連載小説 第三話「おねしょと制服通学と」(5)
Added 2019-10-10 08:59:36 +0000 UTC学校に到着した後のクラスメイトや教師の反応も、おおよそ似たようなものだった。 「おっ三村、どうしたその格好」 「へー、女子制服で来たのか。似合ってるじゃん」 「わぁ、誰かと思ったら三村くん? 可愛いじゃない」 「下着はどうしてるの? まさか女物……?」 「次、三村――なんだ、その格好。女子かと思ったぞ」 驚きはするがその程度。せいぜい髪の毛を派手な色に染めてきたくらいのものでしかなく、夢月のほうが戸惑うほどだった。 授業は無難に進み、昼休み。いつも昼食は男子のグループで一緒なのだが、今日は隣席の山咲鏡花に誘われて、風見典子、久能香澄らと食事することになった。 それぞれお弁当を開けたところで、開口一番、香澄が質問をぶつけてきた。 「そう言えば三村、何で女子制服着てるんだー?」 「えっ」 考えてみればごくごく常識的な質問で、完全にスルーしていた鏡花たちがおかしいのだが、改めて訊かれると当惑する。 鏡花もいま気づいたように、 「そう言えば、そうですわね。どうして殿方なのに、女子制服をお召しに?」 「あ、あの、その、趣味……とか」 とっさのことで、苦し紛れにもほどがある言い訳を口にする夢月。他二人はともかく、常識人枠の香澄に通じるとは思えなかったのだが、 「趣味かー、じゃあ仕方ないなー」 「あははっ、女装趣味ってやつだな! あたしみたいな大女より、三村のほうが似合ってるからいいんじゃないのか?」 あっさりと納得する香澄に、からからと笑う典子。 それに対して鏡花は少し考え込んだ様子で、 「……そういえば、ものの本で読んだことがありますわ。殿方の中には、女性の装いをすることを好む方がいらっしゃると。さらに、性的な興奮を覚える場合もある――オートガイネフィリアと申しましたかしら」 「ええと、鏡花さん……?」 「なるほど、夢月さんは女性の装いで、性的な興奮をおぼえますのね?」 「うっ……」 勝手にどんどん話を進められて困惑するが、反論することもできない。女装に昂奮しているのは事実である。今も、女子制服で授業受けていただけなのに、勃起こそしていないが我慢汁だけが漏れ続け、ショーツがびしょびしょになってしまっていた。 「大丈夫だ、心配するな! 三村がそういうヘンタイでも、あたしたちは友達だからな!」 「いわゆる男の娘ってやつかー。てことは三村、アナルもイケるのかー?」 「あ、アナ……なんて?」 「アナル。お尻の穴のことなー。女装してるってことは、そっちも開発してたりするのかと思ってなー?」 「し、してないよ!? っていうかお尻を開発って何!?」 「そういえば、ものの本で読んだことがありますわ」 再び鏡花が顎に手を当て、見た目だけは思慮深げな才媛風に言う。 「殿方の体は、前立腺と呼ばれる器官で快楽をお感じになるとか。そしてその前立腺は、直腸から近い位置にあるために、肛門から挿入した指や器具、ときには男性器を用いて圧迫することで、通常の自慰や性行為より強い快感を得られると……」 「解説ありがとう鏡花さん。でも、女子校生の食事中の話題じゃないよねそれ」 「つまり夢月さんも、肛門に指や器具、ときには男性器をお挿れに……?」 そう言いながら、赤らめた頬に両手を当て、恥ずかしそうにかぶりを振る鏡花。 「挿れないからね!? っていうか鏡花さんなにを想像してるの!?」 「それはもちろん、肛門に指や器具を入れて、前立腺を刺激しながら気持ちよさそうにあえいでらっしゃる夢月さんを」 「はい」 あまりにもストレートな返答に、夢月は真顔になる。 「ふふっ、わたくしでよければ、いつでもご協力いたしますわ。指でも、器具でも――さすがにその、男性器は、無理ですけど……」 「もちろんあたしも協力するぜ! あたしもさすがにチンコは無理だけど、道具を使ってなら経験あるからな! 任せとけ!」 「……なにこの流れ」 あきれたような香澄の反応に、夢月は一人だけでも常識人枠がいたことにほっとする――が、 「ま、もし学校でアナルプレイすることがあったら、あたしに言えよー。学級委員として、空き教室の鍵くらい用意してやるからなー。教室でみんなの前でしたいって言うなら、それでもいいけど」 「いいの!?」 他二人ほどではないにせよ、香澄の倫理観や常識もかなり壊れているようだ。これもアプリの力かと、夢月は半ば呆れながら食事を続けるのだった。 昼休みのあとは、午後の授業も問題なく終了。部活動にも入っていないため、女子制服登校一日目は何事もなく、このまま帰るだけ―― そう思っていた、夢月だったが。 「ううっ――」 勃起した。 さすがに女子制服で一日過ごしていたせいで、ブラウスやスカートの感触による性的興奮が抑えきれなくなっていた。座っていてさえも、仰角に向いた砲身がスカートの前を押し上げて、女子生徒には生えていないものが丸わかりだ。 (ど、どうしよう……!? このままだと、下校中ずっと勃起したままになっちゃう……隣の鏡花さんにバレても厄介なことになりそうだし、こうなったらスクールバッグで隠して、トイレで出してから下校するしか……) 鏡花のいる角度から見られないように、スクールバッグでスカートの前のふくらみを巧みに隠して立ち上がり、脱出を試みる夢月。 しかしその反対側から、 「あれ? 三村、ひょっとして勃起してるのか?」 「えぇっ!? 夢月さん、勃起なさっておいでですの!?」 典子の大声に、鏡花が目を輝やかせて振り返り――夢月は脱出失敗を悟るのだった。 (続く)