第8話「女児服とごっこ遊びと」(4)
Added 2019-12-18 10:33:55 +0000 UTC集まった先は紗月の部屋ではなく、なぜか夢月の部屋だった。 中央に置かれた丸テーブルを囲み、それぞれの前に飲み物を用意して座る。内装は女の子らしいパステルカラーのものに、制服は小学校の女子制服に、スクールバッグは赤いランドセルにそれぞれ入れ替わっているせいで、こうしてみると本当に、女子小学生が自分の部屋に友達を招いたようにしか見えなかった。 しばらく学校のことや夢月のことについて話が弾む。ここ一週間のあれやこれやを、アプリのことについては触れずに二人に説明すると、 「おおー、そんなにいろいろあったのか! すげーな!」 「夢月ちゃん、普段は高校の制服なのね。なんだかお姉さんみたい」 「そーいえば渡井先生が会いたがってたぞ! またこっちにも来いよな!」 「へぇ、おっぱいが大きなって、ファミレスでバイト……いいわね……」 口々に感想を漏らす二人に、夢月は真っ赤になって縮こまる。女子小学生の間に一人だけ、それもコテコテの女児服を着せられているだけでも恥ずかしいのに、これまでの出来事の数々を語られるなど、それ自体がひとつの羞恥プレイだった。 一通りの話が終わったところで、 「それで、何して遊ぼっか?」 今さらのように訊ねる紗月。 即座に反応したのは、やはり榛名のほうだった。 「『ごっこ遊び』しようぜー!」 「ごっこ遊び?」 夢月は意外な思いで、三人を見る。女子小学生がどのような遊びをしているのか知らない彼だったが、 (ごっこ遊びなんて、幼稚園くらいまでじゃ……?) 「ふふーん、お兄ちゃん、びっくりしてるみたいね。ごっこ遊びって言うと子供っぽいけど、ようするにアプリを使って、ロールプレイ形式のゲームをするのよ。そのタイトルが、『ごっこ遊び』なの」 「ロールプレイ……ああ、TRPGみたいな感じの?」 「そうそう。そのキャラになりきって、イベントをクリアしていくみたいな感じ。フリーのがいろいろ出てるから、それをもとにしてるのよ」 「へぇー……」 「まぁ説明より、実際にやってみましょ」 紗月はテーブルの真ん中に自分のスマホを置き、指を滑らせて操作する。 ポップな文字とキャラクターで表示されているアプリが、その「ごっこ遊び」らしい。すでに四人――さつき、はるな、しずく、そしてむつきと名前が入力されていて、右側がスロット風に動いていた。 (本当に、今までもこれで遊んでたのかな……それとも、アプリの影響で、こうなっているんじゃ……?) 夢月がそんなことを考えている間に、紗月が再び画面を操作して、 「これで、だれがどの役かを決めるんだけど――」 ロール決定ボタンが押されると、順番にそのスロットが止まってゆく。 「さつき」――ママ。 「はるな」――娘(小学生) 「しずく」――パパ。 役割が決まるにつれ、それぞれの服装も変わってゆく。 紗月はタートルネックのセーターに、ロングスカート。 榛名は丸襟ブラウスに吊りスカートの、典型的な女子小学生制服。 静紅は細身のパンツスーツ。 ロールに応じて変化する彼女たちの服装に、夢月は確信する。 (やっぱりこれ、例のアプリと同じだ!) (じゃあ、俺のロールは……!) そして、「むつき」は―― 「娘……それも、幼稚園……?」 (まさか服装も、園児服に……!?) 表示されたロールに、夢月は戦慄しながら身構える――が、服装は変わらない。パステルカラーの女児服のままでホッとする。 (いや、これもこれで恥ずかしいんだけど、園児服よりはまだ……) 「おおー、夢月ちゃんはあたしの妹か!」 「ふふ、本当はお兄さんの夢月ちゃんが、逆に榛名の妹役だなんて、なんだか不思議な感じね」 「んふふっ、幼稚園児役、頑張ってなりきってね。お兄ちゃん」 「う……まぁ、園児服を着なくていいなら、だいぶましかな……」 夢月がそう答えると、 「んふふっ、んふふふっ……なに言ってるの、お兄ちゃん」 紗月は不気味な含み笑いとともに、ゆっくりと壁を指さす。 「え……?」 恐る恐る、夢月はそちらを見る。 先ほどまで、聖ジョアンナ女学園附属小学校の制服が掛かっていたその場所にあったのは、丸襟ブラウスにピンクのダブルボタンジャケットとプリーツスカート、襟に結ぶ派紅いリボンという、なんとも可愛らしい女子制服。それ自体もとてもかわいいデザインで、とても小学校より上の制服には見えない。 なによりも決定的なのは、そのすぐ隣にあるタンポポ色のスモックと、胸元につけられたチューリップ型の名札。そして黄色い帽子と、真っ赤な通園バッグ―― 「ま、まさか……!」 「んふふっ、お兄ちゃんだけ着替えないなんて、そんなことあるわけないじゃない」 凍り付く兄の肩に、紗月は手を置いて、 「じゃ、幼稚園の制服にお着換えしようか、夢月ちゃん♪」 (続く)