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SS「スカートめくり」(3)

「はーい、それじゃみんなに、提案でーす」  香苗は改めて声を張る。 「昨日の今日でスカートめくりをした新井くんには、まだまだ反省が必要だと思います。そこで、明日から新井くんには、毎日女装してもらうっていうのはどうでしょう? クラス全員が許すまで、ずっとね」 「えっ、え――」  とんでもない提案に、浩太はハッと真っ赤な顔を上げる。  しかし教室はそんな彼を置き去りにして、 「さんせー!」 「異議なーし!」  特に女子を中心に、大いに盛り上がる。 「ねーねー香苗、ヒロコちゃんの着替え、あたしたちも選んであげていい~?」 「もちろん。みんなで毎日、かわりばんこに選びましょ」 「やったぁ! おさがり、着せてあげよーっと」 「夏になったら水着とかでもいいねー」 「あははっ、最高! スクール水着で授業受けてもらいましょ!」 「体操着も、お姉ちゃんのブルマーがまだあるからそれにしてねー」  女子はもはやスカートめくりの恨みより、浩太にどんな服を着せるかで頭がいっぱいである。 「ちょっ、そんな、待ってよ、そんな――!」 「だめよ、新井くん」  叫ぶ浩太を、澤山教諭が制止する。 「昨日あれだけ反省したって言ったのに、スカートめくりをした罰よ。これから、女子全員が許してくれるまで、学校では女装すること。いい?」 「うぅ……は、はい……」  ややきつめの言葉に、浩太はあっさりとうなずく。 単に「先生に言われているから」とも見えたが、香苗は別の感想を持っていた。 (浩太くんったら、いつもの往生際の悪さが嘘みたい。やっぱり……ね) 「それじゃあ、新井くん。明日から早めに学校に来て、女子トイレであたしたちが用意した服に着替えること。いい?」 「うん……」  浩太は真っ赤な顔で、きつく目を閉じた。その耳元に、 「大丈夫よ、ヒロコちゃん」  香苗はこっそりと囁く。 「みんなが行き過ぎたときにはあたしがフォローするし、学校生活でもあたしがお友達になるから――安心して、ヒロコちゃんになりなさい」 「あ……う、うん……」  その言葉に、浩太は今までで一番恥ずかしそうな表情で、小さくはにかむのだった。  そして、翌朝―― 「お、おはよう、中村」  五年一組の教室に入ってきた浩太は、すでに着席していた香苗に声をかける。  香苗はにっこり笑って、 「おはよう、新井くん。ちゃんと登校したのね。しかも、10分以上も早く」 「うっ、うっせーな。今日は何を着ればいいんだよ!?」 「んー? 自分から訊いてくるなんて、そんなに楽しみだったのかなー?」 「ち、ちげぇよ、俺は単にクラスで決められたから――」 「はいはい。そういうことにしてあげる」  香苗は今日も持ってきた着替え袋から、赤チェックのワンピースを取り出して、 「さ、今日はこのワンピースよ。大きな襟と腰のリボンが可愛いでしょ?」 「うう……ちょっとスカートが短すぎるんじゃ……」 「いいじゃない。ほら、パンツも可愛いのを持ってきてあげたから、着替えましょ」 「そういう問題じゃ……」 ぶつくさ言いながらもワンピースを持ったまま、香苗のあとについて女子トイレに向かう。そしてドアを閉めると、 「ほら、もう隠さなくていいから。早く着替えたいんでしょ?」 「う……うん……」  素直にうなずき、服を脱ぎ、ワンピースに着替える。下着もトランクスから、タンポポ柄のショーツにはき替えて、髪の毛もリボンのついたヘアゴムでくくる。 「んっ……」 「どう? 可愛いワンピース、気に入ってくれた?」 「う……うん……」 「ふふっ、真っ赤になっちゃって、可愛いんだから。それじゃ、今日からは女の子として過ごそうね、浩子ちゃん」 「うん……よろしく、中村……」 「あら。そこは『香苗ちゃん』でしょ?」 「あ……うん、よろしく、香苗ちゃん」  浩太――いや、浩子は赤い顔で、香苗に向かって微笑んだ。


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