「おむつぐみ」(63)
Added 2020-05-02 10:15:53 +0000 UTC「ああ、きもちいい……! おむつに、しゃせーすゆの、きもちいいっ……!」 全身を包む快楽に、恍惚と呟く和実。 本来は少女の小水を受け止めるべき、可愛らしいピンクのハート柄の布おむつが、雄の劣情に汚れてゆく。あれほど嫌がっていたおむつやベビー服に昂奮した末、幼稚園の面接中に赤ちゃんになりきっての射精とあって強烈で、ふいに襲い掛かる眩暈に思わずバランスを崩す――と、 「しっかりなさい、倉石くん」 園長先生の腕が、横から和実を支えてくれた。 「あ、ありがとう、ございます……」 快楽とともに全身を包む倦怠感と脱力感に弛緩しながら、和実はかろうじて答える。何度か息をついて落ち着くと、今度は急に冷静になり、 「す、すみません、その……こんな時に……」 「いいのよ。それより、言葉遣いをちゃんと続けなさい」 「う……は、はい、みーたん、ちゃんと、あかちゃんことば、つかいまちゅ……」 賢者タイムで恥ずかしさも倍増だ。ようやく四肢に力が戻ってきて、和実は改めてしっかりと床に足をついて立つ。 稲村園長は平静な顔で、あらためて和実に向き合うと、 「さて倉石くん、追加の試験です。あなたの本当の年齢と性別、今の服装と状況、そしていまあなたは何をしたのか、自分の口から説明してください」 「は、はい……」 和実はごくりと喉を鳴らし、改めて、自分の状態を言葉にする――幼児語で。 「み、みーたんは、ほんとは、じゅうごちゃいの、おとこのこ、でちゅ……」 「…………」 「なのに……みーたんは、おんなのこの、あかちゃんがきるような、べびーふくを、きていまちゅ……おじゅけんみたいな、ちろいぶらうちゅと、ふりゆちゅきの、こんのろんぱーちゅをきて、ふりふりの、ぼうしも、かぶって……おむちゅもいっぱい、あてていまちゅ……」 「いいわよ、続けて」 「きょうは、めんせちゅの、ために、ようちえんにきていまちゅ……なのに、はじゅかちくて、どきどきして、おちんちんも、むずむずして……」 「それで?」 「その、むずむずしてたおちんちんを、えんちょうちぇんちぇいに、なでなでされて、おちんちんを、おっきく、しちゃって……がまんできじゅに、しゃ、しゃせー、しちゃいまちた……」 「赤ちゃんが、射精なんて言うのはちょっとおかしいわよ、倉石くん。言い直しなさい」 「え、ええと……ち、ちろい、ちっちを、おもらちしちゃいまちた……」 「気持ちよかった?」 「は、はい。みーたん、ちゅごく、きもちよかった、でちゅ……」 「――なるほど。ええ、実に『おむつ組』の園児にふさわしい答えです。一次試験は、合格とします」 「あ、ありがとう、ございまちゅ……」 (お受験風のベビー服を着て昂奮したあげく、おむつの上から撫でられて射精しちゃったのに、合格って――いったいどういう基準になってるんだ……) 疑問に思う和実だったが、とりあえずは胸をなでおろす。 すると稲村園長はポンポンと手を叩いて、 「水無瀬先生、はいってください」 「はい」 待つほどもなく、すぐに入ってきたのは保育士の水無瀬貴子。外からでもやり取りは聞こえていたのか、エキゾチックな美貌はおかしそうな笑みを浮かべていて、和実はますます赤くなって縮こまる。 「倉石くんは無事に、一次試験の面接を合格しました。次の試験に移るため、彼を案内してあげてください」 「はい。……ふふっ、よかったわねぇ、和実ちゃん。ちゃんと面接、合格出来て」 「う、うん……」 「次の試験会場はこっちよ。いらっしゃい」 そう言って歩き出す貴子に、和実はソファに置いていたリュックを背負い直し、慌てて追いすがる。最後に、部屋を出る前に園長を振り返って一礼し、 「あ、ありがとう、ございまちた……」 「どういたしまして。次の試験も頑張りなさい」 「は、はい」 和実は廊下に出て、丁寧にドアを閉める。 貴子はにんまり笑うと、階段とは逆方向に先導しながら、 「ふふっ、和実ちゃんったら、可愛いベビー服にドキドキして、おちんちんをおっきくしちゃう子だったんだ。しかもお漏らしも大好きだなんて、ますます『おむつ組』にふさわしいわね」 「ちょ、ちょれは……はい……」 面接の言葉を撤回することもできず、和実は曖昧にうなずく。 いや――面接での回答とはいえ、自らの口で言葉にしてしまったせいで、おむつやお漏らしにひそやかな快感をおぼえそうになっている。今こうして下半身を包んでいるふかふかのおむつに、嫌悪や忌避の奥底から「包まれている」という安心感を―― (ううっ、ダメだって……! 本当におむつやお漏らしが気持ちよくなっちゃったら、もう、高校生に戻れなくなっちゃう……!) 和実は慌てて首を振り、雑念を飛ばすように貴子の行先に視線を向け、 「お、おひるね、べや?」 廊下の突き当りにある部屋のプレートを読んで、いぶかしむ和実。まさか、静かにお昼寝できるかどうかをテストするわけでもあるまい。 すると貴子は首を振って、 「ふふっ、残念。これから行くのはその手前の――あの部屋よ」 そう言って指さした先に、かかっているプレートには―― 「か、かじゅみ、たんの、ほいくべやっ……!?」 (続く)