SS「おむつぐみ」(4)
Added 2020-01-29 09:29:15 +0000 UTC「さ、後は自分一人でも着られるわよね?」 「う……うん……」 下半身を包むおむつに呆然としつつ、和実は立ち上がる。 トランクスやブリーフとは、まるで違う穿き心地。外側からおむつカバーによって締め付け、閉じ込められ、その中でおむつに包まれている二重の感覚だ。見下ろせば、縦に2列スナップボタンが並び、中央に大きく、名前欄がついている。 母親はそれを見て、 「先に名前を書けばよかったわね。面倒だから、そのまま書いちゃいなさい」 「えっ……? は、穿いたままで……?」 「脱ぐのも面倒でしょ? ほら、ちゃんと幼稚園の子たちにもわかるように、ぜんぶひらがなで書くのよ」 「うう……」 母親の手からフエルトペンを受け取り、和実は自分のおむつカバーの名前欄を見下ろす。氏名だけではなく、組と番号を書く欄もあって、 (これをつける時点で「おむつ組」なんだし、今まで一人もいなかったくらいなんだから番号を振る必要もないのに、いちいち書かなきゃいけないなんて……) もはや彼を辱めるためとしか思えない名前欄をにらみながら、それでも順番に書き入れてゆく。自分の付けているおむつに、上下逆に書き入れるのはなかなか大変で、幼稚園児が描いたような汚い字になってしまう。さらに、中のものを刺激して変な声が漏れそうになるのもこらえなければならなかったが、 「おむつぐみ 1ばん くらいし かずみ」 「よし、これで」 やっと書き込めた――情けなさの混じる達成感に息をつく和実。しかし、 「あら、和実。ずの字が、左右逆になってるわよ」 「え……あ!」 指摘され、真っ赤になる。 「これじゃ、幼稚園のお姉ちゃんたちに笑われちゃうわね。自分の名前もひらがなで書けないのって」 「うう……お、お母さんが、そのまま書けっていうから……」 「人のせいにしないの。ほら、次は下着ね。こっちはお母さんが買って来ておいてあげたから」 母親は制服が入っていたのとは別の小さな段ボールから、下着を取り出す。白いコットンのキャミソールが3枚。サイズこそ160だが明らかに女児用で、 「うわぁ……」 「そんなに嫌そうな顔しないの。おむつをつけてるカズミよりは、ずっとお姉ちゃんがつける下着なのよ。それとも、もっと可愛いほうが良かった?」 「ち、違うって……!」 「なら、早く袋から出して着ちゃいなさい。そういえばなかに名前を書く欄もあったと思うから、今度はちゃんと間違えないように書くのよ」 「ま、間違えないったら!」 和実は赤い顔でキャミソールを袋から出し、リビングのテーブルに広げて、左脇のネームタグをに名前を書く。こちらは既製品だが、おそらく小学生向けなのだろう。組と番号の欄もちゃんとあって、またも「おむつ組」と書き入れなければならなかった。 (女の子用の下着に名前を書くだけで、これが自分の服なんだって思って、恥ずかしくて仕方ないよ……) キャミソールを着ると、おむつカバー一枚の情けない姿からは多少マシになってホッとする――が、体にぴったりと密着するキャミソールの感覚は、肩の部分が紐になっていることも併せて独特で、和実は胸に溜まったもやもやを、大きな息とともに吐き出した、 「はぁっ……」 「まだまだ先は長いわよ。はい、ソックス」 「う、うん……」 履き口に二重にレースフリルが付いた、白のハイソックス。こちらは裏側に名前欄があった。制服のソックスにしては可愛すぎる、小学生でも低学年の子しか履かないようなデザインは、和実を辱めるには十分だった。 「とりあえず下着はこれでいいわね。どう? 着心地は?」 「とにかく恥ずかしくて、着心地どころじゃないよ……!」 「なに情けないこと言ってるの。これから毎日それを着るんだから、ちゃんとぴったりしてるかどうか確認しないとダメでしょ?」 「う……と、とりあえず、これがきつい以外は、大丈夫……」 そう言って、和実はおむつカバーの太腿の付けねに指を宛がう。 「おむつカバーはしょうがないわよ。もしも漏れたら、大変だもの。じゃ、どんどん行きましょうか。次はブラウスね」 「うん……」 おむつカバーの締め付けを気にしながらも、和実はブラウスの袋を開け、襟を固定している紙と取り除いて、ボタンを外す。すべて開いたところで、こちらも左脇にあるネームタグに組番号と名前を記入。強いて何も考えないようにしてブラウスを羽織ると、奇妙な戦慄に背筋が震えた。 「んっ……」 しかし、羽織っただけでは着たことにならない。逆位置の前ボタンに苦労しながら、それでもすべて留め終えると、 (女子用のブラウス、着ちゃってる……!) 身頃も袖もやや細身の、ぴったりとした着心地。 肩のあたりまでかかる、大きな丸襟。 軽く膨らんだ肩口のギャザーと、袖口のフリル。 男物のシャツとはどれも微妙な違いではあったが、これが女児用のブラウスであると思い知らされ、辱められる。 そして裾から見えているのは、水色のおむつカバーと太腿、レースの付いたハイソックス――あまりにも幼女じみた自分の姿に、和実は自分が15の少年であることさえ、信じられなくなりそうだった。 (続く)