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小説編 メイド喫茶の裏メニュー



「おかえりなさいませ、ご主人様~」

 

「おかえりなさいませ、お嬢様~」

 

「いってらっしゃいませ、ご主人様~」

 

 甘ったるい声が店内に響き、愛らしいフリフリのメイド服を着た少女達が忙しく店内でメニューを運んでいる。

 

 ここはメイド喫茶『セレネ』。

 

 俺こと八雲健都はここの常連だ。

 

「おかえり~、八雲くん♪ また指名してくれてありがとね~」

 


「今は俺は客なんだけど」

 

「あ、ごめん、ごめん~」

 

 フワフワした雰囲気でメイド服を着ているのは鏡美鈴。

 

 俺の幼馴染みで、時給がいいからとここでバイトしている。

 

 最初は無理だよ~、と泣きついてきて心配なので様子見に通っていたが、今は逆に俺がここの店にはまってしまっている。

 

 美鈴はとっくに店に馴染み、毎日楽しげにバイトしてるのに。

 

 というか、このバイトしてから逞しくなったよな。

 

 前はフワフワして騙されやすそうな危うさがあったが、今の美鈴は自信に満ち溢れているように感じられるのだ。

 

 バイト経験が美鈴を成長させたのかだろうか?

 

 最近は何でも奢ってくれるし、ブランドものの鞄やバックもやたら買ってるし、学生の稼ぎとは思えないほど金使いも荒い。

 

「ご主人様、メニューは決まりましたか?」

 

 コホン、と咳払いして接客モードになった美鈴だが、相変わらずフワフワしてる。

 

 この癒しオーラが美鈴の売りなので、いいんだけど。

  

「ん~『メイドさんのフワフワオムライス』で」

 

「かしこまりました~、ご主人様~」

 

 美鈴はニヘラっと笑い、メニュー表をもってカウンターにいく。

 

 ヒラヒラのエプロンドレスって見ててなんだかワクワクしちゃうよね。

 

「う~、でも財布は寒くなるな」

 

 メイド喫茶のメニューは割高だ。

 

 まぁ、ここのは味とかよりサービスを買うお店だから仕方ないけど。

 

 大学生のバイト代で通うのは、財布に優しくない。

 

 それにしてもここの店って社会人が多いよな。

 

 しかも、オタクっぽくないエリートっぽいスーツの男性や女性が多いように思える。

 

 などと店内をみていると、後ろの席から感極まった様な声が聞こえてきた。

 

「ご主人様、今日もお願いします!」

 

「あら、ご主人様だなんて。私はメイドですよ? ご主人様はあなたですよね?」

 

 ひやっとする様な透明感のある声で接客しているのは、高身長でお姉さまメイドの『ルミさん』だ。

 

 もともと背が高いがヒールでさらに高くなっているため、大概の男は彼女を見上げる形になる。

 

 さらに顔立ちや目付きもキツメなので、Sっぽい雰囲気があり、そっちの客には大人気なのだ。

 

(でも、メイド喫茶のメイドさんを普通はご主人様って言わないよな?)

 

「も、申し訳ありません!」

 

「そんなかしこまらなくても……てあげますよ?」

 

「?」

 

 興味本意で聞き耳を立てていたルミさんの最後の言葉に俺は瞬きを何度もした。

 

 明らかに今の台詞はおかしかったよな?

 

 そう思ってチラチラと後ろの席を見ていたら――。

 

「どうしましたか? ご主人様?」

 

「っ、なんでもありません!」

 

 ルミさんと目があってしまった。

 

 吸い込まれるような深海色の瞳は俺の心を捕らえ、そのまま溺れさせてしまうような感覚すら与えてくる。

 

 思わず目をそらした俺はお冷やを飲み干して、席をたち、逃げるようにトイレへ走った。

 

「あ~びびった」

 

 偶然だったが、盗み聞きしてしまった後ろめたさから逃げてきた。

 

「にしても、あの客の態度といい。そういうプレイなのか?」

 

 ルミさんはSっぽいキャラ設定だからそれもありなのだろうか?

 

 そう思えばそれもありなのか?

 

 ルミさんは指名したことがないから、わからないし、どうでもいいや。

 

 人それぞれなのだろう。

 

 俺は冷たい水で顔を洗って気分を変えた。

 

 会話だって偶然聞こえてきただけだし、関わることもないのだ。

 

 今日は美鈴のオムライスを食べて、しゃべって楽しく過ごすぞ!

 

 俺は自分にそう言い聞かせてトイレを出ようした。

 

 が、変なテンションになったせいか、トイレが濡れていたせいか、足がもつれてしまう。

 

 おわっ!

 

 咄嗟にこけまいと近くの取っ手につかまり、トイレの床へのダイブを防いだ俺だったが、

 

 バキリ。

 

(い!!)

 

 何かが外れる嫌な音がした。

 

 手を見るとドアノブががっちり握られている。

 

 おかしいな?

 

 ドアノブは扉についてないといけないんだけど?


 俺は恐る恐る横を見ると……。

 

 そこにはドアノブが外れて半開きになった扉が悲しげに揺れていた。

 

(いやぁぁぁぁ!)

 

 やっちまった!

 

 掃除用具入れの扉を壊しちゃっ……ん?

 

 なんで掃除用具入れのはずなのに扉があるんだ?

 

 そこには何故かバケツやモップではなく、扉があった。

 

 なぜ?

 

 隠し部屋とか?

 

 そういえば、さっきのるみさんも隠し部屋で相手してあげますよって言ってたけど、ここのことか?

 

 俺は好奇心に駆られて扉に触れてみた。

 

 鍵が空いているのか、あっさりと扉は開く。

 

 薄暗い通路でも広がっているのかと思ったら、何故か目の前にある通路は高級ホテルを思わせる綺麗なものだった。

 

 明かりもしっかりとついているし、滑らないようにマットもひかれ、壁紙も柔らかい色で心を落ち着かせるものだ。

 

 なんだよこれ?

 

 VIP専用? それとも実はヤバイ商売商売でもしてるのか?

 

 俺は不安とワクワクが入り交じった気分で通路へと足を踏み入れた。

 

 やはり地下に続くのか、傾斜がある。

 

 マットのおかげで足音がないせいで、凄く静かだ。

 

 というか、静かすぎて不気味なほど。

 

 少しだけ怖くなった俺は早歩きになって進んでいった。

 

 すると、前方に光が見えてくる。


 出口だ。


 そう思って安堵した俺だったが、その希望はすぐに打ち砕かれた。


 それは明るい光が漏れている部屋の光景を見たからだ。


 俺は思わず立ち止まってしまう。


 そこはまるでSMクラブのような場所だった。


 鞭やロウソクなどの道具が壁に飾られ、天井には鎖が垂れ下がっている。


 反対の壁には嵌め込まれた大型の獣でも閉じ込めるような檻があった。

 

 しかも、手枷や首輪をはめられた囚人みたいな男が奥に見える。

 

 え?

 

 ここメイド喫茶だよね?

 

 SMクラブじゃないよね?

 

 いや、監禁してるしもっと、ヤバイ?

 

 俺は見たらいけない秘密を見てしまったような罪悪感で、部屋を引き換えそうとした。

 

 だが、それは叶わなかった。

 

 いや、普通は考えるべきだろう。

 

 入り口を偽装して秘密の入り口を作ったのは知られたくないから。

 

 そして、そこに客がこないようにカメラくらいは仕掛けてあるものだ、と。

 

「あ~、あ、見つかっちゃったか~」

 

 聞きなれた声のはずなのに、何故か安堵できない。

 

 むしろ、恐怖で振り向くのすら怖い。

 

 心臓の音が不自然なほど高鳴っていた。

 

「ごめんね~ちょっと辛いと思うけど、八雲もすぐにここの仲間入りだからね~」

 

 なんの仲間入り?

 

 聞きたくない。

 

 俺はこれが夢だとすら思いたかった。

 

 バイト帰りで疲れた頭が見せた幻。

 

 だが、そんなわけもなくこれは現実だ。

 

「み、みれ……」

 

「おやすみ♪」

 


 バリバリバリバリ!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 

 俺は逃がしてくれと懇願する間もなく、全身を貫く電流で意識を失うのだった。

 

 ◆

 

 目を覚ました時、俺は裸でベッドの上にいた。


 体中が痛くて動かない。


 ここはどこだ?

 

 俺は一体何をされたんだ?

 

 必死に記憶を辿る。


 ルミさんに会って、それから……。

 

 そうだ!

 

 美鈴が来て……。

 

 ……美鈴!?

 

 俺に電撃を放った犯人がわかった瞬間、ゾッとした。


 美鈴がここにいるなら、美鈴に捕まっているってことだ。

 

 あのヤバイ部屋に美鈴も関わってる?


 早くここから逃げないと!

 

  俺は焦りながら起き上がろうとするが、体が動かなかった。


 何度試しても、手足は拘束されていて動けない。


 どういうことだ?

 

 まさか、本当に美鈴に……。


 俺は絶望しかけたその時、ガチャリと扉が開いた。


 誰か来たのかと思い、顔を向けるとそこには……。

 

「あっ、起きたんだね。おはよう、八雲君。うふっ」


 美鈴が立っていた。


 いつも通りの優しい笑顔で。


 だが、今の俺にとっては悪魔にしか見えない。

 

 あのフワフワの雰囲気は擬態で底知れない何かが彼女の内側にいる様な不気味さを感じてしまったのだ。

 

「み、美鈴、なんでこんなことを?」


「なんで? そんなの決まってるよ。私がしたいからだよ。八雲君のことが好きだったんだよ? ずっとこうしたかったの。大丈夫、安心して。ちゃんと気持ち良くさせてあげるから。私のことしか見られなくさせてあげるから!」

 

 興奮し、捲し立てられる言葉に頭がついていかない。

 

 俺が好きなのは嬉しいのに、こんな風に拘束したかった?

 

 しかも、美鈴はこの後、なにかをするつもりらしい。

 

 とにかく話を……。

 

「俺も美鈴は好きだよ? だから、まず外して……」


「ダメだよ。だって、八雲は見ちゃったよね? このお店の秘密。それにこんなチャンス二度とないもん!」

 

 目がヤバイ!!

 

 ご馳走を前にした肉食獣の様に熱い吐息で美鈴は俺が拘束された台にのしかかった。

 

 ぎぃ……。

 

 二人分の重みに拘束台が抗議するかのような軋みをあげるが、美鈴はまったく気にせず俺との顔を近づける。

 

 白い肌も潤んだ瞳も甘いキャラメルみたいな匂いも全部好きだ。

 

 でも、この状況ではそれを心地よいものではなく、何をされるのか不安しかない!

 

「美鈴! はなし……」

 

「八雲は何もしなくていいの。私に全部委ねればいいの」

 

 ふっー、と耳元に吹きかけられた吐息に俺はビリビリと全身に電流が流れたような衝撃に襲われた。

 

「ひゃぁぁぁ!?」

 

「アハハハハ! 可愛い🖤 やっぱり八雲は最高だよ! ほら、こうしたら、もっと可愛くなるかな?」

 

 髪の毛が顔をくすぐるほどの距離で美鈴は耳元から首筋へと顔を動かすと、そのまま舌を出し……。

 

 ぺろり。

 

「んひっ!?」

 

「う~ん、いい反応♪ でも、まだ弱いみたいだね」

 

 今度は首筋を甘噛みしてきた。


 かぷかぷと歯をたてられ、その度にぞわぞわし、鳥肌がたつ。

 

「い、痛いっ」

 

「えへへ、ごめんね~。次は優しくするね」


 ちゅぱ。

 

「あぅ……!?」


 今度は耳にキスをされ、軽く吸われる。


 音だけでも恥ずかしいのに、敏感になった聴覚に美鈴の声が響く。

 

「ふふっ、感じてるの? かわいい」

 

「そ、それは美鈴が変なことするからだ!」

 

「そうなの? じゃぁ、これはどう?」


 そう言うと、今度は指先で俺の体をなぞってきた。

 

 身体を拘束されてまさぐられているのに、何故か気持ちいい。

 

「ちょ、ちょっと! やめて!」

 

「どうして? こことか、感じるんじゃないの?」

 

「そこはくすぐったいんだって!」

 

「う~ん、違うところだといいのかな?」

 

「どこ触ってるんだよ!? そこは駄目!!」


 美鈴が手を伸ばした先は胸だった。


 シャツ越しにさわさわと撫でられる。

 

 シャツごしに乳首を触られると、なんだかムラムラして変な気分になってきた。

 

 まさか乳首で感じてる?

 

 動揺する俺を見透かすように美鈴はニィ、と犬歯を見せて笑った。

 

 意地悪っ子の様な笑みは俺が見てきた美鈴の笑顔とはまるで別物で、新しい美鈴の面に密かにドキリとしてしまう。

 

「ねぇ、服の上からだと気持ち良くない? 直接が良かったら脱がせてあげようか?」

 

 いや、それは無理!

 

 恥ずかしい!

 

「お願いします! 自分で脱ぐんで許してください!」

 

これ以上はマズイ。


 何がとは言わないが色々と危険すぎる。


 俺の言葉を聞いた美鈴は嬉しそうに微笑むと、俺のズボンに手をかけた。

 

 ちょっ!?

 

「だ~め♪ だって、今の八雲が拘束外したら逃げちゃうよね? だから、私が脱がせてあげる。ほら、じっとしてて。動かないでくれたら気持ちよくさせてあげられるから」


「や、や、やめ!」

 

「やめないよ~♪」

 

 カチャリ。


 ベルトを外す音が地下室に響き渡る。


 それだけで体が震えてしまう。


 美鈴はゆっくりとジッパーを下げた。

 

「ふふ、八雲のオチンチン、もう大きくなってるね。毛も生えてるし。幼稚園以来の再会だ~♪そんなに期待してるのかな? やっぱり、八雲って……」

 

「ま、待ってくれ、せめてトイレに行かせてくれ。このままじゃ、さすがに……」

 

「ダ・メ。言ったでしょ? 私はしたいようにしてるだけだよ。それに、ここでしたらいいじゃない。床を汚しても掃除するのは私だし。もし、我慢できなかったら出してもいいよ。私がちゃんと見とくから」

 

「ぜ、全部って……。おま、まさか……」

 

 逃げようと言い訳した俺に美鈴は驚愕の言葉で返してきた。

 

「お漏らしなんか恥ずかしくないよね? 昔は幼稚園でしてたじゃない? 」

 

「…………」

 恥ずかしい過去をほじくり返されて俺は耳まで熱くなった。

 

 そんなのは昔のことで、今はしないわ!

 

「ほら、お漏らしするかな~」

 

 ぎゅぅぅぅぅ!

 

 美鈴は笑顔のまま俺の下腹部、膀胱付近に手を置くと、そのまま体重をかけてきた。

 

「お、い、いた、ん!」

 

 尿意がある時に膀胱を押したらどうなるか。

 

 それは男しかわからないが、男なら誰でもわかるだろう。

 

「あぁぁぁぁぁ!」

 

 ぷしゅゅゅゅ!

 

「あは! おもらししちゃったね~! 気持ちいいでちゅか~?」

 

 我慢していた尿意の解放感とわずかな快感。

 

 だが、幼馴染みに無理やり排泄させられ、しかも、それを見られる、など日常ではまずない。

 

 その恥ずかしさは過去の黒歴史など比ではない羞恥心で俺の心を覆い隠す。

 

「ふふ、すっきりしたね~♪」

 

 俺の放尿を、何故か満足げに見届けた美鈴に対し、俺は今すぐ死にたくなるような羞恥心に襲われたのだった。

 

 ◆

 

 飛び散ったおしっこを片付けた美鈴は動けない俺のお腹に座りながらニコニコとしていた。

 

 幼馴染みの尻にひかれている恥ずかしさより、今から何をされるのかという不安のほうがかなり大きい。

 

「フフ、八雲ったら怯えちゃって……。そんなの見たら食べたくなっちゃうな~」

 

 美鈴の手がワキワキと妖しく動き、

 

「フフ、ここで教わった調教術で八雲を私に夢中にさせて・あ・げ・る🖤」

 

 どこからかガムテープを手にした美鈴は俺がさらに抵抗できないようにするためか、素早く口を塞いだ。

 

「これで、八雲は逃げられないし、しゃべられない。身体でも言葉でも抵抗できないね。さっきよりももっと私に逆らえなくなっちゃったね。最後は心も私には逆らえなくなるんだよ」

 

 空恐ろしい台詞を吐く美鈴はうっとりと俺を見下ろしながら、

 

「まずは私の匂いにメロメロにさせてあげる🖤」

 

 履いていたパンプスを脱ぎ捨てた。

 

(え? 匂い? いきなり、靴脱いで……おい、まさか……)

 

「うー! うー!」

 

 この後の展開が想像できてしまった俺は必死にやめてくれ! と訴えようとしたが、ガムテープでしっかりと口を塞がれているので、それすら叶わない。

 

 しかも、口呼吸もできないのだから、美鈴が匂いを近づければ強制的に嗅ぐしかないのだ。

 

「ん~、すごい匂い~。鼻にツンときて、脳の奥まで痺れてくるね。噎せた様な臭いでめっちゃ強烈だよ♪こんなの嗅がされたら頭おかしくなりそうだね~」

 

 なら、やめろ!

 

 心の中で必死に叫ぶ俺に対し、美鈴は興奮で顔を真っ赤にしながら、顔に足を乗せた。


 むわっとした足の臭いが一気に広がり、俺は目を白黒させた。

 

 じっとりと蒸れたストッキング越しに透ける美鈴の足指。

 

 ほっそりと白魚の様な指と整った足の形は美しくもある。

 

 だが、そこから放たれた臭気は凶悪の一言だった。

 

 納豆とチーズを混ぜて、酢を足した様な、可愛らしい容姿から想像できない粘りのある激臭。

 

 真夏のゴミ捨て場すら生易しい臭いが容赦なく俺の体内に流れ込んできたのだ。


 しかも、美鈴は最も垢や汗が溜まっているであろう親指と人差し指で俺のの鼻をかるく挟んでいる。

 

 つまり、現在は美鈴の最も強烈な汚臭を直に嗅がされていた。


「─────ッ!!グフッ!!ガホッ!!グホッ……!!」


 俺は突然鼻に流し込まれたとてつもない臭気に、閉じられた口と小さな鼻の穴でむせ返った。


 そして咳き込むというとは鼻の穴から空気を放出するということ。

 

 そして空気を放出してしまえば、吸い込む必要がある。

 

 激しく肺から吐き出した空気の分、身体は多くの酸素を欲っし――。

 

「ううぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「あ~いい反応♪ 私の足の臭いを嗅いだ人ってみんな同じ反応するんだ♪ くさいよ~くるしいよ~たすけて~って🖤」

 

 まさにそれは正解だ。

 

 俺は心の中で美鈴に助けてくれ、辞めてくれ、と必死に願っていたのだから。

 

 だが、美鈴は足をおろすことなく、まるで刑罰に苦しむ罪人を見下ろす様な哀れみの笑みを浮かべたまま爪先で俺の鼻を塞いだ。

 

「ほら、まだ始まったばかりなんだから、寝てる暇なんてないよ? ちゃんと嗅ぎなさい。命令です」


 美鈴はゆっくりと足を動かし始め、俺の顔面に何度も踏みつけてきた。

 

「ん!んっ!!」

 

 必死に顔を逸らそうとする俺に美鈴は柳眉を吊り上げ、

 

「あれ? 逆らうの? いけないな~♪」

 

 そう言うと、美鈴は俺の顎をつかみ、ガッチリ固定すると、両足をぴったりと揃えて顔を踏み潰した。

 

 もう逃げ場もなく、俺の肺は思い切り美鈴の足臭を嗅ぐことになり――。

 

 スゥーー……


「クスッ!」

 

 美鈴の残酷な笑い。


 必然的に美鈴の足の指の間の空気が鼻腔を通して肺に流し込まれる事になり、悶える俺への嘲笑か。

 

「ングウウウウウ!!!」


 俺が感じたのは最早匂いではなく、痛み。

 

 あまりの刺激臭に鼻がツンと痛み、時間が経って痛みが和らぐと吐きそうな臭気を鼻腔が認識する。

 

「フフ、八雲も涙流して苦しそうだね~♪じゃ、そろそろこれがいい匂いに変わる魔法をかけてあげるね🖤嬉しいなら頷いてごらん?」

 

 そんな奇跡があるのか!?

 

 この異臭がいい匂いに思えるとは到底思えないが、そうなるなら願ってもない。

 

 この苦しみから解放されたい一心で頷いた。

 

「あは🖤 合意だね」

 

 美鈴の浮かべたのはしてやったりお言う達成感と思い通りに動いた獲物を仕留める優越感。

 

 その美鈴の意図を俺はすぐに知ることになるのだった。

 


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