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自宅プレイ延長で!(底辺sub5話からの番外編)

ぴちゃぴちゃ舐める音がする。 「…んっ、…あっ…、あ、んぁ…、…ッ…はぁ、んぅ…」 さっき思いっきりイッた俺のペニスを優しく榊さんの舌が弄ってくる。「やめて」って言えばいいのにちっとも嫌じゃないから言えない。 榊さんってDomなのに奉仕する方が好きっぽいんだよなぁ。俺?俺はどっちも大好きです。というか、Domから奉仕されるなんて初なので、榊さんから初めて舐めてもらった時はパニックになったよね。実際あの手の店でSubへ奉仕するDomなんてほぼいない。まぁそういう店だから。 でもさ、それだったら余計に嬉しくなっちゃうじゃんね。Domなのに俺に気持ちよくなって欲しいって気持ちで榊さんが舐めてくれてると思ったらさぁ、ね? でもね。嬉しいんだけどさ、店なら全然喜んで奉仕してもらうんだけどさ。 「…んぁ…!…ん、あっ…!…っ…って、まってぇ…!」 「…ん?どうしたの?」 「…はぁ…!はぁ…♡」 懇願して止まってもらう。ホントは止めて欲しくない。けど正気に戻った今はもううっとり快楽に声を上げ続けるわけにはいかない。 「はぁ…ん、あのね、あの…うちの壁、すごく薄くてね?」 「うん?」 「隣の人が騒音とかすごく怒るんだ…。いつもテレビ見てるだけでも怒られちゃうから、え…エッチな声とかめちゃくちゃ怒ると思う!」 「エッチな声?」 「え、エッチな声…」 復唱しないでくれ。そこはサラッと流してよ。 さっきの頭がドロドロになった状況でのエッチは声なんて一ミリも我慢しなかった。多分その間も壁ドンドンされてたんだろうけど…そんなの気づく余裕もなかったしなぁ。でも今はもう冷静になったから危ない橋を渡るなんてムリムリ! お隣さんはスキンヘッドで鼻ピしてる男の人だった。見た目での差別良くないね、すみません。引っ越しの挨拶もなし。たまに壁越しでお話するくらい…ドンッ!あ、うるさいんですね、すみません…って感じ。 「…そういえば、さっき壁を叩く音がしてたような?」 「!やっぱり!ごめんね!?…すっごく神経質そうな人で怖いんだよ~…だからね、エッチなことはもうお終いにしよ?」 「うーん」 「…ご、ごめんなさい…俺だってさ、俺だってしたいよ?したいけど…」 榊さんは難しい顔をして黙ってしまった。怒らせてしまったのかと怖くなる。 俺の体を気遣ってここまで来てくれたのに我儘ばっかりで申し訳ない。せめて榊さんへ奉仕しようとズボンに手をかけるとやんわり手を取られて止められてしまった。 「俺はまた今度お店に行った時にサービスして欲しいな」 「え…でも、」 「じゃあ今日は抱っこさせてくれる?出勤時間まで一緒に居させてよ」 「い、いいの!?」 わーい!って抱きついて寝転ぶと、しっかりした筋肉にぶつかる。ふかふか…柔らかーい。幸せとはまさにこのことだ。 さっきまでの冷え切った動かない体とは大違い。気持ち良くてふわふわした幸せの中、うっとりと体を預けてしまう。 「ん~~~はぁ…♡ しあわぇ…♡」 「…ほんとだ、よだれ出てるね」 「えぇ!?」 「嘘だよ」 クスクス笑う声にムッとしたいのにできない。顔が緩み切っている。全身から力が抜けている。さっきまで酷いコマンド不足だったから、急激に満たされて飽和状態なんだろうと思う。 寒い雪の中で冷えた体のままお風呂に入ったみたい。全身がシピシピする。脳みそも溶けちゃいそうなくらい。 「…っ……き…もち、い…♡」 「〝エッチな声だなぁ〟…」 「っ!…ぁ、…あっ…」 耳元で褒めるみたいな揶揄するみたいな榊さんの声がした。 俺はいつも通り、やっぱりそれを勝手にコマンド変換してしまう。エッチでいい子だねって、褒めてもらえたって嬉しくなる。 「ん、ぁ…、はぁ…」 「〝いい子だね、ツバキくん〟」 「んぁ!…ぁ、…あぁ、…んっ、ふぁぁ…♡」 体がもっとポカポカする。頭も溶けちゃいそう。あ、もうだめ。しっかりしなきゃいけないのに。お隣さんに怒られるから、我慢しなきゃ、いけないのに…♡ 「…っん、…んっ!…ぁ、んぅ…♡」 声を我慢するために指をしゃぶるとそれを見てか榊さんが目を細くして笑う。嬉しそうな顔。耳元で「小さい子みたいで可愛い」なんてまた言うから、腰のあたりがグズグズと重くなる。 「…ん゛ぅっ…!はぁ、はぁ…だめ、だめだってば…!」 「…ん?何もしてないよ?」 「~~~~~」 絶対分かっててやってるくせに!思わず頭突きをすると、痛くなさそうな声で「痛い痛い」って声がした。もぞもぞと体勢を戻すとニコニコと楽しそうな榊さんの顔がある。 …あぁカッゴイ゛イ゛…♡ もうマジでその顔に弱いんだよ俺ぇ゛…じゃなかった、何笑ってんだ!もう一回頭突きするぞ! 「もう!だめなんだってば!隣の人マジでうるっさいから!!!」 ドンッ!! 「………ほ、ほらね?」 「本当だねぇ」 今のは俺のせいですね、単独事故。「いつもこんな感じ」ってコソコソと耳元で話しかけると、榊さんも神妙に頷く。 「うーん、こんな人隣に居たらゆっくり休めなくない?」 「…ちょっと怖いけど直接怒鳴られたりはないし…俺、仕事であんまり夜は家にいないから」 「そう?」 「家賃安くて助かってるんだ~その分壁も薄いけど」 「ううん…」 「テレビも見ないし、電話もしないし、音出さなきゃへーきへーき」 「……うーん」 「それに…俺は怒られてもいいけど、もし後で榊さんとか文句言われたりしたらやだよ、俺」 「ツバキくん…♡」 「はい♡…じゃなくて!んっ!ちょ、んっ、んぅ…」 うっとり見つめられてちゅっ♡ちゅっ♡ってキスされた。榊さんのツボはよく分かんない。たまーにこうやって歓喜余った…!って感じでキスされたりする。嬉しいからいいんだけどさ! うっとり受け入れてキスをしてるとやっぱりまた体から力は抜けて頭はボーっとしてしまう。体がコマンドを欲しているせいで、もっとプレイしようと脳が催促してる。本当にSubは貪欲な動物だ。 さっきあれだけ貰ったのに、まだ足りないって体の奥が疼いてる。 「ツバキくん」 「…!…へ…?…ど、どうしたの?」 無意識に握ってしまった榊さんの胸元を慌てて正す。つい強くしがみついてしまった。まるで何かをねだるみたいに。 さっきよりずっと体調は良くなったのにまだ足りないみたいだ。それでもあと数時間で仕事。これだけ上向きに治ってきてるんだから、後はお客さんのコマンドでどうにか出来るだろう。きっと大丈夫。 だいじょうぶ———「〝おすわり〟」———え? ひゅっと喉が鳴った。まるで犬が伏せをするみたいに体からペタリと力が抜ける。はっはっはっはっ、荒い息だけが部屋に響く。俺のだ。命令されて、座り込んでお座りしてる俺の音。 おすわりは俺からおねだりをしたあの日一回きりだった。またお願いすればしてくれたんだろうけど、プレイに来てくれた人に店の人間がねだるってどうなのって思ったら出来なくて。 「あっ、ぁ、ぁ———…♡♡」 でもずっと、ずっとずっとずっと欲しかった。強制的な、押さえつけるような榊さんの〝命令〟。 「はぁ、はぁ、榊さん、さかきさ…♡」 「〝顔を上げて、こっちを見て〟」 「ん、あぁ…、あ゛ぁ…♡」 強制的な言葉の力。あぁ、もう無理。逆らえない。目の前がチカチカする。視界がぶれる。けど目の前の榊さんだけはハッキリ見えるんだ———不思議だね。 顔を上げた先に優しく労るみたいに俺のことを見つめる榊さんがいた。その指がそっと俺の喉元に伸びてきて、猫みたいに優しくそこを撫でていく。 「…あ…♡ …っん…、あっ、あ、あぁ…、ぁ…♡」 「ツバキくんはコマンド不足だからもう少しだけコマンドを投げるよ」 「はぁ、はぁ…!でも、ん゛ッ♡…ひ、ぁ…、だって…」 「うん、お隣さんが怖いんだったね。でもそれってホント?」 「……へ??」 「お隣さん、店長より怖い?」 「え……えっと、」 「俺より怖い?」 「え?…えぇ…?」 「本当にツバキくんがお隣さんのこと怖いって思うなら声を我慢しな?」 「……………」 「でもあんまり怖くないって思えたなら、たくさん声を出してプレイしよう?これはこの部屋の住人である君の権利だよ」 「……あの…でも」 「怒られたら謝らなきゃ。でも一方が不自由を強いられるのは間違いだよ」 「…うん、そうかも…」 騒音問題でトラブル結果刺されたとかよく聞くからさ。本当は怖かったよ。テレビだってほんとはバラエティ―とか好きだからさ。たくさん見てゲラゲラ笑いたいのに必死に声を飲み込んでたよ。電話もしたい日だってあったよ。榊さんとさ。でも我慢するしかないじゃんって、当たり前に思ってた。 「君はすぐに不自由に慣れようとする悪い子だね」 「……そう、かも…」 「これからはいい子になれる?」 「……うん、がんばる…」 こくんって頷いたら、榊さんが「〝いい子だね〟」と嬉しそうに笑って俺の喉をまた撫でる。さっきよりもあからさまにエッチなその触り方に「あぁ…始まるんだ」と自覚して体が熱くなった。 命令のように榊さんが言う。 「〝可愛い声を聞かせて〟」 「ん゛!…はぁ♡ はぁ…♡ …っ…ふぁぃ…♡♡」 くちゅっ♡ ぐちゅっ♡ くちゅくちゅくちゅ♡♡ 「ひっ!ひぁぁ…♡ らぇ、はげひ…♡ あっ!あ、あぅ!あぁ…♡」 ポタポタと頬を伝ってマットレスに落ちていく。後ろから抱きしめられてるだけでも多幸感でぶっ飛びそうなのに、俺の体は全身で榊さんに奉仕されていた。奉仕されるって逆じゃない!?って思う俺と、しあわせぇ~…♡って思う俺とで混乱していた。後者が割と勝ちつつあるが。 後ろから抱っこされるみたいな体勢で、榊さんは俺の体を容赦なく苛めた。いつもはあんまり触らないお尻に指を淹れられて、耳元ではずっとコマンド——〝可愛いね〟とか〝いやらしい、エッチな子〟とか、〝あぁまたお汁が〟とか…(最後のは違うか??)囁かれ続けて、脳みそはすぐにパンクした。 榊さんの言葉に抵抗なく頷き、貰える褒め言葉にはうっとり弛緩して浸る。そういうのを何度か繰り返していくうちにやっぱり体も脳みそもポカポカ幸せいっぱいになっちゃって、もう隣人への恐怖は俺の中から消えてしまった。 「あっ!あぁーー!らえっ!らぇれぅ!はっ!はぁ!はぁぁ!」 「どうして?まだ指二本しか入ってないよ?」 「ひぃんーーー…ひッ、ぁ~~~~♡♡」 「あぁ…ここを触られると弱いんだね?」 「んーーーーッ♡♡ ッ~~しょこ、…へん…!へんなの、きちゃ…!」 「ここ?」 「あっ!ああぁ♡♡ らぇっ!らぇらぇ、らぇぇーーーー!!♡♡」 太ももをビクビク震わせて泣きじゃくると、またコマンドで褒められる。 「〝最高に可愛い声だね〟」って。声…声ってなんだっけ。声はどうするんだっけ。確か我慢しなきゃって思ってたのになんでか忘れちゃったよ。もうどうでもいいんだけどさ。 榊さんが可愛いって言うなら声は『出すもの』だ。我慢なんてする理由がない。 ぐちゅ!ぐちゅ!ぐちぐちぐちくちゅくちゅくちゅくちゅ!!♡ 「ひぃあぁ!♡♡ あっ!らぇ!きちゃ、なんか、きちゃぁ♡♡♡」 「コリコリしてるエッチなところもっと触ってあげようね」 「やらぁーーーー!♡ やっ!あぁ!きもちい、きもちいぃ…!♡」 「ほら、〝ツバキくんの体は中身もぜんぶエッチだね〟」 「だめぇーーー!♡♡」 びくんっ!ビクビク!♡ 「ぁーーーー…♡♡ はぁぅ…!…ん、んぅ…♡♡」 「プルプル震えて可愛い…軽くイッた?〝上手だねぇ〟」 ぐちぐちぐちくちゅくちゅくちゅくちゅ!!♡♡♡ 「…って、う!♡♡ まらッ♡ イって、いぐ、いっ♡ …ッん゛~~~♡♡ んぅぅーーー♡♡♡」 「赤ちゃんみたいに指をしゃぶって可愛いね?…でも、声が聴きたいなぁ…〝聞かせてよ〟」 「…んぁ…♡ ……あっ、あぁ、まってぇ、あっ!しょこ、へん、へんぅ゛~~~~♡♡」 ぐちゅ!ぐちゅ!ぐちぐちぐちくちゅくちゅくちゅくちゅ!!♡ 「あぁーーーー!んぁ!あっ、あっ、あ゛ぁ゛んぅぅーー!♡♡」 「〝可愛い声、もっともっと聞かせて?ツバキくんの恥ずかしいイク声、俺に聞かせて?〟」 「あっ♡ イクぅぅ!!いちゃ!まら、いっちゃ♡ へんなの、きちゃ…、きちゃぅ、きちゃうぅ♡♡」 ぐちぐちぐちくちゅくちゅくちゅくちゅ!!♡ パチッ♡パチッ♡パチッ♡パチッ♡パチッ♡パチッ♡ 「あぅぅ!ふぁぁ!♡ れちゃ♡ れちゃぅぅ!♡ きもちいっ!きもちいい♡」 俺のお尻に榊さんの掌がぺちぺちぶつかる音がする。それくらい激しく中へ打ち付けてるんだって思ったら嬉しくて勝手にそこがきゅぅぅ…♡て収縮した。それを見逃すはずもない彼が笑って「〝エッチな穴だね…最高だよ〟」なんて言うから、もう我慢できない。 「っ~~~イク、イク!イク、いっちゃう!!さかきさ、さかきさ、さかきさぁ———あっン゛ッ!♡♡♡」 ぷしゅっ♡ 「あぁーーー♡ あっ!あっ、あ゛ッ!ん、あぁ…♡」 びくんっ!びくっ…!びくっ…♡ 噴き出すように俺のペニスから白い液体が飛び出した。 その瞬間、目の前がチカチカして腰がカクカク情けなく痙攣する。恥ずかしいから止めなきゃってどっかで分かってるのに、全部どうでもいいって思っちゃうくらい気持ちいいが頭を占領する。 きもちいい、だいすき、きもちいい、きもちいい…♡♡ 痙攣する俺の体を優しく労るように触るその手も俺にとっては愛撫でしかない。辛いのに、でも触って欲しくて甘えるみたいに名前を呼んだ。 「はひっ♡ ひっ…♡ ひっ、あ、ん…んぁぁ…♡ さ、かきさ…♡」 「〝上手にイけたね…?すごく可愛くていい子だったよ〟」 「あ、あぁ…♡ まらぁ…きちゃ、おっきぃ、くるぅ…あ、きちゃ…あっ、あぁ…♡ あ゛ぁぁぁ~~~♡♡」 ぶるぶるっ…ぴゅるっ♡♡ 「っーーーーん゛はぁぁッ♡♡」 ぴくんっ!ぴくっ…!ひく…ひく…♡ 「…ふうぅ…♡♡ ふぅぅ…♡♡」 くらくらする。からだがヒクヒクしてとまんない。 不安で指をしゃぶろうとすると、その代わりみたいに深くキスをされて満たされる。濡れた視界いっぱいに榊さんがいて、優しく俺を見ていた。 「〝頑張ったね。いい子だ。いい子だね…〟」 「んぁ、あぁ…♡ いいこ、おれ、いいこ…?」 「あぁ、〝いい子の頑張り屋さんだ。とっても可愛かったよ〟」 「…っ~~~…ん、はぁぁ…♡♡ はーっはーっ♡ …えへへ、…う、れしぃ…♡」 出せるものすべて出し切って沈み込んでいると、催眠みたいな言葉が降りてくる。 「〝ゆっくりお休み。…起きた頃には世界はきみの味方になってるから〟」 味方ってなに?って、聞くこともなく俺は眠ってしまった。 「……あれ?」 「おはよう」 「おはよーございます…?」 キョロキョロと周りを見渡す。あれから何時間くらい経ったんだろうか。いつの間にかスーツをきっちり着た榊さんが俺の顔を撫でて笑っていた。 「よく寝てたから可哀想だったけど今日も仕事だろ?」 「うわっ!ありがとう!やばい、遅刻はヤバい!」 「車で来てるから送ってあげるよ。ゆっくり準備しな?」 「ありがとうございます!」 時間はまだ少し余裕がある。準備準備と走り回っていると、ふといつもあるはずのものがなくなったことに気づいた。 「………あれ?」 「ん?どうしたの?」 「えっ?あぁ…いつもね、俺がバタバタ準備してると隣の人が怒って壁叩くからさ。ヤバッて忍び足で用意するんだけど今日はなかったなぁって…」 なんでだろ。お出かけかな?まぁいいんだけど。そういえばエッチの時も力いっぱいアンアン言ったけど壁ドンされてたのかな…夢中で気付かなかった。嫌だなぁ、後で仕返しとかされないかな。 心配になりながら歯を磨いていると、榊さんと目が合う。 「………ん?」 「ん?」 「んん?」 いつもの優しい榊さんなのにどっか違う榊さん。たまにあるんだよね、秘密モードの榊さん。店長との会話も俺が来ると止まっちゃう。俺に聞かせちゃいけない話とか、聞いちゃいけない仕事のこととかたくさんあるんだろうな、きっと。でもいいんだ。 俺が榊さんを好きで、榊さんも俺のこと少しでも気に入ってくれてるならそれで。 「準備できましたっ!」 「うんうん、服に合ってるよ。可愛い」 「えへへ…♡ これね、この間榊さんがくれた靴に合うと思って奮発した服!」 たまにくれるプレゼントを使いたくて、最近は自分の洋服とかにも気を配るようになった。前は余裕がないのもあったけど興味も沸かなかったんだよね。白状するとね、いつかデートとかできる日がくるかも…なんて、よこしまな気持ちで買っちゃってますねぐへへ。 「あ!?」 「ん?なぁに、忘れ物?」 壊れた玄関をはめ込みながら榊さんが振り返る。気付いちゃったんだよ俺。 「お店までデートじゃん!」 「あれ?今頃気づいたの?」 「うん、今気づいた!やった!」 「しかも実はまだまだ時間があります」 ニヤニヤと笑って榊さんが俺の手を取る。 「え!?でも俺もう仕事の時間だよ!?」 「綾人に一時間だけ時間貰ったんだよ。ケアしたお礼だってさ。やったねぇ?甘いものでも食べに行こうか」 「や、やった~!!」 ヒャッホーイ!って抱きついてキャッキャッとはしゃいでたら目の前の部屋番号を見てギョッとする。お隣さんの家の前じゃんここ。やべーやべーまた壁ドンされるし何なら出てきて「うるせえンダヨオラ!」とか言われちゃうよ。ただでさえ昨日アンアン聞かせまくってキレてるかもなのに。 「さ、榊さん早く行こう?」 「そんなに焦ってどうしたの?」 「ここ!昨日言ってた人の部屋!怒られちゃうかもしれないから!」 手を引っ張って行く俺にトコトコとついてきながら、榊さんが「大丈夫だよ」って笑う。 「さっき魔法をかけといたからさ。だから大丈夫」 「???魔法?……榊さん、熱ある?」 「ふはは!ないよ~失礼だなぁ」 だってぶっ飛んだこと言い出すからさ。悪いお薬とかやってないよね?って顔を覗き込むと、背後に例の部屋の扉が見えた。ちょっと開いてる。あれ?こっちを覗いてるのは…。 「…ひえぇ…お隣さんだ」 「ん?」 「あの、例のお隣さんがこっち見てる。ヤバい…怒ってるのかな?」 「んー…どうだろうねぇ?」 「こ、こわいよ~…」 「大丈夫大丈夫、後ろにいな」 そう呟いた榊さんがお隣さんの方へ振り向く。そうすると俺からはもう榊さんの顔は見えない。けどお隣さんの顔は見えていた。その顔がどんどん真っ青になって、え?どうした。大丈夫かって?って心配になるころにはもう扉は閉まって男の人はいなくなっていた。 「どうしたんだろ、あの人」 「どうしたんだろうねぇ」 「……何か知ってる?」 「知ってるって言ったらどうする?」 試すような言葉に視線を上げたらいつもの榊さん。何をしてるか謎だらけなこの人は、でも俺にはとても優しい。優しすぎるくらいに優しい。それだけは絶対だし、俺の知ってる唯一のこと。 そして知っておくべきことは多分俺にはこれだけで十分なんだ。 「んーん、別にどうもしない」 「…どうもしないの?」 「うん!…はやく、俺クレープ食べてみたい!」 「…うん、行こうか」 蕩けるみたいに笑って榊さんが手を伸ばす。躊躇いなくその手を握ったら、ふと昨日寝る前に言われた言葉を思い出した。 〝世界はきみの味方になってるよ〟 また今度言われたら、最近の俺は味方ばっかりで幸せだよって言おうと思った。        


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