SS 俺いも 2024長編8 幕間
「……部長に就任してしまったことを思うと学校に行くのが苦痛で苦痛で仕方ないわね」
「昨日の今日で部長職を嫌になるの早すぎないか?」
4月17日水曜日朝。高坂瑠璃は本当に久しぶりに学校をサボってしまいたい衝動に駆られていた。1周目以来のことだった。
けれど、学校に行きたくない理由がかつてとは違っていた。1周目の際には瑠璃はクラス内で孤立しており身の置き場がなかった。故に居た堪れなくて行きたくなかった。
しかし現在は違う。新生ゲーム研究会の部長となったことで、そのプレッシャーを受けてのことだった。瑠璃は人の上に立って何かを指揮したり協力したりするのが苦手だった。
「京介が指示を出せば良いのよ。貴方は先輩なのだし、私の夫なのだから」
「昨日できたばかりの部活で、初っ端から指揮系統が乱れるのは良くない。前の時間軸と同じ活動をするにしてもだ。それは部長である瑠璃の口から告げないとな」
「…………それが、苦痛なのよ」
瑠璃は唇を尖らせて拗ねてみせた。
「前の時間軸のことを思い出せば、細かく指示を出す必要もないだろ。ゲームを作れ、さもなくばプレイしろ。前の部長なんて恐ろしいまでに適当で放任主義だった」
「確かにあの人は、あのキャラだったからそれで良かったんでしょうけど。私には……」
瑠璃は俯いてしまい、煮え切らない。
部長という座にJK人妻は囚われてしまっていた。
「まあ、瑠璃なりの部長像ってヤツを模索していく必要はあるんだろうな」
慰める京介にも瑠璃が不安を感じている部分は何となく分かっていた。
ゲーム研究会のメイン活動である筈のゲーム作り。そのプログラミングにおいて瑠璃は前部長や真壁、瀬菜たちに及ばない。そのこともあって、2周目以降の彼女はグラフィッカーとして専念してきた。ゲーム作りの音頭を取るには弱い部分がある。それを気にしているのだろうと。
「適材適所って言葉はとても大事だ。ゲーム研究会で瑠璃の画力の足元にさえ届く奴がいないことを俺たちはよく分かっている。プログラミングや企画は真壁くんや瀬菜に任せれば良い。無理して仕切ろうとするな」
「それは、そうなのだけど……」
瑠璃の返事はどうにも煮え切らない。京介の言葉が間違っていないのは分かっている。瑠璃の感じている圧とは結局のところ、胸の中で思い描いている理想の部長像のハードルが高過ぎることに起因している。何でも的確に指示を出して、自らも実行することのできる完璧超人。アニメの登場人物の様な部長像。それが、幼な妻の心を蝕んでしまっていた。
「まあ、結局は案ずるより産むが易し、習うより慣れろってことになるだろうな」
京介は瑠璃を力いっぱい抱き締めてみせた。
「えっ?」
夫の腕の中で妻は呆然とした表情を浮かべていた。
「余計なことは今考えなくて良いや。というわけで、学校に行くまでまだ少し間がある。セックスしようぜ」
京介は底抜けに明るい声と表情で朝っぱらの情事を提案してみせた。
「本当に貴方は……昔からおかしな解決方法ばかり提案するのね」
瑠璃は目を瞑って京介のキスを受け入れる態勢を取ってみせた。
2人は熱い口づけを交わしてみせた。
それから京介は瑠璃の室内着を慣れた手つきで脱がせていった。
京介の手により下着が外されたころには、瑠璃は奇妙な高揚感を得ていた。
つい先ほどまで、部長としてのプレッシャーに圧し潰されそうになっていたとは思えないぐらいに心が弾んでいた。
「京介……私はやっぱり、貴方のことが大好きよ」
瑠璃は両腕を横に大きく広げて夫を迎え入れる態勢を取ってみせた。
「瑠璃ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃっ♡♡」
京介は瑠璃に改めて抱き着いて、そのまま押し倒してみせたのだった。
「あぁああああああああああああぁっ♡♡ 京介~っ♡♡ いつもより激しいぃいいいいいいいいいいぃっ♡♡」
愛情は燃え盛り時を忘れて愛し合った。
結局、2人が学校に到着したのは3時間目の途中のことだったという。