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1000文字随筆 鶏料理 

 生活の都合上、まぁひとえに貧乏のためであるが、肉といえばまず鶏肉が出て来るほどには食べる機会が多い。

 胸肉に劣りはするものの腿肉も十分に安く、そしてその値段の差を飲み込むに十分なほど旨い。そしてこれがまた面白いもので例えば豚肉などは煮ても焼いても揚げてもさほど肉そのものの味に変化はないものだが、鶏肉は調理のやりようにより同じ肉とは俄かに信じがたく味が変わる。


 まず焼いた鶏。鳥を焼くとなると照焼、焼鳥などが想像されるが私は腿肉をそのまま焼いただけのものを好んでよく作る。至極簡素な料理であるが肝要な点としてはまず皮を下にして焼くこと、そして重石をすることである。鍋肌に押し付けられた皮は自らの油で半ば揚げ物のようになり、バリリと歯触りに優れる。

 ケチャップとオタフクソースを塩梅したもをつけて食べるが、これがまあバーべキューソースに近いような旨味の強いもので、粒辛子を添えるとなおよい。


 次に煮た鶏、汁物の鶏である。これは非常に滋味深く特に私の好むところである。

脂身の旨味は汁に溶けだし、肉の部分を噛みしめるとそれまで感ずることのできなかった鶏の香りがじわりと沁み出してくる。鴨肉に通ずるところのある、野に住んでいた獣の香りである。吸った出汁と合わせて口中に満ちたそれをごくりと飲み込んだのちに鼻に抜ける香りも何とも言えない。

 鶏の香りを存分に味わうならば、根菜を入れた醤油仕立てのものが良いように思う。雑煮にいれるのも餅が旨味を吸ってよい。


 最後に揚げ物、これはやはり唐揚げを記せずして他を挙げることはできないだろう。

 唐揚げはやはりその瑞々しさが魅力である。衣に閉じ込められた油分と汁は、肉そのものの触感にも影響を与えながら口中を満たす。説明が楽なような、単純な強み故に説明が難しいような御馳走である。

 昔アジトで育った時、調理番だった先輩は唐揚げを作る際に、かならず「ニンニク醤油」という自家製の調味料を使っていた。これは大瓶に唐辛子とニンニク、昆布に柚子皮を入れその上から濃口醤油をどぼどぼと注ぎ旨味を染み出させたもので、これが不味いわけがないというような味をしている。これで味をつけた唐揚げは、育ち盛りの身分には予定を聞けば夕飯がなんとも待ち遠しい献立であった。

 少しだけ放浪も控えめになってきた今、自分でこの醤油を仕込んであの味を尋ねに行くのもよいかもしれない。もしくは、これを理由にたまには顔を見せに帰ろうか。



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