前回までの流れは、こちらから読めます。
ハヤタとともに駆け抜け、ついに玉座へと繋がる扉の前に立つ一行。
「大事なことだからゆっくり喋るが…覚悟は良いか?」
ハヤタの問いかけに、ゆっくりと頷く3人。呼応するように、ハヤタがゆっくりと重そうな扉を開けます。
すると…。
「城が騒がしいからどこぞの賊かと構えてみれば…拍子抜けだな」
名刀・太陽の光裂と、満月の鈍(なまくら)を手に、臨戦態勢で立っている殿がいました。
「ハヤタよ。せめてお前だけが頼みである。今宵は儂を楽しませよ…さすれば、謀反の罪、忘れてやろう」
背筋が凍る、とはこんなことを言うのでしょう。
ハヤタや乳女んと出会った時とは違う――これは、緊張とか絶望といった生易しいものではありませんでした。
あえて言葉にするのであれば、――例えば目の前に巨大な肉食獣がいて、既に牙をむき出しにして襲い掛かってきている最中だった時のような。
全てを通り越して、「あ、終わったな、僕」と感じてしまうような、ある意味全ての力が抜けたような状態――そんなところでしょうか?
殿守護神三人衆などいなくとも、きっと殿一人で万の軍勢も相手に出来るかもしれない。そんな気さえします。
「さぁ、かかってこい。ただし、一秒以上持ちこたえられる自信があれば、の話だが」
今さらながら、後悔し始める太郎。意気地がないとかの話ではないのです、生き物である以上は仕方がありません。
だって目の前にいるのは、明らかな天敵なのですから。
呼吸は乱れ、足はブルブルと震えています。行こうと思っても、気持ちとは裏腹に一歩が出ません。
涙さえ出てくる始末です。
硬直する体に鞭を打ち、やっとの思いで隣を見ます。
健ちゃんも同じような状態らしく、氷細工のように動きません。が、口だけは何やらブツブツと動き続けています。
猫ちゃんは大きく瞳を開き、カタカタと震えながら、それでも初動のタイミングを見極めているかのように体を小さく丸めています。
ハヤタはさすがに殿様との面識があり、自身もそれなりに強いからでしょう、すでに戦闘態勢を取っています。が、よく見るとかすかに手先が震えているのがわかります。
――きっと、太郎たち3人では絶対勝てないことを知っていたのでしょう。だからこそ、ライバルをみすみす殺させないために、自分の意志を貫くために、覚悟を決めて助けに来てくれたのです。きっと。
そんな3人を見て、太郎は自分が恥ずかしくなりました。
諦める?
今諦めるなら、最初から謀反なんて言うべきではなかった。
他の3人は必死に戦おうとしている。今自分が恥ずかしい。
「? どうした? 今さら怖気づいたか?」
つまらなさそうに吐き捨てる殿。
その言葉を待っていたかのように、動き出しました。
さて、最初に動いたのは誰でしょう?
しょっち@気ままにやってきます
2022-05-25 11:01:07 +0000 UTC藤原妹紅
2022-05-24 10:49:33 +0000 UTC