以前申したように、私が絵の練習を始めたきっかけとなったのが、以下で紹介する小説執筆構想です。構想開始から十数年を経てもなお完成しませんが、これが無ければ、今日こうしてイラスト作品をお見せすることにはなっていませんでした。そのきっかけとなった小説の構想、ご興味のある方は是非お読みください。
※あくまで「紹介記事」なので、少々説明くさいです。
※最後にあたる部分まで書きます。ネタバレを嫌う方はご注意ください。
2009年7月17日、白昼の東京。西新宿に聳え立つ50階建ての高層ビル『ツインシティー東京』(Twin City Tokyo)が、突然、何者かによって爆破された。
爆発したのは、このビルの最上階にある小型プラネタリウムの近くに仕掛けられた、時限爆弾。これにより、その階にいた人を中心に、300人以上の死傷者が発生した。この物語は、この犠牲者の一人・望月佑紀(もちづきゆうき)を主人公として展開する。
望月は当時14歳の中学3年生。夏休み前最後の通学日だったこの日、昼前に終わった学校を出て、ある『用事』のため、このビルに来ていた。
それは再会の約束だった。
相手は、小学校時代の同級生・赤城凜花(あかぎりんか)。再び、このプラネタリウムで逢う――遠い昔に交わした約束は、望月の頭にしっかり刻まれていた。
厳密には、この日17日は再会の日ではない。数日前にあたる。望月は、下見をしにツインシティー東京に来ていた。
そして、事件に巻き込まれた。
再会を目前にした死。全てが終わった……はずだった。
しかし望月は、ある時、目を覚ました。
何も見えない、暗い空間。そこは船の中だった。水の上ではない。陸の真ん中で息絶えた、古い座礁船。這い出て、目をこすると、その船は森の中に座していた。
なぜこんなところにいるのか。身に覚えは全くない。とりあえず、歩いてみる。
望月は、木々の間に奇妙なものを見つけた。暫くその方向に進んで気付いた。人工構造物だ。しかも、とんでもなく高く、大きい。
それは、高さ数千メートルにも及ぶ垂直都市の姿だった。林を抜けた望月は、何もない平原に屹立する鉄とガラスの塊を、呆然と見つめるしかなかった。
その都市が『フェーベ』(Phoebe)という名であることは、すぐに分かった。しかし、その位置に度肝を抜かれた。
ふと見かけた地図。日本海に、その真ん中に……あるはずのない島がある。
まさか、自分はそこにいるのか。いや、そんなはずはあるまい。何かの勘違いだ――そう思い、時計をよく見る。
『2059年』……再び動き出した望月の腕時計は、そう表示した。つまり、50年後。望月はパニックに陥った。
望月にはもちろん爆破の記憶はない。その直前で記憶は途切れている。しかし、その時、何か声が幻聴のように聞こえた気が……
……まさか、自分は死んでしまったのか。ここは死後の世界なのか。それとも、何か夢を見ているのか。分からない。何もかも分からない。一体、どうすればいいのか……
そう思ったとき、目の前で強い閃光が走った。けたたましい轟音が、鼓膜を劈く。気付くと、煙に包まれていた。足元はガラス片に埋もれている。目の前のビルが、突然爆発したのだ。咄嗟に伏せる。
「まさか、自分はこんな感じで突然死んだのか?!」……その考えがふと過った。その時だった。
誰かが、望月の腕を強く引いた。
「早く、ここから逃げろ!」
それは、望月より数歳上と思しき、銀色の髪の少年だった。(この少年は、後に『アポフィス』(Apophis)という仮名で呼ばれることになる)
彼は望月を安全な地へ退避させた後で、説明する。フェーベは、『ディオレッツァ』(Dioretsa)なる通称で呼ばれる日本の傀儡国家の、最大都市であること、そして、すぐ北に『ヒュペリオン』(Hyperion)なる敵対勢力が侵攻しつつあること。先ほどの爆発は、ヒュペリオンの地上部隊がフェーベを攻撃するものだった。
望月にとっては、例えば「なぜヒュペリオンがフェーベを占領しようとしているのか」とか、「なぜ、ここフェーベ含むディオレッツァは日本の傀儡国家なのか」とかいう細かい事情は、どうでもよかった。
とにかく、『元の世界』に戻りたい。『あの人』に、また逢いたい……。
現実的手段はないように思えた。
時を巻き戻せるはずもない。そもそも、この危険な地・フェーベを離れられるかも分からない。
しかし、彼の話から興味深い情報を得た。
『川崎市東扇島の施設が、タイムマシンになってるみたいだ』
つまり、そこに行けば、2009年に戻れる、と。
もう、こうなったら、何とかしてフェーベを出て、ディオレッツァから日本へ渡り、東扇島へ向かうよりほかにない――望月は決心した。
しかし、その少年、どうも様子がおかしい。
なぜ、望月の存在に気付いたのか。彼は何者なのか。
その答えは、思ったより早くやってきた。
その少年は呟いた。
「私が、ツインシティー東京を爆破した」――。
君をこんな目に遭わせたのは自分だ。申し訳ない。だから、君を死ぬ前の世界に戻すのが、自分の責務なんだ、と、彼は続ける。
自分を殺した人間が、目の前にいる――望月の心が凝結する。
『あの人』に会えなかった哀しみ、恨み……『元の世界』に帰れないもどかしさ……それらは、やがて少年に対する殺意へと変わっていった――。
さてさて。まずは最初の部分ですね。
この小説構想は、特に後半部分は、(大体できているものの)まだ固まっていないところが多いです。不完全ではありますが、お楽しみいただければ幸いです。この記事はこの辺で。次は1章2節です。
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