──遠くの方で、破砕音がした。
何かを破り、砕き、排して、進んでくる音。一直線に近づいてくる音に、ロリ・アイヴァーンは、虚の名残である仮面に覆われていない方の右目を細める。
「なになに、何の音? 知性とか品性とか感じさせない音なんですけどー?」
ちょうど彼女の主、藍染惣右介が捕えた井上織姫に“あそび”と暴力を振るっていたところであり、そんなロリに知性や品性の欠如を責められるのは、恐らく音の主も不本意なことだろう。
どうやら織姫はその音を立てている者に心当たりがあるらしく、暴力を受けていた時よりも顔を青くしている。
「(まさかと思うけど、壁砕いて来てんの? どんなゴリラよ、それ。ちょうどメノリが出ていったところだし、気にせず続けて──)」
相棒であるメノリ・マリアに織姫への暴行を止められ、癇癪を起こしたロリを残してメノリは部屋の外へ出ていった。恐らくは、今ごろ壁を砕いて迫ってきている“何か”と交戦して……。
そんな風にロリが思った瞬間、ロリと織姫のいる部屋の壁が砕かれた。
その砕け方が、何というか……妙だった。音は派手なのだ、砕け散るのに相応しい轟音を響かせている。
だというのに、ガラガラと崩れる瓦礫が部屋の中に吹き込んでくるでもなく、まるで通り抜けられる穴さえ開けばいいというように、何処か小奇麗さを感じさせる砕け方をしていた。
そうやって開かれた“出入口”から、その女は姿を現した。
「ああ、よかった。織姫ちゃん、探しましたよ」
「や、やっぱり、ミコト姉さん……」
ミコトと呼ばれた女は、女性にしては異様なほどに背が高かった。
恐らく2mを越えているだろう。その長身に引かれるようにして、胸は豊満で、尻は熟れており、太腿の幅も広い。
立ち振る舞いや物言いは淑やかなものなに、癒されるような雰囲気はまるでなく、むしろ圧迫感を憶える。
やり取りから推察するに、どうやら織姫の知り合い……彼女を救出しに来た相手に間違いないのだろうが、その織姫が喜ぶよりもロリに向けて意味深な視線を向けてくる。
それは前に織姫を暴行していた際に、十刃の一人であるグリムジョー・ジャガージャックにリンチを受けたロリとメノリを治療した時と同じ目だ。
まだ何も負傷していないのに、半死半生に追い込まれた者への視線を向けられ、ロリの機嫌が凄まじい勢いで悪化していく。
「何の用ですかー? せっかく織姫ちゃんと遊んでたところなのに、盛りさがるんですけどー?」
「遊んでいた、ですか?」
織姫の体についている傷を見つめて、困ったように首を傾げるミコト。
大女はロリの方へと向き直ると、まるで淑女がやるみたいに、ちょっと今時ないんじゃないかと思うほど長いスカートの裾を摘まんで、頭を軽く下げてきた。
「ごきげんよう、わたくしは風早三言と申します。“うちの”織姫ちゃんが、お世話になったようで」
「そうそ、たっぷりお世話してあげたのよ。お礼を弾んでもらってもいいくらいにはね」
ロリは根本的に愚かというか、格上である十刃相手にも高圧的な態度を取るほど直情的な性格であり、この女がこの部屋を見つけて入り込んできた上に、メノリが何時まで経っても姿を現さない意味を理解しようとしない。
その侮りはミコトが死神でも無い、ただの人間であることも手伝っており、グリムジョーから受けた傷を織姫に治療された際、内心で恐れを抱いてしまったのを払拭しようとする心境とも結びついていた。
「お礼ですか。それでは、さっそくお受け取り下さい」
そう言って、ギリギリギリギリと音が室内に響くほどに、その大きな掌が拳の形に握られる。
根が愚かと言っても、この“お礼”が理解できない程ではないロリは、内心では恐怖を抱く織姫よりも、痛めつけやすい相手が現れたとほくそ笑んでいた。
織姫は何かを言いかけたが……流石に慈悲に満ちた彼女であっても、味方と敵が向かい合っている時に、敵に“警告”を放つことはしない。
ただそっと目を伏せながら、ロリを刺激しないよう、ミコトにだけ聞こえる声で告げる。
「あの、あまり酷くしないであげて?」
「あら、織姫ちゃん。私が女の子に酷いことなんて、したことありましたか?」
本気で記憶に無いというその口調に、織姫はただ祈るように目を閉じる。
ロリが喜色に満ちた顔で、身の程知らずのデカ女へと襲い掛かる──。
※
「ぐえぇぇぇっ……う、ぎぃぃぃぃぃっ……!?」
ロリの細い両腕が、ミコトの片手で以て軽々と拘束され、ぶらんぶらんとその体が揺れる。
見せつけるつもりは無いのかもしれないが、ロリが帰刃で解放した百刺毒娼が、彼女を拘束していない方の手で握りつぶされ、ぐしゃぐしゃと消滅していった。触れたものを溶かす毒が、浸透するよりも早く、徹底的な圧壊だった。
「(こ、こいつ、メチャクチャすぎる……速いのじゃなくて“見えない”……! 重いのじゃなくて“防げない”……! な、なんてチートぉ……!)」
それらは全て、能力ではなく技術だ。
ミコトの長いスカートは、足さばきを相手に見せない為のものであり、頭部の高さが変化しないように動くことで、瞬間移動したように相手へ認識させる。
もっとも本来のミコトの速度も、常人とは比べ物にならないほど速い。技術で誤魔化しているのではなく、速度に技を足しているのだ。
加えてミコトは、対妖物柔拳法と称される、人間以外を殺す為だけの拳法“如来活殺”なる技を叔父より伝授されており、その実力は死神や破面の戦場における“霊圧の大きさがすべてを決める”という法則の外にある。
十刃や主である藍染はまた別として、根本的にロリには最初から勝ち目がないほどの実力差のある“人間”だったミコトは、ニコニコと微笑みながらロリを覗き込んでいる。
「歓迎は、終わりですか?」
「こ、このバケモノ女が……!」
「いけませんよ、人のことをそんな風に言っては」
両手を同時に拘束している掌が、繊細に握り方を変えた。
直後、ロリの右手の小指が押し潰され、砕けた。
「あっ……がぁぁぁぁっ!? いぎっ、いっぎひっ、いぃぃぃぃっ!?」
「人を悪く言うのは、自分の品性を落とす行いです。こんなに愛らしい、抱きしめたくなるような、お顔をしているのに勿体ない」
「あっ、あっ、あっ……! で、デカ女ぁ……! いい、イカれてんの、あんた……ぐぎゃぁぁぁぁっ!?」
今度は、左手の小指。
恐らくやろうとすれば、手首をまとめて圧壊できるのだろうが、この女は恐らく織姫の性格をグリムジョーより理解しているのだ。拘束を離れて負傷が露出すれば、彼女が治してしまうと理解している。
だから……この拷問がまだまだ続くと、ロリは理解せざるを得ない。
「身体的な特徴を、あげつらうのも良くないです。反省した方が、きっとあなた、ロリちゃんでしたか? ロリちゃんの日々を豊かにしますよ」
「あ、ひぃぃぃ~っ……わ、わわわ、わかった、わかったからぁ……そ、そうだっ! あんた、アタシの体に興味ない!?」
先に“愛らしい”だの“抱きしめたい”だの、ミコトが妙に湿度の高い言葉を口にしていたのを、ロリは聞いていた。
この女が“そういう趣味”ならば、自分の体は交渉材料になるはずだ。何しろ、ロリは可愛いのだから。
……指の圧壊は、無かった。
「え、えへへ、交渉成立ねぇ……女相手は初めてだけど、精々喜ばせてあげ……ひぎゅぅぅぅぅぅぅぅっ♥」
先に百刺毒娼を握ちり潰した方の手が、ロリの右の乳首を捻り上げた。
指の痛みを緩和するための信号は、同時に体を火照らせ、敏感にする。
その状態で愛撫……いや、そう呼ぶには激しすぎる“陵辱”を受け、ロリが絶叫をあげる。
「なっ、なに、ひてぇぇぇっ……ま、まっれ、まだはやっ……ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ♥」
「自分の体を、安売りしてはいけません。こんなに魅力的で、きっと私におちんちんが生えていたら、生涯に渡って監禁し、子供を産ませ続けてしまうであろう体を、見せつけるようにしてそんなことを言うなんて」
「ひっ、ひぃぃっ、ひぁぁぁぁ~っ♥」
圧倒的な狂気を感じさせる言葉を重ねながら、ミコトはロリの右乳首だけを弄り、引っ張り、抓り、指でぐりぐりと押し潰す。
まるで遠慮というものを感じさせない、けれどこの女的にはこれでも加減しているのだろう力を込めて、ひたすらに与えられる痛みと快感。
ロリはびくんっ♥ びくんっ♥ と吊り下げられた状態で体を揺すり続け、涙を流して襲い来る“快い暴力”に身をすくめる。
「(こ、このままじゃ、右側だけ長くなっちゃうぅぅ……)」
自分の造形に対して自信と執着を持っているロリにとって、体を醜形化させられることは受け入れがたい恐怖だった。じわぁぁっ……と白い下履きに黄色い染みが広がるほどだが、今はその屈辱すらもどうでもいい。
「まって、よぉぉっ……♥ み、右だけはやめろぉぉっ……♥ ほぉぉっ♥」
「や・め・ろ?」
「ひぃぃっ♥ や、やめて、くださいぃ……♥ りょ、両方の乳首、いじいじされたいですぅ……ぐすっ……♥」
主である藍染に対しても、こんな媚び方と命乞いはしたことが無い。
歯を食いしばりそうになるのを懸命に耐え、文句を付けられないようにヘラヘラと嗤って、心の底から本気でミコトに懇願する。
このまま醜く人体を改造されて、快楽で翻弄されてから潰され死ぬくらいなら、媚びてでも生き延びたかった。腰が勝手にへこ♥ へこ♥ と前後に揺れ、マ〇コが女相手に屈服しているのを感じる。
その無作法を責められ、また指を潰されるのではと怯えたが、ミコトはニコニコと微笑んで見せた。
「良かった、気持ちが通じましたね。善意は必ず、相手に届くと私は信じているんです。わかりました……ロリちゃんの言う通り、左も一緒に伸ばしちゃいましょう」
「へ……?」
伸ばす?
許されるものだと思い込んでいたロリは、両乳首をぐりぐりと大きな手の指の間に挟まれて、力強く前へ引かれた。
如何にロリが体重42kgとは言え、その体が前後して揺れるほどの勢いで、だ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ♥ な、なんでぇぇぇぇぇっ♥ どうしてですかぁぁあぁぁっ、おぎよぉっ♥」
「人は……ロリちゃんは人じゃないんでしたっけ? まあ、とりあえず人は、忘れっぽい生き物です。痛みという教訓が無ければ、残念ながら覚えておけない人がいます。ロリちゃんは、そんな娘だと私は判断しました」
「ひぎっ、ひぎゃっ……♥ ぢ、ぢがいまずぅぅぅぅっ♥ 千切れるっ♥ ぢくび、ぢぎれるぅぅぅぅっ♥ わだじ、わだじ、いいこになりまずからぁぁあぁぁっ♥ ひゃ、ひゃへぇぇぇぇぇぇっ♥」
ぐいいい……♥ と引き延ばされていた乳首から、手がパッと離された。
ロリの薄い胸から飛び出した乳首は、赤くなって垂れてしまっている。
ぼろぼろと涙が止まらない。怒りは沸き上がって来なかった。
絶対に彼はこの手の行いはしないが、仮に藍染にやられたのならば怒りは湧かない。ロリにとって、圧倒的な力に蹂躙されることは、怒りの対象ではもはや無くなるのだ。
無様この上ない乳首を眺めて、ロリはひっぐ、ひっくとしゃくり上げながら、懸命に謝罪の言葉を告げる。人間如きに蹂躙されている屈辱は、既に擲った。己を害する可能性しか無いからだ。
「ごめんなざいぃぃっ……ごめんなしゃいぃぃっ……お、織姫、織姫ちゃんを、いじめましたぁぁぁっ……謝ります、謝りますぅぅぅ……もう、しません……生意気も、言いまぜんからぁぁぁぁぁっ……」
決して相手を刺激しないように、丁寧な口調を心掛けて、涙で震えてしまっているのが気に障らないよう祈りながら。
完全なる負け犬根性で媚びに媚び、謝りに謝るロリ。織姫があまりにも痛々しいものを見る目を向けてくるのも、ロリからすればもう屈辱ではなく、「気遣ってくれている織姫“ちゃん”優しい♥」に半ば本気でなっている。
そんなロリの願いを踏みにじるように、ミコトの指がロリの破面の少女の秘所へと伸ばされた。
陰核も捻り潰され、形を変えられ、ますます醜い体にされるのか……ロリの心の隅々まで絶望が駆け巡り、これまでのあらゆる行いを心の底から後悔した。
生き延びられるのならなんでもすると……あるいは藍染にすら刃を向けると、頭の中を洗いつくされた。
そんなロリの秘所が……優しく、指一本でこす、こすっと擦られた。
「あっ……♥」
「分かってくれて、嬉しいです。織姫ちゃん、指を直してあげてください」
「う、うん……ミコト姉さん、本当にもう少し加減してね?」
「? 織姫ちゃんの為なら、お姉ちゃんとしてこれくらい普通ですよ?」
本当に自分たちのことを愛してくれてはいるが、あるいは虚よりも理解が及ばないミコトに、織姫はふっと小さくため息を吐きながら、圧壊された指を直してやった。乳首の腫れも引いたが、伸びたのは負傷判定されないらしく治らない。
「ああ、織姫ちゃん、ミコトお姉様ぁ……ありがとうございます♥」
「ふふ、その喋り方の方が可愛いですよ、ロリちゃん?」
「あっ……お、お姉様がこの喋り方が好みなら、そうさせて頂きます……♥」
ミコトは敵地にも関わらず……共に乗り込んできた仲間たちを信用しているし、織姫と、そして今はロリを守る為ならどんな相手も“お話”してみせるという覚悟によるものだ……ロリの体を抱きしめ、とんとんと膝で秘所を打つ。
ロリは「あっ……♥ あんっ……♥ あぁっ……♥」と、何処か品性を気にした喘ぎ方をした。その膝がぶち込まれれば、体が両断されるかもという恐怖すら、もうロリには必要ない。
「あぁぁっ……♥ お姉様の大きな体で抱いて頂いて……♥ んっ♥ お膝、お膝が大切なところに触れるだけで……ああ、果ててしまいますわ、お姉様ぁ……♥」
「ええ、果てていいですよ、ロリちゃん。悪いものは全部、ここで出していきましょうねぇ……♥」
膝がぐりぐりと押し付けられて、ロリは「は、恥ずかしいですぅ……♥ お姉様、織姫ちゃん……見ないでぇ……♥」とか細く喘ぐ。
その伸びた乳首を押し戻すように、ぐいっと両手の親指で刺激され、ロリは体を逸らせながら「あぁぁぁっ♥ お姉様ぁぁぁぁっ♥」と叫びながら、その場で潮を噴き出した。
まるで人格そのものを排泄してしまったように、その目からは毒や悪意が消え去り、ただ優しい“姉”を慕い、己の過ちを赦してくれた“友”を想う、清楚な少女が息を整えようとするばかりであった。
──その後、甘えるように頬を擦り付けるロリとメノリを両手に抱き、織姫を肩に乗せて帰還したミコトに、黒崎一護は一言「またかよ、ミコト姉……」とだけ呟いた。
今回の攻め役
※風早三言(かぜはや みこと)
・人間が虚や死神(!)を滅ぼす為の格闘技、対妖物柔拳法“如来活殺”の継承者である十八歳の少女。厳密には叔父の三平が幾つか技を見せてやったところ、派生も含めて如来活殺を習得してしまったので“二代目の開祖”というのが正しい。
・一見すると穏やかな空気を纏った淑やかな長身女性なのだが、頭の中には「身内とそれ以外」というあまりにも極端な線引きが存在しており、身内枠から外れたが最後、まるで容赦なく“矯正してあげようという善意”で破壊を仕掛けてくる狂人。
・根は本当に善良なのだが、織姫関連で幾つも暴力事件を起こした為、空座第一高等学校には通えず、通信教育を受けている。
・暴れ出すと織姫や竜貴が説得するか、如来活殺の性質上「人間相手の技が無い」という弱点をついて(辛うじて)技抜きのフィジカルで上回るチャドが抑え込むしかない。その為、女の子以外だとチャドに一番信頼を置いている。
・自分の性格がおかしいとは微塵も想っていないが、自分の性格が織姫たちに迷惑をかけている自覚はある為、ドン観音寺の元で最近はヒーロー的な立ち回りを習っている。