もうすぐ引っ越しで忙しくなるため、普段の土曜日より早めの投稿で失礼します。
本記事は「ずるい女(仮題)」の下書き段階の文章をそのまま投下したものになります。そのため、完成品とは内容が異なる場合がございます。
その点を理解した上でそれでも読みたいという方は、どうぞご覧になってください。
今回の二次創作の題材は、漫画「彼女、お借りします」のメインヒロイン・水原千鶴です。2023年の夏アニメに出ていますね。
前回書いたやつがとびっきり重くてドロドロな話だったので、今回は私の脳を休めるべく、「細かいことを考えずエロいことをしまくる話」にする予定です。
ちなみに執筆するにあたって、この絵をモチーフにしています。
この絵の格好をした水原が和也に迫ってくる、と考えていただければ幸い。
それでは、お楽しみください。
アニメ派・コミック派の方は微ネタバレ注意。
大家都合のアパート退去により、次の家が決まるまで水原千鶴の家に住まわせてもらうことになった木ノ下和也。
水原の家。レンカノの家。想い人の家。好きな人の生活空間。
一応、二人きりの同居ではなく、八重森さんという女友達も一緒に住んでいるし、これは一ヶ月の期限付き。ただ、それでもドキドキさせられる事には変わりない。
あわよくば仲の進展、果てには男女交際、なんて妄想を和也は男として頭にちらつかせずにはいられなくて。
しかし、そうは都合よく問屋が卸さない。
八重森さんに「ずるい女」とまで言わしめる水原のガードの固さは折り紙付き。
それに、いつも通りの話ながら、下手なことをして水原に嫌われるリスクを鑑みれば、こちらから手を出すなんて和也としてはもってのほか。
はっきり言って、目に見えるわかりやすい形での進展は皆無。
同居期限の1ヶ月まで既に二週間を切っている今でも、和也はチャンスを活かしきれていないもどかしさに悩まされている。
それどころか最近、水原のアクターズスクール仲間であるイケメン・海君が水原宅に訪問し、水原に告白してくる、なんて不安材料まで出る始末。
心中穏やかではない和也は焦るも、かといって自分からなにか奇抜なことをする度胸もなく、時間が過ぎるのみ。
そんな懊悩とした日々の中の、とある金曜日――。
土砂降りの雨が、轟音を鳴らし続けている。
台風だそうだ。夜空から間断なく降りまくる水の弾幕が、暴風に乗って外にいる人々に襲いかかっている。ビニール傘なんて瞬時に折れるのが想像に容易い天気の暴虐が、遠い目で窓の外を見る俺に語りかけた――外出はやめとけ、と。
大学から帰ってきた俺は、木ノ下和也は、その警告に素直に従った。
もう今日は外出しないようにしよう、と。
筋肉モリモリマッチョマンでもない平凡な大学生の俺が、窓の外に見える雨風の暴虐に挑むのは自殺行為だ。ここまで天気が酷くなる前に帰れたのは結果論で、俺はラッキーだった。外出を急ぐような買い物や用事が特に無いのも幸いだ。
家主のいない家でくつろぐのは気が引けるが、この酷い天気では、インドアで過ごすのはやむを得ないだろう。
ちなみに今、水原の家にいるのは俺一人だ。
水原はアクターズスクール。八重森さんは、配信者の友人とのオフ会。
八重森さんについては、流石にこの天気で帰るのは身の危険を感じるから、今日は友人の家で泊まっていくらしい。
それをなぜ俺が知っているのかというと、今まさに、そのことを八重森さんから電話で知らされているからだ。
『というワケで! 今夜は水原さんと二人っきりっスよ! 押し倒すっス、師匠!』
「いや、そんなことするわけないだろ!」
スマホから聞こえる八重森さんの押せ押せコールを却下する。
八重森さんが俺と水原の仲を応援してくれるのは素直に嬉しい。レンカノという事情を汲んだ上で恋を応援してくれるのだから、ものすごくありがたい。
ありがたい……のだが。その応援の手法がやや強引なのが玉にキズだ。撮影旅行といい、ツイスターゲームといい、彼女には前科がある!
『水原さん、土砂降りの雨で疲れて、体がびしょ濡れで冷えているでしょうから、そこで師匠が男を見せて、抱き合って体で暖めあえば……!』
「しないよ! するにしても、風呂を沸かしておくくらいだよ!」
『あ、それもいいっスね。気遣いできる若旦那みたいで』
「若旦那ぁ!?」
一瞬、俺は水原に「おかえり。風呂沸いているけど入る?」とさらりと勧める自分の姿を妄想した。誰だこのイケメン。自意識過剰だよ。
と、いつも通りの、八重森さんとのバカなやり取りがまだしばらく続くと、てっきり俺はなんの疑問もなく思っていたのだが。
『なので師匠! 水原さんが帰ってきたら一声! ごはんにする? お風呂にする? それとも――』
「いや、俺、料理できないし! ……八重森さん? もしもし?」
ザー、とスマホから聞こえる音が意味の通らないノイズに変わる。
直後、ツーツー、と通話終了の音がなり、電話が切れてしまう。
「雨で電波が悪くなったのか?」
窓の外に目を向けつつ、俺はポツリと推測を漏らした。
うわっ! と驚きが声になる。見れば見るほど酷い大雨だ。
洪水の前触れじゃないかと思うぐらいに多量の水が降り注いでいる。夜で視界が悪いし、風も強い。窓がグラグラと騒音を立てている。
外出する気が起きないどころか、これは外出に危険が伴う類の雨だと本能で理解して、俺は顔を引きつらせた。
「というか、この雨だと。水原も帰ってこないんじゃ……」
電車が運行停止になったり、アクターズスクールの教員が生徒の安全を憂慮して校内待機を許可するのは、あり得ると思う。
少なくとも、大雨がある程度収まるまで。
……ふと、一瞬。
水原のアクターズスクールの仲間が、海君が。
あのイケメンが、水原に告白した光景が脳裏によぎった。
「だーっ、なんでこんなときに思い出すんだ!?」
懊悩して、ゴロゴロ頭を抱えて床を転がって、壁に頭がぶつかる。痛い!
冷静になれと、俺は必死に自分の理性を働かせた。
海君が水原を好きなのは、告白した以上はもう疑う余地は無いけれど、だからって、すぐに仲がどうこうなるわけでもあるまいし。
ましてや今は台風だ! 帰り道や身の安全を心配するべき時に、火事場泥棒みたいに仲が進展するなんて、海君からしても本意じゃないはずだ!
水原が好きという点において、海君は俺にとって不倶戴天の敵だ。
けど同時に、海君は人格者だ。そこは事実だ。
卑怯なマネはしないと、信頼していい……はずだ!!
「はぁ。今日はもう、早めに寝るか……?」
悩み疲れた俺は、寝支度のために洗面台に向かうことにする。
水原に風呂を用意する、という話は、もはやこの大雨で水原がいつ帰ってくるのかわからない以上、却下だ。水原が帰ったときに風呂が冷えていては話にならない。
せめて置き手紙を用意して、夕飯は俺の分は無しでもいい、と告げる程度にしておこう。ご飯を作る気力なんて無いほどに疲れるであろう水原が、俺の一食分ぐらい、気を休めることができるように。
「一日くらい、晩飯を抜いても、いいよな……」
お腹に手を当てて腹の具合を確かめながら、俺は自室を後にした。