めちゃデカ内気少女の蹂躙ゲーム
Added 2022-05-29 08:00:00 +0000 UTC蒼葉という女の子は実に平穏な人生を送ってきた。 少しだけ裕福なサラリーマン家庭に生まれ育ち、地元の公立小学校と公立中学校を卒業した後、人生初の受験を経て全寮制の私立高校へ入学した。 幼い頃からの読書好きが講じて入学後に選んだ部活動は文芸部、委員会活動では図書委員を務めるという絵に描いたような文学少女であった。 だからといって運動能力が低いということはなく、体育の授業で困るようなことはない。 極めて普通の女子高生、それが蒼葉という少女だ。 だが、そんな彼女も最近になって二つの大きな悩みを抱えることになってしまった。 「あ、また伸びてる……」 手に持った記録用紙を眺めながら少し大きめの溜息をついてしまう。 周囲のクラスメイトと同じように学校指定の体操着姿になった彼女は、身体測定が行われている体育館でポツンと一人で立ち尽くしていた。 彼女を陰鬱な気持ちにさせているのは、記録用紙の身長欄に記載された数値だ。 百八十六。 女子高生の平均を大幅に超過したその数値は、本人の希望に反して毎年のように更新され続けている。 中学校を卒業する時点では百七十センチ程だったというのに、高校に入学してからというもの急激に成長しているのだ。 蒼葉の着ている体操着が傍目に分かるほどパツパツなのも、購入時点での成長分の見込が大幅に不足していたことが原因である。 そろそろ買い替えなければいけないと思ってはいるが、前回の買い替えからまだ半年だと思うとどうにも勿体無く感じてしまい放置していた。 この急激な成長によって周囲から向けられる奇異の目が、蒼葉を困らせていることの一つ目であった。 小さなため息をつく長身少女だったが、そんな彼女の手から記録簿を奪い取る者があった。 「ねーねー、あおちゃんの見ーせてっ! ……うわっ、身長が百八十六センチで、バストサイズが九十九で、ウエストが」 「あ、ちょっと。読まないでください……」 「あー! それ返してよー!」 足音もなく近づいてきた友人に記録簿を奪われてしまった蒼葉は、周囲に聞こえるほど大きな声で数値を読み上げ始めた友人からさっと記録簿を取り返す。 そのまま腕を真上に伸ばしてみれば、小柄な友人がどれだけ頑張ってジャンプしたとしてもそれに届くことはないだろう。 無駄に大きくなった体の数少ない利点の一つであった。 「あの、えっと、朱奈さん、そういうのは止めてください」 この小柄な友人が蒼葉を悩ませる困り事の二つ目だ。 およそ百五十センチ程度の小柄な体躯にストレートの黒髪、猫のように愛らしい瞳が特徴的な友人は、ここ最近になって急に話しかけてくるようになった。 明るい性格で友人も多く、クラスの中心的な存在である朱奈に話しかけられると、自然と周囲の視線を集めることになってしまう。 これまで人付き合いは最小限でしかなかった蒼葉にとって、それは非常に居心地が悪いのだが、朱奈がそんな気持ちを理解できるはずもない。 「あのさー、私たち同い年なんだし、敬語は辞めようよ。なんか距離置かれてる感じするし」 「ご、ごめんなさい……」 「うん、許してあげる♪ だからそれ返して」 「だ、ダメです」 小柄な朱奈がピョンピョンと跳ねている様子は、まるでいじめっ子に取られた玩具を取り返そうとする幼子のようであった。 事情を知らない人間がそれをみれば、もしかしたらそう勘違いしたかもしれない。 だが、無駄に存在感を放つコンビの存在は周知のことであり、いつも通り戯れているだけだと誰も気にもしなかった。 結局、朱奈が諦めるまでその健気な努力に付き合ってあげた蒼葉だったが、授業時間終了の予鈴によって救われることになった。 午後の授業との合間にある昼休憩は、学生にとっては大切なひと時である。 生徒たちがいそいそと体育館を出て着替えるために教室まで戻ろうとする中、その中に混じっていた蒼葉の体操着を摘んで引き止める人がいた。 蒼葉が振り返ってみれば、そこに居たのは言うまでもなく不満げな表情を浮かべた朱奈であり、蒼葉は彼女に気づかれないよう小さく溜息をついた。 「ちょっとこっち来て」 「え、えっと、でも、早く戻らないと……」 「え、なに? 私の言うことが聞けないの? それってさ、あおちゃんのコスプレ趣味を全校生徒に知られたいってことかな? あのピンク色のフリフリドレスを着た魔法少女のやつとか、意外とウケるかもだし」 「そっ、それはもう言わないって約束したじゃないですか!?」 「あー、そうだっけ? じゃあ、あおちゃんが書いてる自分をヒロインにした夢小説を公開して欲しいってことか。小説の中に出てくる姫様役のあおちゃんの決め台詞は『貴方と共に最後まで戦わせて欲しいのです!』だっけ? あれ傑作だったもんね〜」 「あ、あ、ああ、その、なんでそんなこと知って」 「それともぉ〜、あおちゃんのスリーサイズを言い触らしちゃおうかな。私って記憶力がいいからさ〜、実はさっきので全部覚えちゃったんだよね〜。あおちゃんさ、自分がいやらしい身体してるって自覚ある? みんなエロい目であおちゃんのこと見てるんだよ?」 「…………あ、え、うぅ」 「ねー、どうかな? あんまり私のこと怒らせない方がいいと思わない? 私ってどっかの根暗ちゃんと違って友達多いからさ〜、誰かにうっかり話しちゃうかもしれないよね? もしそんなことになったら、あおちゃんが一番困るんじゃないかな〜?」 「…………わ、分かりました。朱奈さんの言う通りにしますから」 この小さな友人は二人きりになるとだいぶ印象が変わってくる。 いや、豹変すると言っても差し支えないだろう。 最初に今のような脅迫をされたときは足がガタガタ震えて、声がうわずってしまったことを鮮明に覚えている。 こんなことを日常的にしておきながら、敬語で接するなと言うのは難しい話だ。 コミュ力に乏しい蒼葉にとって、この友人を相手にすることはあまりにも荷が重い。 汗をかきながら震える蒼葉を満足そうに見上げる朱奈は、自分のものより一回り以上大きな友人の手を取ってツカツカと歩き出す。 二人は室内用の上履きを履いたまま、体育館の裏手にある薄暗い空間へやってきた。 日当たりが悪いのはもちろん、それによる湿気のせいか土がふかふかしており、所々に小さな雑草が生えるだけの薄暗い場所。 おそらくこの学園の誰一人として、こんなところに用事がある人間などいないだろう。 人の気配など微塵も感じさせないその空間に連れてこられた蒼葉は困惑気味だ。 「あ、あの、どうしてこんなところに……?」 「今から説明してあげるから少し黙っててよ。……あと私の正面で止まらないで。そのクソデカいおっぱいで何も見えなくなるから」 「ごめんなさい……」 ほんの僅かに苛立ちを声音に混ぜられただけで萎縮してしまう蒼葉。 その巨体を小さくモジモジさせながら脇に避けると、小柄な友人はフンと鼻を鳴らして周囲を見渡して何やら思案しているようだった。 さほど広くない空間を端から端まで観察した朱奈は、この場所が自分の想定通りの条件を満たしていることに満足してようやく小さな笑みをこぼす。 「じゃあ、今からあおちゃんには悪い人と戦ってもらうからね」 「え? 朱奈さんとですか……? でも、その、戦うのとか苦手で……」 「私なはずないでしょ。私とあおちゃんの体格差とか考えたことある? 陰キャの癖に思考がいじめっ子なのどうにかしなさいよ。……それに、戦うのは得意でしょ? だって、『開闢月華闇夜之騎士』なんだから」 「あ、あ、あ、えっと、あの、えっと……」 突如として耳に届いたのは蒼葉お気に入りのオンラインゲーム内でのプレイヤー名。 誰にもゲームのことを話していないはずなのに、どうして知られているのか。 文字としては毎日のように目にしているが、それが誰かの声となって耳に届くと急に恥ずかしくなってしまう。 「ご丁寧にプロフィールまで書いてあってさ〜。クラウン王国の王と女従者の間に生まれた望まれない王子でぇ〜、その秘密を知った王国暗殺部隊から命を狙われちゃってぇ〜、でもお母さんが命と引き換えに助けてくれてぇ〜、偶然そこに通りかかった元四剣将の一人であるカルメンに拾われて剣の手解きを受けてぇ〜」 「あ、あ、わっ、分かりました! 戦いますからっ……」 「ん? あおちゃん顔が真っ赤だけどどうしたのかな〜? これって全部あおちゃんが頑張って考えたんだよね? どっかで見たことあるパクリ設定ばっかりだけどさ♪」 「あ、あう、くぅぅぅぅ」 「はいはい、涙目になって俯かないの。言う通りにしてれば全部忘れてあげるからさ」 せっかく目を伏せたと言うのに、身長差のせいで簡単にしたから覗き込まれてしまう。 小柄な少女の猫のように可愛らしい、それでいて猫のように残酷な瞳に追い詰められた蒼葉は、逃げ場のない視線を空に向けることでなんとかやり過ごす。 「それじゃあ、あおちゃんが戦う相手を紹介しま〜す。異世界からこの世界を侵略しに来たヴィゼルット帝国の遠征偵察部隊の皆さんで〜す。その数なんと千五百人!」 パチンと。 朱奈が小さな指を擦り合わせるように音を鳴らした瞬間、ジメジメした狭苦しい空間に淡い光の輪が生まれ、そのまま急速に拡大していった。 蒼葉の好きなRPGの中では珍しくもない演出だが、現実にそれを見ればその幻想的な光景に思わず息を呑んでしまう。 ほんの数瞬で光は消えてしまったが、その後には先ほどまで何もなかった場所に小さなものがポツポツと、いや大挙して存在している。 鋼鉄の鎧に身を包んで槍や剣を手に持つ者、それと対照的に簡素な革鎧と弓を身につけた者など、歴史の教科書に載っているイラストのような服装をした者たち。 おおよそ数世紀前の装備に身を固めているのは、総数で千五百にもなる陸軍の一個大隊。 そして、特筆すべきはその大きさ。 最も大柄な兵士でようやく六ミリに達するかどうかという極小の存在は、今のように何百何千と集まっていなければ気付かれることもなかっただろう。 スケール比で三百分の一。 現代の技術を用いても、これほど小さな存在を本物そっくりに再現することは叶わないだろう。彼らが紛れもなく本物だからこそ、この現実感を生み出すことができるのだ。 「え?……な、なに、これ?」 「私の話を聞いてなかったの? 侵略しに来た悪い人って言ったでしょ? 今からあおちゃんがこの人たちと戦って、平和な世界を守るんだよ」 「……い、意味がわかりません」 「はぁ〜。ま、やりながら考えればいいんじゃない? はいこれクリア条件。昼休み中に終わらなかったらゲームオーバーね」 朱奈から半ば押し付けられるように渡されたのは、ノートのページを破っただけの簡素なメモであった。 朱奈の外見の可愛らしさとは無縁の無機質な文字で書かれているのは、蒼葉にとってゲーム内で見慣れた形式の文章だ。 クリア条件:敵兵士の殲滅。ただし、以下の要件を満たすこと。 冒頭がそんな言葉で始まり、その下には敵を撃破する方法について細かな指定が入っていた。 非現実的な状況だと言うのに、それを素早く理解できてしまうのは、これまで多くの創作に触れてきた成果なのだろう。 そうなると、先ほど朱奈が口にしたゲームオーバーという言葉が気になってくる。 普通に考えればミッションの失敗、という意味なのだろうが、あの怖い友人が本当にそれだけの意味でゲームオーバーという言葉を使っているだろうか。 「あ、もしやりたくなかったらそう言ってね。そんな覚悟があるなら、って話だけど」 「……わ、わかりました。これはゲームですね。その、えっと、最新のAR技術を使った体験型のゲームなんです。だからこの人たちは実在しないし、倒しちゃっても大丈夫なんですよね? そうですよね?」 「あー、ま、そう思いたいならそれでいいよ。なんでもいいから早くやって」 「ご、ごめんなさい……」 小さな友人に素気無くあしらわれた蒼葉は、地べたに展開している軍隊と正対する。 それほど熱心に歴史の勉強をした訳ではないが、戦略ゲームを通じて培った多少の知識はある。 彼らは一般的な平原での野戦を想定した陣形を整えているらしい。 左右に弓兵を配置し、中央には騎兵、その奥に重装騎士が控えている。 相対的に身長五百メートルを超える大巨人を相手にしても逃げ出さないのは、彼らが勇敢なのか、それとも無謀なのか、もしくは自暴自棄になっているだけなのか、蒼葉にはその本心を知る術がない。 「その、えっと…… 宜しくお願いします? なの、かな?」 眼下で陣形を整える兵士たちに向けて話しかける蒼葉。 今から虐殺する相手に対してかける言葉など思い浮かぶはずもなく、ほとんど無意味な挨拶になってしまった。 どうしようかと困惑している蒼葉とは正反対に、軍隊の動きは極めて迅速であった。 陣形の左右に展開している弓兵たちが一斉に駆け出し、蒼葉との距離を詰めていく。 彼らの持つ弓矢の射程はおよそ七十センチであり、その範囲ギリギリに巨人を捉えると、次々に矢を構えては放ち続ける。 相手が集団ではなく一個の巨体なのだから、それほど統制射にこだわる必要はない。 短時間のうちにどれだけ矢を射掛けることができるか、それこそが重要だった。 最初こそ蒼葉の顔面を目掛けて放たれた矢もあったが、どうあっても届くはずがないと分かると、その対象は足元へ移されていった。 蒼葉が履く二十八センチの上履き。 買い替えたばかりで真新しいそれは、爪先部分が学年色の青色をしたものだ。 左右それぞれに何百という矢が雨のように降り注いでいるが、それらは突き刺さるどころか傷をつけることもできていないようだ。 蒼葉が履く上履きの周囲には爪楊枝よりも細い矢が徐々に積み重なり始めている。 ときおり、風に乗って足の甲まで届く矢があると、蒼葉の白ニーハイソックスの生地に絡め取られて残ることがあるが、だからといってその奥に隠された素肌に傷を負わせることにはならない。 「あ、あの、あんまり意味ないと思います……よ? 全然痛くないですし……」 しばらく様子を見ていた蒼葉だったが、やはり小さな彼らが何をしたところで自分が怪我をすることがないと分かって一安心だ。 彼女は二・〇という良好な視力でしっかりと捉えているつもりだったが、それでも見てとれるのは兵士の動きまでであり、飛来する矢はどう頑張っても肉眼では見えなかった。 おそらく当たっているのだろうと予想して目を凝らし、ようやく上履きの周囲に矢が積もっているのを見つけて攻撃を実感したくらいだ。 巨人と小人の差はあまりにも大きく、兵士たちが受け止める徒労感は想像を絶するものだ。 ただ立っていただけで、何百という兵士の心を圧し折ったインドア派女子高生は、手に持った紙切れに視線を落としていた。 「えっと、最初は足で踏み付けて二百人倒せばいいんだ。……あ、えと、二百人ってどのくらいなんだろ? どこかに撃破数とか表示されないのかな」 「される訳ないでしょ……」 困り顔の友人を側から見ていた朱奈が小さく額を抑える。 この大きな友人を弄ぶために、彼女が理解しやすいよう好みのゲームに似せたのが良くなかったらしい。 このままでは、体力ゲージだの、残機だのと変なことを言い出しかねない。 そんなものは朱奈からすればどうでもいいことだが、いちいち対応するのも面倒だ。 「はぁ〜、分かった。そこに書いてある人数は全部『以上』って読み替えていいよ。多い分には問題ないから。これならできるでしょ?」 「あ、はい。……じゃあ、さっそく」 おもむろに右足を持ち上げる蒼葉。 ゴム製の靴底に刻印された28という数字は、紛れもなくこの少女が女の子の平均を大きく超える巨足の持ち主であることの証明だ。 当然、更衣室で上履きを取り違えられたことなど一度もなく、他のクラスメイトたちのものと並んでいれば一つだけ際立って目立つことだろう。 フカフカの地面を踏み締めていたことで、靴底に刻まれた凹凸の至る所に土が埋め込まれてしまっているが、その一つをほじくって取り出した量は、これからこの巨足で踏み潰される兵士の肉体と比較するとそれに勝る質量になる。 相対的に八十メートルを超える巨大な靴底を頭上に翳された弓兵たちは、手に持っていた武器を投げ出し、競い合うかのように隊列から抜けて逃げ出した。 中には迫り来る青ゴム製の靴底に向けて矢を射る者もいたが、そんな決死の反撃は残念ながら蒼葉の靴底に届くことなく、その手前で失速してどこかに消えてしまう。 「えっと、全部で千五百人だったはずだから、多分この塊がちょうど二百人くらいだと思うけど……」 ズン。 さも当然だと言わんばかりに、なんら容赦することなく足を振り下ろす蒼葉。 それが無数の命を奪い去る行為だとは考えもせず、まるで害虫を駆除するかのような無感動の一撃は、恐怖に耐えかねて絶叫する兵士たちをまとめて押し潰す。 数ミリという極小の生き物たちは、運が良ければ靴底の紋様の中で生き残ることができたかもしれない。 だが、残念なことに、フカフカの大地では蒼葉の七十キロ超の体重を受け止めることはできず、ズブズブとその場で沈んでしまう。 蒼葉の感覚では一センチに満たない程度の沈み込みだが、塵カスのような存在にとっては自らの身長を超えるだけの深さだ。 運の良し悪しなど関係なく、全ての兵士を平等に圧殺した巨大な上履き。 周囲に残された兵士たちは、片方だけで中規模の要塞に匹敵するそれが軽快に動く様子に言葉を失ってしまう。 先ほどまでのようにじっと動かずにいれば、それは大自然の一部のようであって、直接的な恐怖を生み出すものではなかったが、こうして動き出せば無慈悲な殺戮兵器となる。 それが女の子の片足に過ぎないなど、誰が信じることができるだろうか。 「えっ? なんの感触もなかったけど大丈夫かな……? うん、ちゃんと潰れてるね。な、なんかグロテスクで嫌だなぁ…… 靴も汚れちゃう……」 何十何百という人間を踏み潰した足を持ち上げ、その靴底を確認した蒼葉。 先ほどまでは土だけがこびり付いていたはずの靴底は、今は小さな生き物たちの血肉片が入り混じって泥汚れのようになっていた。 それはあまりにも酷い光景であったが、それを生み出した本人には大した感慨はない。 彼らがもう少し大きな体であって、押し潰される感触を蒼葉に与えることができれば多少は反応も違ったかもしれないが、それは無理なことである。 「あ、でも本当に二百人いたかな……? 逃げ出しちゃってる人もいたみたいだし、足りなかったら嫌だなぁ…… うん、念のためもう少しだけ足で倒しておこう」 大きな女の子のちょっとした不安を取り除くため、再び巨大な殺戮兵器が動き出す。 次の犠牲者に選ばれてしまったのは、隊列から外れて逃げ出した弓兵たちだ。 蒼葉に背を向けて一心不乱に走る彼らは、自分たちの頭上を巨大な何かが追い抜いていくことに気が付き、ふと上空を見上げた。 丸みを帯びた巨大な橋がどこまでも伸びている様は、遠目に見れば虹のようだと表現したかもしれない。 しかし、蒼葉の長い脚は、太ももの半ばまで覆い尽くす白いニーハイソックスによって覆われており、残念ながらその色は白一色でしかない。 呆け顔で女の子の裏腿を見上げていた兵士たちは、自分たちの行手に巨大な上履きが振り下ろされた衝撃で我に帰る。 だが、彼らが現状を把握して行動に移すよりも、蒼葉が伸ばした脚を手元に引き寄せることで数十人を轢殺するほうが遥かに早かった。 兵士たちは超高速で押し寄せる青色の巨壁に対してあまりにも無力であり、ゴム底に触れた瞬間に血飛沫となり、その直後には引き摺られる土の中に混じって見えなくなってしまう。 「これなら足りるよね。じゃあ次は……え、なにこれ……」 手に持ったメモに視線を這わせた蒼葉は、騎兵隊に太ももで勝つ、というお題に首を傾げる。 先ほどのように倒すだけであればシンプルな話だが、わざわざここで勝つという表現をしているのだ。 無意識のうちに自分の太ももに手を当ててみれば、薄らとついた柔らかい脂肪とその奥にある筋肉が手のひらを受け止めてくれる。 ニーハイの吐き口が少し狭いためか、腿の肉に食い込んでしまっているのが、自分でも少し恥ずかしい。 艶かしさを放つその美脚は、ときおり周囲の視線を釘付けにしてしまう魅力を隠そうともしなかった。 「あ、あの朱奈さん。太ももで勝つって書いてあるんですけど、これってなにをすればいいんですか……?」」 「はぁ〜。たまには自分で考えてみたら?」 「え、そ、そんな…… もし間違えたらどうせ不機嫌になるくせに……」 「あおちゃん、なんかたまにイラッとすること言うよね。天然煽りは良くないと思うな。……分からないなら飛ばして次のやつからやったら?」 「次…… あ、これは簡単そう」 お尻で一度にまとめて三百人を倒す。 そんな短い一文が書かれているだけで、迷う要素などありはしなかった。 だが、ネックになるのは、一度にまとめて、という部分だ。 情けないことに、蒼葉がほんの二回だけ足を使って虐めたことで、兵士たちは完全な狂乱状態に陥っており、あれだけ見事だった隊列は既に瓦解している。 各々が勝手に逃げ回っているせいで、いくら九十二センチもある巨尻だとしても、三百をまとめて捉えることは難しくなっていた。 「どうにかして集めなくちゃ……。うーん、えーっと、 ……あ、そうだ!」 蒼葉は周囲に使えそうなものがないかキョロキョロ見渡すと、風に乗って飛んできたらしい一枚の紙を見つけた。 今日の身体測定に関する開催告知であるこれならばもう使う人もいないだろう。 それを裏返して真っ白な面を上にして地面に置き、動かないようにするために四隅に少しだけ土を被せた。 「あ、あの! 兵隊さんたちにご提案があります! えっと、て、停戦をしませんか? お互いに誤解があったみたいですし、ちゃんと話し合えば解決できると思うんです。この白い紙の上に乗ってくれたら、何もしないとお約束します。……えっと、その、乗ってくれなかった人は、その…… ど、どうなっても知りませんからっ!」 蒼葉にしては珍しく少し大きな声で呼びかけてみる。 幸いにもこの小さな生き物たちには言葉が通じるらしく、困惑しながらも少しずつ白い大地に足を踏み入れる者が出てきた。 それを見ていた他の兵士たちも、周囲の戦友たちと互いに顔を見合わせながらも、意を決して白い大地に向けて走り出す。 あまりにも一方的な蹂躙によって多くの仲間を失ってしまったものの、先に攻撃を仕掛けたのは確かに自分たちの方であった。 巨人の女の子が言うように、自分たちが争う理由など存在しないのだ。 話し合いによってこの大虐殺が終わるのであれば、それに越したことはない。 周囲に逃げ散った兵士たちの間に、徐々に厭戦気分が広がると、蒼葉の提案に乗ってプリント用紙の上に集まる人間の数は増え続けていく。 改めて集まった兵士たちは、自分たちを見下ろしているのが、創造神話に出てくる神のごとき存在であることを改めて認識し、そしてその神様が随分と可愛らしい容姿をしていることにようやく気がついた。 まだ十代、それもその半ばほどだと思われる顔立ちの少女は、整った顔立ちに反して何処か所在なさげにしているようだ。 「あ、えっと、みんな集まってくれてありがとうございます……」 蒼葉にとって必要な人数が揃うのは思ったよりも早かった。 指先ほどもないような小さな生き物たちが白い紙の上で蠢いている様は、どうにも授業中に出た消しゴムのカスを連想させてしまう。 こんなものが自分と同じ人間なのだと言われてもそれを信じるのは難しい。 彼らは一様に蒼葉の次の言葉を待っている……のかもしれないし、あまりにも声量が小さくて蒼葉が聞き取れていないだけなのかもしれない。 どちらにせよ蒼葉にとっては関係ないことであり、その証拠に彼女は彼らに対して背を向け、背中越しに小さな生き物を見下ろしていた。 誰の目にもそれが停戦交渉をしようとする者の態度でないことは明らかだ。 「だいぶ集まってくれてるし、これなら足りるよね。……えーっと、あの、嘘をついてごめんなさい。でも、こうしないとゲームがクリアできないから仕方なかったの。す、すぐに終わるから怖くも苦しくもないよ」 その長躯を素早く折り畳むようにしてしゃがみ込む蒼葉。 本当であれば、この勢いのまま座り込んでしまうつもりだったが、お尻が痛そうだったので直前で止めてしまった。 彼女の履く青色のショートパンツは、成長を続けるお尻の丸みを完全には隠しきれないようで、布越しでも奥にある柔らかいお肉の存在を見せつけてしまう。 蒼葉が用意したA4サイズの用紙など容易く覆い隠してしまえるだけの尻肉は、停戦交渉を信じてそこに集まった兵士たちにとって新たな空となった。 青色の布地であるはずのそれは光の差し込まない地表から見上げると純黒に見える。 圧倒的な質量を有している女子高生のお尻。 兵士たちが仕える帝国の首都、そのシンボルたる大神殿よりも巨大なそれを頭上に突きつけられた彼らは、言葉にならない悲鳴をあげる。 「え、えいっ」 出来るだけお尻を痛くしないように、それでいて小さな兵士たちが逃げ出してしまえないように、蒼葉は慎重にその場に素早く座り込んでしまった。 尻が落下するまでの僅かな時間、巨大な女の子に騙されたことを悟った兵士たちは、迫り来る巨尻に向けて罵声を浴びせるか、情けない悲鳴を上げながら逃げ惑うか、泣きながら聞こえもしない命乞いをしていた。 その全てをむちっと広がる蒼葉のお尻が押し潰し、兵士たちを小さなシミに変えてしまう。 予定通り三百を超える兵士たちを一撃の元に葬り去ったことで、彼らの血肉がショートパンツにこびり付いたが、残念ながら生地の背面に浸透するほどの血液量ではない。 先ほど上履きの下敷きとなって人生を終えた二百余名の兵士たちと同様、残念ながら蒼葉に不快感を与えることもできないまま、彼らの命は使い尽くされてしまった。 「こ、これでいいんだよね……? 二回目は流石に集まってくれないだろうし、クリアできてなかったらどうしよう……」 兵士たちにとっては極めて卑劣な騙し討ちであり、それでいて無慈悲な虐殺。 もはや生き残りの兵士たちにとって、この巨人は恐怖そのものと言っていいだろう。 圧倒的な力を有しながらも、それを振るうことに何の躊躇もない。 彼女からすれば自分たちなど虫ケラ、いや、大きさを考えれば虫ケラですらないのだ。 そんな存在を相手にすることに躊躇いがないのは当然といえば当然のこと。 「あ、あの、朱奈さん、これって大丈夫でしたか……?」 「あー、そうね、楽勝なんじゃない? あおちゃんのズッシリどっしりデカ尻、多分だけど五百人近く抹殺してるから。おー、怖っ」 「そ、そうですか。よかったぁ……」 「……あのさ、小人たちを騙して希望を与えてから大虐殺したって自覚ある? もの凄く卑劣なことした罪悪感とかないの? 正直、ちょっと引いてるんだけど」 「え? でも、これは朱奈さんがやらせてることだし、ただ座っただけだから……」 「…………」 全く悪びれる様子を見せない友人に向けて小さくため息をつく朱奈。 規格外に大きな友人は今のように座り込んでいても、立っている自分とそれほど視線の高さが変わらない。 いつものように目をオドオドさせてはいるものの、課題をクリアできたことに対する安堵感を浮かべているのが印象的だ。 小さな生き物たちを何百とまとめて押し潰したことなど何とも思っていないのだろう。 どこか薄寒いものを感じるが、それを口に出すのは何か負けたような気がして嫌だ。 「ま、まぁ、いいか。……ほら、せっかく座ってるんだからさっきの課題をやってみたら?」 「あ、はい。……えっと、騎兵さんたちも近くにいたはず」 キョロキョロとあたりを観察する蒼葉は、ちょうど自分の真後ろに生き残った騎兵部隊が存在していることに気がついた。 うっかり潰してしまわないよう、慎重に両脚を持ち上げながらお尻を軸に反転し、彼らに向き直る。 その直後に白ニーハイを履いた両脚をそれぞれズンと地面に下ろし、股間部と合わせて彼らの周囲三方を囲い混んでしまう。 一瞬前まで存在しなかった女体の檻に閉じ込められた兵士たちは、何度も見せつけられた圧倒的な力による虐殺を恐れて涙する。 帝国軍において騎兵とは花形の主戦力であり、貴族のみが所属できる高貴な部隊。 それがたった一人の女の子、それも股間と太ももに囲まれて怯えているのだから滑稽だ。 「あ、あの、騎兵さん、私の太ももと戦ってくれませんか? よくわからないんですけど、皆さんに太ももで勝たないといけないらしくて…… あっ」 蒼葉の声を無視するかのように、兵士たちは馬の手綱を引いて駆け出してしまう。 彼らが向かうのは唯一、閉ざされていない足先方向。 両脇に横たわる柔らかさそうな女子高生の脚には目もくれず、一心不乱に出口に向けて馬を走らせた。 途中で手に持っていた槍や剣、果ては鎧までも放り投げ、少しでも身軽になろうとする始末。もはや騎士の誉など考える余裕もなく、とにかく生き残りたいが故の行動だ。 だが、彼らを股に捉えている長身女子高生にとって、それはとても困るものだった。 逃げられてしまうと面倒なことになると考えた蒼葉は、咄嗟に両脚を膝から曲げると、両足の裏をピッタリと合わせるようにして彼らの行手を閉じてしまう。 ダニのような極小生物が思い描いた死地からの離脱という希望は、ほんの一瞬にして打ち砕かれてしまった。 「えっと、その、もう逃げられなくなっちゃいましたから、大人しく諦めてください。……ここを攻撃してくれるだけでいいんです。ほら、フニフニしててとっても弱そうですよ。もしかしたら勝てるかもしれないじゃないですか」 ニーハイソックの吐き口とショートパンツの裾の間。 その僅かな空間に露出している素肌を自らの指でつつき、その柔らかさをアピールする蒼葉。 本人にしてみれば思ったよりもお肉がついていて気になるところではあったが、それを見せつけられた兵士たちにとっては呆然とするほかない。 それが人差し指だと分かっているというのに、まるで大樹のような存在に見えてしまう。 十代の女の子、その絶対領域に過ぎない場所が小高い丘に見えてしまう。 身長僅か数ミリの矮小な存在にとって、蒼葉の弱々しさアピールなど何ら価値のないものだった。 兵士たちがその場で震え上がり、満足に動くことができないのも無理はない。 「あ、あのー、その、何だか恥ずかしいので出来れば早くして欲しいんですけど……」 大股を広げて座り込む蒼葉は、自分の股間の前で大勢の人間が蠢いている状況に僅かな羞恥を覚えていた。 それが例え指先ほどのサイズもない微生物が相手であっても、言葉が通じる存在だと分かってしまえば自然と意識してしまう。 ジロジロとした何百という視線が脚と股間に注がれているという想像は、内気な少女を焦らせるには十分な威力だ。 そして、内気ながらもドライで自己中な少女は、脚の檻に閉じ込めた極小兵士たちに言うことを聞かせる方法をあっさりと思い付いた。 人差し指を突き立てた右手をその狭い空間に翳すと、最初に目に付いた兵士をそのまま指先で捉え、大地に押し付けてから捻り潰す。 兵士たちはあまりに唐突に行われた処刑によって、自分達が閉じ込められている空間が、この瞬間から無慈悲な殺戮空間となったことを思い知らされた。 「ほ、本当はこんなことしたくないんです。でも、言うこと聞いてくれないから……」 ツン、ツン。 蒼葉が指先を振るうたびに一つの命が弾けて消える。 少女はもう小さな生き物を潰すことに慣れてしまったのか、躊躇う様子は全くない。 まるで作業であるかのように淡々と兵士たちを抹殺していく蒼葉。 唯一、彼女が気をつけているのは、爪の間に土が入ってしまうことだけであり、その証拠に極小生物を押し潰すのは確実に指の腹だ。 そのまま十数名ほどを無惨な肉片に変えると、ようやく兵士たちは動き出してくれた。 投げ出した武器を再び手に取り、空いている馬を見つけて跨ると、どっしりと横たわっている肉の山に向けて駆け出す。 周囲を見渡せば自分と同じようにフニフニの太腿に向けて駆ける兵があった。 弛まぬ訓練の果てに完成した騎馬突撃は、幾度も隣国の軍隊を蹴散らし、数えきれないほどの勝利を帝国にもたらしてきた。 兵士たちの肉体に染み付いた必殺の一撃は、人馬の重量と高速が織りなす破壊力をもって蒼葉のニーハイソックスに襲い掛かり、特になんら傷を負わせることもないまま戦死者を増やす。 極小生物にとっての女子高生の太ももとは、鋼鉄すら上回るほどの強度と質量を有する絶対の壁であり、そんなものに衝突すれば命が助かるはずもない。 兵士たちにとっては命を捨てた特攻だったが、手間がかかった割に面白味がないというのが蒼葉の正直な感想だった。 狂ったように突撃をしては巨大な太ももに打ち据えられて死んでいく兵士たち。 その様子をしばらく観察した蒼葉だったが、課題のクリアに十分と思われるだけの犠牲者が生まれたのを確認すると、安堵のため息を吐いた。 「ふぅ……。あ、兵士さんありがとうございました。もう大丈夫だと思うので、これ以上は無駄に死ななくていいですよ。……あ、でもなぁ」 これ以上、彼らが死ぬ必要はない。 ゲームのクリアだけを考えればそれは間違いなく事実であった。 同僚たちの死を無駄死にと断言されたことへの怒り以上に、助かるかもしれないという可能性に喜びを見出してしまうのは人の性だ。 だが、そんな彼らは突如として鳴り響く地響きに驚き周囲を見渡す。 世界が縮む。 死の間際、そんな馬鹿げた感想を抱いてしまったのは、羞恥心を隠すために長身女子高生が両脚を閉じ始めたせいだ。 元々それほど広くはない空間は、少女の脚が生み出していたのだから、それを閉じれば当然ながら空間は消失してしまうのだ。 問題はそれに百を超える生存者たちが巻き込まれてしまうということ。 いや、巻き込まれるというよりかは、それを引き起こした本人にとっては彼らの抹殺こそが目的なのであった。 小人たちにとっては巨大な山であったとしても、実態はただの太腿と脹脛。 それを合わせることなど、鈍臭い少女であっても一秒もかからないことだ。 それ故に、少女の股間を前にして生き残ったことに安堵していた人々は、命乞いをする暇すら与えられず、太ももによって擦り潰されてその人生を終えることになったのだ。 「あ、その、助けてあげてもよかったんですけど…… 股の内側をジロジロ見られるの恥ずかしかったし、言うこと聞いてくれなかったりしたので、どうにもそんな気になれなくて…… えっと、ごめんなさい」 要するに気に入らなかったと言うだけの理由で百数十人の命を奪い去った蒼葉は、まるで謝意の気持ちを含まない謝罪を口にしながら、手元のメモに視線を落とす。 残っている課題は次で最後だ。 もう小人を虐めることに慣れてきた蒼葉としては早めに終わらせてしまいたかったが、突如として傍から伸びてきた細腕にメモが奪い取られてしまった。 「はい、時間切れ。あおちゃんはゲームオーバーです」 「……え? で、でもまだ昼休憩の終わりチャイム鳴ってないですよ?」 「あのさ、私たちまだお昼ご飯食べてないでしょ? 着替えもしなくちゃいけないし。いくら鈍臭いあおちゃんでもそのくらい分かるよね」 「……はぁ、朱奈さんは自分の思い通りにならないとすぐにそうやって」 「ん〜? 何か文句があるのかな、開闢月華闇夜之騎士(笑)さん?」 「…………うぅ。な、なんでもないです」 これ以上の抗議は余計な藪を突くことになると理解した蒼葉は、小柄な友人に促されるがままにその場で立ち上がる。 二人が並んでみればその身長差は歴然としており、朱奈が僅かに屈めば蒼葉の胸下へ潜り込んでしまうことができそうだ。 大人と子供。 それは蒼葉が何度も頭に思い浮かべた表現だったが、もし口にすれば朱奈に何をされるか分からない。 「じゃ、クリアできなかったから罰ゲームね。このクソデカお乳をたっぷり弄ぶから」 「!? あ、え、そ、そういうのはお家にいる時だけって決めたじゃないですか!」 「だから何? ……あ、そうだ。ついでに残りの虫ケラたちも始末しちゃおうか」 朱奈が軽く人差し指を振るった瞬間、小さな兵士たちが現れたときと同じ淡い光が周囲を包み込み、地表に散らばって蠢いていた兵士たちが姿を消した。 どれだけ遠くに離れていても、どれだけ巧妙に姿を隠していても、そんな些細な努力を嘲笑うかのように朱奈の力は彼らを牢獄へと送り込む。 巨人による殺戮劇から逃れたはずだった二百数十人の兵士たちは、突如として送り込まれた、真っ暗で生暖かい空気が滞留する異空間で困惑するばかり。 さらにその困惑を深めているのが、蒸せるような女の体臭。 逃げ場のない空間で醸成された若い女の匂いは、極小生物たちの雄としての本能を大いに刺激した。 蒼葉のおっぱいとブラの間に存在する僅かな隙間は、彼らの死に場所としてはあまりにも滑稽でありながら、同時に贅沢なものでもあった。 「はい、準備完了〜」 「あ、あの、あの、何か、何かが胸でこちょこちょしてて、その、くすぐったいんですけど、何したんですか」 「はぁ、あのさぁ、世界線を超えて連れてこられるんだし、そのクソデカおっぱいの上に移動させるくらい訳ないでしょ。……あおちゃんのおっぱい、今まさに何百って男たちが好き放題にしてるんじゃない? 制欲の捌け口、ってやつ」 「…………うぅ、うううう。ひっぐ」 「あ、泣いちゃった。……しょうがないなぁ。あおちゃんを泣かせるチビたち、私が退治してあげるね♪」 可愛らしい顔を曇らせる大きな友人を見上げつつ、背筋に込み上げるゾクゾクする何かを楽しむ朱奈。 正面に向き合ったままの長身少女が着る体操着、その上衣の裾から小さな手を潜り込ませると、柔らかい腹部を撫で回しながらおっぱいを目指していく。 お腹を触られるのが恥ずかしいのか、ときおり巨体がピクっと反応するのが面白い。 ちょっと意地悪をしてやろうと思い、臍の穴に小指を引っ掛けてクリクリ刺激してやると、普段の気怠げな表情からは想像もできないような艶っぽい声が漏れ聞こえる。 「あのさ、あおちゃん。そのエッチな声を他に人に聞かせちゃダメだからね? そんなの聞かされたら、止まらなくなるのが普通だから。めちゃくちゃにされちゃうよ?」 「いま、もうされてる……」 「え、こんなのが? ……はぁ、この純粋培養デカ娘は本当に…… ま、いいか」 友人の性的な知識と経験が薄いことは良くも悪くもある部分だ。 彼女を玩具のように弄べるのは自分だけなのだから、たいして問題になることはないだろう。 朱奈はもう一度、友人のヘソをクリクリして虐めてから、ようやく何百という兵士たちが待っているブラの縁に指を添わせる。 巨大な脂肪の塊は、固いブラパットの奥でどっしりと構えているかのようだ。 「ねぇ、あおちゃん。直接触られるのと、下着越しに触られるの、どっちが好き?」 「……し、下着の上からがいいです」 「ま、そう言うよね。……じゃ、お邪魔しま〜す」 朱奈が指先を押し付けると、蒼葉のおっぱいは抵抗することなくムニッと沈む。 その瞬間、突如として床を無くした兵士たちがポロポロとこぼれ落ち、朱奈の指先に衝突しては息絶える。 中には朱奈の指先と蒼葉のおっぱいの間に挟まり、そのまま押し潰されてしまう者もいた。 本来であれば気持ち悪がった朱奈に払い除けられてしまうのだろうが、それが起きたのは体操着の内側でのこと。 小柄な巨人も、大柄な巨人も、その小さな死を感知することはなかった。 ブラとおっぱいの間に隙間を生み出した朱奈は、そこから遠慮なく指先を滑り込ませる。 手のひらに感じるのは柔らかく温かい人肌。 朱奈が指を僅かにクネらせるたび、大きな友人は顔を真っ赤にして恥じらう。 「んっ、んんっ! し、下着の上からって言ったのに……」 「そうだっけ? ……ほら、あおちゃんの巨乳でたくさんのチビたちがプチプチしてるけど、これってどんな気持ち? もう殺し過ぎて慣れちゃったかな?」 「あ、やめ、もう、やめて…… ひぅ!!」 「あおちゃん、本心だと小人たちの命なんてどうでもいいと思ってるもんね。ちょっと恥ずかしい秘密をバラされなくないからってだけで大虐殺しちゃうし、自分の目的のためなら平気で嘘ついて騙し討ちにするし、今も大勢が無惨に死んでるのにおっぱいの気持ち良さしか感じてないもん。……そんな悪い子にはお仕置きしないとだよね♪」 「ち、違いますっ…… だって、朱奈さんが……あっ」 うるさいことを言い出した友人を黙らせるため、朱奈はブラの内側に潜り込ませた指先を手加減せずにクネらせる。 柔らかい脂肪を揉みしだく手つきは慣れたものであり、蒼葉は体をこわばらせて耐えることしかできなかった。 口元から溢れる妖艶な吐息、しっとりと汗に濡れる髪、徐々に高まる体温。 おっぱいの上で小さな生き物が弾け飛ぶたび、温かい液体がその素肌に染み込むようだ。 瞳に涙を浮かべて息を切らしながら拒絶の言葉を紡ぐ蒼葉であったが、残念ながら小柄な友人はそれを無視して好き放題に弄り続ける。 暗黒空間に閉じ込められていた兵士たちは、突如として侵入してきた女子高生の指という肌色巨竜が暴れ回ることになんら抵抗できない。 次々にその命を散らし、生暖かい汚れとして少女の素肌にこびり付いてしまう。 逃げ場のない閉鎖空間で正体不明の巨大生物に襲われた彼らは、実に情けない悲鳴をあげるのだが、哀れなことにイチャつく二人の耳には届くことはなかった。 「ん、そろそろいいかな。あおちゃんのおっぱいに忍び込んだクズはみんな死んだよ」 「…………グスッ」 大きな友人をたっぷりと虐めて満足そうな朱奈と、小柄な友人に好き放題されたせいでグッタリしている蒼葉。 遠目には親子ほどの体格差がある二人であったが、その関係性はだいぶ異なるのだろう。 しばし俯いていた蒼葉だったが、下唇を噛み締めて小さな友人を見下ろす。 だが、そのまま何も言えないのは、立場の違いを教え込まされてしまったからだろう。 一方、朱奈も反抗的な視線を向けてくる長身美少女の迫力に押されてちょっとビビるが、 相手が何も言ってこないのでひとまず胸を撫で下ろす。 「さ、小人を虐める感覚は掴めた? 放課後が本番だから、授業が終わったらすぐに私のところに来てね」 「……もう虐めないって約束してくれるなら行きます」 「約束? ……あ、うん、いいよ。約束してあげる」 朱奈の言葉は綿毛のように軽くフワフワしたものだ。 どうせその約束は守ってもらえないんだろうな、と思いつつも蒼葉は小さく頷いた。 放課後、蒼葉は先ほどとは反対に今度は異世界側に転移させられ、昼休憩のときの比ではないほど酷いことをさせられることになるのだが、それはまた別のお話である。 〈終わり〉