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SS「パンチラの呪い」(1)

  (1)  俺にはパンチラの呪いがかかっている。  パンチラの呪いってなんだよと言われそうだが、要はスカートからパンツをチラしてしまう呪いだ。男子高校生である俺がかかったところで、スカートじゃないんだから大丈夫かと思いきや、そうは問屋が卸してくれない。何しろ呪いが強力すぎて、「パンチラをするのだからスカートを穿いていなければならない」という、因果逆転すら起こしているのだ。  なのでこの呪いをかけられた1か月前から、俺は強制スカート生活だ。急に女装を始めたら、家族も学校も友達も戸惑いそうなものなのだが、これまた呪いの効果か「俺が女装しているのは当たり前」という認識になってしまっているらしい。両親はごくごく当たり前のように女子制服から普段着(もちろん全部スカートだ)まで用意してくれたし、妹は「兄ちゃん」が女子制服を着ていることを訝しむ様子はない。学校も女子制服での通学におとがめなしで、友人たちすら「何でお前、女装してるんだ」と聞こうともしない。  むしろ困ったのは、「ちゃんと女の子らしくしなさい」と言われることだった。朝から髪をセットして、化粧して、言葉遣いや立ち居振る舞いまで女の子らしくしないと怒られてしまう。これでゴリゴリマッチョの男だったら目も当てられないところだが、幸いと言っていいのか俺は女みたいに背が低くて細く、体毛も薄い。コンプレックスな外見だったけど、こうなると見苦しくないだけありがたかった。とはいえ、「パンチラの呪いがかかっちゃったの。困ったわ」などと女口調で話すのは、オカマになった気分でげんなりするのだが。  ――とまぁ、ここまでは前座だ。あくまで呪いの副次的な効果に過ぎない。あくまで本体は「パンチラ」である。  朝。起きてすぐ、なぜか布団がはだけている。しかもネグリジェの裾も大きくめくれあがって、朝立ちに膨らんだショーツが丸見えになってしまっている。寒い日でも関係なく、かといって寝冷えするわけでもないんだけど――起こしに来た妹に見られると、やっぱり恥ずかしい。  ネグリジェから、制服に着替える。ティーンズ向けのブラショーツに、女子用ブラウス、グレー系チェックのプリーツミニスカート、赤い紐リボンにキャメルのニットベストと、紺のブレザー。  髪も整えて化粧も済ませ、鏡で身だしなみをチェックすると、スカートは太ももの半ば以上が露出する短さで、紺の刺繍入りハイソックスの間から肌が覗いているのは、ズボンに慣れた男からすると落ち着かないことこの上ない。  パンチラが嫌なら長いスカートを穿けばいいじゃないか――そういわれるかもしれないが、実際のところパンチラするのは確定した結果のためあまり効果はない。一度マキシマム丈スカートを穿いて過ごしたが、その時も謎にスカートがめくれるわ、逆に裾がずり落ちるわでパンチラしてしまった。  おまけに呪いの効果か「スカートの丈は短ければ短いほど心が落ち着く」という嫌な状態になっているのだ。膝丈を越え始めると、頭痛と倦怠感にさいなまれる。ちなみに男物の服、特にズボンをはこうものなら加えてめまい、吐き気、呼吸困難といった諸症状が起き、とても日常生活を送れない。全デバフ付与なんて、強力にもほどがある呪いだ。  とまぁ、女子制服に着替えて部屋を出ると、同じようにこちらは小学校の制服に着替えた妹と廊下で出くわしたりなんかするわけだけど、 「兄ちゃん、パンツ見えてるよ」  これだ。慌てて確認すると、スカートがブレザーの裾との間に挟まって、下にはいたギンガムチェックのショーツが見えてしまっている。もちろんさっきまで、スカートはちゃんと下りていた。なのに目を離したいっしゅんで、パンチラする状態になってしまうのだ。  妹はくすくす笑って、 「兄ちゃんのパンツ、オシャレ~」 「う、うるせぇ!」  言い合いながら1階に降り、キッチン、リビングと一間続きのダイニングに入る――のだが、 「父さん、母さん、おはよう」  朝の挨拶をする俺の手が、勝手に自分のスカートをめくりあげて、両親に自分の下着を見せつけるようなポーズを取ってしまう。これまた呪いの引き起こす反射的行動だった。  実のところ、パンチラの呪いが起こす中でこれがトップクラスに恥ずかしい。俺は自分自身の手でスカートをたくし上げ、明らかに男のモノで膨らんだショーツを、相手に見せなければならないのだ。  冷静に考えれば、こんなことをすれば相手に笑われたり、軽蔑されたり、怒られたりするのが当たり前――しかし家族は何事もないかのように、 「おはよう」 「はい、おはよう。ふふっ、今日も元気そうね」  普通に挨拶を済ませたところで、俺はようやくスカートを下ろすことができるのだった。  そのあとも、朝食をとるべくダイニングテーブルのチェアを引き、お尻に手を当ててスカートを押さえながら腰掛けた――はずなのに、 「兄ちゃん、スカートがめくれて、お尻が丸見えだよ」  妹に指摘されて振り返れば、スカートは椅子の背との間で大きくめくれあがって、ショーツのお尻側が丸見えになっているという寸法だ。  いっそもう、パンチラを気にせず生活するのが一番なのかもしれないが、さすがにそうなったらいろいろとおしまいだ。俺は赤くなりながら、急いでスカートの裾を下ろして下着を隠すのだった。   (続く)

Comments

羨ま・・・ちょっと代わってく・・・いや、何でもないw


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