余命半年なもんで! 番外編1
Added 2023-06-08 12:21:56 +0000 UTC友達なんて一生自分には縁がないんだと思っていた。 小さい頃から変な人に目をつけられることが多かった。物心ついた頃の最初の記憶は裸コートのおじさんだったし、可愛いからという理由で攫われそうになったのも一度や二度じゃない。 しかしお菓子を貰った程度で付いていく俺も俺だ。裸を見せられて「風邪ひいちゃうよ」と心配になって言ったら、俺に局部を見せつけていたおじさんは泣きながら土下座をして謝ってきた。誘拐犯もニコニコと俺が付いていくもんだから罪悪感に苛まれたのか運よく攫われたことはない。 俺は変態と相性が悪い(もしくはイイ)んだろう。 成長するにつれそういうものは減っていったが、今度は色恋にまつわるものが増えた。増えたけど嬉しいとも嫌だとも思う暇もなく日常はただ過ぎていく。ストーカーは増えても暴力的な目に合ったことはなかった。それでも物を盗まれたりはあったので警察の常連にはなったけど。不思議と俺に直接危害を加えようとする人はいなかった。 母曰く「人は本当に綺麗なものは恐ろしくて傷つけられないものよ」だって。最初は「そっかラッキー」と思ったけど今は違う。もっと普通が良かった。恐いくらいの綺麗なんかいらなかった。普通に横を通り過ぎても忘れられるくらいが良かった。通り過ぎた人が振り返る人生なんて望んでなかったのに。 変に注目ばかりされるくせに、友達にはとんと縁がなかった。 俺は外野で、周りが友達同士になる瞬間を眺めるだけ。いつも羨ましく思っていた。最初の緊張した表情、共通の話題を見つけた時の嬉しそうな声、少しずつ気安くなっていく距離。何度か勇気を出して自分から話しかけたこともあるけど失敗ばかりだった。相手はいつまでも俺を緊張した目で見るし、楽しそうに話すどころか息苦しそうに俺を気遣う。しかもその目が昔からよくまとわりつく変な目に変わることも少なくなかった。結果、俺はいつも1人。 俺はずっと眺めるだけ。クラスが変わるごとにいつの間にか隣にくる「友達のふりした誰か」しか俺の横にはいない。もう諦めるしかないかなって思ってた。俺は多分宇宙人か何かなんだろうって。みんな地球人で俺だけ宇宙人。頭のどっかから光線でも出てて、関わる人間全員ストーカーに変えちゃう変な宇宙人。馬鹿みたいだけど。でもやっぱり誰も俺の隣には来てくれない。 だから江上洸は俺と同じ宇宙人かもしれない、そんなことを思った。俺のことを遠巻きにしない変な奴だったから。 江上に「好きだから友達になって」と言われても最初は言葉通り受け取れなかった。絶対ウソだって。最初はみんなそんな風に言う。けど時間を過ごすと結局変なことを言い出すんだ。ストーカーはもうこりごりなんだよって言ったら江上はきょとんとしてた。それから俺の目を見て「俺はストーカーになんてならないから大丈夫だよ」って笑った。俺なんかと一緒にいて楽しいわけないって言っても「絶対楽しいよ」だって。びっくりした。嘘ついてるんだろって思うのに、断言されると信じたくなるじゃんか。 ソワソワする気持ちを抑えきれず、一回くらいなら遊びに行ってもイイかもしれないって思った。俺だって同級生とサボったりしたい。したいというか憧れてるランキング上位「友達とサボって遊ぶ」。サボりっていっても合コンとかつまんないことじゃなくて、ゲーセン巡りとか河原でクレープとか、そういう青春っぽいことがしたい。してくれるのかな、そういうの。そわ、そわそわ…。 「早速サボって定食屋行っちゃう?」 「!っ行く!あ、うん…行く…」 抗いがたい魅力的な言葉。俺に尻尾が付いてたら多分それは激しくブンブンとブン回ってただろう。…一回!一回だけ!数回遊べば江上もきっと変になる。変な目で俺のことを見てくる。期待しないようにそう言い聞かせて、その手を握った。小さい頃大人がよく言っていた「お友達と手を繋ぎましょう」って言葉を思い出してジーンとする。一回だけかもしれないけど、俺いま友達と手を繋いでるんだ…。 隣で江上がくすぐったそうに笑った。なんで笑ったか知らないけど江上も嫌じゃないんだって思ったらホワンって胸が暖かくなった。でもすぐにハッとして頭をブンブン振る。期待したら傷つくのは自分だ。だ、騙されないぞ。気合を入れて手を握ったら「痛いよ」って江上がまた笑った。 た、楽しい!友達ってこんな楽しいもんなのか…! 心の中で叫びながらエビフライ定食をもりもりと食べた。こんなに美味しいご飯久々だ。人とワイワイ話すとご飯が美味しくなるなんて知らなかった。皆知ってたの?ズルいよ! 選んだ定食屋さんは当たりだった。好物のアジフライが売り切れだったのはちょっと悲しかったけど。そして何より最高だったのは会話のキャッチボールが出来たことだ。一方的に見つめられることもなく迫られることなく、楽しく会話が飛び交う時間なんて初かもしれない。幸せな時間は一瞬で過ぎていった。 「美味しかったな」 「うん!美味かった!」 定食屋を出てすぐ江上にそう言われてウッキウキで頷く。江上もニコニコしてて嬉しくなった。一緒の時間を過ごしても江上は最初と何も変わらない。嬉しそうに笑って「また来ような」って笑う。当たり前なんだ、これが友達なんだって気づく。これがみんなやってる普通なんだって。 これが普通?ほんとに普通?こんなに幸せなのが普通?…だとしたら今までの俺の普通はなんだったんだろ。ぼんやりしたままの頭でお店を出たらふいにどうしようもなくなって手を伸ばす。繋いだ手が暖かくて、握り返してくれる力に泣きたくなった。振り返った江上がきょとんとして俺の名前を呼ぶ。熱のこもった音じゃなくて優しい音で俺を呼ぶ。 「ーーー恩田?」 「…うん…」 名前を呼ばれる。優しい声で呼ばれる。今までこんなに他人に優しくされたことってあったかな。 嬉しそうに笑う目が優しく俺を見てる。押し付けるような重苦しい今までのそれとは違う。優しい毛布みたいな目、声、人。 江上洸という人間が分からない。俺のこと好きって言ったのに、でも江上は俺に無理やりの感情を押し付けようとはしない。俺の感情を無理やり変えようともしない。でも目を見てたら分かる。好きだって思ってくれてることは伝わる。今まで苦手だった好意がこんなに嬉しいなんて知らなかった。 「帰ろうか」 「ーーーうん…」 何でだろう?何でこんなに必死な目で俺のこと「好きだ」って言ってくれるんだろう。それなのになんで相手からは何もいらないって気持ちでいられるんだろう。 江上はまるで明日世界は終わるって知ってるみたいだ。明日終わるから俺になんか好かれても意味ないって思ってるみたいに見える。なんでだろう。それは少し寂しいのに、けど俺にはありがたかった。 なんでだろう。分からないけど、すごく泣きたくなって困った。 次の日もまた衝撃だった。 と、友達とゲーセンで遊ぶってこんなにワクワクするもん!?? 「恩田!そこ、そこ!右右!」 「えっ!?あ、わぁーー!」 「恩田ってゲームへったくそだなぁ」 「~~~なんだよ!じゃあ江上やってみろよ!」 「いいよ?えーと、…おっ、あ、ここで…よっし!」 「……え、え!?…っうま!」 放課後のゲーセンも熱が出るかと思うくらい楽しかった。江上は「俺もゲーセンはあんまり詳しくないよ」と言ったけど俺よりは全然詳しい。 憧ればかり膨らんでいた場所は頭の中で想像してたものよりも楽しいものに溢れていた。俺はずっとあたふたしてたと思う。それを馬鹿にするでも驚くでもなく「楽しいな?」って笑って江上は俺の手を引いて色んなゲームに誘った。 クレーンゲームは江上が可愛いぬいぐるみを取って俺にくれた(俺は三回もしたのに何も取れなかった)。シューティングは何故だか俺ばかりゾンビに狙われてすぐ死んだ。「恩田ってゾンビにもモテるんだな」って感心したように言われたから怒ったら「揶揄ってないよ」って江上が笑う。…江上がそう言うならそうなんだろうなって、怒りはすぐに消えていった。簡単な俺。 一日目は定食屋、二日目の今日はゲームセンター。「俺の要望ばかりでいいの」って聞いたら「お前の要望だからいいんじゃん」だって。言葉の意味は分からないけど、大事にされてるみたいで嬉しいと思う。 江上は良い奴だ。…俺ってチョロいのかな?江上といると自分が簡単な人間になったようでちょっと戸惑う。もっと警戒心あったはずなんだけど。…というより今までずいぶん周りに警戒してたんだなぁって自覚した。 …でも仕方ないじゃん。江上といるとすげえ楽しいんだもん。昨日と今日、たった二日で?って自分でも呆れる。でも楽しいしわくわくするんだ。 江上は今まで俺が出会ってきた人間の誰とも違ってて不思議で心地よかった。俺のこと好きだって言うのに、江上だけは俺から何かを奪おうとしない。俺からの「好き」とか、俺からの愛情だとか、俺からの 何かを求めない。無理やり奪おうとしない。だからといって押し付けてくるのとはまた違う。俺の隣に立ってただ楽しいって笑ってくれる。俺も楽しかった。すごく楽しくて、こんなの初めてで明日が楽しみなんていつぶりかな。 すぐ我慢できなくなってドキドキしつつも江上のことを洸って呼んだ。少し驚いた顔した洸は、でもすぐに嬉しそうに笑って「なに?」といつも通り返事をしてくれた。飛び上がりそうになるくらい嬉しかった。 朝一番に「おはよう」って言いたくて毎朝教室でソワソワした。誰かが入ってくるたびに洸じゃないとガッカリして寂しくて「朝一緒に行きたい」って言ったらこれにも洸は嬉しそうに笑って「いいよ」って言ってくれた。嬉しい、嬉しすぎる。毎朝待ち合わせなんてドラマとか漫画だけだと思ってた。しかもその相手が友達だなんて尚更ヤバい。 手は繋がなくなった。言い辛そうに「子ども以外は友達でも手を繋がないんだよ」って教えてもらった。マジで…?衝撃だったし悲しかったけど「いいじゃん、繋がなくても友達だろ」って言われて簡単に自分の機嫌が直ったのが分かった。江上と仲良くなって気付いたけど、俺は本当にチョロい。 毎日があっという間に過ぎていく。今まで欲しくても手に入らなかったものが手に入って俺は浮かれすぎてたのかもしれない。家に居ても学校に居ても洸の姿を探してしまう。会えたら嬉しいしすぐに近づいて話しかけたくなる。居ないと寂しいから声が聴きたくなって、メッセージを送って返事がないと凹んで。 この好きは友達の好きなのか?ーーー何もかもが初めての俺には分からなかった。 だから洸に触りっこしようって誘われた時、洸はやっぱり宇宙人なのかもしれないと馬鹿なことを思った。だって俺の頭を読んだみたいだ。俺はここ最近ずっと洸に触りたかった。 洸が俺の中でどんどん特別になっていくにつれて、その欲求は大きくなっていった。けど大人は手を繋がない、キスも友達のキスをしたっきり。…友達なんだからたまには俺からキスしてもいいのかなって思ったりもしたけど、手を握ることすらしないのにキスが許されるとも思えない。 好きだから触りたいのか、触って自分の気持ちを確かめたいのか。悶々としてたある日、唐突に訪れた触りっこの提案に俺の頭は沸騰した。期待すらしてなかったチャンスが目の前にいきなりきた。洸の手が、俺のを触ってーーー俺も、触っていいのかな。洸の、勃起して、やばい、心臓破裂しそう…。俺が先っぽを振るえる指でくりくりしたら、洸が気持ちよさそうに大きく息を吐いた。…マジでヤバい。 「はぁ、はぁぁ…!あ、あっ…、やばい、気持ちいい…」 「…ぁ、んぅ…、あっ、あっ…♡ んっ!きもち、いい、ね…?」 そう言って笑った洸の顔が色っぽくて視線が動かせない。俺の方を見て笑って喘ぐ洸。…見てるだけでイキそう。 手の中のぐちょぐちょしたペニスも洸のだと思うと触ってるだけで興奮した。不思議だった。誰かに触られたり触ったり苦手だったのに洸ならいい。洸にはもっと触りたい、触って欲しいって思う。 はぁはぁってどっちの息か分かんない荒い吐息がお互いの顔に当たる距離まで近づく。洸が小さく口を開けて息をするから小さい舌が見えてたまんなかった。無意識に顔を近づけてしまう。だって、あんなに近くにキスしたい唇があるんだもん。 キスしたい、キスしたいキスしたいキスしたい…!!うっとりした顔がすぐ目の前にあって、思わずごくりと喉が鳴る。欲しい、この欲が恋かただの性欲か俺には分かんない。だって経験がないから。嫌いとか苦手は分かるけどその反対が分からない。でも洸以外にこんな気持ち感じたことないんだよ。 今まで俺にそういう感情を向けてきた人たちごめんなさい。こんなに我慢できない気持ちを抱えてたんだって今やっと分かった。我慢できるわけないよな。だってこんなに胸が苦しくなるんだもん。 これが愛か恋かただの欲か分かんない。けど洸が欲しい。キスしたい、キスして欲しい。全部欲しい、全部俺のにしたい。 「…っ洸、俺の名前呼んで…?」 「……り、りひと…?」 「…っ…へへ…」 自分からねだったくせに鼓膜をくすぐられるみたいなその感触に体が震える。甘く痺れるみたいな音がたまらなくて勝手に顔が緩んだ。嬉しい。洸に初めて名前を呼ばれた。本当はずっと読んで欲しかったんだ。 「うれしい」って俺が笑ったら、なんでかちょっとだけ洸は苦しそうな顔をした。なんで?そんな顔しないでよ。悲しいことがあるなら俺に言って欲しい。出来ることなら何でもするからお願い。 堪らない気持ちで洸のペニスを扱く。色っぽく目を細めた洸が泣くみたいな声を上げて俺の名前を呼んだ。たまんない。もっと。もっと呼んで、洸。 「…りひと、あぁ…!ん゛っ、やばい、も、いっちゃいそ…、あっ、あぁ…♡」 「ッ!…俺も、洸、こう…、あ、あっ、洸…、ぁ、っ…」 「…ぁ、…っ…、…ぁ、…んっ…♡」 キスしたい。すぐそこにある唇に触れたい。我慢できなくてゆっくり顔を寄せたら、同じくらい少しずつ近づいてきてくれて胸が痛いくらい軋む。あ、 ちゅっ、ちゅぅ…ちゅっ♡ 「ん、んぅ…♡ んぁ…♡ ん、んぅ、ん…♡」 「はぁ…♡ ん、ちゅっ…♡ ん、ちゅぅ…♡」 お互いの間からリップ音がする。息が苦しくて唇を離すのに、離れたくなくてまた唇を重ねる。洸もそうなのかな?もどかしそうな表情でまた唇を寄せてきたから嬉しくなって俺もその唇を追いかけた。美味しい。甘い。なんでただの唾液が甘いの?もっと飲みたくて吸い込んだら、気持ち良かったのか、洸がぷるぷる震えた…可愛い。 唇が離れかけた瞬間に洸の口から零れた息が俺の唇に熱く触れて、それに体がもっと熱が煽られていく。はぁはぁってどっちか分からない荒い息の中、サウナの中にいるみたいに熱い。頭が溶けそう。 「…これも、友達のキス…?」 熱に酔った頭で自分でもなんて答えて欲しいのか分からない質問をした。今にもまた触れそうなその距離で、ぼんやりした顔の洸がこっちを見てる。 友達も好きな相手も全部洸が初めてで俺には分からない。洸は俺よりずっと色んな事を知ってるから答えをくれるんじゃないかと思ったんだ。俺のこの噛り付きたい衝動も、洸を見てるだけで今にもイッちゃいそうなくらいの興奮も、洸なら──ぼんやりしたまま洸が口を開く。 「………わかんない……」 「……へへ…」 子どもみたいなその答えに思わず嬉しくなった。洸も分かんないんだ。分かんなくて戸惑って、混乱してるのが嬉しい。俺と一緒で嬉しい。俺のこのよく分かんない衝動と同じものを洸も持ってると思うと幸せでたまらなかった。 洸を見てたらまたキスがしたくなってねだったら、すぐに頷いてくれるから嬉しくなる。寄せた唇に必死に舌を伸ばしながら、手の中のぐちゅぐちゅした熱いペニスを握って扱く。ぷちゅぷちゅ水分を含んだ音が卑猥に響いてくる。くっつけた唇からお互いの耳の奥でぐちゅぐちゅキスの音がした。洸と繋がってる音だ。二人ともどんどん興奮していくのが分かった。 俺は見てた。目を開けてずーっと、気持ちよさそうに顔を歪ませる洸を見てた。一秒も見逃したくなくて、俺の手で舌で追い込まれていく洸を見てた。変態だ俺。でも目が離せないんだもん。…あ、イク。洸がもうイッちゃう。可愛い。舌が震えてる。涎が零れて、あ、可愛い、たまんね。 「ッん゛ぅぅ♡♡」 ぴゅるるっ♡♡ ぴちゅっ…♡ 全身を震わせていやらしく絶頂する洸を見つめながら、俺も追いかけるみたいに絶頂する。 「ん、はぁ…!」 洸の手でイッたのか、それとも絶頂する洸を見てイッたのか、自分では分からなかった。 けど体を襲うぐったりとした倦怠感と、いまだ燻る熱の意味は分かる。洸と一緒にイッた、もっともっと一緒にイキたい。もっと、もっともっと、洸が欲しい。 「…洸、キスしてもいい?」 俺の言葉に洸がぼんやりと頷く。ゆっくり近づいた唇から、甘い香りがして目の前がチカチカした。
Comments
初めての友達に楽しんでる理人を書けて楽しかったです。根が純粋すぎる子。ピヨピヨ。 ほんと、まだまだ死んでる場合じゃない!笑 感想ありがとうございます♪
午後
2023-06-11 02:33:47 +0000 UTC