「変態女装子メイカー」(1)
Added 2021-03-31 09:20:53 +0000 UTC命令1.変態女装子マミはランジェリー姿で一日を過ごす (1) ほんの出来心で 4月初頭の昼前。少年は自室のベッドに寝転がり、憂い顔で天井を見上げていた。 (もうすぐ入学式で、それから高校生活……ううっ、ちゃんとした高校生活を送れるといいんだけど……) (友達も作って、アルバイトを始めて、女子とも仲良くなって、あわよくば彼女なんかもできちゃったりして……) (でももし失敗したら、クラスの隅っこで友達もいなくて、女子に馬鹿にされたり、いじめられたり……) 緊張と不安に躁鬱上体を繰り返していた少年は、 「はぁーっ……ゲームでもするか……」 やがて体を反転させてうつぶせになり、枕元のスマホを手に取って、ゲームアプリを起動する。 「ログボもらって、ミッションやって……あー、もうスタミナが切れた……しかたない、なんか面白そうなアプリを新しく探すか……ええと、新着アプリ一覧から検索――」 表示される、大量のアプリ。少年はしばらく画面をスクロールしていたが、 「なんだ、これ……?」 とあるアプリのタイトルに、彼は指を止める。 「変態女装子メイカー」 それはチープなハート形のアイコンと、「あなたを女装子にしてあげる」との説明が入ったアプリだった。 「してあげる、って本当にするわけじゃないだろうし、そういうゲームなのか……いや、でもゲーム画面解かないし、よくある診断系サイトみたいなやつか?」 彼の好奇心と股間が、同時に疼いた。 彼が言っているのは、ユーザーが入力した回答に基づき、あるいは完全にランダムで、ちょっと面白い結果を返すサイトのことである。詳細な説明もあるようだったが、どうせその程度のシステムだろうと踏んでいた。 アプリのページを開くと、そこにはこんな説明文があった。 「このアプリで、あなたを変態女装子にしてあげる。髪形や服装を決めて、一日一回、実行するべき変態行為を『命令』するわ。きちんと挑戦なさいね」 まるで女王様の命令のような説明文にも、少年は失笑しただけだ。 「これ、ほんとに診断系サイトじゃんか。ゲーム性もなさそうだし、わざわざアプリにする必要あるのか……? ま、無料だし、退屈しのぎに入れてみるか」 少年はそう呟いてダウンロードを実行し―― 「うっ……」 インストール中、股間の疼きに小さく呻く。 「はぁっ……オレ、どんな変態女装子にされちゃうんだろう……」 彼には、人には言えない性癖があった。 女装趣味――それも、変態的な女装に密かな憧れを抱いていたのだ。女装したことはおろか、女装に興味があることさえ表に出さないようにしているため、誰にもバレてはいない。もともと小柄で柔弱な顔立ちのせいで、子供のころから女の子に間違えられがちで、当時はそれに反発していたものの、ひそかな女装願望は彼の心に根を下ろし、さらに行き場のない性欲とまじりあった結果、女装する自分を想像することで勃起し、オナニーするようになっていたのである。 「変態女装子って言うと、短いスカートとか、エッチな下着とか着て、パンチラしたり、オナニーしたり、外を歩いたり、たくさんの人の前に出たりするんだよな……いったい、どんな『命令』をされちゃうんだろう……」 ――などと言いつつ、本当に変態女装子にされるとは微塵も思っていない。あくまで表示される結果をオカズにしよう、程度のつもりだった。 少年が想像を膨らませている暇もなくインストールは完了し、アプリが起動する。 「変態女装子メイカー」 タイトルとともに、黒とピンクをベースに、唇やルージュやハイヒールといった、女装を連想させる画面が表示された。中央には名前入力欄があり、 「これはあなたの、変態女装子としての名前よ。好きな名前、人から呼ばれたい名前を入力しなさい」 そんな説明が書かれていた。 下の方にはアプリの説明と免責事項のページへのリンクもあったが、どうせ大したことは書かれてないだろう――と少年は無視する。 「名前、どうしようかな……なるべくこう、女の子っぽい感じに……」 しばらく考えた後、彼が入力した名前は「マミ」だった。 「よし、これで――」 「名前入力完了」をクリック。続いて表示されたのは、 「変態女装子マミちゃんね。次はあなたの髪型と、今日の服装を決めてあげる」 そんな文と、「決める」と書かれたボタンだけ。少年は苦笑して、 「なんだ、やっぱりただの診断系じゃないか。ま、そんなことだろうと思ってたけど」 つぶやき、ボタンをタップすると―― 「変態女装子マミちゃんの髪型は、【前下がりボブ】。 今日の服装は、【ピンクのベビードールとTバックショーツセット】よ」 「え、えっ……!?」 彼が素っ頓狂な悲鳴を上げたのは、表示された結果を見たからではない。 その結果が表示されるとともに、スポーツ刈りの頭がずっしりと重くなり、額と耳、そして首筋を、毛先がくすぐったのである。 そして最大の変化は――部屋着にしている中学時代のジャージとシャツが跡形もなく消え失せて、代わりに淡いピンクのベビードールと、Tバックショーツを身にまとっていた。 まさにそれは、画面に表示されている「変態女装子マミ」の姿で―― 「な、何で……これって、まさか……」 乾いた声で、彼はつぶやく。 「まさかオレ、『変態女装子マミ』の服装になっちゃってる……!?」 (続く)