転生勇者が堕ちるまで
Added 2021-12-02 13:00:00 +0000 UTC『吉澤誠さん。我々が練り上げたこの聖気、貴方に授けます。これと聖剣をあわせて用いれば、貴方に並ぶ強者は地上はおろかこの天界にすら存在しないでしょう……吉澤誠さん、その類稀なる正義の心と神々の祝福をもって、あの世界の人々に太平を謳歌させてあげてください。よろしくお願いします』 なんて言われてこの世界に足を踏み入れたのが1年ほど前のこと。 俺、吉澤誠は普通の男子高校生だった。神様に無理やり異世界まで連れてこられたあの日だって、普段となにひとつ変わらない平凡な日常を送っていた。 それが突然「知らない世界を救うため魔族との戦場に赴いてください」だとか言われて、はいそうですかと承諾するのは普通に考えて難しいことだ。 けれど困窮する国々の話を聞き、またこんな俺を必要だと言ってくれる神様のためにも、まあやれるだけやってみようって決めた。 そして俺は神様たちから貰ったとんでもない力を駆使して東奔西走。紆余曲折もあったが概ね順風満帆に事は進み、魔王軍の壊滅はもはや時間の問題という戦況にまで至った。 そして今、魔王軍の親玉、すなわち魔王の本拠である魔王城の目の前に俺は立っている。 「ようやくここまで来たな……」 無双の力を手に入れたとて、俺は結局ひとりの人間だった。手の回らない地域で、目に見えない範囲で、この1年間にも多くの人々が命を落としていった。 「……」 鞘から剣を引き抜き、それを天に向け、そして俺は叫んだ。 「魔王!今日こそお前を倒して、長く続いた人類の悲劇を断ち切る!」 決意を新たに、いよいよ最後の戦いが始まる。 ××× 「ほう。この城の番人どもを貴様がひとりで……なるほど素晴らしい猛者だ。魔王軍が憂き目を見るわけだな」 「……お前が、魔王か」 いったいどれほどおどろおどろしい存在なのかと思えば、魔王の見た目は多少体格が良いくらいの、人間の成人男性の枠に収まる程度のものだった。頭部に生える2本の角と臀部から伸びる尻尾だけが、彼が魔族たることを外的に表しているのみである。 「……っ」 しかしその身体からは俺がこれまでに感じたこともない強大な魔力が迸っている。 気を抜けば俺ですら一瞬で持っていかれる。そんな確信があった。 「アンナとザック、連れてこなくて正解だったな……」 「……勇者マコト、貴様は常に2人の仲間を従え戦に臨むと聞く。して、なぜ此度は貴様ただひとりで俺の前に立った?」 アンナは俺のパーティのヒーラー役で、死と隣り合わせの状況でもいつも泣き言ひとつ吐かないで俺たちを支えてくれていた。気配りができて心の優しい女の子だ。 ザックは少し短気だが曲がったことが大嫌いな熱い男で、タンク役として常に身体を張ってくれていた。面倒見が良く、この世界の常識に疎い俺に親身になってくれた兄貴分だ。 「……お前なんか、俺ひとりで十分だと思ったからだよ」 あいつらはきっと、この戦いにはついてこれない。魔王を直で見て、俺は改めてそう感じた。 ふたりともすごくいいやつだった。平和は目前だというのにあいつらにもし万一のことでもあったら、俺は死んでも死にきれない。 だから俺は、ひとりでこいつを倒してみせる。神々の祝福を受けた俺になら、絶対に出来るはずだ。 「まあいいだろう。ともあれ、貴様の超人ぶりにはなかなか見どころがある」 「……?」 「勇者マコト、どうだ?俺の元に降らんか?」 ……クダランカ?……「降らんか」か! 「ば、馬鹿なことを言うなっ!」 「冗談を口にしたわけではないぞ。貴様は強い。少なくとも我が魔族に太刀打ちできる者はもうおらん。であるからこそ、俺は貴様を望む。もし貴様が今より魔族の旗下に立つと誓うのであれば、俺がこの世を統べた暁には、その半分を明け渡して報いるが、どうか?」 「……どうか、じゃないだろ」 俺は腰を低く落として、聖剣を両手で握りしめた。 「魔王……遺言は、それでおしまいか?」 「多言は無用かーーいいだろう、来い」 地面を強く蹴り込み、俺は一瞬で魔王との距離を詰めーー 「……へ?」 詰めようとして、しかしそれは叶わなかった。 「己が力量に溺れたか。このような初歩的な罠に掛かるとはな」 「しまっ……!」 足元にぼんやりと浮かび出す魔法陣を見て、俺は自らの失態に気づいた。 罠だ!知らない術式だが、魔王が仕込んだもの。凄まじい攻撃が襲ってくるに違いない! 瞬間、身体中に鈍い衝撃が走り、俺は思わず身を屈める。 「ぐっ」 だけど、これくらいのダメージなら耐えれないこともない。 「なんの、これしき……うぐっ!?」 体内が掻き乱されるような不快感と骨が軋むような苦痛に、俺は蹲るしかなかった。 「ぐっ!か、ふぐぅっ……!な、なんだ……この、感じ……!?」 同時に、魔法陣から放出された光の粒子が俺の装備にまとわりついて、そしてそれらを溶かしていく。 「くく、己が一体何を被ったのか知りたいだろう?……教えてやる、それは『性転の印』というものだ」 「せ、性転……?」 「喰らった者の性別を反転させる……つまり貴様を女へと変える効果がある。そら、話しているうちにも効き目が現れてきたぞ」 「……あ」 ひたすらに剣を振り続け逞しく鍛えられた両腕が、細く柔っこく変わっていく。筋肉も鳴りを潜めて、とうとう力仕事をしたこともないような細腕になった。 手も頼りなげな小ささに、指先はいかにも繊細そうで、剣を持つにまったく似合わない女らしいものに。 「な、な……」 身体の至る所で、変容は進んでいく。 身長は縮こまり、肩は撫で肩に、体格は華奢な女子そのものに。 角ばっていた男らしい肉体は穏やかな曲線を描き、日に焼け茶に焦げた肌は漂白され、透き通るようなきめ細やかさに女子特有の柔らかさまで醸し出している。無駄毛は、いつの間にか消失していた。 染みひとつない綺麗な上半身。胸部はぷくりと膨らみ始め、同時に乳首は鮮やかな桜色へと変色していく。片手では覆いきれないほどに大きく実った双丘は瑞々しく、その主が年頃の女体であることを惜しげなく主張していた。それらに張りつかれた胸板は重力を受けた乳房に引っ張られ、その重みが付け根から伝わってくる。 臀部は盛り上がり、その腰に出来た健康的なくびれと相まって細身に反した存在感を放ち出す。 「あ、あぁっ……」 股間はぎちぎちと悲鳴をあげ、無理やりに男にあるはずのない空洞を形成させていく。そしてその内壁にふやかされた男根が滲んで、吸収されていった。ほとんど平らになった股間には、もはや男を受け入れることしか叶わない形のいい女性器しか残らなかった。 数多くの戦場を走り抜け、太く引き締まっていた両脚もすっかり印に解されきって、花でも愛でてきた年相応の女子にあるべきもののような、戦いを知らない平和的な肉付きへと変わった。 「……ぐっ」 短く刈り上げていたはずの髪の毛がうねり出し、首筋や肩をささやかに撫でつけていく。視界に溢れた前髪をどけると、今度は長ったらしい睫毛が俺の視覚の邪魔をした。 瞼が瞬きをするのに距離を感じるようになった。どうやら普通にしているつもりでも、この目は相当ぱっちりと大きく開かれているらしかった。 整形でもされたかのように丸っこく小さな顔の輪郭は、手でなぞるだけでも分かってしまうほどのもの。小さく、それでいて厚みを感じるこの唇も、たぶん俺の女子らしさを強調させていた。 「俺……ほんとに、女に……?」 痛みが落ち着き、改めて細部を確認してみると、やはりどこからどう見ても男の身体ではなく、そしてどこからどう見ても女の身体をしていた。 「見目麗しく変わったではないか、勇者マコト」 「っ!!……あ、甘いぞ魔王っ!」 すっかり甲高くなった、よく響くソプラノの女声を荒らげて、俺は威勢よく叫んだ。 「俺の身体を弱体化させたところで!この聖剣がある限り……!」 そしてそんな俺の意思に応えて、聖剣は輝きを増して……。 「……ん?」 かがや、かない? 「な、どうして……?せ、聖剣が、反応しない……?」 「印には我が魔力が込められていた。魔力によって形を歪められたその身体では、聖気を正しく出力できないのだろう」 「くっ!これもお前の狙い通りか!」 万事休すとはこのことを言うのだろう。与えられた力に溺れ、最後の最後で詰めを誤り罠に陥った。 俺はもう、今日ここで死ぬのだろうか。 「……いいぜ。ならせめてお前の腕の1本でも道連れにして、俺は仲間たちに後を託す」 「……ふむ。どうやら貴様は早とちりをしているらしいな」 「……なに?」 「俺は貴様のその命を奪うためにわざわざ女にして弱体化させたわけではないと、そう言っているのだ」 「は?だったら、なんのために……?」 すると魔王は愉快げに鼻で笑い、そして俺の前に立った。 「勇者マコト、貴様を我が側室に加えるために、だ」 「そ」 側室、と、魔王はそう言ったのか? つまり、俺を、嫁にしようってことか? 「ふ、ふざけんなっ!!そもそも誰がお前なんかと」 「貴様に拒否権などない。一度その口を噤め」 「っ……!」 魔剣の切先が、首元に突き立てられた。 「なぜ魔王の系譜が代々魔族の王として君臨しているか、貴様は知っているか?」 「……つ、強いから?」 「当たらずとも遠からず。そうだ、魔王は強い。そうでなければならん。しかしその強さの根源は、この血にある……我が一族は、地上に生を持つすべての種族と交配することができる」 「す、すべて……?」 「そう、すべてだ。力ある者、芯のある者、異能ある者……多様な強者との交配を重ね続けることで、ありとあらゆるものを貪欲に遺伝子へと捻じ込み、そしてそれらを自らのものとする。魔王の系譜が代々最強であり続ける所以……そして」 「へ?……んむっ!?」 力の入らない身体を無理やりに引き寄せられ、そして俺は、魔王に唇を奪われた。 「ん〜〜っ!?」 「喜べ、勇者マコト。その強靭な肉体、尋常ならざる聖気、大層気に入った……よって貴様に、俺の子を孕むことを許可する。魔王の妻として、一族に恥じない立派な子を産み落とすがよい」 「……ん……ふ……」 意識が、遠のいていく。 もう、ねむくて……。 だ、だめだ……。 でも、ねむ……い……。 ××× さすりさすり。 ふに。ふにふにふに。 「……?」 馴染みのない感覚に意識が起こされ、寝ぼけ眼を擦ってみると、目の前には上半身を裸にした魔王がいて。 そして、俺の乳房を撫でたり揉んだりしていた。 「な、なにしてんだよっ!?」 俺が反射的に後ろへと飛び退くと、魔王は心外そうな顔をして、また目の前まで詰め寄ってきた。 「なにとは薄情だな。胸や股間部をさすられることで人間の女は昂りを覚え、その身体は性行為の準備を始めるのだろう?」 「ふざけんふぁ……」 「ふむ、指先でなぞられるのが好みか」 「ち、ちげえよっ!身体が、勝手に……」 感じたことのない刺激に喘ぎ声が漏れ、思わず身体がのけぞった。 「……んっ、くぅっ」 「ふむ、わかってきたぞ」 な、なんだよこれ。お、女の胸って、こんなに敏感なのかよ……? い、いや!そんなことより……! 「なぜ我との情事を目前にして嫌悪を催せないのか、か?」 そのセリフを聞いて、俺は魔王を睨みつけた。 そうなのだ。今俺は魔王に寄られても、なぜか大して反抗心が湧いてこない。もちろんこいつを殺してやろうという敵愾心はそのままのつもりだし、俺はゲイでもないから、こいつの蛮行をただ黙って受け入れようという気はない。 「……」 ない、はずなのだ。それなのに、拒絶を行動に移せない……? 「……俺に、何をした?」 こいつは何かを知っている。このおかしな感覚は、こいつの仕業で間違いない。 「なに、簡単なことだ。人間という種族は母体が懐胎時に多分なストレスを抱えると、その胎児にまで悪影響を及ぼすと聞いたことがある。であれば、貴様に苦悶をもたらすことは優秀な子孫を求める俺の望むところではない」 「……はっ、そりゃ無理な話だぜ?なんせ俺は男で、しかもお前を殺しに来た勇者だ。今こうしてされるがままってだけで反吐が出る。正直自殺もんだよ」 「そうだろうとも。なればこそ、貴様にあの魔薬を服用させたのだ」 「……は?」 「先ほどの接吻時に飲み込ませたものだ。その効果は『懐胎や出産、その他生殖活動に関するあらゆる行為に対して嫌悪を抱けず、それどころか脳がそれら全てを幸福として感受する』というものだ」 「な、なんだと……?」 そ、それって、つまり……。 「口ではいくら嫌がろうとも、貴様は俺との子作りを、現在進行形で幸せに感じていることになるな」 「ば、馬鹿なんひゃぁ♡……ぁへ……?」 反論しようとして、けれど胸部から迸る刺激がそれを遮らせた。魔王が、俺の胸を鷲掴みにしたらしかった。 と同時に、この上なく満たされたような暖かな感情が沸々と湧き上がってきた。 「感じているか?気持ちがよいか?その感情に…俺とのまぐわいに身を委ね、貴様はその女体の本懐を遂げるがいい」 「こ、こんなの違う……これは俺の感情じゃぅきゃんっ♡」 乳首を指で弾かれ、また経験したことのない刺激が俺の脳を揺さぶる。 「くっ、どけ、どけよぉっ……!ゆるさっ、ないぞぅっ♡」 これ以上はいけない。本能が俺にそう訴えかけてくる。 「よがりながらの嬌声でそう言われたとて、むしろ煽りにしか聞こえんな」 けれど魔王はそのまま俺の身体を弄び続けるし、そして俺も言うだけ言って行動が伴わないまま。 そして魔王の視線は、俺の股間へと移りー ー 「あっ♡ちょっ、そこっ♡さわ、るなぁ……♡」 俺の股間はすっかりこれまで親しんだ存在とは相反する外装へと生まれ変わり、そしてその機能も女という性に則ったものとして確立していた。その証拠に、すでに愛液は滲み出し、そしてその膣口は子宮へと繋がるだろうことも容易に想像がついた。 健全な女体として射精することを放棄して、むしろ受け入れることを望む。名実ともにまさしく女性。そんな身体の在り様こそが、まごうことなき今の俺。 「〜〜っ!!だ、だめだめっ♡なか、いじるなぁっ♡んふっ♡」 魔王の無骨な指先が俺の繊細な膣内を蹂躙していく。肉壁は絶え間なくそこに発生した滂沱の刺激をいちいち脳へと送信し、脳はその度に快楽という名の幸福信号をわざわざ俺へと押し付けてくる。 「んぁぅっ♡ぐっ、ぐりぐりぃって♡やめろぉっ♡」 過去に経験したどの自慰よりも、気持ちをひとつにしたアンナとの情事よりも……これは気持ちがいい。幸せになれる♡ 「よく濡れてきたな」 「ん♡……んみゅっ?」 再び唇を奪われ、けれど先ほどには抱けていたはずの嫌悪は霧散し、ただ多幸感のみが俺の心を包み込む。 「んっ……ちゅっ……♡」 逞しい腕で身体を抱き留められ、男らしい指で髪を梳かされ、そして頭を撫でられて……。 「こ、こんあの……ひきょーだっ♡」 だめだ!うごけ!にげるんだ♡ おれはやくそくしたんだ。かみさまに、アンナに、ザックに。 まおうを、たおさなきゃ。てごめにされてる、ばあいじゃないだろ♡ 「ふぅ、ふぅっ♡……ま、まおぅっ!♡」 「なんだ、勇者……いや、マコト」 「ぜ、ぜったいにぃっ!ころしてやうかりゃにゃんっ♡」 「ふっ。鏡でもあればその顔、貴様にも見せてやりたいところだ。俺との情事に恍惚とし、極上の悦楽を堪能しているその雌の顔を」 まおうは、そのこかんにきつりつさせたふとく、おおきなにくぼうを、おれのこかんへとむけ、あて、そしてーー 「〜〜あっ!!ぁんっ!!んっ、んっ、あっ♡」 きもちいい!きもちいい! きもちいきもちいきもちい♡ すきすきすき♡ でも♡でもでもっ♡おれはゆうしゃでっ♡きもちいっ♡ まおうはっ♡たおさなきゃ♡すきっ♡ 「うぎぃっ……♡」 おくへとおくへと、むぞうさに、らんざつにつきすすむまおうのいちもつ♡ これがいちばんおくのとこに、こつんとぶつかったら、ぐりゅっておしつけられたら、おれ、どうなっちゃうんだろ……♡ 「……人間とは理性に敷かれ、感情を抑えることに長けた生き物だと考えていたが、これは少し改める必要があるやもしれんな。もしくは……」 まおう♡はなさない♡あしで♡ぎゅってしてやる♡ 「人間が魔薬に弱いか、はたまたマコトが情欲に弱いか」 「んきゅっ♡はっ♡はぁっ♡」 はやく♡はやくっ♡そのふとくておっきいのでっ♡おれをつらぬいてっ♡なかにいっぱいっ♡あついのだしてぇっ♡ 「ちょーだいっ♡すごいのっ♡あんっ♡あはぁっ♡」 「……今は無粋か。いいだろう。しっかり受け取れ、そして孕め。マコト、今日からお前は魔族の一員だ!身を粉にして俺に奉仕し、魔のために尽力し、一族の繁栄に努めよ!!」 なにいってるのか♡よくわかんない♡けど♡ほしい♡きもちいの♡ほしいよぉっ♡ ♡ ♡ ♡ …………あ♡ 「んぃああああぁぁぁ!!!………あひ♡」 たっぷり、ながしこまれた……あかちゃんのたね♡ おれのおなか、いっぱい、いっぱいよろこんでる♡ おれ、にんしんして、しゅっさんするんだ、まおうのあかちゃん……それって……とっても……♡ 「しあ、わしぇ……♡」 ××× もし人生の歯車というものがあるのなら、俺にとってのそれはズレるどころか既に壊れきった後なのだろう。 あの日、魔薬に侵されていたとはいえ俺は自ら勇者としての尊厳を捨て、敵である魔王に媚びへつらい、そして女として果てた。 あくる日もあくる日も、正気に戻れば悔悟に駆られ、魔王に出会えば劣情に呑まれーー。 ただ、不幸には感じなかった。感じることは許されなかった。 幸せだった。幸せとしか思えなかった。 いつしか俺は望んで魔王の元へと夜這いを始め、それが3日に1度、やがて2日に1度、気づけば毎日。日によっては一昼夜。 悦楽だけを求めた日々は、次第に俺を心身ともにあらざるものへと変容させていった。 胸の谷間を露出させた、丈の短い紫紺のサンドレスをはためかせ、魔王様との謁見を済ませた私は今日も戦場に赴く。 勇者マコトはもういない。 今ここにいるのは魔王軍幹部筆頭、そして魔王様のご側室に身を置く卑しき人間の雌。 「さて、今日はどちらにお伺いしましょうか」 かつて身命を賭して守り抜いた人間たちの村々を壊滅させ、その地を魔王様へと捧げる。 人を屠ることに、もはや微塵も罪悪感などありません。それはきっと魔王様との逢瀬で削ぎ落とされていった本来の私の心にあったものなのでしょうけれど、今はただ、魔王様のお望みの通りに。 「……あら、敵襲?」 けれど魔王城を出ると、そこには装備を着込んだ2人の人間の姿が。 どちらも見覚えのある顔でした。いえ、見覚えどころではありません。彼らはかつて私が生死を共にした人間の仲間、アンナとザックです。 ともあれ、今はお互いに敵同士。交わすのは言葉ではなく、志を乗せたこの剣。 「ね、ねえザック。あの剣、マコトの……」 「ああ。聖剣に見えるが、けどあれはマコトにしか使えないはず……」 どうやらあちらも気がついたようです。それでは参りましょうか。 「魔族の繁栄と安寧のために……魔王様の御心のままに、死にゆきなさい。アンナ、ザック」 ××× か弱くされた私のこの女体は、けれど魔王様の絶大な魔力を注がれ、さらに持ち得た聖気と相まって以前の私以上の実力を発揮できるようになりました。 加えて鍛錬の末に再び使えるようになった聖剣と、畏れ多くも魔王様からお貸しいただいているこの魔剣との二刀流で、私は敵の主力をことごとく灰燼に帰し、また見どころのある者は捕縛し、魔王様へと捧げました。 かくしてこの世界は完全に魔王様の支配下に置かれました。 けれど我ら魔族の野望はこの程度では収まりません。ついに本日、私がかねてより魔王様にご提言を続けておりました天界の制圧戦争に我が軍は乗り出します。 そしてゆくゆくは異世界である私の故郷、地球をも征服していただけたら、元日本人としてこれほど喜ばしいことはありません♪ 「ははうえ、どうかごぶじで」 「かあさまならかみなんてよゆうでみなごろしだよね!」 「……あらあら」 ふふっ、私ったら。もっと喜ばしいこと、あるではありませんか。 魔王様のお子を孕み、産み育て、こうして健やかに育っていく彼らを見守る。 ああ、私はなんと果報者でしょうか。 「留守はお任せしますね?私はこの命に代えても、お父様に歯向かう天界の不逞どもを討ち滅ぼしてみせますので」 そして私は隊列の整った魔王軍の先頭に立つ親しい2人の副隊長に声を掛けました。 「今日の戦い、おそらく過去最大規模のものになるでしょう。当然死傷者も数知れないものに……言うまでもありませんが、魔族の方々には極力後方に回っていただいて、我々人間部隊が被害を一手に担う役回りとなります……いいですね?命を惜しまず、死を厭わず、全世界を必ずや魔王様へと献上いたしましょう。 ーーアンナ、ザック」 「ええ!頑張りましょう!マコト!」 「人間の雌にも関わらず魔族の皆様から過分のご高配を賜ってきたこの身……不肖ザック、たとえ生を失おうと魔王様方の恩義に報いてみせる!」 こうして頼もしい2人と人間部隊を束ね、私たちは神々の巣食う死地へと切り込んでいくのでした。 「魔王軍幹部筆頭、そして魔王様のご側室に身を置く卑しき人間の雌……元勇者マコト、参ります!!」