復讐前夜(下巻)18373文字
Added 2018-11-16 07:09:47 +0000 UTC(6) 学校は、黒いモヤで満ちている。 ――あーあ、何で俺がこんなこと…… ――何で? 意味分かんねえ、あいつマジでムカつくんだけど ――このクソガキども授業くらい静かにしてろよ ――帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい ――何の役にも立たないことばっかさせやがって ――はあ何だよ! 成績成績ってそればっかり馬鹿じゃねえの?! ――もういじめられるの嫌だなあいつらに死んで復讐してやる 遥は魔人と融合している状態でなくても、他人の苦痛のエネルギーを示す黒いモヤが見えるようになっていた。モヤだけではない、相手の魂の固有のオーラの色までもが分かるようになったのだ。 遥は生徒や教師の不満と憎悪と憤怒に塗れた心の声が何となくわかるようになった。深呼吸をして黒いモヤが自分の中に入ってくるイメージをすれば、周囲に渦巻いている黒いモヤがすうっと胸に吸収されるのを感じた。すると体中に力が漲り、下腹部の辺りがトクトクと軽く脈打つのだった。 ――もっと、もっと苦痛のエネルギーが欲しい…… 黒いモヤを御馳走として食べるようになった遥にとって、その発想が生まれるのはごく自然な流れだった。 ――もっと黒いの喰いてえな、喰いまくって喰いまくってデッカくなりてえ、智とか雄二みたいな、カッケェ雄に近づきてェ 遥は黒いモヤを食すようになってから、以前に増してガタイが良くなっていった。水球部ではもっとも身体がデカくなり、その変化に周りの生徒も教師も驚いた。 「お前、最近どうしたんだよ」「急にカッコよくなったな」「何か前より自信があるように見える」そう自然と部員が集まって遥に声を掛けるようになった。 しかし、亮太、俊輔、信貴、光輝、誠人の五人は、その様子を苛立ちの籠もった目で見つめていた。 そしてある日、遥は突然、襲撃された。 学校からの寮に帰る途中だった。 後頭部から首の付け根の辺りにゴンッと激しい衝撃が走り、立ち眩みを起こしたように視界がふわっと白く霞んだ。足もとがふらついて地面に倒れると、再び背中にバットで殴られたような衝撃が走った。 「ん……ぐ……」 そこは河川敷の橋の下だった。 遥はうっすらと目を開け、ずきずきと頭と背中が痛むのを感じながら周囲を見回した。頬に砂利のめり込んでいる感覚があった。口の端に滲んだ唾液を拭おうと手を動かそうとし、両手両足ががっちりと縄のようなもので縛られていることに気がついた。 「よう、やっと起きたか」 地面に無造作に置かれた懐中電灯の明かりの先に、亮太、俊輔、信貴、光輝、誠人の五人の姿が浮かび上がった。 「あ……」遥は思わず呟いた。「嘘だろ……」 五人の足元でボロ雑巾のようにうずくまる影に目を凝らすと、それは幸久の痛々しい姿だった。 ドクンッ、と心臓が大きく脈打つ。てのひらに汗が滲んだ。 幸久は全裸にひん剥かれてボコボコにされたようで、日焼けした背中に砂利と靴の食い込んだ跡が浮かんでいた。ヒューッ、ヒューッ、と苦しそうな呼吸に肩が震えている。幸久は遥の方を見上げると、苦痛に歪められた顔で、 「す、」 と言った。 「す、まん、」 ――捕まって、すまん ――助けられなくて、すまん 幸久の苦しそうな声にはそんな意味が込められている気がした。 その時、幸久の身体から、ぶわァッとおびただしい量の真っ黒いモヤが煙のように立ち昇る。 こんな状態でも、俺のことを気遣うなんて……。遥は衝撃を受け、幸久の目を見つめたまま何も答えることができなかった。耳のすぐ後ろで鳴っているように、自らの心臓の鼓動が激しく聞こえた。 「はッ、はァッ、ァ――」 遥は短く息を吐いた。首から下が勝手にビクン、ビクンとかすかに震える。幸久から立ち昇る濃密な黒いモヤが胸元から吸い込まれ、すうっと全身に広がっていく。何だ? この感覚は? 今まで色んな人間の苦痛を食してきた遥だったが、幸久の放つそれはとりわけうっとりするような響きを発しており、体内に入ると全身が熱く溶けそうになる。 「なァお前さ、最近ちょっとガタイが良くなったからって、調子乗り過ぎだよなァ? なあどうだよ? 友達がぼこぼこにされる気分は?」 亮太の冷ややかな声がしたが、遥はそれどころではなかった。 ――俺、親友がいじめれてるっつうのに、何で、何で興奮してしまっているんだろう……? 遥は、目の前で起きていることより、自らの精神面の変化に動揺していた。今更と言えば今更かもしれない。ボコられ、健気にこちらを気遣う態度まで見せる幸久に、息を荒げて勃起してしまっている自分がいた。 亮太は遥が返事をしないことに苛立ち、「ォラァッ」と幸久のみぞおちを蹴り飛ばした。 「がッ、はッ、」 幸久は胃の中の物を地面を吐き散らした。 「きったねえなァ」亮太は眉を顰めた。「これからは、遥、お前の代わりにこいつで遊ぶことにしたから。お前が生意気な態度を取るたびに、俺らはこいつで遊ぶからな?」 「はッ、はァッ、はァッ、はァッ――」 だが遥には、もう亮太らのことなど眼中に入っていない。亮太らが幸久に暴力を振るえば振るうほど、遥は自らの肉体に得体の知れないどす黒い力がなみなみと注がれていくのを体感した。その度に、ドクンッドクンッ、と心臓の鼓動が遥の神経を揺さぶるように重く響く。身体のどこからかミシッ、ミシシッ、という繊維の軋むような音まで聞こえた。 「なあこいつ、何かヤバくね?」 その頃になって光輝が不審そうな目を遥に向けた。 「気持ち悪ィ、ハアハア言いやがって。変態じゃねェのか?」 亮太が同調したが、光輝の言いたかったのはそのことではなかった。遥の身体がさっきよりも大きくなっている気がしたのだ。 遥は蹲ったままチンポを勃起させ、制服のスラックスの股間を大きく盛り上げていた。黒いモヤを吸い込む度に、下半身がびりびりする感覚に襲われ、チンポがビクビクッと動く。遥は地面に額を押し付けながら腰を浮かし、手足を縛られた状態で何度もイッた。 「ァッ、ガアア、ガアアアアアアアアアアアアア――」 遥はだんだんと獣じみた声を洩らすようになった。髪の毛や顎の先からはぼたぼたと汗が滴り落ちた。制服のスラックスの下はドロドロに汚れ、太腿の内側に生温かい精液の流れる感触がした。遥は、苦しむ親友の姿を見て、夢精のようにパンツの中で何度も繰り返しイッていた。 「はッ、ァッ、や、やっべ、ェッ――」 締め付けられる苦しさを覚えて目を落とすと、半袖のカッターシャツの胸や肩や腕の辺りが今にも弾けそうにパツパツに張っている。黒いモヤを吸い込んで射精を繰り返す中で、それを餌として全身の骨格や筋肉が成長を始めていたらしい。ググ、ググ、と筋肉が徐々に厚みを増していき、骨格はより大きな土台となるように成長していく。スラックスのベルトが腰骨に食い込み、だが手足を縛られているため緩めることもできない。 ――ああ、そっか、やっと分かった ――誤魔化してたけど、俺、どうしようもなく、魔人になりてェんだ ――だってそっちが、本来の俺だから 「なァッ、幸久ッ、見ててッ、くれよッ、」遥は頭を上げ、喜びと快感に歪んだ顔で言った。「ハァッ、新しい俺ッ、もうッ、我慢ッ、できねェッ、からさァッ、」 そう言われ、幸久はぼんやりとした顔で遥を見遣った。何を言っているのか分からない、何が起きているのか分からない。いじめられて無気力に陥っていた時の遥と同じような暗い目をしていた。 ドックン! ドックン! ドックン! ドックン! ドックン―― 「あッ、あッ、ああッ、あッ、あああッ、ああああああああッ、ああああああああああああああああああああああああああああああッ、」 遥は叫んだ。 皮膚の下で血肉の沸騰するような熱さと痛みに堪えていると、ビキッ、ビキビキビキッと激しい音を立てながら筋肉と骨格が爆発的な勢いでデカくなっていく。「フゥーッ、フゥーッ、」荒々しい呼吸に胸を上下させながら筋肉が盛り上がっていき、ブチッ、ブチッと次々にカッターシャツのボタンが弾け飛んだ。背中からはきしきしと布地の軋むような音が鳴った。みるみると胸筋が分厚く盛り上がっていき、肩にはモコッとした筋肉のラインが現れ、腕はひと回りふた回り以上もぶっ太く、背筋はメキメキと大きく横に広がって鬼の顔を見せ、上半身のシルエットは逞しい男のそれへとたちまち造り替えてしまう。カッターシャツのボタンが弾け飛び、その下に赤色のTシャツが覗いたと思えば、アンダーアーマーのように筋肉の形にぴっちりと張り付き、汗に濡れて肌の色がうっすらと透けて見えた。 ビリッビリッと悲鳴を上げてカッターシャツとTシャツが全て破れ、むわっと雄の体臭と汗の臭いが立ち昇る。腰骨に食い込んでいたベルトはついに壊れた。スラックスは股下から布地が裂けてしまい、精液で汚れたボクサーパンツと、上半身に負けじと筋肉の盛り上がった逞しい太腿が露わになった。 ――イイ、すげェイイ、 ――もっともっと、デッカくなりてェ ――ホントウの姿に、ホンモノの雄になりてェ スラックスから解放された途端、チンポはボクサーパンツの締め付けからも解放され、バチンッ、と大きな音を立てて腹に反り返った。竿の部分にはビキビキと黒い血管が走り、パンパンに怒張した先端から濃い精液を繰り返し噴き上げながら、チンポは優に臍を越えるデカさへと成長していく。睾丸はずっしりとした重さを増し、陰毛もまたそれを追うように伸びていく。 「ァッ、グッ、アアッ、アアアアアアアアアアッ!!! ギッ、ギモヂイインダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――ッ!!!!!」 ビュクビュクッ、ドシュッ、ドシュッ、ドシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!! 遥は身をよじって膝と腰を震わせながら大量の精液を吐き出し続けた。自分の身体がどこまで変化しているのか把握する余裕さえなかった。腹の底からエネルギーが沸き起こり、その衝動のまま射精を繰り返すごとに、目に見えない心身の箍(それは一般社会で「道徳」と呼ばれているものだった)が外れていくような解放感がした。 ――ああ、自分で扱きてェな ――何で俺、ちゃっちィロープで縛られてんだろ 軽く力を入れると、さっきまで両手両足を硬く縛り付けていたロープは子供の玩具のように千切れた。遥はなぜこの程度のものに自由が束縛されていたのか不思議に思ったが、それは遥自身の肉体が桁違いにパワーアップしているせいだった。 その頃には、亮太ちはただならぬ異変を感じてどこかに逃げてしまっていた。幸久もまた、目の前で得体の知れない何かの生まれる不穏な気配を察知し、「は、遥……?」と親友の名を呼んだ。その弱々しい声は、自分の肉体の変化に夢中になっている遥の耳に届くことはなかった。 今、懐中電灯で照らすものは誰もいない。暗闇の中、遥は自らのチンポを握り、ゆっくりと上下に手を動かし始める。以前と明らかに違う、モゾモゾと長くぶっ太くなっている感触がし、グチュッ、グチュッ、と精液にまみれた卑猥な音を立てながら更なる成長の予感にヒクついた。 「あッ、あッ、たまんッ、ねッ、ェッ、」 遥はそう呟きながら何度も何度も色の濃い精液を吐き出した。 しばらくすると出そうとしても空打ちを繰り返すようになった。イッてるのにイけない――そのことに歯痒さを覚えながら、突き動かされる衝動のまま扱き続けていると、今度はより粘り気の強い、かつ灰色に濁った魔人を思わせる精液が飛び出すようになった。遥自身は、精液の色が魔人に近づいていることに気づかなかった。 自分の身体から雄の濃厚な体臭と汗のにおい、精液の甘ったるいにおいが絡みつくように立ち昇り、遥はその刺激の強さに頭がクラクラした。精液ってこんなに良いにおいがしてたっけ? 疑問に思い、胸に飛び散った精液を指で拭って半ば無意識的に口に含んだ。 「ン、はァ、」 舌の上に痺れるような強い甘みが広がり、腹の底からじんと力の湧き出る感覚がした。食べ物の甘みとは違う、ある種のドラッグのような(といっても、遥はある種のドラッグを試したことはないが)脳味噌に直接的に作用するような心地良い痺れを伴った。 もっと飲みてえ、こんなに旨いんならもっと早くに気づけばよかった――そう思った時、背後からぱっと光の輪が当たった。 (7) 「は、るか……?」 遥の背後から、ぱっと光の輪が当たった。 振り返ると懐中電灯を持って座り込む幸久の姿があった。亮太たちが忘れていった懐中電灯がまだ残っていたらしい。 「嘘だろ……? 遥? お前、ほんとうに遥なのか……?」 幸久はボコられた時の裸のまま、別人のような姿になった親友を見て、困惑と苦痛の混ざった声を上げた。周囲に服が見当たらないから、きっと亮太たちに荷物ごと奪われてしまったのだろう。 「感謝してるぜ? お前のおかげでこうなれたんだから」 遥はそう言って改めて自分の身体を見下ろした。分厚く張り出した胸筋、丸く盛り上がった肩、血管の走ったぶっ太い腕、はっきりと陰影を成すシックスパック、鬼の顔の浮かぶような逆三角形の背筋、小さく引き締まった尻、臍にまで反り返った逞しいチンポ、角材の入っているかのような太腿・脹脛……。身長は人間時の智や雄二に匹敵する二メートルにまで達しており、もはや高校二年生・十七歳としての面影はいっさいなかった。 「ああすっげ、これだよ、これェ――」 皮膚の表面にむずむずと冷たい快感が走った後、腕や脚にあった体毛はいくぶんか色が濃くなり、胸の中央には今までなかった短い毛が生え、それは腹筋の真ん中を下って陰毛の茂みに繋がった。髪の毛もまた伸び、モミアゲから顎にはチクチクと髭が生え揃い、心なしか顔立ちもシュッとして大人びた趣があらわれる。遥は伸びて鬱陶しくなった前髪を後ろに搔き上げた、雄臭くなった肉体によく似合う髪型だった。 「俺のおかげ……? お前、何言ってんだよ、怖ェよ……」 幸久は震える声で言った。 「あー? クッソ、もう我慢できねェ」遥は面倒臭そうに答え、幸久の頭と肩をがっちりと固定して自らの勃起した特大マラを口の中に捻じ込んだ。「なあ俺をもっと気持ちよくしてくれッ、よッ、」 ビュルルル! ビュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルゥッ!!!! 今までの射精に劣らない量を口の中にぶち撒けた。幸久は頭を動かせないように固定されたまま凄まじい量の精液を注ぎ込まれ、否が応でも飲み込むまで許されなかった。飲み込んだ後に背中を曲げて大きく咳き込む幸久を見て、遥は口の端を釣り上げて不敵な笑みを零した。幸久の身体からぶわっと黒々とした濃密なモヤが昇り、それがグングン自分の肉体へと吸収されるのを実感した。 「あー、うっめ、やっべェーな、コレ、あー、」 遥はチンポの根元を握り、ビクンッ、ビクンッと射精の余韻に震えながら言った。 幸久は涙の滲んだ目で遥を見上げ、 「なァ、どうしちまったんだよ、遥ァ……」 と、悲痛に満ちた声を上げた。しかし今の遥は幸久が苦しめば苦しむほど強いエネルギーと快楽を得ることになる。圧倒的な体格差で幸久に逃れることは不可能だった。涙目になった幸久を見て、遥はますますチンポが硬く怒張するのを感じ、「おい、」とドスの利いた声を出し、今度は口の中に入れるだけでなく幸久自身の意志でチンポを舐めることを強要した。 震えながら頭を左右に振る幸久の口に、特大チンポを奥まで挿し込んでゆっくりと腰を振る。喉の奥を刺激され、幸久はオエッとえづいた。 遥は無理やり幸久に股を開かせ、先走りで灰色に濡れた長くぶっ太いチンポを近づけた。そしてギチギチに勃起したチンポで強引に抉じ開け、馴らすことなく、遥はそのままぐいっと腰を押し付ける。メリッ、メリッ、と肉の軋む音がした。肛門が裂けそうな激しい痛みとズンと内臓を殴られるような衝撃に、幸久は絶叫するしかできなかった。 「ぎゃッ、あッ、あッ、あッ、ああああああッ、ああああッ、あッ、あッ、ああああああああああああああああーーッ」 沸き起こる力の奔流、相手を思うがままに蹂躙する愉悦に、遥は高笑いが止まらなかった。 「あッ、あははッ、ははははははッ、ははッ、ははははッ、はははははははははははははははははッ、」 アナルから血が出るのも構わずに、遥は幸久を抱き上げて肉壁の奥へ奥へとチンポを挿れて掻き回した。血と精液と精液が交ざってグチュッ、グチュッと音を立てる。どっと幸久の身体から未だかつてない量の黒いモヤが立ち昇り、遥はそれが体内に怒涛のごとく流れ込んでくるのを感じた。ドクンッ、ドクンッと心臓が高鳴り、頭の天辺から指先にまで新たな黒々としたエネルギーが満ち満ちていく。モヤは遥の胸を中心として渦を描くように蠢き、やがて深い紫色に変化し、火柱さながら燃え盛るように一体となった。 チンポは滾ってどうしようもなく熱を帯び、その熱を排出するように幸久の中に灰色の精液をぶち撒ける。幸久はすでに失神していた。遥は、快楽に突き動かされて、というよりは、ただ湧き出るままに機械的に何度も発散を繰り返すようになった。 次第に、遥の表情には焦燥と困惑の色が滲み出した。自分のキャパシティを越えそうな量の黒いモヤに、これ以上の変化に自分の肉体が耐えられるのかという恐怖を覚えたのだ。智や雄二と融合する時とは訳が違う、魔人化に伴うエネルギーはそれほど強烈だった。 「はッ、あァッ、クソッ――」 遥は幸久を突き飛ばし、めまいを覚えながら地面に片膝を突いて肩で荒々しく呼吸をする。激しい鼓動の振動が全身に広がり、どくどくと指の先までもが脈打った。 やがてなぜか遥の周囲にだけ風が吹き始めた。周辺の空気中に漂っている全ての黒いエネルギーが、遥を渦の中心として引き込まれていくようだった。胸に疼きを覚えて目を落とすと、ボコッと、胸の中央には黒々としたグミの実のような塊が現れた。 次の瞬間、ビキビキッと、胸の塊から黒くぶッ太い血管のようなものが根を張った。真っ黒い根は胸から首、顔、そして腕や脚、背中や尻や硬く勃起したペニスをも浸蝕していく。胸の塊が脈打つのに合わせ、張り出した根もドクンッと震え、電流が走ったような衝撃に貫かれる。血肉が沸き立ち、筋肉と骨格とがミシミシと軋みを上げて更なる進化を始め、遥はがなり声を上げて頭を押さえた。 「ぐッ、おッ、おおおッ、おッ、ガッ、ァアアアアアッ、」 頭を押さえた手の下で何かが動いたかと思えば、小さな突起が生まれ、それは瞬く間に山羊を思わせる真っ黒な二本の角へと成長する。絶え間なく灰色に濁った先走りを垂らしながら、チンポは真っ黒い根に覆われてごつごつと硬質な質感を持ち、竿の根元とカリの下部には拷問道具のような鋭い棘がびっしりと生え揃った。胸から根を張った黒い根が脈打つ度、肌の色は紫色に染まっていき、髪の毛は色素が落ちてすうっと銀色に生え変わる。下半身は皮膚が艶のある真っ黒い肉厚な角皮に覆われ、尾骶骨の辺りからズルンッと魔人の尾が生え出した。 ただでさえ逞しい肉体は、ギシギシと骨の軋む音を立てながら背が伸びて二メートル五〇センチ程にまで達する。胸、腹肩、背中、腰、尻、太腿、脹脛――全身の筋肉が更なる広がりと厚みをもって分厚く盛り上がり、周囲を見下ろす規格外なデカさに成長した。 「フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ、」 完全進化を経て、遥はゆっくりと目を開く。 黒目の部分は橙色がかかった黄色に変化し、白目の部分は黒色に染まっていた。ニイッと笑った口元に、鋭く伸びた犬歯が覗いた。 胸の真っ黒い塊は深紅に染まり、ここに魔人として遥が生まれた。 「待たせたな、幸久。これが俺、だ」 遥は幸久を抱き起し、さっきよりも大きさと重量感の増した、棘のびっしりと生えた禍々しいイチモツをゆっくりとアナルに挿入した。 「ヒッ、ギィッ、」 幸久は悲鳴を上げて失神から目覚めた。遥は幸久の口を塞ぐように舌を捻じ込む。腰を動かすとチンポの亀頭にびっしりと生えた棘に、内臓の肉と皮が引っ掛かってズリズリと動く感触がした。 幸久は口を塞がれながらも途切れがちに悲鳴を上げ、最後の力をどうにか振り絞って抵抗しようとした。が、その程度では遥の身体はビクともしない。遥が激しく腰を振るとアナルの隙間からは鮮血と精液が噴き出し、幸久はまもなく悲鳴を上げることもなくなり、再び失神――というより、心肺機能が著しく低下した状態に陥った。このまま行けば、間違いなく死ぬ。 「ご褒美だ、たっぷり味わってくれよ?」 遥は囁き、胸をぐっと張る。胸の中央の深紅の塊が蠢き、そこから黒く小さな実が現れた。遥はそれを口に含んで飴玉のように転がした後、幸久に顔を近づけ濃厚な接吻を迫った。 それは相手を奴隷化させる魔人の実だった。遥は黒い実を自分の口に戻して噛み砕き、意識を失った相手の口へ、その唾液とともに流し込む。同時に尻尾を器用に動かして幸久の太腿にぶっ刺し、禍々しい魔人のエネルギーを注ぎ入れる。どうやれば効率よく相手をこちら側に堕とすことができるのか――魔人化に際して、遥の頭には魔人に関する全ての知識が(いつの間にか)網羅されていた。 すると幸久の身体はビクンッ、ビクンッ、と飛び上がり、その間に傷がみるみるうちに治癒されていく。魔人の実と、アナルから内臓に注入された魔人の精液と、尻尾から注入された魔人の力とを一気に注入され、手足はぶるぶると痙攣し、口の端から泡を吹いていた。 「さあ、目覚めろ」 遥が尻尾を引き抜いて身を引くと、幸久はかっと血走った眼を開いた。 「ァ、ァ、ァ、」 と言葉にならない弱々しい声を上げている。 そして、ググッ、と胸の中央に魔人のそれと似た真っ黒い塊が現れたと思えば、真っ黒いマグマのようなどろどろした液体が噴き出し、幸久の全身を覆い始めた。 直後、ビキッ、ビキッ、ビキビキビキッ、とマグマは幸久の肉と骨の造り替えていき、シルエットがひと回りふた回り以上もデカくなっていく。 「フゥッ、グアァッ、ァアアッ、アアアアアアアアアアアアッ、」 幸久は獣のような叫び声をあげた。 首はぶッ太くなり、胸筋は弾力のある厚みを得てパンパンに脹らみ、その下で腹筋がボコッボコッと綺麗に割れ、背筋の凄まじい隆起に押されるようにやや猫背になり、腕や脚は全てを薙ぎ払えそうなほど異様に筋肉が発達し、骨の関節は獣のそれに近づき、足先からは肉を突き破るように鋭く爪が伸びていく。 「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、」 鼻と口は血を滲ませながら前に迫り出し、そこから鋭い牙が覗き、耳は頭の皮膚を巻き込んで上方へと移動しつつシュッとした三角に形を変えると、まもなくふさふさした銀色の毛が全身を隈なく覆い尽くし、尾骶骨の辺りからズルンと銀色の逞しい尻尾が伸び出した。チンポは黒々とした質感を保ったまま獣としてのグロテスクなニュアンスが現れ、濃厚な我慢汁の糸を引きながらドクドクと脈打ち続けている。 ――魔獣、だった。 「ハッ、ハアッ、アアアッ……グル、グルルルルルルル……アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ――ンッ!!!!!」 銀毛の狼男の姿を得た幸久は、煌々と金色に染まった鋭い目で天を睨み、どこまでも響くような雄叫びを上げた。そして遥の足元に深々と頭を垂れて跪き、無言の忠誠を示したのだった。 『よお、イイ感じに仕上がったじゃねえか』 その時、テレパシーのように頭の中に声が響いた。 智だった。河川敷の堤防の斜面を、こちらに向かって悠然と近づいてくる黒々としたシルエットが見えた。魔人同士は自由自在に頭の中で情報をやり取りすることができるのを思い出し、遥は頭を上げて自信に満ちた笑みを浮かべた。 『ようこそ、こちらの世界へ』 智もまた、にんまりと邪悪な笑みを浮かべた。 終章:河西幸久の場合 肌寒さに目を覚ますと、蛍光灯に照らされた白い天井が見えた。 「ここは……?」 俺は目をこすりながら無意識にスマホを探した。上半身を起こすと、そこは広々としたフローリングの洋室だった。エアコンの冷房が稼働し続ける低い音、そしてぼそぼそとくぐもった話し声がどこからか聞こえる。 家具はソファとローテーブルがあるだけで、生活感はない。窓にはカーテンはなく真っ黒い板が張られ、それを見た途端、ここから逃げた方がいいのではと胸がざわついた。 ここに至るまでの記憶は曖昧だった……遥のことをいじめている上級生らに突然襲われ、全裸にひん剥かれ、河川敷に放り出されたところまでは覚えている。が、その後の記憶はほとんど残っていなかった。まるで長い長い夢でも見ていたかのようだ。 「はッ?」 立ち上がろうとして、俺は思わず間の抜けた声を上げた。 「何だ、これ……」 ほんとうに夢なのかと思った。 視界に入った自分の身体は、明らかにデカくなっていた。 胸筋はずっしりと分厚く盛り上がり、肩幅はぐっと広くなり、腕はひと回りもふた回りも太くなり、惚れ惚れするような見事な逆三角形な上半身になっている。下半身もまた、太腿や脹脛がガッチリとして筋肉のラインがくっきりと現れていた。背もかなり伸びているらしい、立ち上がると周囲を見下ろした時の感覚までもが違っていた。 いつ穿いたのか覚えがないが、俺はボクサーパンツだけを着用していた。ボコボコに割れて隆起した自分の腹筋をなぞっているうちに、チンポがむくむくと反応する。みるみる大きくなってボクサーパンツを押し上げ、臍に反り返り、血管を浮き上がらせながらピクピクと小さく動いた。 長さも、握った時の太さも、前とは比べ物にならないほどデカくなっていた。ちょっと擦るだけで味わったことのない快感に襲われ膝が震える。気がつけば、「あァ、すッげ、エッロ、」という言葉が口を突いた。 ――は? エロい? どうして男のカラダ、それも自分自身に興奮してしまっているのか。そんな疑問が脳裏をよぎったのも刹那のこと、俺は性欲の掻き立てられるままにチンポを扱いた。ここはどこで、俺はどうなったのか。そんなことも激しい快感に流されどうでもよくなっていく。前と違って細かいことが気にならない。具体的にどこがとまでは指摘できないが、性格もまた、肉体と同じように変化しているような心地がした。 「はッ、はッ、はッ、はッ、」 逞しくなった自分の肉体を見下ろしながらチンポを扱き続けた。鈴口から濁った先走りが溢れてグチュグチュと卑猥な音を立てる。もう今にもイキそう、むしろ早くイキたい、という状態が続いているにも関わらず、腰がビクビクと震えるだけで、なぜか射精に至ることができなかった。 「クソ、何でだよ……ッ」 俺は昂る性欲を発散できず苛々した。 ふとさっきまで寝転んでいた近くにスポーツウェアが一式置かれているのに気づき、その上に置かれていたメモ用紙を手に取ると、 着用の上、東のドアを開けること 怪しいと思いながらも他にどうすることもできなかったので、俺は書かれていた通りにスポーツウェアに袖を通した。 胸の部分に海外メーカーのロゴが赤色でプリントされた黒のノースリーブに、黒のレギンス、そしてその上に穿く黒のハーフパンツ、赤色のスポーツシューズの五点だ。すべてサイズはジャストフィットした。ジムのインストラクターよろしく今の俺にはとてもよく似合っている。 一体向こうでは何が待っているのか。心臓の脈打つのが緊張から早まるのを覚えながら、部屋の東にあるドアを開けた。 そこはプライベートジムになっていた。 「よう、やっと目ェ覚めたかよ」 異形となった遥が、ベンチプレスの台に腰を下ろしてこちらを見ていた。 顔はまちがいなく遥だが、まるで漫画やアニメのキャラクターに出てくるような、魔人と呼ばれるような姿だった。短い銀髪、暗い紫色の肌、黒く刻まれた紋章、禍々しい双頭の角、胸の中央の真っ赤な塊、鋭く伸びた尻尾、何よりも圧巻なのはその身体のデカさだ。明らかに、何もかもが違っている。こんな威圧感のある雰囲気を持っていただろうか? 「は、るか、なのか……? ほんとうに……」 「やっぱ記憶飛んじまってんだな」遥は頭を上げてくつくつと笑った。「俺だよ。ここは智と雄二の部屋なんだが……」 智? 俺はよく知らないが、確かあの、水球部の期間限定の教師の……? どうしてそんな名前が出てくるんだ? その時だった。ゴソゴソと音のした方に視線を滑らせると、懸垂マシーンの下に全裸で両手両足を縛られた五人の姿があった。俺や遥をいじめていた、亮太、俊輔、信貴、光輝、誠人であった。身体のあちこちに殴られた跡や、煙草の火を押し付けられたような跡があり、ぐったりと俯いて黙っていた。 「今日はこいつらを使ってお前の覚醒を祝おうと思ったんだよな。お前のためにほとんど無傷で残しておいてやったんだよ」 これのどこが「ほとんど無傷」なのか。遥が立ち上がると、五人が怯えたようにビクッと反応するのが分かった。まるで痛めつけられた子犬のような反応だった。 「遥……? なに、言ってんだ……?」 俺は変わり果てた親友の姿に畏怖を覚えつつも、異常な興奮を覚えてしまっていた。足元から頭のてっぺんに掛けてぶるっと武者震いが走り、 ――ああッ、遥ッ、なんてッ、カッコイイんだ……! 心の中にそんな言葉が溢れた。それは血肉の沸き立つような狂気に近い歓喜だった。どうして俺は男相手に、親友相手に、こんな性的な喜びを覚えているのだろう? 疑問を抱いたのも束の間、俺のレギンスとハーフパンツの下ではチンポが最高潮に勃起し、服の上からでも盛り上がっているのがはっきりと分かる状態になっていた。 それが表情にも現れていたらしい。遥は俺の顔を見るなり、ニイッと唇の端を釣り上げて笑い、 「思い出したか? さすが俺の従僕だな」 従僕、と言われた瞬間から、ドクンッ、ドクンッと心臓が大きく脈打ち、手の平に汗が滲んだ。思わず片手を胸に当てる。その脈拍とともに、失われていた直近の記憶の映像が、走馬灯のように次々と脳裏に閃いた。 「ハアッ、ハアッ、ハアッ……」 ――ああ、こっちの俺が、ほんとうの俺だったんだな…… そう感じた途端から、全身に新たなエネルギーがなみなみと注がれていく充実感を覚えた。 まるで《河西幸久》の器に、新しい人格が上書きされていくような……。それと反比例するように、従僕になる以前の記憶もまた書き換えられ、自分がずっと前から今のような存在だったのでは? という錯覚に囚われる。顔を上げて遥と視線を合わせた瞬間、頭の中でバチと火花が散ったような痛みが生じ、それからは俺はもともとこういった姿で、遥に従えるために生まれてきたということしか思い出せなくなっていた。 「さあ、お前はこいつらの特別顧問だ。今度は、お前が《指導》してやる番だからな」 「……ハイ」 俺は機械的に返事をしながら、遥から命令をもらったこと、そしてかつて俺をいじめた奴らを今度は自分が《指導》できるという状況に打ち震えるような興奮を覚えた。今の俺の服装は、まさしくそのシチュエーションにぴったりだった。そして、不思議なことに、遥から《指導》の許可が下りた途端、それまでギチギチに勃起していたにも関わらずどうしても射精できなかったチンポから、栓を抜かれたようにビュクビュクビュクッと一気に精液が溢れ出した。俺は脈打ち続けるそれをハーフパンツの上から押さえながら、「……ハイ」ともう一度呟いた。 遥は、亮太と光輝の手足の拘束を解き、二人をベンチプレス台へと移動させて並んでバーベルを握らせた。並大抵の人間では持ち上げるのが不可能だろう重量のプレートを取り付け、まず遥は亮太の補助についた。逃げれば殺す。そんな黒々とした威圧感が、遥の筋肉で盛り上がった背中から立ち昇っているかのようだった。 「おい、早く上げろよ」 遥はドスの利いた声を上げた(俺はその声にもまたゾクゾクするような畏怖と興奮を覚えた)。亮太は「……ません、できません、無理です」と涙目になって頭を左右に振り、遥はハッと嘲るように笑い、 「こんなんも持ち上げられねえのかよ。弱過ぎだろ。 ――これ、お前が俺に言った台詞だろ? 同じ重量なんだから、もちろん持ち上げられるよなア?」 遥がわざとバーベルを亮太の上に放り投げるような素振りを見せると、亮太は、「すみませんッ、すみませんでしたッ、ごッ、ゆるしてくださいィ」と突然子供のように泣きじゃくった。遥は俺の方に目を向け、 「なあ、手本を見せてやれ」 実はベンチプレスなど触るのは初めてだったが、何も不安はなかった。体中に並々ならぬエネルギーが漲っており、触る前からそれが簡単に持ち上げられることは明らかだった。俺は、遥の言われた通りにベンチプレスに横になり、――こんな感じだろうか? とバーベルを握って持ち上げた。亮太らが無理だと首を振る重量が、手ごたえがなくあっさりと頭上に持ち上げられる。朝飯前だった。俺は次の指示が出されるまでそれを無言で何度か繰り返した。 「もっと重くても大丈夫ッスよ」 そう言うと、亮太ら五人から、ざわっと動揺の混じった気配が起こるのを感じた。 「じゃあ、百回だ、俺が数えてやるからよ。それで、《完成》にしようじゃねェか」 遥がニヤリと笑って言った。《完成》が意味するものを理解し、俺は言われるがままにそれより重いプレートに交換してバーベルを持ち上げた。 「一、二、三、四、五――」 ああ、これでも楽勝過ぎてつまんねェな。何百回でもできそうだ。ムラムラして仕方がない。イキたい、ヤリたい、ブチ壊したい……ブチ壊したいって、いったい何なんだ? 「二十、二一、二二、二三、二四、二五――」 なぜだかだんだん身体が火照ってきた。キモチイイ。脳裏に亮太や光輝をメチャクチャに犯して殺す映像が浮かび、興奮してチンポから我慢汁が止まらない。これが終わったら、あいつらをメチャクチャにできる。そう思うと、バーベルを持ち上げるのに勢いがつく。 「五十、五一、五二、五三、五四、五五――」 数をかぞえる遥の声には、俺の情欲を掻き立てる何かがあるんじゃないだろうか? そう疑ってしまうほど、バーベルを上げていると異常なほどムラムラする。触ってもいないのにチンポはレギンスとショートパンツを押し上げて硬く勃起し、ビクビクと震え、「フゥッ、フゥッ、」と短く息を吐くさなかに射精を繰り返してしまう。ボクサーパンツの中は熱っぽい精液でグチャグチャに濡れ、とうとう布地を貫通して自分の胸元に降りかかった。ああ、すっげえ、止まらなねえ。どれだけ射精してもイキ足りない。 「七十、七一、七二、七三、七四、七五――」 全身から汗がだらだらと流れて止まらない。ノースリーブとレギンスとショートパンツもまた汗でぐっしょりと濡れ、締め付けられるように身体に張りつく。いや、実際に締め付けられているのではないだろうか? さっきよりも何だか首や胸や腰や股間や脚がパツパツに張り、息苦しさと似た感覚に見舞われている。いったいいつになったら収まるのだろう? 激しい射精を繰り返すたびに、熱っぽくなった身体の節々から、ギシッギシッ、ミシッミシッと骨や肉の軋むような音が聞こえ、服の締め付けがきつくなっていく。「や、やべェよ――」という亮太らしき声が遠く聞こえた。ああ、俺、どんどん「ヤバく」なっていっているのか。そう思うとどうしようもないほど欲情し、ああ、もっと早く「やべェ」姿になりてェよォ、とだらしなく口の端から涎を垂らしてしまった。 「やっぱり、やめた」 遥は唐突に数をかぞえるのを辞め、俺に近づいてそっと耳元で囁いた。 「俺が許す。好きにしていいぞ」 そう言われ、俺はバーベルを両手に持ったまま立ち上がり、しばらく目を瞑って天井を仰いだ。 「フゥーッ、フゥーッ、」 ゆっくりと目を開き、俺は片手にバーベルを持ち変えてそのまま放り投げる。この程度の重さ、両手を使うまでもなかった。バーベルが真っ黒なトレーニングマットを敷かれた床に落ちると、ゴツン、と鈍い音を響かせ、亮太ら五人がビクッと肩を震わせるのが分かった。俺は手の平で睫毛から滴り落ちた汗を拭った。 ギチギチに勃起したイチモツはレギンスとボクサーパンツの布地を盛り上げ、ショートパンツに至っては太腿の半ばまでずり下がってしまっていた。ぐっと腰を前に突き出してやると、バチンッと音を立ててレギンスとボクサーパンツから逞しいチンポが腹に反り返った。バキバキに血管の走った自分のチンポを握って頭を上げ、俺は亮太の怯えた目を真っ直ぐに見据えた。 俺は今更のようにその場から逃げようとする亮太の肩をがっと掴んだ。 「何なんだよ、お前らは、何なんだよォッ!」 涙を浮かべながら叫ぶ亮太の口を塞ぐように唇を重ね、相手の歯の隙間に舌を捻じ込んで(一方的な)濃厚な接吻をした。こいつって、こんなに背がちっちゃかったっけ、やりにくいな、という感想を抱いてから、いや違う、俺の背が高くなっているだけなんだ、と再認識する。 「んッ、……んん――ッ!!!」 俺は亮太の頭を背後の壁に押し当て、動けないように固定しながら舌を捻じ込みつつ、相手の腰を持ち上げ、肛門の入り口にぬらぬらと先走りで濡れて光る凶器のようなチンポを押し当てた。 先走りで軽く馴らしてから、ぐっと、きつく締まっているアナルに勃起し過ぎてツルツルになった立派な亀頭を押し挿れる。グチュッ、メリメリッ、と音がし、亮太はビクンと全身を震わせ、目と口を大きく開いて「ヒゥィッ、」と今まで聞いたことのないような声を上げた。竿の根元までずっぷりと挿入すると、その大きさと衝撃に亮太はがくがくと痙攣し始めた。 「あァッすっげ、お前ん中、すっげェ締まってて気持ちいいよ」 俺はそう言って容赦なく相手の身体をチンポで突き上げて腰を振った。初めて味わう快感に、俺のチンポは亮太の中でますます大きくなるのが分かった。最初の一回目は味わう余裕もなくイッてしまった。激しい射精の濁流に亮太の腹はぶるぶると振動し、チンポを引き抜くと入りきらなかった大量のザーメンがぼたぼたと滴り落ちた。 それから俺は箍が外れたように何度も何度も何度も何度も亮太の中に射精した。亮太のアナルは無理やり押し広げられたせいで内臓からも出血した。ぐぷ、ぐぷ、と亮太の腹は精液でパンパンに膨らみ、顔色は真っ青で、血の気がなく、「あ、あ、あ、」と短い呻き声を洩らしながら白目を剥いていた。 ――アアッ、アアッ、キモチイイッ、モットッ、モットッ、オレニッ、チカラヲッ、 血を見ると俺は自分の中の何かが沸き立つのを感じ、俺は半ば無意識的に亮太の首筋に噛みついていた。 「――あ?」 噛みついてから、自分が何をしているのかはっと我に返った。おびただしい鮮血が噴き上がってシャワーを降らし、俺の顔や胸や腹や性器を赤く染めた。自分の犬歯に指を触れると、いつの間にか人間とは思えないほど鋭く長くなっている。これだよ、俺が求めていたのは――。そんな充実感が沸き起こって、貪るように血を飲んでいた。 俺は立派過ぎるイチモツで相手の内臓を掻き回すように腰を動かしながら、首筋の血を啜り、肉を食い千切った。ぶちッ、と音を立てて、それを口の中でクチャクチャと咀嚼する。――と、ドクンッ、ドクンッ、と心臓が躍り始め、胸を中心として細胞がぱちぱちと泡立つような歓喜が広がり、相手の内臓に突っ込んだまま痛いほど勃起したチンポから大量の精液が迸る。 「うッ、おッ、アッ、アアアッ、アッ、アアアアアアアアアアアアアッ、」 ドシュッ!! ドシウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウュッ!!!! ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!! 血と、肉片の、生温かい感触がチンポを熱っぽく滾らせた。 亮太を犯し、幾度も激しい射精を繰り返しながら、俺の身体は更にデカくなっていたらしい。ジャストフィットしていた黒のノースリーブは、きゅッきゅッと化学繊維の引っ張られるような音を立て、胸元の真っ赤なロゴマークがまるで印刷の寸法を誤ったように横に大きく引き延ばされたかと思うと、断続的にブチッ、ブチッと短い音を立てながら布地が首回りと腕と背中から裂けてしまった。 「うおッ、ゥガッ、ガアッ、ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ、」 俺は胸を張って雄叫びを上げた。骨はより強大な土台を目指して成長し、筋肉は更なる高みを目指してバキバキに盛り上がる――破れたノースリーブの下から雄臭さを凝縮したような見事な上半身が露わになり、俺はその迫力に我ながら息を呑む。鋼板のような分厚い胸板とボコボコに割れたシックスパックにうっすらと銀色の獣毛が生え始めているのを、俺は見逃さなかった。 かろうじてボクサーパンツとショートパンツは破れなかったが、横幅と背丈が増したせいでゴム紐は今にも千切れそうにキシキシと悲鳴を上げていた。太腿は丸太のようにぶっ太く筋肉のラインがくっきりと流れ、皮膚の表面には血管が薄く浮かび上がっていた。 顔面と頭の疼くのような感覚の後に視界が一瞬ぼんやりと滲んだ。歯茎にむずむずとした痛みと痒みが走り、耳がぐっと上方へと引っ張られ、鼻先がぐっと前に迫り出していくようだった。頸椎そして背骨、腰椎へとビリビリした心地良い痛みが伝わり、それが骨盤のところへ達するとチンポの根元がビクンッ、と反応した。ズダ袋さながらボロボロになった亮太の内臓を押し上げるように、チンポは硬く勃起を維持したまま長さと太さをじりじりと増していき、何度もヒクつき、その形状に野性を思わせる凶暴なニュアンスがつけ加えられることまでが感覚的に分かった。 俺は激しく腰を振って、同時に亮太の首や胸の血肉を貪り続けながら、まだ筋肉の成長は止まらないらしく、特に腕と背筋が発達し過ぎたせいで上半身が勝手に少しずつ前に傾いていく。太腿や脹脛も筋肉でパンパンに膨らみ、獣人のそれに骨格が近づいていく。腋の下にむず痒さを覚えて目を落とすと、胸と腹に生え始めていた銀色の獣毛はすでに体中をうっすらと覆うまでに伸びており、亮太のおびただしい血で赤黒く染まっていた。 腰の辺りに違和感を覚えた直後そこからぼこんと銀毛の下で丸い何かが現れ、反射的に腰を落として屈むとそれはもぞもぞと動いて伸びていく。尻尾、だった。だらんとふさふさした狼の尻尾が造られる前に、とうとうボクサーパンツやショートパンツ、レギンスまで下半身にどうにか纏っていた布切れの一切が弾け飛ぶ。頭の締め付けられる痛みがなくなった後、もはや原形を留めていない亮太の身体からチンポを抜いた。亮太はとっくに絶命しており、それはボロ雑巾のように床に崩れて生臭いにおいを放っている。俺は背後を振り返り、反対側の壁一面に嵌め込まれている鏡に自らを映した。 「フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ、」 そこには、天井に頭の届きそうなほど桁違いに大きな魔獣――狼男としての《完成》された俺の姿が映っていた。 つんとアンモニア臭が鼻を突く。視線を滑らせた先には、「あ……あ……」と血まみれの俺を見て小便を洩らしている小僧ども(亮太を除く、残り四人)の無様な姿があった。 「やっぱ、この瞬間は何度見ても堪んねえな」 遥は満足そうに微笑を浮かべながら俺を見て言った。そしてこちらに近づいて、目の前に立ち、魔人に匹敵するほど成長した俺の肉体を胸から腹、腹から太腿へと手の平でゆっくりなぞった。その手の動きから、「お前は俺のものだ」という暗黙の了解がひしと伝わって来、俺はまた今までと違った静かな興奮が腹の底に燻ぶるのを感じた。 「ほら、俺のももう我慢できねェんだよ」 遥はそう言って、俺にギチギチに勃起して反り返った禍々しい魔人のチンポを握らせた。トクン、トクンとチンポからも心臓の鼓動が伝わるようで、俺はその黒々として棘のびっしり生えた凶悪なイチモツを握った途端、これが自分の腹の中で爆ぜるのを想像して先走りが止まらなかった。 それは歪んだ被・征服欲だった。こんなものが自分の中に入ってきたらどうなるんだろうか? 俺は、さっき俺が犯して殺した亮太のようにされてしまうんじゃないだろうか? 一抹の不安が過ぎったが、そんなことがどうでもよくなるくらい、遥に、俺のマスターたる遥に犯されたい願望が強く意識された。そして、究極的に、俺はマスターとひとつになりたい。 「大丈夫だぜ? お前はもう人間ではない、再生能力を手に入れているからな。どれだけ壊されてもすぐに戻る。まあお前の肉体はそう簡単には壊れることはないがな」 どうやら俺の思考はそのままマスターに読み取られていたらしい。黙って頭を上下に振る。 「だがその前に、残りの分の《食事》が必要だよな?」 そう言ってマスターは残った四人を一瞥した。 「……ハイ」 俺は幾分か低くなった声で頷き、狼と化した口の端を限界まで釣り上げて笑みを浮かべた。ぽたぽたと涎が真っ黒いシートの敷き詰められた床に滴り落ちて……。 《完》