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家庭教師の教え子は悪魔です 2

「じゃ、勉強はじめる?」

 

「それよりも、私は先生のことを知りたいですね。よろしければ、ゲームでもしながら話しませんか? 勿論、知的遊戯でもしながら」

 

 かぐやはオセロを取り出すと、ニッコリと笑った。

 

(まぁ、今後も教えるし、かぐやちゃんのことも知ってたほうがいいか)

 

 直人も初日からガンガン勉強する気はなかったし、互いに打ち解けたほうが教えやすいか、と頷いてゲームの相手をすることにした。

 

「負けないよ?」

 

「私も強いですから、全力できてくださいね?」

 

 よもや中学生相手に負けるはずがないだろう、と直人は甘く考えてゲームをはじめ――。

 

「白50で黒は……数えるまでもないですね?」

 

「う……」

 

 完敗だ。

 

 盤面ではかぐやの白が直人の黒を制圧するように広がり、徹底的に叩きのめしていた。

 

 中学生に敗けるんて……。

 

 悔しい。

 

「先生はオセロは苦手でしたか? では、他の遊戯はどうでしょうか?」

 

「いや、ゲームよりも勉強しないの? 自己紹介はすんだよね?」

 

 ゲームしながら互いに自己紹介もしたし、勉強でできるところ見せたい直人だが、かぐやは机を見ることもなく、

 

「では、先生がゲームに勝ったら勉強しましょう? 簡単でしょう? 中学生に勝つくらい」

 

 見え透いた挑発だが、さすがにこれはムッ、となる。

 

「わかった。次は何をするんだい?」

 

「そうですね……。先生は将棋やチェスは嗜まれますか?」

 

「将棋はそれなりかな? 中学や小学校で流行ったからやってたし」

 

「では、将棋にしましょうか。でも、オセロで負けた先生にはハンデがいりそうですから」

 

 パチン、パチン、と白魚のような指で綺麗に駒を並べたかぐやは徐に飛車と角を自分の盤から取り去り、

 

「これでいいでしょう」

 

「いや、飛車角落ちってバカにしてるよね? 初心者じゃないんだよ?」

 

「フフフ、いいじゃないですか。先生が勝てば勉強もさせれますし」

 

(これで勝っても嬉しくないけど、かぐやちゃんも勉強を始めたいのかな?)

 

 ならゲームを続けなくてもと思うが、流れ上しないといけないだろう。

 

 すぐに終わらそう。

 

 将棋ならそれなりに自信があるのだ。

 

 クラスで一番だったし、学年でも三本の指に入るくらいだった。

 

 中学生のかぐやに敗けるはずもない。

 

 はじめから全力で倒すと、大人げなく決意した直人は慣れた手つきで歩兵を進め――。

 

「ま……け……た」

 

 ガクッ、と頭を垂れた。

 

「先生って弱いですね」

 

 小バカにする響きだが、それも仕方ないほどの敗北。

 

 飛車角落ちの挙げ句に盤面にはかぐやの駒しか残ってなかった。

 

 かぐやは、直人との差を見せつける様にローラー戦術で、徹底的に直人の駒を一つずつ奪っていったのだ。

 

 途中の降参も認めずに。

 

「先生って本当に大学生ですよね? 私より賢いですよね?」

 

 将棋もオセロも知能が大きく影響するが、それだけでこの言い方はあんまりだ。

 

「ゲームと賢さは別だよ!」

 

 むきになって否定した直人に対し、かぐやは我が意を得たり、と言わんばかりに笑い、

 

「じゃ、証明してください」

 

「証明……って言われても」

 

 完敗で精神的に動揺している直人に追い討ちをかけるかぐやは一枚の紙を取り出した。

 

「これ、来週の全国模試で勝負しましょう? これなら、どっちが上かわかりますからね? まぁ、大学生の先生が中学生より劣る、なんてことになれば、家庭教師には到底なれないですけどね?」

 

 動揺しているところに立て続けの挑発は、直人の冷静さを容易く奪い、

 

「わかったよ。受けて立つ!」

 

 申込書を引ったくるように奪った直人はガリガリと自分の名前を書き、申し込みを行うのだった。

 

「では、来週のこの時間に結果をその場で開ける、ということで」

 

「わかったよ。勝ったら、ちゃんと勉強するんだよ?」

 

「勿論です。では、先生が敗ける。なんてことはありえないと思いますが、負けたときは言うことを一つ訊いてもらいますね?」

 

「あぁ、わかったよ!」 

 

 この時、直人はまったく気づかなかった。

 

 ここまでの流れすべてがかぐやの計画であり、この模試を受けさせることが彼女の目的だったことなど。

 

 

 

家庭教師の教え子は悪魔です 2

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