SS スライム倒して300年 スライムの呪い2
ライカがスライムが周辺から消えた異変に気付いてから1週間が経過。その間、目に見える大きな変化は生じなかった。だが、異変は着実に進行し事態は深刻化していた。
その異変に2番目に気が付いたのは調薬師のエルフにしてトラブルメーカーであるハルカラだった。
「おふろっ、おふろ~♪ おっふっろ~♪ こういう日は温泉に限りますよね~♪」
ハルカラはアズサによく妬まれる巨乳を揺らしながら入浴の準備を進めていた。
屋敷内の小さな風呂ではなく最近になって新しく作った露天温泉に入ろうとしていた。
温泉施設はライカの実家近くの観光地の温泉を真似たものだった。アズサが新たな魔法を生み出して地下水を掘り当て、魔力を原動力とする窯で温めて露天風呂へと湯を供給していた。完全な温泉という訳ではなかったが、情緒があり、広いということでアズサファミリーには人気が高かった。
「おやっ? おチビちゃんたち2人が先に来ているみたいですね.。お~い♪」
ハルカラは前方に見える露天風呂の手前に2人のまだ幼い少女が立っているのを認めた。
全く同じ顔つきをしている2人は小学生にしか見えない幼い顔つきと体型をしている。だが、ただの幼女ではなかった。2人とも50才ほどだった。
2人はそもそも人間ではなかった。姉ファルファと妹シャルシャは共にスライムの精霊。彼女たちはアズサが毎日スライムを倒し続けた結果積もり積もりった思念、怨念の集合体というべき存在だった。事実、シャルシャははじめアズサに敵対的で命を奪わんとしていた。今では2人ともすっかり打ち解けてアズサの娘として共に仲良く生活していた。
2人は精霊であって人間ではない。けれど、外見も生活スタイルも人間と何も変わりがない。ハルカラもアズサの血を分けた実の娘の様に錯覚してしまうことがしばしば。今日も錯覚を起こしていた。
「さて、おチビちゃんたちにおっぱいの素晴らしさを教えないと駄目ですね♪ 将来は巨乳になれるように今の内から準備を始めないと♪」
おっぱい自慢。それは、何かというと微妙に扱いが悪いアズサファミリーの中でハルカラが唯一天下を取れる領域だった。
精霊であるファルファたちが人間やエルフの様に成長するのかという根本的な問題を忘れてハルカラは2人へと近付いて行った。
「あなたたちが目標とすべきおっぱいはここにありますよ~♪」
ハルカラは前屈みになって胸を強調しながら2人へと更に近付いて行った。
そして気が付いた。2人の様子が変なことに。
「アレ? 2人とも……固まっちゃってるんですか?」
ファルファもシャルシャもハルカラの方を見ようとしない。それ以前に2人は石像の様に同じ姿勢のまま笑顔で固まっていた。2人に起きていた異変はそれだけではなかった。
「えっ? ちょっ? 2人とも、なんか体が透けていませんか? 気のせいじゃないですよねっ!?」
ハルカラは止まっている2人の身体が透けていることに気が付いて焦った。身体の裏側の風景が透けて見えてしまっている。
普通ならあり得ないことにハルカラは戸惑った。
「お師匠様の新しい魔法を使ったイタズラなんですよねっ? そうなんですよねっ?」
ハルカラは顔を真っ赤にして一生懸命にファルファたちに話し掛けた。だが、ファルファたちからは応答がない。それどころか巨乳エルフを全く見ようとしない。固まったまま一切の反応を見せない。事態が深刻だと思ったハルカラの表情は青ざめていった。
「風情を楽しむために露天風呂をわざわざ作ったんだから。大声出して騒がないの」
ハルカラの後ろからアズサがやってきた。
アズサはいつもの様にハルカラが大げさに騒いでいる程度にしか考えていなかった。
「違うんですよ、お師匠様っ!」
ハルカラは興奮しながらアズサへと振り返った。
「何が違うのよ?」
アズサは呆れた表情を見せている。ハルカラの一人芝居だと思っている。
「ファルファちゃんとシャルシャちゃんが大変なんですっ!」
「どう、大変なの?」
「石像みたいに動かなくなっちゃったんですっ! それに、透けて、透明人間になっちゃったんですよ~っ!」
ハルカラは興奮が収まらない。だが、アズサはますます呆れ果てた表情を浮かべてみせたのだった。
「石像~? 透明人間? 一体、どこがよ?」
アズサはハルカラの背後を指差してみせた。
「へっ?」
ハルカラが間抜けな声を発しながら再び振り向き直す。
そして再び首を大きく捻る事態となったのだった。
「ママ~♪ 一緒に入ろうよ~♪」
「一緒に、入りましょうです」
ファルファもシャルシャも普通に動いてアズサと一緒の入浴を誘っていた。手を伸ばして普通に動いている。身体は透けておらずアズサと同じ肌の色を見せていた。
「ファルファちゃんもシャルシャちゃんもいつも通りじゃない」
「えぇえええええええええええええぇっ!?」
「お酒でも飲んで酔っ払ってるんじゃないの? 飲酒してのお風呂は危ないから止めてよね」
「そっ、そんなぁあああああああぁっ!? 確かに固まって透けていたんですよぉおおおおおおおぉっ!」
ハルカラは頭を抱えて嘆いてみせたのだった。
結局この日の一件は、トラブルメーカーであるハルカラが酔っぱらったまま温泉に向かった為におかしな幻覚を見た。そういうことで片づけられてしまった。
アズサはこの1件を顧みることはなかった。だが、ハルカラが見たものは幻覚でも妄想でもなかった。スライムに纏わる異変だった。
アズサはまたしても異変を事前に察知することができなかった。
ビッチ♡サグメ
2024-11-23 04:50:53 +0000 UTC