく、ほら、腰使うのも忘れてるよ? ほらほらぁっ♡♡♡」


言われるがままに必死に手と腰を動かす洋介。そんな"男"の姿を、元々自分であったはずの身体と魂の情けない在り様を見て、新しい"萌香"はこれ以上ないほどの愉悦と快感をその心で味わっていた。


「あっ♡ ほらっ♡もっと突きあげてっ♡くぅんっ♡♡ もっと、もっとぉ♡♡♡」

「ふぅっ……ふぅっ……! うぁ、あぁぁぁ゛……!」


腰を振るたび、胸を掴むたびに上がる甘ったるい声。その度に、洋介の中で取り返しのつかない何かが失われ、それを埋めるようにして満たされていった何かによって、彼の中の興奮の度合いが際限なく高まっていく。

もはや彼の中に自分自身との性行為への嫌悪感や後悔はまるでなく、ただただ目の前の女性によってもたらされる快楽の奴隷となっていた。


「も、もう無理……!で、出る、ぼ、僕の……あ゛あ゛っ!!!」

「いいよっ♡出して♡♡♡"萌香"の全部をあたしにちょうだいっ♡♡♡ あっ、あぁぁぁっ♡♡♡♡♡♡」


限界を迎えた洋介のペニスから大量の白濁液が吐き出され、その瞬間、萌香の身体にも強烈な絶頂の波が訪れる。脳天まで貫くような強烈な快感と共に膣内をぎゅっ締め上げ、彼の微かに残っていた"萌香"としての名残さえも精液と共に一滴残らず絞り出していく。

静かになった部屋の中に、快感の余韻を味わいながら息を整える萌香と、初めて味わう強烈な絶頂により意識を手放して倒れ込んだ洋介だけが残っていた。




***




「ん……んぐぁっ!?」


股間をぐりぐりとこねくり回される刺激によって、洋介の意識は無理やり覚醒させられる。何が起きているのか分からないままでいたが、彼の目の前には隣人であり前から目をつけていた女子大生、そして元々は自分でもあった"萌香"が彼の股間を踏みつけにしながら立っていた。


「あ、あれっ!?なんで……」

「おはよう、変態さん♡ ふふっ、どうだった?元自分とのセックスは♡」

「あ…あぁぁぁぁぁぁ……!」


先ほどまでの記憶を思い出した洋介の顔色がみるみる内に青ざめていく。

欲望に流されるままに、自身の身体だった相手に欲情し、あまつさえ中出しまでしてしまった。その記憶を思い出して再び興奮してしまっている自分がいることを自覚し、自分が自分でなくなってしまったかのような恐怖と絶望が彼を襲った。


「な、なんてことしてくれたんだよ……!ぼ、僕の身体なのに……。 は、早く元の身体に戻ろうよ、こんな……」

「戻る?戻るわけないじゃん、誰があんたみたいなキモい男に戻りたいと思う? それにそんな時間ないと思うよ、もうすぐ来るだろうから。 あ、ほら」


萌香が指差した先に意識を向けると、遠くからサイレンの音が聞こえてくる。その音は次第にこちらに近づいてきているようだ。


「け、警察呼んだの!? な、なんで……」

「何って、あんたを逮捕してもらうためだけど? 下着泥棒のド変態さんには刑務所がお似合いでしょ」

「ち、ちがっ……!それは、君が、僕じゃなくて……」

「違わないでしょ、もうあんたはあたしじゃなくて、石川洋介っていう立派な男なんだから。 自分で犯した罪はちゃーんと自分で償わないと、まともな人間になれないよ?」


ドンドンと、強くドアを叩く音と人の声が聞こえてくる。どうやら警察は既に部屋の前まで来てしまったらしい。


「や、やだ……!なんで僕が……も、戻して、戻してくれよぉ……!」


半狂乱になりながら洋介は床に這いつくばり、萌香に向けて手を伸ばす。しかし彼女はそれを見下ろしたまま、彼を置き去りにするように背を向けた。


「心配しないで?これからはあたしがあんたの代わりに、ちゃんと"萌香"をやってあげるから♡」


かつて自分だった哀れな"男"にそう言い残し、彼女はドアノブに手を掛けた。




***




「あーあ、散々な一日だったなぁ。 痛たた……」


警察を見送った後、温かいシャワーを全身に浴びながら萌香は独り言ちていた。

期待して行った合コンは外れの男しかいなくて、そんな外れ共のせいで帰りが遅くなって、おまけに身体のあちこちに擦り傷まで作ってしまった。

傷を確認するために覗いた浴室の鏡には、ところどころに痣や傷ができた自分の、艶めかしい肢体が映っている。


「まあでも悪いことばっかでもなかったかな。だって、こんなにいいモノが手に入ったんだもん♡」


そう言って、萌香は自分の胸に付いた二つの膨らみをゆっくりと揉んでいく。それだけのことで彼女の口から甘い吐息が漏れ始め、同時に股間の割れ目からじわりと愛液が滲むのを感じる。

ほんの数時間前までは自分には無かったはずの器官を有した新しい身体と、新しい人生。それらが全て自分のものになったという幸福と優越感で、再び彼女の身体は熱を帯び始めた。


「んっ……♡ あ、いけないいけない。もう遅いしこんなんやってる場合じゃないや。 名残惜しいけどまあ、これからは好きなだけ楽しめるんだし、ね……♡」


胸を弄んでいた手を止め、シャワーで髪を濡らしていく。そうしてシャンプーを切らしていたことを思い出し、詰め替えを取りに浴室をあとにした。


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