SSS 薫る花は凛と咲く 和栗薫子 クリスマス
「凛太郎くん♪ クリスマスデートに誘ってくださってありがとうございます♪」
「俺は、和栗さんの彼氏なんだし。特別な日にデートに誘うのは当たり前なんだけど……」
12月25日夜の和栗家前。紬凛太郎は恋人である和栗薫子とデートを終えて彼女を家まで送ったところだった。
「和栗さん、随分と忙しいみたいだったのに誘って良かったのかちょっと不安で」
「桔梗は一応ミッション系の学校なのでクリスマスは校内行事があってあまり時間が取れないのは確かです」
デート帰りである筈の薫子は制服姿だった。
今日は学校での行事に参加し終えてから凛太郎と合流となった。
「クリスマスはバイトもありますし。凛太郎くんもお店の手伝い、忙しかったでしょうし」
「そう、だね」
凛太郎は頷いてみせた。
ケーキ屋にとってクリスマスは一番の書き入れ時。凛太郎もここ数日は夜明け前に起きて実家を手伝っていた。
2人とも忙しかったために、昨日も今日も恋人同士の甘い一日を過ごすというわけにはいかなかった。夕方に顔を合わせて食事をする。それが精いっぱいだった。
「でも、凛太郎くんと過ごす時間が私にとっては一番大切ですから。短い時間でもデートできて私はとっても幸せです♪」
薫子は凛太郎に満面の笑みを向けた。
「それにスイーツ食べ歩きは、私にとっては最高のデートプランでした♪」
スイーツ大好き薫子はクリスマスデートにご満悦だった。
「俺は、実家のケーキの味しかほとんど知らないから。今、巷ではどんなケーキやスイーツが流行っているのかリサーチしておきたいって考えもあったんだ」
「それって……私、期待しても良いってことですか?」
「期待?」
凛太郎が首を傾げると薫子は頬を赤らめた。
「凛太郎くんのリサーチに私を連れて行ってくれたということは……将来、凛太郎くんがスイーツのお店を持つ際に私と一緒にやりたい。そう、期待して良いんですか?」
今度は凛太郎の頬が赤くなる番だった。
「そこまで考えてスイーツ巡りをしたわけじゃなかったけど……おっ、俺は、和栗さんと一緒にお店をやりたい。ずっと隣にいて欲しい、とは思ってる」
凛太郎の返答を聞いて薫子の全身が真っ赤に染まった。
「……言質、取っちゃいましたからね」
薫子は赤くなりながら笑ってみせた。
「今日は特別な日のデートだったので……可愛い下着にしないと駄目かなとか色々考えちゃったんですけど。凛太郎くんの言葉が何よりのプレゼントです♪」
「かっ、可愛い下着……」
凛太郎は思わず妄想してしまった。いまだ見たことがない薫子の裸を。
「おっ、おっ、俺は……」
ヤンキーに見られがちな見た目と違って凛太郎は初心な少年だった。
顔中赤くなって固まってしまう。
「うちは、男女交際には厳しいのですが……婚約すれば一緒に住んでもオーケー。そういう家なんです。母は、まだ高校生の時に婚約を勝ち取ったそうです。だから……私も、凛太郎くんが申し込んでくれるのを待ってますからね♡」
薫子は軽くジャンプして凛太郎の頬にキスをしてみせた。
「それじゃあ、凛太郎くん。またデートに誘ってくださいね♪ メリークリスマス♡」
薫子は嬉しそうに挨拶すると家の中へと入っていった。
凛太郎は呆然としながら薫子を見送っていた。
「…………和栗さんってやっぱスゲェ」
凛太郎がデートの感想を述べたのは薫子が家に入ってから5分以上経ってからのことだった。
少年は健気で優しく逞しい彼女の存在に将来に対する強い安心感を得たのだった。