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人物アップローダー6


僕には付き合いたい人がいる。


「でも、僕は」


「あ?」


「……いや」


「なんだよ。はっきりしねえな」


「うん……」


僕は、この期に及んでもまだ迷っていた。


本当にこれでいいのか? と。その迷いはきっと…


僕が『彼女』に抱いている想いは、きっと恋だ。


でも、その恋は実るのだろうか? もし実らなかったら……僕は一生後悔することになる。


彼女も僕の事を好いてくれているのはわかっている。


だけど、何かの踏ん切りがつかなくて…


「おい」


「……え?」


「何考えてんだか知らねえけどよ」


親友は少し怒ったような口調で僕に言う。


「お前、今誰の事を考えてる?」


「……っ!」


彼は僕の心を見透かしたかのように、そう言った。


「あ、いや……」


「お前に良い案をやるよ」


「え」


彼はスマートフォンを僕に渡す。

「何惚けてんだよ。噂の人物アップローダーだよ」


「で!でもそれって!死」


「違げよ。とりあえず見ろよ」


「え……」


彼はスマートフォンをいじると、何かのアプリを開いた。

そこには、とある人物がアップした動画があった。


「……ほら、見ろよ」


「う……うん」


僕は恐る恐るその動画を再生する。

------

『はい!皆さんこんばんは!今日も配信に来てくれてありがとー!』

『え?私が二人いるって?そうなんですよ。噂の人物アップローダーって知ってます?』

『そう。のせられた人物は死んでしまうという物です。でも私死んでませんよ。なので……この噂は嘘なんです』

『本当は二人にさせられた人が殺し合って不審死、又は殺した側が殺された側に共鳴して同じく亡くなってしまうパターンです』

『『うん?顔近づけないでくださいね。じゃないと私待っんんんん!』』




---



「これって……」


「ああ、そうだな。あの噂の真相だ」


まさかの噂の正体がこれだったなんて、それは驚きだけど、でも彼女は一つ重大なミスを犯した。


いや、もしかすると…これって殺したい人物を意図的に殺せてしまうのを広めて、視聴数稼ぎがしたかったのか? でも、一体なんのために……それにしても綺麗な黒髪を振り回してキスするのは不快だった。


「まだわかってねぇみてえだな」


「……え」


「お前を好いてくれた彼女の方を本物にするんだよ」


「それは……」


「大丈夫だよ人間は同族嫌悪する。彼女も偽者を葬り去ることを望んでいるはずだ」


「そんな!彼女はそんな人じゃ!」


「それはお前の意見だろ?」


彼は少し呆れた声で僕に言う。


「彼女だって人間だ。お前に見せた部分が全てじゃないだろ」


「……っ!」


確かに……僕は彼女が僕の事を好いてくれているのは知っている。僕が見てきた彼女の姿なんてほんの一部だけだ。もし、その中に彼女の本性が隠れていたら……


「僕は……」


「やっぱり迷うか」


「……うん」


僕は迷い続ける。本当にこのままでいいのかと。


「でもな」


彼はそんな僕に言う。


「俺は、お前がどんな道を選んでも、お前の味方だよ」


「……え?」


「お前がどんな選択をしようとも、俺はそれを肯定するし、否定もしない」


「……うん」


「だから、お前の後悔しない道を選んでくれ」


「……うん!」


僕は決意する。彼女を救うんだと。


そして、もし彼女が望むなら……







---






早くに親を亡くし、受験勉強とバイトに追われる日々を送っている私。祖父がいくら金持ちとはいえ、そろそろ自立しなければと思い始めていた。


「……」


「近くにさ結構良い店あったんだよね。行ってみない?」


「え~今月結構ピンチなんだよね」


「大丈夫。奢るからさ」


「え、いいの?行く!」


そんな会話を聞きながら私は彼女達のキラキラした生活が羨ましかった。

私は、これからどうやって生きていくのだろうか?


「え!まじでここ!?」


「すごいじゃん!」


そんな彼女達の会話を聞き流しながら、私は一人帰路につく。


そして家につき私は変な出来事に会う管理人に…


「あれ…恵里奈ちゃん?さっき…入らなかった?」


え?管理人さん何を言っているの?


「私は今帰ってきたばっかですよ?」


「……え?」


「管理人さん…大丈夫ですか?お仕事のし過ぎですよ!」


私は笑いながらそう言って家に入っていく。でも……何故か嫌な予感がした。まるで私が…いや…そんなこと。


エレベーターで10階まで上がり、歩き…


「え?あ…」


何故か私の家は私がいないのに電気がついていた。


「……」


私は自分の家のドアを見る。私にはいつも通り見えるはずなのに、何故か今は不気味に感じられて仕方がなかった。

そして、当たり前のように……私が履いている靴もある。


……ただ空気だけが違った。酷く怖い空気を纏っていて。

そして私が一歩踏み出した瞬間!物陰から何かが動く気配がした。


咄嗟に音の方を見ると、そこには私を怯えながら睨む私と同じ顔があった。


「誰ですか!!私の家に入るなんて!」

「な!何言っているんですか!!あんたの家じゃないですよ!」

「は!?貴女こそ何を言っているんですか!私の家です!……不法侵入は犯罪ですよ!」

「な!貴女こそ何言っているのかわかっているんですか!?不法侵入はあなたです!」

「ふざけないでくださいよ!!一体何ですか!!」

「……っ!ふざけているのはあなたです!!」


私は怯えた声で彼女に近づく。だが彼女も怯えた声で私に言う。


「近づかないでください!!」

「……っ!近づいているのはそっちでしょ!!いいから早く出ていってください!」


私は怯える彼女に怒りながら近づくが、彼女も私に近づくなと叫ぶ。近づいていくにつれて匂いもする…これが私の匂い…意外と良い匂い……って違う!!


「っ!近づかないでって言ってるでしょ!!」

「近づいているのはそっちでしょ!!」

「っ!この!」

「な!何するんですか!?」


私は彼女に顔を叩かれる。


「っ!」


叩かれた箇所がヒリヒリして痛い。


「はぁ…はぁ…」


彼女の息遣いが聞こえる。


「何するんですか!」


私も彼女の顔を叩く。


「っ!痛い!」


彼女も私を叩く。


「っ!」


私も彼女をまた叩く。


「っ!」


彼女も私をまた叩く。泣きながら叩き合って…


「……はぁ……はぁ」

「……はぁ」


私達の息は荒くなっていた。私達はお互いに叩かせないように互いに手を握り合う。痛い。


「いい加減……どいてくださいよ」

「……嫌です」

「何でですか……」

「それは私の台詞ですよ……」

「なら、早く出ていってください」

「だから、貴方が出ていくべきです」

「っ!いい加減に!」


そして取っ組み合いになり、私達は互いに互いを殴る。


蹴る。


結局、私達はお互いを殴り蹴り続けた。

そして……私は彼女に首を絞められ、彼女は私に肩を噛みつかれる形で喧嘩は終わった。


「何をしているんですか!?桜さん!!」


彼氏の晶の声を聞いても返事をしない。いや、出来ないのかもしれない。私の首を絞める力は強まるばかりなのだから。私も彼女を噛み千切る勢いで肩と顎に力が入る。


もう私達は人間ではない別の何かになってしまったのだろうか?そんな考えすら頭に浮かんでしまうほど……お互いを憎み合っていた。


そして、15分位して晶にとめられる形で喧嘩は終わった。


私は解放されたものの、彼女は、何故か晶が彼女を別の部屋に連れて行った。


そして……私は一人になる。


「何だったんだろう……」


そう呟きながらも、私の頭には彼女の顔がこびりついていた。


「何で偽者が先なんですか…」


私の呟きを聞く者はいない。


「……どうしてですか?」


私は……私を押し潰すかのように現れる罪悪感を必死に抑えながら晶が出ていった。


ドアを見つめる。


翌日、私の家に晶がやってきた。


「…昨日の事は言いませんが、アレはどうしてますか?」


「…怖い目にあったね。もう大丈夫だよ。僕がケガを治したからね」


私はそう答えたが、晶とは何か話しが通じなかった。


「はぁ……それで何の用ですか?用がないなら帰ってください。私のケガを治してくれなかった彼氏さん?」


「用ならあるよ。君が彼女をケガさせたことを怒っているんだ」


「……はぁ?」


「言ったはずだよ」


晶は、私の返答が気に入らなかったのか少し怒り気味だった。しかし私は何も知らない。


だが、それが何かを知ってしまったら私は取り返しのつかないことになるような予感があった。だから私は知らないフリをした。


「ケガを治してくれたことに関しては感謝します」


「なら!」


「ですが、あれは私の偽者かも知れない女をどこかに連れ込み怒られる筋合いはありません!それに……私はその女のせいでケガをしたんです!」


「……君は僕の話を聞いていなかったのかい?」


「聞いてましたよ。私を勝手に悪者にしないでっ!!?」


私はそう叫ぶと、晶は私を殴る。


偽者に何回も殴られたよりも痛い。


「な!何をするんですか!!」


「今の君は……本当に自分の事しか考えてないんだね」


「は?何を……」


「彼女も同じだ。どうしてまず僕に聞かない!どちらが本物か!」


「な!」


私は言葉を失う。だって……それはおかしな話だからだ。私が偽者だと言うなら……どうして?


「……何を企んでいるのですか?」


「何も企んでなんかないよ。そういう考えが生まれるなんておかしいね」


「信じられません」


私は警戒する。晶は今までと違うのだ。まるで別人のように感じるし、何より彼の言うことは本当に意味が解らない。


「…デートしようか」


「は?貴方に殴られた顔が痛いので行きませんよ。それにこんな無様な顔で行きたくありません」


「デートは嘘。ただ話をしに行くだけだよ」


「……はぁ……」


私は呆れて溜め息をつく。一体彼が何をしたいのか?全くわからなかったから。


「話すだけですよ」


「うん、ありがとう」


そして私達は、近隣の公園に移動する。


「それで話ってなんですか?」


「君は、あの彼女をどうしたいんだい?」


「は?そんなの決まっています!私が本物だと証明して、そして……」


私は少し考える。もし彼女が私と同じ考えなら……


「……決着がつかないなら、彼女か私どちらかここから離れます」


「っ!」


晶は驚いた顔をするが、すぐに笑顔に戻る。まるで私の返答をわかっていたかのように。


「そうか……なら、僕はそれまで見守るよ。助けてほしいなら言ってよ」


「……」


私は、晶の笑顔を見て少し寒気を感じた。




そして……私達は別れて家に戻ろうとする。



「……はぁ」


私は溜め息をつく。あの偽者め!と怒りが沸いてくる。だが同時に、もし彼女が私と同じ考えなら……という不安も沸き上がる。


「……っ!」


私は思わず頭を押さえる。頭痛がしたからだ。まるで私の中の何かが私に警告をしているかのように……


「っ!?」


公園に彼女がいた…晶と…




私は逃げるように家に戻る。疲れたように私は昼なのに寝てしまった。



翌日、またも私は学校を休む、まだ顔の傷は癒えておらず、友人を心配させてしまうからだ。


「……」


冷蔵庫をあける…あ…


「食品買いにいかなきゃ」


私はそう呟くと、私服に着替えて外に出る。


「行ってきます」


誰もいない家にそう言い残して扉を閉めた。




数十分ほど歩き、近くのスーパーにたどり着く。


「まだ高いな」


私は野菜や肉類などを買い物カゴに入れていく。会計を済ませてスーパーを出ようとした時だった。


「……っ!」


悪寒がした……誰かが私を見ているような感覚に襲われる。だが、周りには誰もいないので私の勘違いだと言い聞かせる。


そして、私は家に向かって歩き始めようとしたその時、駅から晶と…私と同じ姿の癖に綺麗におしゃれした彼女が出てきた。


「映画楽しかったです…それにあんなおしゃれな喫茶店始めてです」


「そうかな?気に入ってくれて良かったよ」


「はい!」


二人は楽しそうに話している。



私はそれをただ見ていた。


晶は私に気がつくと、彼女を連れてこちらに近づいてきた。


「やあ、奇遇だね」


「……こんにちは」


彼女はぎこちない笑顔でそう言った。そして……その目は私をバカにしているかのようでもあった。とても不快に思う目だった。


「……」


私が無言でいると、彼女は少し嫌そうな顔をしたが直ぐに優越感に浸ったような顔で私に言った。


「貴女、いい加減にしてください」

「……何がですか?」


私は怒りを押し殺して聞き返す。彼女は続ける。


「あなた、自分が偽者だという自覚ありますか?」

「っ!!」


彼女の言葉を聞いた瞬間……私は頭が沸騰しそうになった。でも抑えて。


「ここでこんな話しをするつもりはありません」 


逃げるように私はその場から離れる。そして、急いで家に戻った。


「はぁ……はぁ……」


私は自分の部屋に入りベッドに座る。頭が痛いし体が重い……だるい……気持ち悪い。


「なんでですか?どうしてです?」


頭の中がぐちゃぐちゃになる。私は私が本物だと信じているのに何故か自信がなくなっていく気がしたのだ。だから怖い!自分が偽者かもと思い知らされるのが怖かったから逃げ出したのだ。だけど、このままではいけないのはわかっているけど、それでもあの偽者と晶と三人で話しをするのは嫌だったから逃げた。


「はぁ……はぁ……」


私は、息を整えて落ち着くと冷蔵庫に買ってきたものを入れるために立ち上がった立ちくらみがして倒れそうになる。


「あ……」


気がつくと、私の体は床の上に倒れていた。そして、少しずつ意識が薄れていくのがわかった。


「……っ!」


私は慌てて体を起こす。すると頭が痛んだ……


痛い!なんで!?


何がどうなっているのか解らずパニックになりかけていたが冷静に考えようと自分に言い聞かせる。気づけば外はもう真っ暗だった。



「はぁ……」



私は溜め息をつくと立ち上がり冷蔵庫をあける。しかし……入っていたはずの食べ物が一つもない。


「……ぁ」


お腹が空いているはずなのに何も食べる気が起こらない。それどころか吐き気がしてくるほど気分が悪かったのだ。


まずはシャワーでも浴びようと思った時。


ピンポーン! チャイムがなった。そして、玄関を開けると晶が立っていた。


誰かに叩かれたのか頬が赤い。彼は笑顔で私に言った。


「やぁ、少し話でもしよう」


「……っ!」


私は思わずドアを閉めようとしたけど遅かった。彼はドアを掴み閉めるのを防ぎながら言ったのだ。


「話があるんだ」


「……私にはありません。帰ってください」


「分かった。なら、君の部屋の様子を見てからにしよう」


「っ!」


私は慌ててドアを閉めようとしたが遅かった……彼は私を部屋に入っていく。そして、私が部屋に行こうとした時、彼は私に言った。


「君は……何者だい?」


「……は?何を言っているんですか?私は私です!それ以上でもそれ以下でもありません!後、勝手に入らないでください!警察に訴えますよ!」


私は怒鳴り付けるように言ったけど彼は怯むことなかった。それどころか笑顔だった。それが余計に怖かった。まるで私を偽者みたいな目で私を見ているような気がしてならなかったから。


「僕は君の彼氏だよ」


「まだそう言ってくれるんですね」


嫌味のように私は言う。彼は笑顔のまま続ける。


「うん、僕は君を愛しているから」


「……だとしても最近の貴方の行動は目にあまります……」


私は思わずそう言ってしまった……すると彼は悲しげな顔をして言ったのだ。


「ごめんよ」


そしてしばらくの沈黙の後彼は口を開いた。


「君は一体誰なんだい?」


「……はい?」


意味が解らなかった……この人はまた何を聞いているのだろう?どうしてそんな事を聞いてくるのかわからなかったからだ。だから聞き返したのだが彼はそのまま続けた。


「もう一度聞くよ……君は一体誰なんだい?」


「……私は私です」


「ならすべき行動があるだろっ!!!!!」


彼は突然叫んだ。その迫力に思わず後退りしてしまう。そして、彼は私にゆっくりと近づいてくると私の両肩を掴みながら言ったのだ……


「もっと僕を求めろ!!もっと僕を求めてくれ!!そして、僕を愛してくれ!!」



「ひっ!」


私は恐怖を感じて思わず悲鳴を上げてしまう。だが彼は止まらない……私の体を引き寄せて抱きしめてくる。その腕の力はとても強く振りほどけそうにもなかった。そして、耳元で囁くように言ったのだ……それはとても甘く優しい声で……


「君は僕のものだ……」


「……違います!私は私だけのモノです!!」


私は彼を突き飛ばして叫んだ。すると彼は不気味な笑顔を浮かべたかと思うと私を押し倒してきたのだ!


「きゃっ!」


「僕は君を愛している……だから君の全てが欲しいんだよ」


「離してください!!」


私は抵抗するが力が強くて抜け出せない!それに怖くなって涙が溢れてくる。そんな中、彼の手は私の服の中に入ってきて胸を触り始めた!気持ち悪い!!


恐怖と嫌悪でおかしくなりそうだ。だけど必死に我慢するしかなかった。だってそうしないと大変なことになる気がしたからだ。そしてとうとう彼の手は下着の中に入ってきた!嫌だ!気持ち悪い!!


「嫌ですっ!離してぇえ!!」

「大丈夫だよ、すぐに気持ちよくなるから!僕が君を本物にしてあげるからっ!!!」


彼はそう言って私の胸を揉み始める。


気持ち悪い……嫌だ……でも声が出ない……怖い。私はただひたすら耐え続けるしかなかった。


だけどそれがいつまで続くかなんてわからないし耐えられないかもしれないと思うと不安になる。そしてついに彼の手は私の下半身へと伸びていったのだ!


「やめてくださぃいいい!!!」


私は思わず叫んでしまうが彼は止まらない。そしてとうとう私の大事な部分に手は私の下半身へと伸びていったのだ。


「やめてくださぃいいい!!!」


私は思わず叫んでしまうが彼は止まらない。そしてとうとう私の大事な部分に手がかかった時、私は泣き叫んだ。


「誰か助けてください!!!」


しかし誰も来ない……当然だ。こんな所に来る人なんているわけないんだから。絶望の中、私の体に今まで感じたことのない感覚が襲ってくる!嫌だ!!こんなのは嫌だ!!怖い!!!


「お前も、お前も!!僕を拒絶するのかぁ!!!」


もういっその事殺して欲しいと思うほど辛い気持ちになり涙が溢れてくるのを止められなかった。


そして遂にその時が来るのかと思い目を瞑るがいつまでたってもそれはやってこない……それどころか彼は私から離れてしまったのだ。どうして?そう思った瞬間だった。


白目を向いて、下半身から何かを漏らした彼。そしてここ数日家になったスタンガンを持つ私と同じ顔の彼女。


「はぁ……はぁ……」


彼女は息切れをしていた。


「……スタンガンで気絶させただけですよ」

「礼は言いますよ。でも何故ここに?」

「いては駄目ですか?ここは私の家ですよ?」


彼女は嘲笑うように私を見て言う。


「私の家です。だから……もうなんなんですか……もう、私は疲れたんです」

「なら休めばいいじゃないですか?何せここは私の家です」


だが何故だろう……何処か悲しそうだ。そんな彼女を見て私も少し悲しくなってくる。彼女がどうしてそんな顔をしているのか解らなかった。


「待ってますよ。先にシャワー浴びてきたらどうです」


そして彼女は私の返事も聞かずに晶を台車に載せた。


「……何だったんだろう」


私は彼女が出ていった扉を見つめるしかなかった。しかし、それと同時に私に何か違和感があるように感じたのだ……

でもとりあえず私はシャワーを浴びることにした。

そして、シャワーを浴び終えて出てみると……彼女がいた。


「何ですか、私の裸でも見にきましたか?」


とわざと挑発するように言った。


「ええ、そうです」


彼女はあっさりと答える。


「そうですか……」


と私は呆れながら言うが、彼女も裸だったことに驚いてしまう。


「何で……貴女も脱いでるんですか?」

「脱いでは駄目ですか?」

「……はい?」


意味が解らない。


そして私達は無言のまま見つめ合う形になるのだがお互い何も語らない。変な気分になる。


あれだけ憎み合っていた彼女と裸で対面するとは思わなかった。でも不思議と嫌な気分じゃない。

そして彼女の体を見ると思わず見とれてしまう。程よく付いた筋肉と白い肌が美しい。また胸は大きくはないが綺麗な形をしていて…


私は彼女に近寄ると彼女も私に近寄ってくる。

そっとその体を触れてみる……とても柔らかい肌だ……


彼女は抵抗しない。それどころか私を受け入れてくれる。そんな彼女を見ていると私も変な気分になる……もっと触りたいと思ってしまうのだ。彼女が抱きしめてくる。だから私は彼女を抱きしめた。


「急に何ですか?」

「貴女こそ」


お互い見つめ合ったまま動かない。いや私も彼女も動けないのかも知れない同じ顔に魅入られたように見ることしか出来なかった。そうして暫く何故か私は彼女と息を交換し合った…晶ともこんなことしたことなかったのに。





…でも不思議と嫌じゃなかった。私の嗅覚がおかしくなったのか良い匂いでむしろもっとしたいと思ってしまうほど私はおかしくなっていたのかもしれない。


「意外と私の癖に可愛いじゃないですか」

「意外とは余計ですよ」


でも彼女はそれだけ言って私を見つめてきたのだ。


「……なんですか?」


私はそう聞くが、彼女からの返答はない。ただじっと見つめてくるだけ……なんだろう?何か言いたいことがあるのかと思ったのだが違ったようだ。そして彼女が私に言う。


「ご飯にしましょうよ、どうせ何も食べてないのでしょう?」

「なら作ります」


私はそう言って台所へ行こうとしたのだが止められたのだ。何故だろうと思っていると彼女が言うのだった。


「私が作るので貴女は座っていて下さい」

「なら私も手伝います」


と私は彼女について行く。でも彼女はそれを拒否してきたのだ。


「駄目ですよ、大人しくしていて下さい」


と彼女は言ったが私は引き下がらない。

だから私は彼女に言うのだった。


「じゃあ、一緒に作りましょうよ」

「……仕方ないですね、良いですよ」


と彼女は渋々と言った感じで了承してくれたのだ。そして私達は一緒に料理をする事になったのだが……正直言って驚いた。だってこんなにも息が合うとは思わなかった。お互いにお互いが何をしたいのかがわかるし次に何をしようとしているか手に取るようにわかるのだ。私は思わず彼女に言ってしまった。


「こんなにも意志疎通出来ているのは気持ち悪いですね」


と私がいうと彼女は即答したのだ。


「同意しますよ」


それを聞いた時、少しだけ…本当は一人が良かったはずなのに。でもすぐに頭を切り替えることにした。今はそんなことどうでもいいと思ったからだ。そして料理ができたところで私達は一緒に食べることにしたのだ。作った料理は普段より上手くて少しおかしくなりそう。


そして食事が終わった後は暫くテレビでも見ることになったのだ。そして暫く見ていると突然彼女が画面を指差す、それはニュースだった。


「また、通り魔が出たらしいですよ」


「……そうですか、物騒ですね」


と私は興味なさそうに言う。すると彼女は私を見て言った。


「本当に興味なさそうですね」

「はい、別に私には関係ない事なので……」

「そうでしょうね」


と彼女は言うがそれ以上は何も聞いてこなかった。ただ黙って私の隣に座っていただけだ…。


艶やかな彼女の長い黒髪が良い匂いがする。


私は何故かテーブルに置いてあった愛用しているリップグロスを無意識に手に取っていたのだ……無意識だった。すると彼女が話しかけてきたのだ。


「…関節キスに…なりますね」


と……?


「使ったんですね」

「当然です。私のですから」

「違いますよ。私のです」  

「私のですよ」 


顔を近付けてくる彼女。


「近いですよ」


と私が言うと。


「もっと近くにいけますよ…さっきあんなに息、交換し合ったじゃないですか」


と言ってくる。


「それはそうですが……」


と私が戸惑っている私は…


「何ですか急に人格変わりました?」 

「変わっていませんよ。関節キスしようというのですから…いっそのこと…キスしてみます?」


何て言う馬鹿げた提案をしてくるのだろうか。


「嫌ですよ……何でそんなことを……」


彼女は私の手にあったグロスを手に取ると自分の唇に塗って見せる。その姿は妙に色っぽくて艶っぽくてとても魅力的で美しかったのだ。それを見て思わずドキッとしてしまう私……そして彼女の唇に付いているのは光沢のある淡いピンク色のものでまるで輝いているように見えて綺麗だった……正直見惚れるくらいには……


すると彼女が言ったのだ。


「貴女の番ですよ」

「えっ?」

「ほら、早く。まさか度胸がないわけではないでしょう?だったらやって見せて下さいな。それとも私からして差し上げましょうか?」


と意地悪そうに笑う彼女だが、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ……楽しいとまで思えてしまうほど。だから私は素直に彼女の提案にのる事にしたのだ。


「……わかりましたよ」


そして私は自分の唇にグロスを塗って見せた。するとどうだろう……彼女と同じ淡いピンク色の艶が生まれたのだ。それを見て彼女は見惚れていた。


そして今度は私の方を見て口を開くと言ったのだった。


「とても似合っていますよ」


と笑顔で言ってくれたのだ。それにつられて私も思わず微笑んでしまうほどだった。そして、彼女は私に向かって言った。


「これで私達はお揃いですね?」


と嬉しそうに言う彼女に私は何も言えずただ黙って見つめるだけだった……。でも不思議と悪い気分ではないしむしろ…


…柔らかい唇の感触だ……そしてそのままゆっくりと離すと彼女は言ったのだ。


「晶の唇より良いじゃないですか」

「…キスしたんですね」

「ええ,あまりにもせがむので」

「ねだるのではないのですね」


それを聞いて思わず顔を引きつらせる私。正直言って驚いてしまったからだ……だって彼女とキスしてしまうなんて考えてなかったから……彼女は表情を変えずに続けた。


「……」


と理解に苦しむ事をさらりと言ってのける彼女に対して私は一体どんな顔をしただろう。

でも彼女はそんな事は気にせずに話を続けていく。そして……


「貴女もしてみませんか?」


と提案してきたのだ。


「嫌です」


と私は即答した。


すると彼女は少し嬉しそうな顔をしていた。何故だろうか? そして、暫く沈黙が続いた後……彼女が口を開いたのだ。それはまるで独り言のような言い方だったけれど確かに私に対しての言葉だった。


「……意外と下心が明け透けてみえると冷めますよね。始めは選んでもらえて嬉しかったんです…でも徐々に違う感情が湧いてきてしまって……単純で自分勝手な欲望ばかり見せつけられるのが苛立たしくて腹が立ったんです。……」


「そんなの知りません」


と私は答えると彼女は悲しげな顔をする。


「……でしょうね、勝手に憎んで一方的に恨みましたからね」


私はそれにどう答えたら良いのか、どう行動したら良いのかわからないまま黙っているとまた口を開いた。


「ぶつけられなかった劣情もぶつけさせてくださいよ」


そう言うと彼女は返事を待たずに私に抱きついてきたのだ……私は抵抗しなかったが彼女の顔は真っ赤だ……やはり恥ずかしいのだろう。


でもそんな表情も可愛いと思ってしまうのは何故だろうか? そして、彼女は私の首の後ろに手を回すとそのまま引き寄せて再びキスをしたのだ。今度は先程よりも長く深いキスだった。


……最初は戸惑ったし恥ずかしかったが途中から何も考えられなくなったくらいに夢中になってしまうほどに気持ちよくて幸せな気分に満たされたものだった……。

やがて離れると彼女は満足そうに微笑んだのだ。その笑顔は普段の彼女とはまるで別人のようだった……そんな彼女を見て私はますます嫌いになれない自分に気づいていた。そして、それは彼女も同じなのではないだろうか?


「もう終わりですか?」


と彼女が聞いてくるので、私は思わずこう答えてしまった。


「これ以上は支障があると思いますが?」


すると彼女はイヤらしい顔をして言ったのだ。


「責任とってくださいよ……貴女の事好きになってしまったかもしれません……」


とわざとらしく照れる素振りをしてみせる。


でも、私はちっとも動揺などしなかった……何故か冷静になっている自分がいるのだ。そして思わず言ってしまったのだ。


「それは困ります」


すると彼女は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに微笑を湛えるとこう言ってきた。


「本気ですよ?恋愛として」


「いえ、そう言う意味ではなく付き合うことはありえないと思っただけです……私達は…」


と言い終わる前にまた唇を塞がれてしまった……しかも今度は激しく舌を絡めるようなものだった……思わず声が漏れてしまう……でも止められない……頭がクラクラするくらいに気持ちよくて蕩けてしまいそうになるほどだった。やがてゆっくりと離れると唾液が糸を引くのが見えた。


「晶の事を忘れて私と一緒になりませんか?」


私は黙って聞いているしかなかったが彼女の言葉を聞いているうちにどんどん腹が立ってきた……理由は自分でもわからないくらいに激しい怒りが込み上げてくるのを感じる……それも今までで一番と言っても過言ではないくらいにだ……そして次の瞬間には口が勝手に動いていたのだ。


「勝手な事を言わないでください。都合が良すぎませんか?貴女は私に酷い仕打ちをしたし傷つけもしたでしょう?なのに今更都合の良いことを言ってきて……自分の都合ばっかりじゃないですか?」


それを聞いた彼女は私を睨みつけ…


「はい、その通りですよ?私は身勝手なんです」


それを聞いて更に怒りが込み上げてきた私は思わず拳を握りしめていたのだがそれに気づいたのか彼女が私の手を取ってきた。そしてそのまま優しく握ってくる……その感触に思わずドキッとしてしまったのだ。何とも言えない感情が湧き上がってくるのがわかると同時に少し恥ずかしくなってしまうほどだった……。


「でも貴女も身勝手ですよ?」


「はい、そうですね」


と私は素直に認めたのだ……だってその通りだと思ったから……。そして彼女は続けて言ったのだ。


「だからお互いにお互いが嫌いで仕方ないんです」

「……そうかもしれませんね」


と私は答えたのだった……。

それから暫く沈黙が続いた後。


「キスしていいですか?」

「いいですよ」


そして私達は怒りのままに唇を重ねる……最初は触れるだけのキス。それから徐々に激しくなっていく。舌を絡ませたり唾液を交換したりする。


「んちゅ……れろぉ……」

「はぁむ、じゅるるる!」


お互いの舌が絡み合う度に頭がボーッとしてくる。


「晶と違って私の舌美味しいですよ」

「自慢ですか?私が絡めたこともない対象を持ち出して」

「ご自由にどうぞ」


そう言うと再びキスをする。何度も何度も……まるでお互いを求め合うように舌を絡め合い貪るような激しいキスを繰り返す。そしてようやく離すと銀色の橋がかかるほどになっていた。それをみて彼女は妖艶な笑みを浮かべると言ったのだ。


「……もっとしたいですか?」

「いえ、別に……」


と私は答えると彼女は少し残念そうにするのだった。


「ならもっとしたくなるまでしてあげます」


でも次の瞬間にはまたキスをしてくる彼女。今度はさっきよりも長く濃厚でお互いの唾液を交換し合うようなものだった。息苦しくなって口を離すと透明な橋がかかるほどだった……それを見た彼女は満足そうな顔をしていた……でもすぐにまた求めてくるので私もそれに応えてあげることにしたのだ。


「んっ、ちゅぱっ……」

「はぁ、はぁ……」


お互い肩で息をしながら見つめ合っていた。


「唾液って無味と思っていましたが…貴女の唾液は甘く感じました…相性良いみたいですよ」


と口付けながら囁いてくる。


「残念ながら私は無味でしたよ」


そう言いながら喉を通り混ざり合った唾液は脳が蕩けそうなほど甘くて腹が立つ。


「ならまだ確かめますか?」


そう言うと彼女は再び唇を重ねてくる。今度は最初から舌を絡ませてきたのだ……そしてお互いの舌の感触を確かめるようにゆっくりと絡め合わせていった。唾液を飲み込む度に頭がボーッとしてくるのがわかる……まるで媚薬でも飲まされているような気分だった……絶対に偽者なんか好きになってたまるものか……。そして長い時間の口付けを終えて唇を離すと銀色の橋がかかるほどのものだった。


「私達の相性最高ですね」


と彼女は言う。


確かにその通りかもしれないが認めたくない自分がいるのも事実だった。だから私は否定するように言ったのだ。


「まだわかりませんよ」


と言うと彼女は微笑みながら言ったのだった。


「では、もっと確かめ合いましょう?」


それから私達は何度もキスを繰り返した……お互いの唾液を交換するように何度も何度も繰り返していくうちに私は彼女の味を覚えてしまったようだ……悔しいけど認めざる得ない。


でも、まだ好きになるわけにはいかないのだ。だって私は彼女を嫌っているのだから……だからこれはただの確認作業なのだ……そう自分に言い聞かせながら私達はまた口付けを交わすのだ。


「好きですよ」

「嫌いです」 

「好きですよ」

「嫌いです」

「好きですよ」

「嫌いです」

「好きですよ」

「嫌いです」 

「何回でも好きと言えますよ」

「何回嫌いと言わせるつもりですか」

 「嫌いと好きは表裏一体ですから」

「そうかもしれませんね……」


私はそう言うと彼女の肩に頭を乗せて寄りかかるように体重をかけた。彼女はそれを優しく受け止めてくれたのだ……それが無性に嬉しくて思わず甘えてしまいたくなったのだがぐっと堪えることにして離れようとするが、彼女に抱きしめられてしまう。そしてそのまま押し倒されてしまったのだ……。彼女の顔を見上げる形になる私……その瞳には私が映っていたのが見えたような気がしたけど気のせいだと思うことにした。


艶やかな黒髪が私の頬を擽り、私の髪と交じる。


「髪のケア大切にしていましたが艶もあってサラサラで綺麗ですね……」

「ありがとうございます。ですが変態になってきてませんか?」

「私を誘惑する貴女が悪いのですよ」


そう言いながら私の髪を優しく撫でてくれる彼女。その手つきはとても優しくて心地良いものだった……思わずうっとりしてしまうほどだ。そして彼女はそのまま顔を近づけてくると耳元で囁いてきたのだった……それはまるで誘惑するような甘い声だったけれど私には逆効果だったようだ……


背筋がゾクゾクして身体が熱くなり頭がボーッとしてきたからだ……きっと顔も赤くなっていることだろう……それを悟られないようにするために顔を背けようとしたけれどそれを予想していたかのように顔を固定されてしまう……


そして再び唇を重ねられてしまう。今度は最初から舌を絡ませてくる激しいものだった……歯茎や上顎など隅々まで舐め回される感覚に背筋がゾクゾクするのを感じると同時に頭がボーッとしてきて何も考えられなくなってしまうほどだった……。


それからどれくらい時間が経っただろうか?ようやく解放された時にはもう完全に蕩けきっていたと思うくらいだった……そんな私を見て彼女は満足そうな顔をしていたのだった……悔しいけど今の私には反撃する力さえ残っていない状態だった。しばらく抱き合っていた。


「大丈夫ですか?」


と心配そうに聞いてくる彼女に私は黙って首を左右に振って答えることしかできなかった……だって大丈夫じゃないもの……


頭がボーッとするし身体も熱い……それに下腹部辺りが疼いてしまっているような感覚に襲われるくらいなんだもの。こんなの初めてだからどうしたらいいのかわからないし怖いくらいだ……


でもそれを悟られるのはもっと嫌だったから平静を装っているつもりだけど実際はどうかしらね?自分でもわからない。そして、そんなことを考えている間にも彼女は次の行動に移っていたようで今度は私の服を脱がせにかかってきたのだ……抵抗しようとしたが力が入らなかったせいか簡単に脱がされてしまったようだ……


そして下着姿になってしまった私を見て彼女は妖艶な笑みを浮かべてこう言ったのだ。


「可愛い下着ですね……」


と言いながらまじまじと見つめてくる彼女に対して恥ずかしさを感じずにはいられなかった私は顔を逸らそうとしたのだが顎を掴まれてしまい逸らすことができなくなってしまう……それどころか彼女と見つめ合う形になり余計に恥ずかしくなってしまう始末だ……そんな私を余所目に彼女はゆっくりと顔を近づけてきて耳元で囁いてきたのだ。


「綺麗ですよ」


と甘い吐息混じりに囁かれた言葉に背筋がゾクゾクしてしまい思わず声が出そうになるほどだったが何とか我慢することができたのは奇跡だと思うくらいだった……でもやっぱり凄く恥ずかしかったし顔が熱くなるのを感じたのできっと赤くなっているんだろうなと思った私は再び顔を背けようとしたが今度は両手で頬を掴まれてしまい動けなくなってしまう……そしてそのまま唇を奪われてしまったのだ。


最初は触れるだけの軽いキスだったが次第に激しく貪るようなものに変わっていき最終的にはお互いの舌を絡め合わせる濃厚なものへと変わっていったのだ……その間ずっと息継ぎをせずに続けていたせいか苦しくなってきた頃にようやく解放されたのだ。


「躊躇しないでくださいよ」

「はぁ…はぁ…貴女なんか好きじゃありませんから」

「好きです。私はあなたが大好きです」

「違います」

「違わないですよ?」


と彼女は微笑むと言ったのだ……そして再び唇を重ねてきたと思ったら今度は舌を絡ませてきたのだが先程とは比べ物にならないくらい激しく絡ませてくるものだから何も考えられなくなるほどだった……しばらくしてようやく解放された時にはもう完全に蕩けきっていて抵抗なんてできなかったと思う……それくらい凄かったのだ……


でもこれで終わりではなかったようで今度は首筋を舐められた後に強く吸われてしまったのだ……それがくすぐったくて思わず声が出てしまったほどだ……それから鎖骨や胸の谷間などに次々とキスマークを付けられてしまった挙句の果てにはお腹にまで付けられてしまったのだ……まるで所有印のようなそれを満足そうに眺めている彼女を見て私は何も言えずただ黙って見ていることしかできなかったのだった……。



「もう、やめて」

と弱々しく抗議したものの。


「なら私を受け入れてくださいよ」


と耳元で囁かれてしまいゾクッとした感覚に襲われてしまう……それが悔しくて顔を背けようとするものの顎を掴まれてしまい逸らすことができなくなってしまう……それどころか彼女と見つめ合う形になり余計に恥ずかしくなってしまう始末だ……もういい加減にしてほしかった私は彼女の手を振り払うようにして逃げ出そうとするのだけれどすぐに捕まってしまい抱きしめられてしまったのだ。


「離してください」


と言っても離してくれずむしろ強く抱きしめられる結果になってしまい更に密着度が増してしまったことで私の顔はますます赤くなってしまったようだった……そんな私を見て彼女は満足そうな顔をしていたのだ……





「もう逃がしませんよ」










どこで間違えたのかな私。












「何故!こんなったんだよぉぉ!!」


『おお…予想していなかったが…こうなっちまったか一番最悪だな』


「こんなことなら…」


『俺を頼らなければ…か?』


「そうだよ」


『ハハハ、そうだな。だけどよ言ったよな俺は「お前を好いてくれた彼女の方を本物にするんだよ」てな。で、お前はどうしたよ。自分で選んだんじゃねぇか』


「でも」


『待てなかったか?違うな。自分の欲望に負けたんだよお前は…あ~あ、お前のせいで選ばれなかった方の存在が希薄になって世界から偽者扱いで異物として死にかけたじゃないか、そのせいで選ばれた方もそれを埋めるように求めてしまったな』


「どんな選択をしようとも、俺はそれを肯定するし、否定もしないって言ってくれたのはお前だろ!」


『あ~それは騙されたお前が悪いが…前言撤回だ』



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