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「変態女装子メイカー」(1)

命令1.変態女装子マミはランジェリー姿で一日を過ごす   (1) ほんの出来心で  4月初頭の昼前。少年は自室のベッドに寝転がり、憂い顔で天井を見上げていた。 (もうすぐ入学式で、それから高校生活……ううっ、ちゃんとした高校生活を送れるといいんだけど……) (友達も作って、アルバイトを始めて、女子とも仲良くなって、あわよくば彼女なんかもできちゃったりして……) (でももし失敗したら、クラスの隅っこで友達もいなくて、女子に馬鹿にされたり、いじめられたり……)  緊張と不安に躁鬱上体を繰り返していた少年は、 「はぁーっ……ゲームでもするか……」  やがて体を反転させてうつぶせになり、枕元のスマホを手に取って、ゲームアプリを起動する。 「ログボもらって、ミッションやって……あー、もうスタミナが切れた……しかたない、なんか面白そうなアプリを新しく探すか……ええと、新着アプリ一覧から検索――」  表示される、大量のアプリ。少年はしばらく画面をスクロールしていたが、 「なんだ、これ……?」  とあるアプリのタイトルに、彼は指を止める。 「変態女装子メイカー」  それはチープなハート形のアイコンと、「あなたを女装子にしてあげる」との説明が入ったアプリだった。 「してあげる、って本当にするわけじゃないだろうし、そういうゲームなのか……いや、でもゲーム画面解かないし、よくある診断系サイトみたいなやつか?」  彼の好奇心と股間が、同時に疼いた。  彼が言っているのは、ユーザーが入力した回答に基づき、あるいは完全にランダムで、ちょっと面白い結果を返すサイトのことである。詳細な説明もあるようだったが、どうせその程度のシステムだろうと踏んでいた。  アプリのページを開くと、そこにはこんな説明文があった。 「このアプリで、あなたを変態女装子にしてあげる。髪形や服装を決めて、一日一回、実行するべき変態行為を『命令』するわ。きちんと挑戦なさいね」  まるで女王様の命令のような説明文にも、少年は失笑しただけだ。 「これ、ほんとに診断系サイトじゃんか。ゲーム性もなさそうだし、わざわざアプリにする必要あるのか……? ま、無料だし、退屈しのぎに入れてみるか」  少年はそう呟いてダウンロードを実行し―― 「うっ……」  インストール中、股間の疼きに小さく呻く。 「はぁっ……オレ、どんな変態女装子にされちゃうんだろう……」  彼には、人には言えない性癖があった。  女装趣味――それも、変態的な女装に密かな憧れを抱いていたのだ。女装したことはおろか、女装に興味があることさえ表に出さないようにしているため、誰にもバレてはいない。もともと小柄で柔弱な顔立ちのせいで、子供のころから女の子に間違えられがちで、当時はそれに反発していたものの、ひそかな女装願望は彼の心に根を下ろし、さらに行き場のない性欲とまじりあった結果、女装する自分を想像することで勃起し、オナニーするようになっていたのである。 「変態女装子って言うと、短いスカートとか、エッチな下着とか着て、パンチラしたり、オナニーしたり、外を歩いたり、たくさんの人の前に出たりするんだよな……いったい、どんな『命令』をされちゃうんだろう……」  ――などと言いつつ、本当に変態女装子にされるとは微塵も思っていない。あくまで表示される結果をオカズにしよう、程度のつもりだった。  少年が想像を膨らませている暇もなくインストールは完了し、アプリが起動する。 「変態女装子メイカー」  タイトルとともに、黒とピンクをベースに、唇やルージュやハイヒールといった、女装を連想させる画面が表示された。中央には名前入力欄があり、 「これはあなたの、変態女装子としての名前よ。好きな名前、人から呼ばれたい名前を入力しなさい」  そんな説明が書かれていた。  下の方にはアプリの説明と免責事項のページへのリンクもあったが、どうせ大したことは書かれてないだろう――と少年は無視する。 「名前、どうしようかな……なるべくこう、女の子っぽい感じに……」  しばらく考えた後、彼が入力した名前は「マミ」だった。 「よし、これで――」  「名前入力完了」をクリック。続いて表示されたのは、 「変態女装子マミちゃんね。次はあなたの髪型と、今日の服装を決めてあげる」  そんな文と、「決める」と書かれたボタンだけ。少年は苦笑して、 「なんだ、やっぱりただの診断系じゃないか。ま、そんなことだろうと思ってたけど」  つぶやき、ボタンをタップすると―― 「変態女装子マミちゃんの髪型は、【前下がりボブ】。  今日の服装は、【ピンクのベビードールとTバックショーツセット】よ」 「え、えっ……!?」  彼が素っ頓狂な悲鳴を上げたのは、表示された結果を見たからではない。  その結果が表示されるとともに、スポーツ刈りの頭がずっしりと重くなり、額と耳、そして首筋を、毛先がくすぐったのである。  そして最大の変化は――部屋着にしている中学時代のジャージとシャツが跡形もなく消え失せて、代わりに淡いピンクのベビードールと、Tバックショーツを身にまとっていた。  まさにそれは、画面に表示されている「変態女装子マミ」の姿で―― 「な、何で……これって、まさか……」  乾いた声で、彼はつぶやく。 「まさかオレ、『変態女装子マミ』の服装になっちゃってる……!?」   (続く)


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