前回

魔法があり、魔物がいて、勇者がいて、魔王がいるごくありふれた世界。 そして、そんな世界の国の一つ、バハムルト王国。 その王都から遥か離れた都市であるエルキアの冒険者ギルドで――。 「また失踪ですか? これで三人目ですよね?」 緑色の髪が特徴的な冒険者であるライムはカウンターで受付嬢と...
「ここ……か?」
ライムはゴブリンの足跡を慎重に探しながら、なんとか追い続け、小さな洞窟を発見した。
縦穴にしては小さく、大人でも一人通れるかどうか、といった狭さだ。
ライムは細身だからいけるが、戦士職などなら無理だろう。
「……」
洞窟内では弓は使えない。
解体用のナイフを握る。
戦闘用ではないが、ないよりましだ。
呼吸を殺しながら、洞窟に這うようにして入るのだった。
洞窟内は入り口とは逆に広い。
空気が淀んでいるのか、甘ったるい香りが漂っている。
(この匂いはなんだ? 花とは違うような……。でも、甘味系とも違うような……?)
嗅いだことがない匂いなのに、ずっと嗅いでいたくなる匂いは集中力を途切れさせる。
(く、口で息すれば少しましになるか)
それでも頭はぼんやりとしとくる。
ライムはなんとか集中力を失うまい、と気合いを入れながら洞窟内を進み続け――。
見つけた。
子供だ。
「大丈夫か!」
ライムは急いで子供の下へ駆け寄り、抱き上げた。
良かった。
怪我はしていないようだ。
それにしても綺麗な子だな。
さらりと流れる銀髪は月明かりを浴びてキラキラと輝いているし、顔立ちはまるで人形のようだった。
将来は美人になりそうだ。
年齢は七歳くらいだろうか?
「ん? 君は……」
あれ?
なんか違和感があるな?
何だろう?
女の子の顔をよく見てみる。
すると、目が合った。
吸い込まれそうな赤い瞳と頭巾で見えなかった髪には内向きに角が生えていて……。
角?
「まさか……まものっ!」
「手遅れ……だよ?」
瞬間、少女の目が光り、ライムの身体は金縛りにあった様に動かなくなる。
「私の領域にようこそ🖤 私はリリム。貴方は私の新しいペットよ」
甘ったるい香りが支配する洞窟の中で、リリスは立ち上がりながら金縛りにあったライムを地面に転がしながら見下ろし、小さな牙を剥き出して笑う。
正体を隠すつもりもなくなったリリスは背中の羽もお尻の尻尾を出しながら、魔物の姿を見せつけるのだった。
リリスの種族であるサキュバスは人族の女性と同じ容姿をしている。
しかし、その身体には男性を魅了する器官が備わっており、性欲を煽るフェロモンを常に放出している。
特にリリスの放つそれは強力で、耐性のない人間ならば、それを浴びただけで理性を失い、リリスの言いなりになってしまう。
この洞窟では、常にリリスのフェロモンが充満していて、ライムはそれをずっと吸わされていた。
当然、そのせいで大幅に精神耐性も落ちてしまうわけで、リリスの視線に射抜かれたライムの身体は動かない。
さらにリリスの視線には催眠効果がある。
目を合わせたら最後、彼女の虜となってしまうのだ。
「くっ! 離せっ!!」
リリスの視線から逃れようと身体を捩るが、リリスの魔法は解けず、ただ体力を消耗するだけだった。
「ふふっ。無駄よ。私から逃げられるわけがないでしょう?」
幼女の見た目とは思えない妖艶なリリスの甘い声にライムの心は蕩けそうになる。
だが、ここで屈する訳にはいかない。
なんとか抵抗しようと試みるが、リリスの誘惑に心が揺さぶられ、頭がぼーっとしてくる。
そんなライムを見てリリスは嗜虐的な笑みを浮かべると、ライムの頬を撫で、耳元に唇を寄せた。
そして、吐息を吹きかけるように囁いた。
「ほぉ~ら。だんだん気持ちよくなってきたでしょ? 素直になった方が楽になれるわよ」
「うぁ……あ……くぅ……」
心地よい吐息に脳髄が痺れてしまう。
リリスの言葉通り、徐々に快楽が脳を支配していく。
このままではまずい。
そう思いながらも、抗えないほどの快感にライムは思わず目を閉じてしまう。
「ふふっ。可愛い。ねぇ、貴方はどんな声で鳴いてくれるのかしらね?」
リリスは妖艶な笑みを浮かべながら、ゆっくりとライムの顔に自分の顔を近づけていく。
「やめろ。来るな。それ以上近付くな!」
「あら、どうして? 怖いの? 大丈夫よ。すぐに何も考えられなくしてあげるから。私の事しか考えられないようにしてあげる。そしたらもう辛いことなんてないのよ?」
リリスの吐息がライムの鼻をくすぐる。
蜂蜜よりも甘く、ねっとりと鼻腔に絡む香り。
その香りだけで、身体の芯が熱くなり、下腹部に血が集まっていくのがわかる。
リリスの匂いに包まれたライムの身体は徐々に熱を帯びていき、意識も少しずつ曖昧になってくる。
もはや限界だった。
「ぐすっ……。助けて……」
ライムは涙を流しながら、助けを求める。
「お願いだ……誰か……僕を助けてくれ……」
「あらあら、かわいいお兄さんねぇ。でも、悲しむことはないわよ? すぐに気持ちよくなるからね? 私に支配される喜びを身体に教えてあげるから」
リリスは立ち上がると無造作にライムの顔を踏みつけた。
真っ白い素足が視界を覆い尽くす。
「やわらか~い🖤 こんな幼女に顔踏まれて抵抗できないて惨めでしゅね~」
「うくっぅぅぅぅ!」
屈辱的な言葉を浴びせられても反論する事すらできなかった。
ただ黙って踏みつけられるしかない。
足特有のすえた匂いとリリスの甘い体臭が混ざった香りでますます頭が熱い。
「ほら、どうしたの? 悔しいんじゃないの? 泣いてもいいんだよ?」
グリッと体重をかけられ、ライムの後頭部が地面に押し付けられる。
「ひぎぃ……痛い……」
「痛いだなんて嘘つきでちゅね。本当は嬉しいんでしょう?感じてるのがわかるよ? もしかして……マゾヒストなのかな?」
違うと言いたいが、口を開けば喘いでしまいそうだ。
必死に耐えているライムを見て、リリスはクスリと笑った。