知見を広める異文化交流(前編)
Added 2022-03-25 11:00:00 +0000 UTC人は広い空間にいると開放的な気分になれる。 特に何時間も窮屈なシートに体を埋める必要がある飛行機で移動した後、腕を空に突き上げるようにして背筋を伸ばすのは快感ですらある。 目的地までの長時間フライトを終えて空港ターミナルへ降り立ったシャルロットは、周囲からの視線を気にすることなく力一杯に背筋を伸ばしていた。 周囲の人々が彼女に視線を向けるのは、彼女が百八十センチという長身であることはもちろん、グレーの薄手半袖シャツに長い脚を剥き出しにする濃紺デニム生地のホットパンツ、足元には真っ白なスニーカーというシンプルな服装であることも手伝っているだろう。 なんら飾り気のない服装であるが、それが余計に彼女の身体に備わった暴力的なまでの女性らしさを引き立て際立たせてしまっている。 そんな抜群のスタイルに加えて大人びた顔立ちをしており、ブロンドのロングヘアーがその顔に少しかかって艶かしさを醸し出す。 誰の目に映ったとしても、彼女がまだ十四歳だと正確に見抜けるものはいないだろう。 「うーん、今日はどうしよっかな〜。少しくらいは観光してもいいかな」 シャルは空港の壁際に並べられていた観光用パンフレットを手に取った。 薄い冊子であるそれをパラパラと捲ってみるが、紹介されているのはこの国の歴史とその遺構ばかり。そのどれもがシャルの興味を引くものではなかった。 この国を選んだときから察してはいたが、どうにも面白味のない三流国家としか思えない。 小さなため息をついたシャルは、手に持っていたパンフレットをくしゃくしゃに握り潰してその場に放り落とすと、ターミナルの出口を目指して歩き去る。 彼女が一歩踏み出すたびに乳と尻が大きく揺れ動く、彼女があえて周囲に見せつけるようにしているからだ。 「あ、先にランチにしよっかな。……この国の郷土料理はどれもクソ不味そうだったけど♪」 彼女の意識に刷り込まれた根強い差別意識は強固なものだ。 この小さな国と彼女の暮らす国には比較する意味がないほどの経済格差があり、シャルロットの毎月のお小遣いはこの国で暮らす人々の平均年収と大差がない。 もちろん、それによって生じる軍事、科学、医療、芸術、スポーツなど、あらゆる分野でこの国は劣っているのだ。 この国を一言で例えるならどう表現するか、という質問を誰かがシャルにすることがあれば、彼女はおそらく「劣等国」と言って切り捨てるだろう。 そんなシャルロットの背後から彼女を呼び止める声がする。 立ち止まって振り返ってみれば、どうやらこの空港の職員らしい低身長の男が声を掛けており、彼の手には先ほどシャルが放り捨てた紙屑が握られていた。 どうやらシャルの行儀の悪さが気に入らなかったらしく、ゴミを捨てるなと怒鳴っているらしい。 「あー、うん。なんかうざいチビがいるし、やっぱもう始めちゃお」 劣等国に住む劣等国民に自分の行為が否定されるなどあってはならない。 例えそれがどれだけ筋の通った正論であったとしても、シャルはそれを認めないのだ。 彼女はいつもと同じように胸中の中で光が弾けるイメージを抱くと、それに呼応するように彼女の身体が膨らんでいく。 最初こそ多少の違和感を抱く程度の変化でしかなかったが、それが急速に加速していくことで周囲の人々から悲鳴が湧き上がる。 数秒のうちにターミナルの天井を狭く感じるほどまで大きくなった彼女は、十八メートルの巨体で先ほど自分を呼び止めた男を見下ろす。 何が起きているのか分からない、といった表情でシャルを見上げたまま動けないでいた男は、先ほど自分が拾ったばかりの紙屑を無意識のうちに落としてしまった。 「お前さぁ、私に文句つけるとかちょっと生意気じゃない? ……反省させないとね」 男の視界が真っ黒に染まるのは次の瞬間だった。 その巨体に見合わない俊敏さで伸びてきたシャルの足。その真っ白な靴底で突き飛ばされ、そのまま床に押さえ付けられてしまったのだ。 スニーカーの靴底は本来であれば白色であるが、眼前全てを覆い尽くされたことで光が遮られた男には黒いようにしか映らない。 体重七十トンの少女を支えることができるスニーカーは、それ時代の質量も凄まじいものであり、その靴底は分厚いゴムで作られていた。 そんな岩石のような靴底と衝突する際に鼻を圧し折られてしまった小男でも、その濃密なゴムの臭いは嗅ぎ取れる。 いや、嗅ぎ取れるのではなく、強引に嗅がされていると言ったほうが正しいだろうか。 「ははっ、なんかブニョブニョしてキモいんだけど」 踏み付けた小男の必死の抵抗が足裏に伝わってくる。 おそらくは全力で暴れ回っているのだろうが、十四歳の女の子が履く二十七センチのスニーカーは微動だにしない。 靴底を押し退けようと腕を突き上げ、それが無理だと分かればなんとか抜け出そうと匍匐前進を試みる。そんな懸命ながら無意味な抵抗も、彼女がズリズリと靴底を擦り付ければ途端に感じ取れなくなってしまった。 サッカーボールを弄ぶかのように男の体を前後左右に振ってみたシャルだったが、どうやらそれだけで首の骨を圧し折って殺してしまったらしい。 足を持ち上げて見てみれば、難い靴底で擦られたことで衣服と皮膚がズタズタに引き裂かれた無惨な死体が転がっている。 ほんの数秒間、それも軽く虐めた程度でも人間は死んでしまうのだ。 十八メートルの巨人は、あまりにも強くなりすぎた自分に思わず苦笑してしまう。 十二歳でこの力に目覚めて以来、もう数えることもできないほど多くの人命を奪い去ってきたシャルであるが、何度やっても圧倒的な優越感と強烈な背徳感は彼女の心を震わせる。 自分がどれだけ残忍なことをしているかを理解していても、その快楽に逆らえないのだから仕方ない。 彼女はまだ十四歳。感情のコントロールなどできないし、仮にできたとしても彼女がそれをする理由はないのだ。 「あはっ。ずしーん☆」 持ち上げていた足を勢いよく振り下ろす。 真下に横たわっていた男の死体を叩き潰し、無数の小さな肉片に変えて周囲に撒き散らす。 七十トンの体重で容赦なく破壊された人体は、文字通り弾け飛んでしまったのだった。 人間がより大きな人間に踏み潰されるという異常事態を目の当たりにして、ようやく周囲の人々は呆然とシャルロットを見上げるのをやめた。 ある者は悲鳴を上げ、ある者はシャルに背を向け走り出し、一部のものはターミナルに設置されたベンチの下へ逃げ込んだ。 自分を中心にして周囲へ混乱が伝播していく光景は何度みても痛快だ。 まるで自分が映画に出てくる化け物にでもなったかのような気分。 だが、もちろん自分は意思も知能も持ち合わせた人間であり、映画の化け物よりも何倍も凶悪なことができてしまうのだ。 「準備運動がてら遊んであげてもいいかな。……ほら、早く逃げなって」 足元で腰を抜かして座り込んでいた若い男を蹴り飛ばすシャル。 スニーカーの硬い爪先が男の上半身に直撃すると、骨が砕け散る嫌な音が周囲に響くのと同時に一人の人間が宙を飛ぶ。 常人の千倍もの体積を有した少女に蹴られた男は既にこと切れていたが、十メートル程先で床に叩きつけられたことで人としての形を失った。 人体が上下に裂けた状態で床を滑る光景が人々の恐怖を極限まで煽り立て、彼らの悲鳴が建物内の隅々まで響き渡った。 「次はお前だぞ〜」 少女から告げられる処刑宣告に思わず耳を塞ぐのは、ベンチの下に逃げ込んでいた女だ。 周囲の人間が巨人から逃れようとして駆け出した瞬間、運悪く人にぶつかって足を挫いてしまった彼女は、床を転げ回るようにしてなんとかここに隠れた。 いや、隠れたつもりでいた。 十八メートルの高さから足元を見下ろすシャルの視界はあまりに広く、その中で床を転げ回っている人間がいれば意識しなくとも目に映る。 女が隠れているベンチに手を伸ばし、僅か指二本でそれを摘んで床から引き剥がしてやった。 固定用のボルトなどは何ら抵抗をすることなく周囲に飛び散り、近くの壁に小さな穴を穿ってしまう。 突如として身を隠していた天井がなくなったことに驚いた女が顔を上げると、バキバキという不快な破壊音と共にパラパラと小さな破片が降り注いできた。 五人掛けのベンチを片手に収めて握り潰していたシャルが手を開けば、元の形が分からないほど変形した粗大ゴミが床に落下する。 その衝撃と轟音に思わず身を縮こませた女だったが、少女の魔の手はそれに構うことなく伸びてきて、長い手指が両手足の上からグルリと体に巻きついた。 肉と骨。自分の体と同じ物質で構成されているとは思えない力強さ。 鉄製のベンチを軽々と握り潰してしまう凄まじい握力を発揮する指の大蛇は、獲物を締め殺すのを楽しみにしているかのようであった。 「はい、捕まえた。……ねぇ、せっかくだから選ばせてあげる。グチャグチャの刑とビリビリの刑、どっちがいい?」 シャルに握り締められた女はそれに無言だった。 巨人からすれば間違えて落としてしまわないための最小限の力は、普通の人間にとっては呼吸ひとつ満足にできないほどの強烈な圧迫になる。 女は言葉を発するための息を吸い込むことができず、文句を言うことも命乞いすることもできないでいたのだ。 だが、そんな事情を斟酌するほどシャルという少女は優しくはなかった。 「あ、無視すんだ。……ふーん、ならどっちも経験してもらおうかな」 人間を捉えた手にキュッと軽く力を込めて握ってやる。 通常時ですらリンゴを軽々と握り潰すシャルロットの握力であれば、人形よりも小さな生き物を水風船のように破裂させることも容易い。 実際、過去に初めて今と同じ大きさで人間を握った際には一瞬で挽肉にしてしまった。 それから何度も練習してようやく潰さずに持ち上げることができるようになったのだ。 ポキポキと骨が割れ砕ける軽い感触が無数に手のひらに伝わってきたので、仕上げに中指の先端を女の腹部に強く押し付ける。 指一本だけで腹部を覆う筋肉をズタズタにされ、ほぼ同時に体内のあらゆる臓器を捻り潰された女は、誰の目にも致命傷であることが分かるほど大量の血を口から吐き出した。 「本当ならこのまま指で背中まで貫いてやるんだけど。ま、このくらいで勘弁してあげるよ。……次はビリビリの刑ね」 瀕死の重症で今も血を吐き出し続ける女を手のひらから解放すると、今度はその足首を摘んで宙吊りにしてやる。 そのまま左右の手で女の小さな足をそれぞれ摘んで強引に脚を開かせた。 幼子が輪ゴムを引っ張って遊ぶのと同じように、シャルは女の両足を左右に広げていく。 ブチブチという小さな音は強引に股関節を広げたことによる筋肉繊維の悲鳴だろう。 凄まじい激痛と大量出血によって意識のない女は、自分の最期がどれだけ無惨なものであるかを知らずに死ぬことができるだろう。 「そのちっぽけな体を紙みたいに破り捨ててあげる。……ほ〜ら、ビリビリ〜♪」 人体が引き千切られるときの音は想像を絶するほど不快なものだ。 少なくとも、彼女が口にするようなビリビリという可愛らしいものではない。 両足を左右に引っ張られた女の体は、最も強度の弱い股間部から縦に裂けていく。 裂けた箇所から赤黒い何かがボトボトとこぼれ落ちて床に積もり、やがて体内に残るものよりも床に飛び散ったものの方が多くなる。 そして最後には縦に真っ二つにされた本人の残骸が落下することでゴミ山は完成した。 指先に付着した返り血を舌で舐めとったシャルは、すっかり人気のなくなったターミナルで一人ポツンと佇む。 「あーあ、逃げられちゃった。……まぁいいけど」 無人の建物内を出口に向かって歩き出すシャル。 無意識のうちに後手に手を組み、ときおり腰をかがめてベンチや売店の影を覗き込む。 さならが散歩でもしているかのように見えるが、実態は狩のようなものだ。 隠れ潜んでいる人間がいれば遊んであげるつもりだったが、残念なことに臆病な人間たちはどこにも残っていなかった。 シャルが人間の平均を大きく超えるストライドで一歩を踏み出すたびにパキッという音がするのは、人々が逃げる際に放り出されたキャリーケースが靴底で粉砕される音だ。 どれだけ頑丈に設計されていようとも所詮は普通の人間が通常使用することを前提にしたものに過ぎず、十八メートルの巨人に踏み付けられることなど想定してすらいない。 やろうと思えば避けて歩くこともできるが、小気味よい感触と音で破裂してくれるのでちょっと楽しみながら歩くことにした。 「あ、出口みっけ。……へぇ、外に出ただけで逃げ切ったつもりなのかしら」 小さく笑ったシャルの視線の先にはガラス張りのエントランスが広がっている。 国内で唯一の国際空港として設計されたために、だいぶ背伸びをしてデザインにこだわっているらしい。 そのガラスの先には巨人から逃げ出した人々が大勢たむろしてした。 シャルが無遠慮にズカズカとそれに近寄ってみれば、彼らの中で再び悲鳴が湧き起こるが、先ほどのような混乱は生じない。 どうやらシャルの巨体では出入り口のエントランスから抜け出ることができないと考え、それが彼らの儚い安心感に繋がっているようだ。 ――――だが、彼らのそんな勘違いも長くは続かない。 「どーんっ♪」 そんな掛け声と共に女の子が履く真っ白なスニーカーが一撃で壁を粉砕する。 外壁としての機能を持たせるために作られた特殊な強化ガラスは、自動車が衝突したとしても砕けないという触れ込みだった。 だが、十八メートルもの巨体を誇る少女に蹴り付けられることは想定していない。 綺麗なフォームで繰り出された上段蹴りで上半分を消し飛ばし、そのまま脚を振り下ろして下半分も消し飛ばす。 白く長細い脚が壁を切り裂いて出現したことに驚いた人々は、今度こそ正真正銘の悲鳴をあげながら逃げ散った。 「あはっ。ほ〜ら、怪物が出てきちゃったぞ〜」 外に繰り出したシャルは足元で逃げ遅れた一人を摘み上げると、一目散に自分から遠ざかろうとする集団の中へ投げ込んでしまう。 音速を超える速度で数百メートルを飛翔した人間は、着地点にいた数人を巻き込んで押し潰し、その場でベチャッという嫌な音を響かせながら形を失った。 その異常な事態に思わず足を止めて背後を振り返ってしまった人は、ブロンド髪の美少女が可愛らしく手を振っていることに気がついた。 人の命を弄ぶだけでなく、当然のように奪い去る少女。 美しさと可愛らしさを秘めたその少女は、どうやらこの状況を楽しんでいるようだ。 「ん〜、でも流石にバラバラに逃げられちゃうと面倒だな〜」 足元で逃げ散って行く人々を見下ろしながらしばし逡巡したシャルであったが、それほど迷うこともなく対応を決めた。 今よりも大きくなってしまえば、この問題は簡単に解決できるのだ。 他の人間では発想すらできない突拍子もない解決策だったが、シャルにはそれを実現するだけの能力が備わっている。 周囲への配慮など一切考えることなく、再び巨大化を開始したシャルの足元で逃げ遅れた人間が巨大化するスニーカーに巻き込まれて消えていく。 人生最後の光景が迫り来る巨大な白壁であり、どれだけ大きな悲鳴をあげたところで誰も助けには来てくれない。 凄まじい絶望の中でひっそり生涯を終えた人間は、今は靴底のシミ汚れとして存在していた。 先ほどまでの自分を人形のように扱えてしまうほどの巨体。 身長百八十メートルの巨人となったシャルは、様変わりした目線の高さに満足そうに微笑んだ。 「このくらいまで大きくなると気分爽快よね。……あんた達には分かんないだろうけど♪」 二十七メートルという建物のような大きさになったスニーカーで一歩を踏み出す。 もとより脚の長いシャルが意識的に大股で踏み出したことで、僅か一歩で百メートルを優に超える距離を移動してしまう。 人間たちが数十秒かけて懸命に移動した距離を一瞬で詰め寄ったスニーカーは、当然のように人間を押し潰しながら大地を踏み締める。 プチュプチュという不気味な音と共に、水風船を踏み割ったかのような感触が足裏に伝わってくるが、その一つ一つが生きた人間が弾け飛んだ証である。 こそばゆい感触に思わず身震いしたシャルだったが、何度か同じように逃げ回る人間たちを踏み潰していけば次第に慣れてしまう。 ほんの数秒のうちに千を越す命を消し去って周囲一帯を足跡だらけにしたシャルは、空港の滑走路で飛行機が蠢くのを見つけると、先ほどまで自分が遊んでいたターミナルを蹴散らしながら滑走路へ侵入する。 綺麗にアスファルトを舗装された飛行機の滑走路を踏んでみれば、パキパキという小気味良い音と共に割れ砕け、綺麗な足型をそこに刻み込んでいく。 それを楽しみながら無遠慮に敷地内を縦断したシャルは飛行機の正面に立ち塞がった。 「さ〜て、どうしてやろっかなぁ」 全長八十メートルの旅客機を見下ろす女の子は意地悪く微笑む。 空港内で小さな巨人が暴れる最中で離陸の準備を済ませ、空港の外で大きな巨人が殺戮を働いている時に空へ逃げ出そうとしていた乗客たち。 あと数十秒で安全な空に逃げ出せたはずの彼らは絶望と落胆に顔を歪めるばかり。 機内に乗り込んでしまった以上、今の自分たちには自由に逃げるという選択肢はない。 非常用の滑り台を展開すれば外に出られるかもしれないが、あの残忍な美少女巨人が自分たちの脱出を待ってくれるはずもない。 巨人にされるがまま。己の運命を受け入れるしかないのだ。 「決〜めたっ! これは抱き枕にしま〜す♪」 処刑方法を思案していた少女がついに結論を出した。 スッとその場にしゃがみ込み、両手でそれぞれ左右の翼を握ったシャルは、立ち上がりながら飛行機を持ち上げてしまう。 一瞬にして垂直にされた機内には人々の悲鳴が充満するが、幸いなことに離陸直前で全員が着席していたために犠牲者は出なかった。 いや、もしかすれば少女の悪戯が生んだ衝撃だけでも死者がいたかもしれないが、それを確認する余裕のある者はいなかった。 全長八十センチの鋼鉄製の抱き枕を手に入れたシャルは、機体の後部を太ももで挟み込んで支えると、その長身を屈めて両腕を機体に這わせていく。 十四歳とは思えないほど十分に発達したおっぱいが機体の前部に触れると、おっぱいの弾力に負けたコックピット部分が圧し折られて地上へ落下する。 「なんか思ったより小さいなぁ〜。サイズ感は0点だね。抱き心地はどうかな〜♪」 ミシミシと不気味な圧壊音が飛行機の至る所から湧き起こる。 耐久値の限界を遥かに超える超圧力がかけられ、鋼鉄が悲鳴をあげているのだ。 シャルが乗客たちを怯えさせて遊ぶために手加減をしていなければ、今ごろ彼らは無骨な鉄屑の中に付着する小さなシミ汚れとなっていることだろう。 今、彼らが恐怖を感じて泣き叫んでいられるのも、言ってみればシャルのおかげなのだ。 全身で包み込むようにして機体を押し潰していくシャルだったが、機体が限界は早々と訪れてしまう。 鋼鉄製のそれをまるで紙模型のようにクシャッと圧し折ったシャルは、無惨にもバラバラになった旅客機の残骸をその場に放り捨てる。 二百を超える乗客たちの墓標とするには、いささか不恰好なゴミ山を見下ろすシャルだったが、なんとなくの思いつきで靴の側面で払い除けるようにして蹴散らしてしまった。 「抱き心地も0点。……あ、もう一つみっけ」 乗客の搭乗を途中で諦めて滑走路へ向かう旅客機。 シャルの足跡が刻み込まれたことで大半が使用不能となっている滑走路の中で、最も外周に近い一本だけは未だ無事なままだ。 あの巨人の魔の手から逃れるには空へ飛び立つ他なく、それがどれほど難しいことであっても挑まないわけにはいかない。 通常の安全管理手順を全て省略し、全速を持って地表を疾走する飛行機の内部では、満席に近い状態の乗客たちが必死に祈りを捧げていた。 どうか、あの巨人に見つかりませんように。 少女の強大な力を存分に見せつけられ、竦み上がった彼らはそんな矮小な願いを抱くに至っていた。 「あはっ。残〜念っ♪ ちゃんと気づいてるんだよね〜」 シャルが目指したのは旅客機ではなく、それが向かう先の滑走路。 彼らがこの絶望の中で見出した唯一の希望を文字通りに踏み躙ってやることにした。 彼女がその足で一度でも踏み付ければ、その瞬間に滑走路は使用不能となる。 それはつまり、乗客たちにとって生きて帰るという可能性が塗り潰されることだ。 やめてくれ、やめてくれ、と小さな人間たちが懸命に祈っている姿を想像するとそれだけで意地悪な笑みが溢れてしまう。 ノロノロと動く旅客機の行手に立ち塞がったシャルは、太ももが垂直になるまで高く持ち上げたスニーカーを遠慮なく整地された滑走路に振り下ろしてやった。 スナック菓子を踏み潰すよりも容易く踏み砕かれたアスファルトが周囲に飛び散り、三十メートル近い大穴が一瞬のうちに穿たれる。 女の子のたった一踏み、たった一つの足跡によって乗客たちの希望は消え去ってしまう。 「ほら、もう逃げられない。……玩具にしてあげるからちゃんと絶望してね」 シャルはその長い脚を何度かしならせて前方の飛行機へ歩み寄ると、勢いよくその場にお尻を落として座り込む。 十代の柔らかい尻肉は衝撃を十分に吸収したが、それでも凄まじい質量が大地に叩き付けられたことによる被害は想像を絶するものだ。 幅数メートルに渡るひび割れが無数に敷地内を走るだけでなく、数百メートルも離れた場所にある管制塔が傾いてしまうほど。 そんな被害を気にもしないシャルは、M字に開いていた両脚を前方に押し出していく。 ホットパンツから伸びる健康的な肉付きの両脚は、膝を立てることで生み出していた僅かな空間を狭めることで、やがて飛行機の翼に触れてしまう。 数百トンもある鋼鉄の塊を空に浮かべることができるはずの両翼は、女の子の脚に寄り掛かられたことで一瞬にして剥ぎ取られてしまい、そのまま太ももの下敷きとなってより薄い一枚板に変貌してしまう。 座り込んだ女の子の両脚と、それに挟み込まれた飛行機の胴体部。 何百という人間を乗せて空を飛ぶ乗り物は、シャルの脚と比較すればあまりに細く弱々しい印象を受けるが、その印象は事実そのものである。 「私の股間と飛行機の歴史的な対決に参加してもらうから。……ふふっ、勝てるといいわね。 頑張って飛行機を応援しないと死んじゃうよ♪」 自分の両脚。シャルがその間に収まっている長細い玩具に向けて腕を伸ばし、右手でそれを軽く握り締めると、鋼鉄の機体が大きな軋みを上げて指の形に歪んでしまう。 ほんの僅かにでも握る力を込めてしまえば、その瞬間に内部空間は極限まで圧縮されてその場にあったあらゆる物は原型を止めることなく破壊され尽くすだろう。 シャルが遊びやすいように少しだけ機体を持ち上げてから、その先端部をお気に入りのホットパンツに当てる。 硬いデニム生地越しに感じ取れる感触は僅かなもので、意識しなければ気付くことはないだろう。 「それじゃあ対決開始。 ほら、グリグリ〜っと」 手に持った脆く細長い金属の棒切れを股間に擦り付けていくシャル。 少しでも感触を楽しもうとして、軽く円を描くようにゆっくりと動かしてみるが、さして刺激が強まることはなかった。 その棒切れはデニム生地に触れた瞬間、まるで砂で作られているかのようにガリガリと削り取られてその場にこぼれ落ちてしまうのだ。 鉄が押し潰れる不快な音が響く中、ときおり人間の甲高い悲鳴が巻き起こるが、一瞬後には悲鳴だけが聞こえなくなってしまう。 絶叫する乗客たちは、シャルの履くパンツか飛行機の残骸にこびり付く汚れとなってこの世界から去って逝った。 シャルの言うところの歴史的な対決は、開始から十秒ほどで勝敗が決してしまう。 女の子の股間に性玩具として果敢に挑み掛かった飛行機とその乗客たちは、たったの一度たりとも彼女を気持ち良くさせることが出来ずにその生涯を終えたのだった。 「やっぱり雑魚だったね。これなら自分の指の方が何倍もマシかな〜」 ホットパンツにこびり付いた汚れをはたき落としながら立ち上がるシャルは、改めて他に玩具がないか探すために周囲を見渡す。 小さな空港はすでに壊滅状態であり、残っているのは地上の建物くらいだった。 辛うじてシャルの目に映った飛行機はこれまでのものと比べて幾分も小さな小型機であり、それほど面白みもなさそうだったので適当に踏み潰した。 続けて既に傾き倒れそうになっている管制塔を爪先でちょんと小突いて完全に押し倒し、反対の脚でターミナル施設を蹴り飛ばして消し去ってしまう。 劣等国が誇る唯一の国際空港は、十四歳の女の子が遊び場にするには小さ過ぎた。 だが、遊び場としては不満足もいいところだが、暇潰し相手という役割はちゃんと担ってくれたらしい。 パラパラという小さなローター音がシャルの頭上で鳴り始め、音のする方へ視線を向けると、そこには小さな箱が浮いていた。 ようやく報道機関のヘリが現場へ到着し、この惨状を伝えてくれているらしい。 シャルが手を伸ばしたとしても届かないであろう高度三百メートルを維持して飛行するそのヘリに向けて、大きく手を振ってこちらを見るよう合図してあげる。 カメラを通じてこの国の隅々まで送り届けられる映像は、長身美少女が元気に手を振りながら笑いかけてくるというもの。 その足元に広がる大惨事とはあまりにも馴染まない異質な光景であった。 「ちゃんと撮ってる? ……私の名前はシャルロット。この国を蹂躙しに来た悪い女の子だよ。足元を見て欲しいんだけど、準備運動で二千人くらい殺しちゃったんだよね♪ ……これからお前らのところにも行くから、せいぜい残り少ない人生を後悔しないように楽しんでおいて」 それはヘリのローター音など掻き消してしまうほどの大声量。 報道カメラを通じて届けられた少女の声明は、あまりにも非現実的で信じがたいものだ。 だが、彼女の足元で散らばった飛行機やターミナルの残骸、至る所に刻み込まれた深い足跡、そして足跡の底部に残る赤黒いシミ汚れのような何か。 しっかりとカメラに映し出されている破壊と殺戮の嵐が吹き荒れたその光景は、空港から逃れた人々の証言と一致する部分も多く、信じ難くあってもシャルロットと名乗る美少女が作り出したものなのだろう。 彼女の言葉に秘められた純粋なまでの暴力性は、それを耳にした人々の本能的な恐怖を存分に駆り立てた。 この数分後には安全地帯を求めて逃げ回る人々によって混乱は際限なく拡大する。 この国が人口三千八百万の小国であることを考えても、たった一人の少女に対して一国が怯えるというのは異常なことだった。 「ちゃんと伝えてくれた〜? ま、いくら劣等国でもテレビに映像流すくらいはできるか」 念の為にスマホを取り出して検索をしてみれば、ヘリが全世界に向けて中継した映像はしっかりとネット上にアップされてその再生数を伸ばしている。 それを訝しむようなコメントがまだ多数派だが、すぐにそれは少数派になることだろう。 今から一つの国を文字通りに踏み躙ろうとしている少女は、スマホの画面に映り込む自分の顔があまりにも意地悪に見えて笑ってしまった。 「この大きさじゃ時間掛かるからもう少し大きくなろっか。……そんなところに居ると巻き込まれちゃうぞ」 ヘリに警告してから実際にシャルの身体が巨大化を始めるまでは一秒の猶予すらなかった。 仮に彼らが警告を間に受けて緊急離脱を図ったところで、急速に膨張する少女の体から逃れることなど出来はしなかっただろう。 真下に捉えていたはずの少女が一瞬のうちに自分たちの飛行する高度と同じ目線になったかと思えば、そこで留まることなく更なる高みへ上り詰めていく。 カメラの広角に彼女が収まっていたのは最初だけで、すぐにその一部だけを捉えるので精一杯になってしまう。 そして、彼らの最期が訪れたことを最初に理解したのは、機体の外へ身を乗り出すようにして撮影していたカメラマンであった。 自らの目の前で起きている異常事態に言葉を失った彼は、ふと視界の下部で白い何かが蠢くのを見つけてしまう。 その何かはまるで白い大蛇が絡み合っているかのようであったが、実態はそれよりも遥かに巨大なもの。 丁寧に結ばれた少女の足を守るスニーカーの靴紐が、凄まじい速さで下から迫っていた。 そのちょうど結び目のあたりがヘリの底部に衝突すると、空を飛ぶ鉄の塊は真下から叩き潰されるという異様な最後を遂げてしまう。 もともとの一万倍、身長一万八千メートルに達した少女の足元では、遊び場にした空港がすっぽりと少女の左右の足で埋め尽くされてしまっていた。 飛行機やターミナルの残骸はもちろん、人間の遺体などどこにも見えない。 爆発的に巨大化した少女の凄まじい体重は足元の地盤を容易く粉砕し、スニーカーの靴底を百メートル以上も沈め込ませている。 今のシャルの視界を遮れるものはこの星には存在しない。 遥か高みからどこまでも地表を見下ろせる優越感は体験した者にしかわからないだろう。 「あはっ。世界がゴミになっちゃった」 シャルは最初の犠牲者とする町を探すために視線を足元に向ける。 どうやら空港周辺は発展途上国家の中でも特に田舎らしく、お世辞にも栄えているとは言い難い。 だが、それでも一キロ程離れた場所には空港の利用客を見込んだ宿場が立ち並び、先ほど空港から逃げ出した人々の収容先として賑わいを見せている。 建物の数も百に満たない小さな宿場町は、そこを南北に伸びる街道に沿っておよそ二キロに渡り発展しており、それはシャルが一度に踏み潰すにはちょうど良いサイズ感だ。 そして、シャルにそれを見逃す理由はない。 だからこそ、躊躇うことなく足を持ち上げてその真上に翳してしまうのだ。 そこに暮らす人々とシャルの暴力から逃れてきた人々は合わせて一万人。 それだけの人々が、たった一人の少女の靴底を見上げて泣き叫ぶ様子は非常に滑稽だった。 「最初の一歩はここに決めた。 ……じゃあ、蹂躙開始〜♪」 少女のクスクス笑いに合わせて、空を覆い尽くしていた巨大なそれが降下を開始する。 地表を逃げ惑う人々にとってそれは天が崩れ落ちてくるという神話世界の出来事のようであったが、実態はそれよりも遥かに単純で、むしろ当然のことでしかない。 靴底で大地を踏み締める。 そんな誰もが日常的に行う当たり前の行為を、シャルロットもしようとしているだけだ。 違いはその大きさだけ。 だが、その違いは人々を絶望させ生きる望みを打ち砕くほど絶対的だった。 最初に靴底によって瞬時に圧縮された膨大な大気が町の建物を薙ぎ払い、頑強なコンクリート製の大規模ホテル以外はそれだけで壊滅的な状態に陥った。 当然、それより遥かに脆い人体などは巨大なハンマーで叩き潰されるかの如く破裂するか、運が良ければ暴風に攫われて地表数百メートルまで巻き上げられた。それによって、地表に叩き付けられてバラバラに砕け散るまでの数秒間、長生きをすることができたのだ。 続けて襲い掛かってきたスニーカー本体のゴム製の靴底は、先ほど町を壊滅させた大気などとは比較にならないほど絶対的な質量で容赦無くあらゆるものを破壊する。 辛うじて姿を止めていた巨大ホテルなど触れた瞬間に塵と化し、刹那の間を置いて地下施設に逃げ込んでいた人々をその施設ごと元いた場所の何十倍も深いところへ送り込む。 凄まじい地響きを周囲に轟かせながら沈み込むスニーカーは、それを履いた女の子がグッと体重をかけた瞬間にそれまでの数倍の速度で大地を圧壊させてしまう。 それは僅か一踏み、ほんの数秒の出来事であったが、そこに存在していた町一つを言葉通り跡形も残さず消し去った。 そこに刻み込まれた全長三キロに迫る巨大な足跡は、実に五百メートルもの深さで存在する。 長い時間をかけて雨水が溜まればそこは新たな湖となることだろう。 一万人の虐殺を終えたシャルロットは自分が生み出した足跡を見下ろし、満足そうに小さく鼻を鳴らした。 「いい気分ね。これだから劣等国との異文化交流は止められないのよ。ふふっ」 シャルは今しがた自分が踏み潰した町から伸びる大道路を視線で追いかける。 その道はやがて山脈にぶつかり、その下を潜るようにして消えてしまっていた。 普通の人であればそれが認識の限界だが、今のシャルであれば標高二千メートルの山々などなんの障害物にもならない。 山脈を超えた先にそこそこの発展を遂げている町が広がっているのだ。 その町では今頃きっと、シャルの存在を見つけた人々が逃げ惑っていることだろう。 直線距離にしておよそ三十キロは離れているはずなのに、それでも長身少女に自分たちが見下ろされているという事実に震え上がっているのかもしれない。 そんなことを妄想してしまえば、心の奥底に眠っている嗜虐心が高まってしまう。 「次はそっちに行くから」 そんな短い言葉で処刑を宣告した少女は自慢の長い脚で真っ直ぐに歩き出す。 一歩踏み出すたびに小山を作り出すほどの膨大な土砂が高さ数百メートルまで跳ね上がっては滝のように崩れ落ち、大地に伝わる激震は大陸を揺るがすかの如き威力。 その圧倒的な力は核兵器を持ち出さなければ比較することも叶わないだろう。 それを何度も、いつでも、好きなだけ。 自分の思い通り自在に振るうことができる少女は、もはや人間の領域を超えた女神のような存在だ。 だが、残念なことに彼らの元へやってきた女神は、慈愛の心など欠片も持ち合わせていない。 無慈悲で残酷な美少女の国家蹂躙劇はまだ始まったばかりだった。