「羊が1匹……」
「羊が2匹……」
「羊が3匹……」
「……あら、3匹目の羊……ちょっと毛並みが違うわね」
「他の子たちより……明らかにふわふわ。空気を抱き込む感じ。これ、ただの羊毛じゃないわよ……もしかして、ウールリッチ?」
「表面の滑らかさ……ううん、これはポリエステル20%混?
……でもウールの保温性はそのまま残ってる。これ、かなり上質ね」
「あらやだ、背中の膨らみ具合が……完全に冬用布団グレードじゃない」
「……私、何やってるの? 寝るつもりだったのに……」
「Yo!気になったか? その毛並み、チェック済みだぜ!」
「……誰?」
「MCウールってんだ。ウールのことなら任せとけ。毛質評価もラップもワンセットだ!」
「ラップ……? なんで夢の中にラッパーが出てくるのよ」
「眠れない夜の救世主、呼ばれた気がして参上ってわけさ!」
「……呼んでないけど」
「良いからまずはこのリリックから聴きな――」
「羊1匹、ふわふわウール、軽さ抜群、まるで羽毛のプール。
ポリエステル混ぜてクールな肌触り、眠りのステージへ誘うストーリー。
羊2匹、空気を抱え込み、膨らむボディはまるで雲のドーム。
冬用布団級の膨らみで、冷え知らずの夜を守るゾーン。
羊3匹、毛並み違いは明白、上質ウールのリッチな証。
滑らかな触感で夢の世界へダイブ、MCウールが響かせるこのビート。
眠れぬ夜も俺に任せろ、柔らかさと静けさでガードするぜ。
羊数えても眠れないなら、MCウールのラップで眠りにドア開けろ、Yo!」
「……誰だか知らないけど、もういい加減にしてくれない?
私は寝るためにここにいるの。ラップなんていらない」
「ベガお姉ちゃん……」
「はぁっ……❤ あぁっ……❤」
ふうっ……ふうっ……❤
「ぼくだけが……お姉ちゃんの温もりに触れたいんだ……」
「誰にも奪われたくない……それだけが、ぼくの願いなんだ……」
「たとえ、あの男が隣にいても……」
お姉ちゃんの心は、ぼくだけに向いてほしい……
触れられないけど……想いは、誰にも負けない……
「お姉ちゃんも……感じてる?」
「どんな夢を見てる……?」
「はぁっ……❤ あぁっ……❤」
ふうっ……はぁっ……❤
「やめられない……❤ やめたくない……❤」
「ぼくはただ、お姉ちゃんのすべてを抱きしめたい……」
「この手で、そっと包み込んで……お姉ちゃんの奥の奥まで感じたい……」
「ずっとこのまま、眠っててほしい……」
このまま気持ちよさを感じていたい……!❤
ふうっ……ふうっ……❤
喘ぎ声と寝息が波のように繰り返し、甘く切ない夜に溶けていく。
アドマイヤベガはまるで夢の底に沈み込んだかのように、深い眠りに落ちていた。
どんなに強く揺さぶられても、そのまぶたは微動だにせず、呼吸はゆったりと続いている。
身体が揺れても、まるで波間に浮かぶ船のように穏やかに揺られ、意識はまったく覚める気配がなかった。
外の動きに反応することなく、彼女の心は静かな眠りの世界にすっぽりと包まれている。
どんな刺激も届かない深い安らぎの中、彼女はただ、穏やかな夢を見続けていた。