世界一カッコイイ俺のヒーロー!(本編9話最後辺りの裏話)
Added 2025-07-30 14:12:58 +0000 UTCこのコンビニで働き始めて二年目くらいの、ある何でもない日のこと。 この辺は安い物件が多い地区のせいか客層は良くない。だからなのかバイトもあまり続かないみたいで、他の店舗からこっちへ応援に行ってくれないかと頼まれてきてやったのが俺。頼まれたから仕方なく、だったけど元々いたバイトのエイミちゃんは可愛かったし(もう少しで落とせると思う)、客層はたしかに良くなかったけど俺は元々ガタイも良かったので絡まれることもなく割と平和に過ごせていた。絡まれても声を低くして「何すか?」と凄めば大体の人間は引き下がる。エイミちゃんからも「すごい」なんて言われて結構毎日が有頂天だった。 まぁでもここで終わるようなことはもちろんごめんだね。もう少しすれば社員扱いになるかなーそうなったらまずエイミちゃん落として、まぁ他の地区への異動願い出して?この店舗を続けるにしろ、店長くらいには上げてもらわないとな。まっ何にせよ俺の人生順調すぎるな〜なんて思ってた。 夜中勤務は退屈だ。けどその日は久しぶりに狙ってるエイミちゃんと一緒で俺は浮かれていた。そろそろ決定打を打ちたいなぁなんて思ってたし、いいとこ見せるつもりで力仕事を代わったり甲斐甲斐しい健気な俺。そろそろ落ちてもいいのに、女子大生ってやっぱ高飛車だよな。あっちから告るの待ってたけどあっちも告られるの待ってる?はーめんど。 そんなイライラを抱えてる時、入店してきたその客を見て「ラッキーだ」と俺は思った。 その男は常連客で、いつも一人で夜中に来店する。見た目は悪くないけど、まぁなんというか虐めたくなるタイプ。こいつ多分Subだなってすぐわかった。あいつらいつも「虐めて下さい」ってオーラ出てるし。 その証拠にというか、いつも怪我をしてることが多い。ほら今日だって、顔や腕にデッカい包帯巻いたりしてるし。きっと誰かをイラつかせるタイプなんだろうな、俺みたいなやつをさ。 こいつを見てると無性に虐めたくなる。だから来るといつも俺はわざと嫌な対応をしてやった。憂さ晴らしってやつだ。オツリを投げて渡したり、探している商品を嘘ついて「売り切れだ」って言ったり。温めなんてしてやったこともない。聞きもせず冷えた弁当を放り投げるように渡してやる。そんな態度をとってもいつもへらへらするから「次回はもっと嫌な態度をとってやろう」なんて余計にイライラしてしまうのだ。煽るあいつが悪いんだ。 憂さ晴らしになってないと言われそうだが俺もそう思う。でもなんでだろうな、こいつを見ると何だか無性にイライラするんだよな。自分より弱いやつを見たら皆そんなもんだろう? それに今日はエイミちゃんもいるし、いいとこ見せるチャンスじゃないか?俺がただ客にペコペコしてばかりじゃないって見せつけてやりたい。チラチラと隣の彼女を見ながら「俺がレジするからいいよ」と声をかけると彼女は笑って「ありがとう」とレジ周りの整理をしている。よしよし、そこなら声も聞こえるだろうし見とけよ、なんて張り切ってた。 そいつが弁当やらお菓子やらせっせと運んできたのを横目で見つつ、万札を出してきたので鼻で笑ってやった。よし、今日のネタはこれにしてやろう。 「あーーー、オツリないんで万札無理っすねぇ」 「え、あ、えっと、俺……今、これしかなくて……」 「あーじゃあ無理っす」 こいつが結構な頻度で万札を出してくるのは前からうぜえと思ってた。いつか躾してやるって思ってたんだよな。難癖つけるには最高の展開じゃね?だって実際迷惑だろ。オツリ数えるのめんどいし。いや、別にあるんだけどねオツリ。当たり前だよコンビニだし。でもムカつくからいいのいいの。 チラリとエイミちゃんを見てると俺と男を交互に見てた。戸惑ってる?もっと見ててよ。強い俺って感じ?うはー気持ちいい。 見せつけるのは終わったから泣いて帰っちまえばいいのに「どうしよう」って顔で固まってる男がうざったい。わざと大きくため息をつくと、その肩がビクッと震えた。めちゃくちゃ気分がいい。時計を見るとちょうど0時。あぁそうだ。とどめの一言お見舞いしてやろ。 「駅裏のスーパーで両替頼んできたらどうっすか?」 「え?」 「スーパーっすよ。す・う・ぱ・あ!…小銭作ってくるまで待っててあげますから、はは」 「…………」 こんな時間にスーパーなんて開いてないだろう。それにここから駅まで走っても15分。そこまで行って帰ってこいって無茶言ってんなぁと自分で笑いつつ、俯いた男の顔が見たくて覗き込みながら追い打ちをかけるつもりで口を開く。あぁ楽しい。 「もう迷惑なんで、帰ってもらっても「どうしたの、ツバキくん」ーーーあぁ゛?」 異様に通る声に遮られて顔を上げる。こんな奴の仲間なんて同じようなヒョロガリだろと高を括っていたら、妙な迫力のある男が暗い目でこっちを見ていた。 背筋が冷えて体が固まる。情けない笑みを浮かべたまま唇も固まった。喉が張りついたように声をなくして、息を吸うヒュッとした音がした。え、明らかにヤバそうな男がいる。 スーツを着た男がいつのまにか俺たちのすぐ傍に立っていた。来店した気配に全く気づかなかったことに驚く。俺たちというよりは客の男のすぐ隣に立っていた。本当にいつの間にか、当たり前みたいにその男はいた。 背が高くてパッと見でも高そうなスーツ。スーツなのにただのサラリーマンには見えなくて、男はなぜかずっと俺を見つめている。口元が笑っているのにその目は全く笑っていない。底が見えないその目の暗さにぞっとしてカウンター外に乗り出していた身体を逃げるようにひっこめる。 そんな俺とは対照的に、さっきまで怯えた顔をしていた男が途端に嬉しそうに笑った。 「っ榊さん!えっ!待たせちゃった!?ご、ごめんね!?」 「違うよ〜遅いから勝手に俺が心配になっちゃっただけ」 「何それ最高にときめくセリフ…… 」 ニコニコと話す二人に呆気にとられながらも視線がそれたことに安堵する。…絶対この男ーーー榊と呼ばれていたーーーはヤバいやつだ。目が普通じゃない。人くらい平気でやっちゃいそうな……いや、そんなの普通はないだろうけど。でもそれくらいにヤバそうってこと。なんでこんなヤバそう奴と間抜けそうな男ーーーツバキというらしいーーーが親しげなんだ。タイプが違い過ぎる……。 戸惑いながらも目立ちたくなくて存在を殺していると、ツバキが余計なことを言いだした。 「あっ!榊さん、小銭持ってる?」 「どうしたの?」 「えっとね、なんかレジにオツリがないから万札使えなくて困ってて……次会った時に絶ッ対返すから、申し訳ないんだけど貸してもらえないでしょうか……?」 「…………」 よ、余計なことを……!!睨みつけても当たり前だが会話は止まらない。お願い!と言わんばかりに両手を重ねたツバキに少しの沈黙の後、榊が「いいよ」と笑った。ホッとしたツバキを見ながらなぜか俺もホッとする。レジに釣りがない?そんなわけねぇだろうが!とか絡まれたらと冷や汗ものだった。だってそうだし。普通に釣りなんていくらでもあるし。そんなこと口が裂けても言えませんけどね。 何食わぬ顔で笑ってレジに商品を通していく。早く帰ってもらいたい。関わりたくない。いつも見せない満面の笑みで会計を済ませた。早く帰ってくれ! 「せ、1435円になります~」 「はいはい」 榊が尻ポケットからブランドものの財布を出してそこから札を抜き取った。高そうな財布……そんなことを考えていた俺に一枚だけペロンと金を差し出してくる。………へ、あの……いや、嘘だろ……。 「お、お客さま……」 「ほら、どうした?」 「…い、いやぁ……」 乾いた笑みを浮かべても、その手は引っ込むことなく目の前にある。榊ってやつが堂々と出してきたのは一万円札だった。ツバキに嘘をついていた手前受け取るわけにもいかず、けれどこの人間相手に嘘を突き通す勇気もなく俺は固まる。これを出された時点でもう詰んでる。固まる俺を榊は冷たい目で見つめてくる。 その目が言ってる。おい、ホラ吹いてんじゃねえぞって。 真っ青な顔でどうしていいか分からず震えても、榊って奴は何も言わない。動きもしない。猛獣が獲物に襲いかかる前みたいに、じっとこっちを見て笑っていた。口元だけ。目はただただ冷たい。それが余計に怖い。パニックになった俺を哀れんだわけでもないだろうが、ツバキが慌てた様子で声をかける。 「さ、榊さん……?あの、一万円だと、オツリが、ね……?」 「ん?あぁ、そうだったねぇ」 「あ、あはは!榊さんってば~もー!」 あはは!と笑う二人に俺も合わせて下手くそな声を上げて笑う。ありがとう!!お兄さん、マジで救世主!!今までのこと、すまんかった!助け船のようなそれに俺も「マジですんません~」と情けない声を出す。震えている自分の声が情けない。すげえ恥ずかしい。マジでありえん。早く金払って帰ってくれよ!それしか今の俺の頭にはなかった。まだ俺はどうにか誤魔化せたくらいに思っていたが、けれどそれは間違いだったとすぐに分かった。 相変わらずの冷たい目で俺の方を見つめた彼が、その手の一万円を突きつけてトドメを刺したのだ。 「なら駅裏のスーパー行ってこい」 駅裏のスーパー。妙に聞き覚えのある単語だ。シンッと水を打ったように店内が静まり返る。間抜けな音楽が余計にこの場の空気を凍らせた。ピシッと体が固まって、情けない空気みたいな音が喉から落ちていく。 えきうらのすーぱー、さっき俺の口から出た言葉だ。忘れようもない。ツバキの方をチラリと見ても、彼はポカンと口を開けてアホ面を晒していた。多分こいつ何もわかってないな。いいな、それ。俺も理解できない方が幸せだったかもしれない。でも理解できちゃってる俺は全身滝汗をかいて震えるしかない。 固まったままの俺を絶対零度の視線は逃がしてはくれなかった。 「……え、……えぇ……?」 「両替してくれるんだろ?走って行ってこいよ。待っててやるから」 「……ぁ……」 ーーあぁ、全部見られてたんだ。最初から全部。見ていた上であえて俺をボコボコにしようと、この人はこの店に入ってきたんだ。目が合った瞬間に気づくべきだった。この殺意にも似た敵意に。 一番避けたかった答えに気づいて震える俺に「どうした?」と彼がにっこりと笑ったので、俺は観念して頭を下げた。 「…す、すみませんでした……」 「なにが?」 けれど彼は許してくれない。何が?なにがって分かってるだろうに。全部自分で白状しないといけないのか。どうしていいか分からず小さく顔を上げると彼はもう笑ってもいなかった。笑顔だから怖いと思っていたのに、その真顔に心底ぞっとする。命すら危うい気がして、大きな声でもう一度謝罪する。 「すみませんでした!!お、お釣りあります!すぐ、すぐに出しますんで!!」 「謝るのは俺にじゃないだろ?」 「ほ、本当に!申し訳ありませんでした!!!」 「えっ、え?ど、どうしたのこの人?」 「どうしたんだろうねぇ」 必死に頭を下げても榊は許すとは言わず、ツバキは何もわかっていない。半泣きになりながら両手くらいの数の謝罪を繰り返したところで「うるさいよ」と遮られてやっと俺は解放された。情けなかったが、ちびりそうなくらい恐ろしかったから半泣きでうずくまったのはここだけの話だ。 「…なーんだ、嘘ついてたのか」 やっと事情が呑み込めたらしいツバキがのほほんとそう言って笑った。 それでやっと空気が変わっていくのがわかる。数分前までイラついていたはずの彼に心底から救われたような気分になった。そんな自分に驚きながらお釣りを渡すと、彼は変わらずのほほんとした顔で「ありがとう」と笑う。 …そういえば、この男はいつも最後に「ありがとう」とお礼を言っていた気がする。今まで気にしたこともなかった。俺が何をしても最後には「ありがとう」と言ってお釣りを受け取っていた。俺がどんなに失礼な態度を取っていてもだ。 今までやってきたことの情けなさを自覚して落ち込んでも榊は容赦がない。ツバキが笑って許したのがどうやら気に入らないらしい。 「ちょっと見てたけど相当態度悪かったよ彼。本当にいいの?そんなにあっさり許しちゃって」 「えー?うん、大丈夫だよ俺」 何の憂いもない顔で笑うツバキに心の中で土下座した。ここで「やっぱムカつくからボコボコにしてぇ♡」とでも言えば、この男は喜んで実行しそうな気がしたからだ。内心冷や冷やしていた俺に気づかない様子でツバキは笑ったが、その優しい笑顔でまさかの爆弾を投下する。 「この人いつもこんなもんだから、気にしたこともなかったよ」 「…ア……!!、へッ……!!」 「……へぇ。『いつも』」 「うん!いっつもこんな感じ!毎回嫌になるけどさ、ここ家から近いんだよ。ムカつくけどまぁいっかって」 「そっかぁ、ツバキくんは優しいねぇ」 そのお優しいツバキの言葉で、また般若みたいなオーラをまとった男。逃げようのない店内でただ処罰を待つ罪人のように俺は固まっていた。逃げたいけど逃げられない。逃げた方がヤバいってのがわかる。 張りつめた空気を気にした様子もなく彼はツバキに「俺の分のコーヒー選んできてくれる?」と頼みごとをした。キョトンとしたツバキがすぐに笑顔になって「任せて!」とコーヒーの置いてある棚へと消えていった。 待て、俺の救世主。ホントに待って!行かないでくれ!暴走車のストッパーのようになっている彼が行ってしまったら、残されたのは般若みたいな顔した鬼と、蟻くらいの価値しかない俺のみ。踏みつぶされて終わればいいが、彼はそう簡単に俺のことを楽にはしないだろう。 救いを求める権利は俺にはない。分かってはいても縋るような視線を送る俺の前に、恐ろしい怒りを抱えた男が立っている。視線を合わせたくないのに合わせてしまうのは、怖いもの見たさという奴だろうか(多分違う)。ゆらりと揺れた体から地を這うような声がした。 「…『いつも』?」 「ひっ!!ごめんなさい!すんません!!」 振り返った顔に思わず土下座をしても今度こそ彼は許してはくれなかった。結局ツバキが厳選に厳選を重ねた(何分選んでんの!?)コーヒーを持ってくるまで、その尋問のような追及は続いたのだった。 二人が帰った後、エイミちゃんには軽蔑の眼差しと「カッコ悪いし最低っすね」とのお言葉を貰った。 もう全部が終わった今となっては自分でも「ですよね」と納得するしかない。反省します、はい。殺されるより生き恥の方がマシです、すみませんでした。 「なんかずっと謝ってたねぇ、あの人」 「悪い人だったからしょうがないねぇ」 「そうなの?」 「…………」 救急病院での治療後、家まで送ってくれるというので甘えた帰り道。明日の牛乳がないと呟いた俺に榊さんは面倒がることなくコンビニに寄らせてくれた。さっきのコンビニの店員さんはいつもあんな感じだ。出来るだけレジにいてほしくないんだけど仕方ない。もう慣れてることだし、別に傷ついたりもしないのに。 でも絡まれる時間を考えたなら、他のレジが空くまで待った方が無難だったかも。うーん、俺はこういうの本当に下手くそ。周りからもよく言われる。めげないのは良いことだけど学習しろって。特に店長からは拳も交えてよく言われる。 「もっとしっかり懲らしめても良かったと思うよ」 「えー?なんかプルプル小鹿みたいに震えてたよ。あれ以上やったらやりすぎだよ。榊さんが悪い人扱いされたら嫌だよ、俺」 「…………」 まぁこういう問題にスッキリや納得は難しいのかもしれない。どうすれば最善だったとかそういうのを考えるの苦手なんだよね。考えて動いても良い結果になったことがないからさ。俺は要領が悪いから、頑張れば頑張るほど事態を悪くしちゃう気がして。 でも榊さんみたいな人からすると、そういう俺を見てるとイライラするのかなぁ。そんなことを考えそうになってしょんぼりする。 「ツバキくんはさぁ」 「なに?」 窓の方を見たまま榊さんが俺のことを呼ぶ。ガラス越しに目が合うかなって思ったのに合わなくて寂しかった。いつもは俺の目を見て話してくれるのに。 「見かける度に傷つけられてるから、俺は心配になっちゃうよ」 「んー……」 気遣うような言葉なのに、声のトーンは寂しいというよりは苛立っているように感じた。 そんなに傷ついてるかな俺。そりゃ変な奴に絡まれることは多い。Subの特性のせいだからしょうがないんだ。攻撃的な人間はよく俺を見つけて嗜虐的になる。Domを興奮させる材料は、その特性がない奴でも刺激しがちなのだ。でもそういうのってもう物心ついたころだから、慣れちゃってるんだよな。だからって何でも来いってわけではないんだけどさ。 「俺変な人ホイホイかもしんないけど毎回は傷ついてないよ?」 「…ツバキくんは強いんだね」 あ、信じてない。拗ねたみたいに窓の方を見てる榊さんはやっぱりこっちを見てくれない。 榊さんは多分、俺を守りたいと思ってくれている。それこそ映画や漫画のヒーローみたいに?自意識過剰かもしれないけど何度も守られてきたんだから鈍感な俺でもわかる。 でも多分俺はSub。割と踏みつぶされるのが当たり前。榊さんがどんなに頑張っても俺は見えないところで踏みつけられてる。そういうところがきっと榊さんを苦しめる。でもさ。 どこかむくれた顔でそういった榊さんに苦笑して、俺はこっちを見てくれない彼の頬にぶつかるみたいにキスをした。むちゅっ。 「ん!?…いてっ?」 「俺はさ、あんなどうでもいい人からの八つ当たりみたいなのよりさ、榊さんがこっち見てくれない方が傷つくんですけど」 「え?」 「やっとこっち見てくれた」 目が合ったことが嬉しくて俺が笑うと、少し間をおいて榊さんも笑う。この瞬間がいつも嬉しいんだよね。何かでイラついてる榊さんが俺の言葉でふって笑ってくれるの。今まで会った人の中で多分一番強くて怖い人が、俺にだけは優しいの。たまんないよね。嬉しくて体中が熱くなる。 「…ツバキくんからキスしてくれたの嬉しいな」 「えっ!…下手くそだったでしょ?歯があたって俺も痛かったし。ほら、ぶつかったから赤くなってるよ」 「その下手くそなのがいいんじゃないか。ツバキくんって感じで」 「下手くそは否定して欲しいんですけど……?」 むすっと返したら榊さんが笑って、その唇が近づいてくる。嬉しくてそっと目を瞑ってそれを待った。優しいキスを期待したのにすぐに舌が絡まってきて、背中にゾクゾクとしたものが走った。 あ、さっきの激しいあれのせいで、ちょっとすでに体が熱いので……。そ、そんなに吸われたら、あっやばい、目の前がクラクラしてきた。ぢゅっ♡と唾液ごと吸われて、上顎をチロチロと刺激され喉が鳴る。力が抜けてしまった俺はその分厚い胸に縋った。 「…んっ! んぅ…♡ まっ、ン゛…♡ ん゛、はぁ…♡ はっ、あぅ…、」 「もう一回さっきの続きする?カーセックス」 「…って、まってぇ…♡ だめ、だめだってば…」 「…本当にやめる?」 はぁ…♡って色っぽい溜息をついてそんなこと聞かれたら……聞かれたら!「やめて」なんて!言えないでしょうが!いっぱい触ってください!!下も脱ぎますか!? キスだけですぐに熱くなった俺の体を榊さんの手が暴いていく。 「あっ、まって、そこ、だめぇ…!」 「先っぽクリクリされるの好き?…〝可愛いね〟?」 「っ〜〜ん゛ぅッ♡♡」 びくんッ!と大きく仰け反ると、容赦なく榊さんの舌が乳首を刺激してくる。服越しなのに食べられちゃうんじゃないかと思うくらいクリクリって、絶妙な強さで弄ばれて声を上げると「聞こえちゃうよ」と囁かれてハッとする。運転席には西条さんがいたんだった! 「きいちゃ、だめ、だめぇ……」 「西条、ダメだって」 「聞いてないので大丈夫です」 車の中で運転中にするってことは運転手に聞かれちゃうということ。なぜ今頃気づくかな!?焦って逃げようとする体を押さえつけられて、すぐにまた愛撫は再開してしまう。 「っ~~~だ、だめっ、恥ずかしいから……!」 「大丈夫。西条は記憶喪失になる予定だから」 「……頑張ります」 「えぇ……?…あぅ♡ も、やだぁ…、…あっ♡ …あふ…♡ ……ん、…んぁ…♡」 適当なことを言われている間にも乳首はクリクリされるし先っぽも虐められる。すぐに頭の中がとろんとしてきて、自分の中の理性が曖昧に溶けていった。 くり、くり、くり、くり……♡ くちゅ♡くちゅ♡ぐちゅ♡くりっ♡ 「あぅ…♡ ……はっ♡ …はぅ、うぅ…♡」 「声聞かれるのがそんなに恥ずかしいなら、俺にキスしてよ。ツバキくんのエッチな声は、全部飲み込んであげる」 「はっ♡ んぁっ♡ はっ♡ ほ、ほんと……?」 「その代わり、〝口の中の気持ちいいとこ、いっぱい舐めさせて〟ね?」 「あっ、あぁ、あーーーーんむっ…♡」 藁にも縋る気持ちでキスをすると、すぐに舌が絡めとられて脳みそがクラクラする。ちんぽもぐちゅぐちゅされて、乳首もくりくりされちゃって、俺の全身はぐずぐずになっちゃった。自業自得なんだけど、キスしたままだから酸欠で死ぬかと思った。 「んぅぅ゛ーー~~~ッ♡♡♡ ……ッ♡♡ ……っ……♡♡ ……、……♡♡」 まぁ要するに、酸欠での絶頂は死ぬほど気持ちよかったってこと。 「さっきのコンビニの彼も、今のツバキくんを見たらあんな態度は取らなかっただろうね」 「はぁ……♡ さ、っきの……?そう、かなぁ」 ヘロヘロになって甘えているとふいにそんなこと言われて首を傾げる。ホントにそんな魅力が俺にあるんだろうか。相当嫌われてたけど??榊さんは褒めすぎなところがあるのでちょっと信用ならない。 うーん?と首を傾げる俺に「ツバキくん本当に色っぽいもんな」ってため息をと共に囁かれてまた腰が震えてしまった。 ン゛ッ!…ま、まぁ?商売としてやってる身としては?悪い気はしないというか?プロですからね!褒められて当たり前っていうか?だってプロですから! 息も絶え絶えになりながらフフンと誇らしげにな気持ちになっていると、ポツリと榊さんが呟いた。いつもはしない子どもっぽい顔で、聞こえないくらい小さな声で。 「……まぁ見せるつもりもないけどね」 本当は聞かせるつもりのなかった言葉だったのかもしれない。けどすぐ隣にいる俺には聞こえちゃったのだ。 「……んふっ」 子どもみたいなその呟きが嬉しくて、まぁ笑っちゃったよね! 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Comments
いつも感想ありがとうございます✨ 男性Subは完全に世の中の差別対象となってしまっているので、それが彼にとって「当たり前」で「変えられない」ことだったんだけど、榊ゴリラはそれがもどかしくて正面から壊していってます。荒療治ですが少しずつ変わる周りの世界にツバキくんも変わっていくといいなぁと思ってます。 ゴリラに期待していきましょう!🦍✨
午後
2025-08-29 15:43:30 +0000 UTCツバキくんは自分でも気づかない内に少しずつ体も心も傷つけられて、Subだから当たり前みたいに受け入れてきてたのかなと思ったら、その柔軟な強さが逆に切なくなりました😭 イケメンゴリラ榊さん、ツバキくんを一生守ってくれ!
つぶぐみ
2025-08-28 12:17:28 +0000 UTC