SSS Kanon 水無瀬名雪 クリスマス 202512
「祐一が毎晩激しくえっちしてくるから寝不足で仕方ないんだよ。だお~」
クリスマスが間近に迫った12月下旬のある日の朝の教室。受験生である美坂香里は親友である水無瀬名雪の惚気だか愚痴だかにペンを握るのを止めるしかなかった。
「仲が良くて良かったじゃない」
あまり心に思っていないことをとりあえず口にしてみる。これで話が打ち切れるのなら好都合。だが、名雪は止めてくれない。
「ラブラブなのは良いことだって分かってるんだけど。私、睡眠時間は長く取らないと駄目なのに。昨夜も頼まれたからサンタコスプレして深夜までえっちに励んだんだあ~♪」
「コスプレサービスまでしてえっちで寝不足って言うのなら……単なる自業自得じゃないのよ」
香里は呆れるしかない。
親友とその従兄弟の同棲カップルの惚気話は毎日のように聞かされている。受験本番まで残り1か月を切った身としては時間の無駄でしかない。邪険に扱って嫌がっているのはアピールしているのだが、名雪は止めてくれない。名雪は自分の満ち足りた性生活を誰かに喋りたくて仕方がなかった。
「そうなんだけど~、でもぉ~、祐一に頼まれたら断れないっていうかぁ。恋人として、近未来のお嫁さんとしては祐一の望みはできる限り応えてあげたいってどうしても思っちゃうんだぁ♡」
「…………うざっ」
舌打ちが漏れ出た。
独り身で恋人なんて要らないと思っている香里にしてみれば勘弁してほしい惚気だった。
「えっちなサンタさんになってあげたらさ。祐一がいつもよりも興奮しちゃって。腰の振り方が凄くてさ。私、何度も何度もえっちに達しっちゃったんだよぉ~♪」
名雪は恥ずかしがっていやんいやんと首を横に振ってみせた。
彼女のエロトークは当然香里以外のクラスメイトにも聞こえている。新学年になったばかりの頃はあけっぴろげな猥談に頬を赤らめたり眉を顰める者もいた。だが、半年以上も聞かされるとみんな慣れてしまい特に何も感じなくなっていた。相沢祐一というもう1人のクラスメイトの性癖だけをクラス全員が熟知していた。
「祐一が、今夜もクリスマスえっちしようって言うからさぁ~今夜はどんなコスプレをしようか頭を悩ませてるんだよぉ~♪ ただでさえ寝不足で大変なのにぃ~♪」
「心底どうでも良いわね」
香里の偽らざる本音だった。
だが、およそ1年間、冷たくあしらわれようと惚気話を続けた名雪は強者だった。
「毎晩あんな激しいえっちしてたんじゃ、23日の私の誕生日プレゼントと25日のクリスマスプレゼントは祐一との赤ちゃんになっちゃうよぉ~♪」
「私は来月の共通テスト。そして再来月の二次試験の為の勉強で忙しいの。合格して東京の国立大学に進学するんだからっ!」
香里は燃えていた。北海道ではなく東京で一旗揚げようと高い志を有していた。
「私は体育推薦で、祐一もAO入試でそれぞれ東京の大学への進学が内定してるから。香里も東京に来てくれることを心から応援してるよ~♪」
「うがぁああああああああああああぁっ!!」
香里は頭を抱えながら叫んだ。
受験本番を前にして、ちょっと心が折れそうになる学校一の才女なのだった。