前回までの流れは、こちらから読めます。
「太郎くん…君には、殿様の「見える方」をうろうろしてて欲しい!」
「見える、方…」
つまりは、殿様に集中させない作戦です。
戦力外と思っていた太郎が予想外の動きをしたことにより、殿様は太郎も警戒してくるはずです。忍びの飛び道具であれば、なおさら。
そこで、あえて太郎に目に見える範囲を動き回ってもらい、そちらに一瞬でも気を取られたところに、見えない方からプロの攻撃を当てていく。攻撃が当たり、一瞬でも動きが止まったところへ、近藤さんの全力パンチをぶち込むーーといったものでした。
「…わかった、他にも道具はあるから、いろいろ試してみる!」
他のみんなだって命を顧みずに戦っているのです、太郎も決意し、走り出しました。
と、
「ぬん!!!」
殿様が凄まじい速度で走り出し、太郎目がけて思い切り剣を振り上げました。邪魔を排除したい殿様のこと、まずは接近戦へ持ち込み、一人でも敵を減らしていく作戦のようです。
「させるか! どうだ追いついたぞ、俺は判断も何もかも速いのだ!!」
ハヤタがギリギリで到着し、剣筋をわずかに逸らしました。すぐ横を、ものすごい勢いで剣が空気を切り裂きます。
しかし、それでも動かなければなりません。太郎はもう、無我夢中で走り出しました。
太郎のがら空きの背中を狙いたい殿様でしたが、今度は自分の背中をハヤタに狙われることになります。
仕方なく殿様は向きを変え、またプロたちと剣を交えました。
「ほら!」
次の瞬間、潰れた方の死角から乳女んの手刀が飛びます。
「く…」
咄嗟に避けた殿様でしたが、その表情からは明らかに余裕が消えていました。
(行ける…行けるぞ!!!)
誰もが、そう思い、太郎はまた、腰の小袋をごにょごにょいじりながら近づきます。
一瞬隙ができ、殿様は再び太郎をにらみ、そちらへ走ります。がら空きになった背中に、乳女んが止めの一撃を――
「攻撃するのだろう? この辺り、からなぁ」
殿様はニヤリと笑い、目は太郎を見たまま、右手の剣を自分の真後ろに、突き刺すように動かしました。
そこにはまさに、乳女んの驚く顔がありました。
そうです、殿様は罠にかかるふりをして、罠にかけたのでした。
太郎を狙えば隙が出来る。その隙を狙って動く――者を、潰す作戦。
「ちっ…!」
乳女んは既に攻撃体勢に入っており、迫りくる剣に対し動くことが出来ません。
キラキラと黒光りする刀身に自分の顔が映りこんでいます。
「乳女ん!!!」
ハヤタも駆けつけようとしますが、いくら早くても間に合う距離ではありません。
ここまでか――。
そう思った瞬間、
がぎぃぃぃぃぃぃん!!!
「いぃぃぃぃいいいいだぁぁぁあああああああああああああいっ!!!!!!!」
猛烈な悲鳴を上げたのは、猫ちゃんの盾でした。
痛いで済むのは盾くらいです。
「あんたは、猫少年の…!」
「姉さん、安心して下せえ!!! あっしらがお守りいたしますぜ!!!」
「痛いけど!!!」
殿様のあまりの力に、半分くらいのところでちょっとひん曲がった盾がそう叫びました。
「――ありがとう、命びろいしたよ」
乳女んは笑いかけ、そしてまた死地へ飛び出しました。
――全くの、互角でした。
誰が欠けてもバランスは崩れるでしょう。
そんな時、
殿様はくるりと向きを変え、
健ちゃんへ走り出しました。
この先、これ以上の情報を与えるとまずいと判断したのでしょう。うっすら汗をかき、息も上がり始めた殿さまでしたが、それでも眼光と勢いは止まりません。
「来る…!!!」
うかつに近づけばまた先ほどと同じような事になります。が、殿様は両手に武器を持っています。
盾も2体いますが、フェンシングのように突き出せば、どう考えても健ちゃんも無事では済みません。盾ごとぶち当てればよいのです。
もう少しで殿様の射程圏内に入ります。が、健ちゃんは動きません。それどころか、真っすぐに殿様をにらみつけています。
そして、健ちゃんは殿様に向かい、ある一言を言いました。
それは、何でしょう?(笑)
しょっち@気ままにやってきます
2022-06-02 11:44:10 +0000 UTC藤原妹紅
2022-06-01 15:17:50 +0000 UTC